Translated by Ryosuke Igarashi
(掲載日 2019/06/18)
はじめに
皆さん、こんにちは!MTGアリーナがスタンダード一筋である現状、紙でのマジックはモダンにかなり重きを置いているのではないでしょうか。ミシックチャンピオンシップはモダンで行われてきていますし、グランプリやStar City Gamesのイベントもありますね。それに、Red Bullによる賞金制大会である「UNTAPPED」の現実世界での予選はモダンで行われますから、このフォーマットに力を入れる理由がかなり大きくなってきています。
私はしばらくモダンをプレイしてきませんでした。プレイする明確な理由がなかったというのもありますし、私は競技志向の強いプレイヤーですから、次の大会で採用されるフォーマットに尽力しかったのです。
そのため、モダンは非常に運の絡んだものだと思っていました。アーキタイプが無数にあり、どれにも非常に有利なマッチアップと非常に不利なものがある。全てのデッキを対策することなどできないので、当たり運や、正しいサイドカードを引き込むことが最も重要なのではないかと。
ですが実際にプレイし始めて、そうではなかったことにいい意味で驚きました。これには自分が青白コントロールを使っていたこともあるかと思いますが、おおむねどんなデッキにもフェアに戦えるデッキを探しているなら、まさにお勧めのデッキですよ。
モダン発足当初は文字通り無数のデッキがあり、誰もメタを理解していない、という状況が長い間続いていました。今やモダンはどんどん人気のフォーマットになっていき、プロプレイヤーたちが手を付ける機会も増えたことから、メタゲームが非常に安定したという点もありますね。プレイアブルなデッキは見るからに多いものの、Tier1といえるのは6つ程度でしょう。
例として、以前のミシックチャンピオンシップを挙げてみましょう。ここでのTier1は明らかにイゼットフェニックス、ドレッジやトロン、5色人間で、そして《硬化した鱗》親和と青白コントロールが少々遅れてTier1.5といったところでした。少々競技性の低いイベントではまた違ったのかもしれませんが、ミシックチャンピオンシップでは多くのプレイヤーはこれらの中からデッキを選んでいました。
そのため、サイドボーディングの点でモダンがスタンダードに近づいてきており、青白コントロールのようなデッキのポジションが良くなったのではないかと思いました。
幅広い環境で戦えるほどには強力なデッキというわけではない(現在はそうかもしれませんが、ここでは『灯争大戦』など新カードの入っていない青白コントロールの話です)ものの、少数のデッキを意識して調整できるデッキなのです。
ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019での青白コントロール(『灯争大戦』前)
こちらが私とケルビン・チュウ/Kelvin Chew、ジェレミー・デザーニ/Jeremy Dezani、ルイス・サルヴァット/Luis Salvatto、そしてセバスティアン・ポッツォ/Sebastian Pozzoがミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019に持ち込んだデッキになります。
私はモダンラウンドで(5色人間とイゼットフェニックスに負けて)8-2し、13位という成績で終えることができました。ルイスも8-2していたのですが、不幸にもリミテッドラウンドでうまくいかず、最終成績は落ち込んでしまいました。とはいえ、デッキの選択やリストには非常に満足していますね。
『灯争大戦』の加わった青白コントロール
非常に多くの点が変わったため、全てのカード選択を詳細に見ていくことに意味があるとは思いません。かなり長い間なかったようなことが起きましたしね。非常に強力なセットが、しかも2つもリリースされ、完全にモダンのメタゲームを変化させたのです!
『モダンホライゾン』のリリースが、『灯争大戦』からさほど空いていなかったのは少し悲しかったですね。『灯争大戦』が追加されただけでもかなり面白い環境になっていたのですが、解き明かされるほどの時間がありませんでした。『モダンホライゾン』がなければどのデッキが環境の頂点へと躍り出ることになっていたのか……見てみたかったですね。
『灯争大戦』のみが加わった青白コントロールは一週間ほどしかプレイしていなかったのですが、最終的なリストはこちらになります。
2 《平地》
2 《神聖なる泉》
4 《溢れかえる岸辺》
1 《沸騰する小湖》
4 《天界の列柱》
2 《氷河の城砦》
4 《廃墟の地》
-土地 (25)- 4 《瞬唱の魔道士》
2 《ヴェンディリオン三人衆》
-クリーチャー (6)-
4 《流刑への道》
2 《呪文貫き》
1 《糾弾》
1 《失脚》
1 《血清の幻視》
2 《ドビンの拒否権》
1 《論理の結び目》
3 《謎めいた命令》
2 《至高の評決》
2 《覆いを割く者、ナーセット》
2 《時を解す者、テフェリー》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
2 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (29)-
一目見ただけでは、そこまで変わっていないと思われるかもしれません。実際には全くそんなことはないのですけどね。《覆いを割く者、ナーセット》の登場により、イゼットフェニックスや青赤ストームのようにキャントリップに重きを置いたデッキは立ち位置を悪くすることになりました。《タルモゴイフ》や《不屈の追跡者》といった重めの脅威は(そもそも強力だったわけでもありませんが)《時を解す者、テフェリー》のおかげでもはや使い物にならなくなってしまいました。
この2枚は環境を完全に変えましたね。先に述べたようなデッキが減っただけでなく、以前微妙だったデッキ(たとえば、イゼットフェニックスに不利だったデッキ)が再びいいポジションになっていたかもしれません。
青白コントロールを使うプレイヤーはかなり増えましたし、Magic Onlineのモダンリーグで最も対戦したデッキかもしれません。そのため、私のリストはミラーを意識した調整が加えられています。たとえば、ミラーでの《呪文貫き》は以前はただ及第点なだけのカードでした。たまに刺さることもありますが、多くのゲームはドロー・ゴーで進んでいき、終盤にはただの紙切れになってしまう。そんなことが頻繁に起こっていましたね。
ところが、この新しいリストにとってはそうではありません。プレインズウォーカーの採用率が高まった結果、タップアウトの形でゲームが進むことが増え、そういったゲームでは《呪文貫き》が非常に輝くのです。2ターン目に土地をタップインし、相手の唱えてきた3マナのプレインズウォーカーを《呪文貫き》でカウンター。返しにこちらのプレインズウォーカーを通すというのが理想ですね。
《覆いを割く者、ナーセット》のおかげで《ヴェンディリオン三人衆》も強くなりましたし、サイドボードではなんとか差をつけようと新たなカードを多く見るようになりました。
最も多いのは《聖トラフトの霊》でしょう。相手のプレインズウォーカーに対して強力なものの、私はそこまで好みではありませんね。《瞬唱の魔道士》や《ヴェンディリオン三人衆》にブロックされてしまいますし、サイドボード後はそれらをどかせるような除去をあまり入れていないのです。言うまでもなく、青白コントロールのミラーマッチで序盤に《流刑への道》を打ってしまうと致命傷になりかねませんしね。
その代わり、別のお勧めカードがあります。それは『モダンホライゾン』で状況が大きく変わることになったものの、さらに立ち位置が良くなったとさえ思えるカードーーー《僧院の導師》です。先に述べた通り、サイドボード後は除去を十分に残していることはありませんし、残しているとしても《ドビンの拒否権》で守ることができます。そうでなくても、対応して呪文を1、2個唱えてしまえば十分ですね。そして相手が除去を持っていなければ、すぐさま手に負えないことになります。
《僧院の導師》にはもう1つ、大きな利点として、他のマッチアップでの強さが挙げられます。ほとんどのプレイヤーはサイドボード後に除去を残そうとしませんから、無限にトークンを生み出すことができ、クリーチャーデッキ全般(ドレッジでさえ)に対しかなり役立つカードです。
非常に面白いと感じたのは、(私を含む)全てのプレイヤーが《精神を刻む者、ジェイス》の枚数を減らしているという事実です。マジックの歴史で最も強力なカードの1枚とはいえ、理に適っていると感じましたね。
《ドビンの拒否権》と《否認》についても少し触れておきましょう。最初は《否認》の方が間違いなく優れていると考えていました。《ドビンの拒否権》の利点はさほど重要ではないように思えましたし、色拘束が問題になることも多々あります。《廃墟の地》を4枚採用しているうえに、2ターン目に《島》が2枚なんてこともありますからね。しかし実際に使ってみたところ、ミラーであまりにも重要なため、《ドビンの拒否権》の採用は必要不可欠だと気づきました。他には、アドグレイスの《否定の契約》や青赤ストームの《差し戻し》などもありますね。
青白コントロールを強化するだろう……と思っていたカードが刷られることで、実際にはそのアーキタイプが弱体化しているというのは面白いですね。主にミラーマッチのために採用せざるを得ないのですが、他のマッチアップにおいては弱くなっているのです。
面白い軸の構築
『モダンホライゾン』の話をする前に、皆さんにお見せしたいデッキが1つ。(青白ではなく)ジェスカイカラーで、『モダンホライゾン』の加わった今ではいい選択ではないかもしれませんが、興味を持ってもらえるような面白いデッキだと思いますよ。
1 《山》
1 《平地》
2 《神聖なる泉》
2 《蒸気孔》
1 《聖なる鋳造所》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《沸騰する小湖》
1 《乾燥台地》
2 《天界の列柱》
1 《氷河の城砦》
1 《硫黄の滝》
-土地 (22)- 3 《瞬唱の魔道士》
4 《守護フェリダー》
-クリーチャー (7)-
4 《流刑への道》
4 《血清の幻視》
3 《差し戻し》
2 《稲妻のらせん》
4 《広がりゆく海》
4 《サヒーリ・ライ》
4 《時を解す者、テフェリー》
2 《覆いを割く者、ナーセット》
-呪文 (31)-
2 《呪文貫き》
2 《外科的摘出》
2 《拘留の宝球》
2 《夢を引き裂く者、アショク》
1 《払拭》
1 《機を見た援軍》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《減衰球》
1 《覆いを割く者、ナーセット》
-サイドボード (15)-
《否定の力》などが加わってしまい立ち位置が悪くなってしまったかもしれませんが、少なくとも触れてはおきたい、面白いデッキだと思います。《時を解す者、テフェリー》が完璧に噛み合っていますね。戦場に出し、何かをバウンス。《守護フェリダー》でブリンクして、またバウンス……。それに、コンボを完全に守ってくれます。
新たな敵、そして『モダンホライゾン』
『モダンホライゾン』の中でも最も印象深いカードといえば、《甦る死滅都市、ホガーク》ではないでしょうか。新カードの実力を測るいい機会である、発売直後のモダンチャレンジでは、新たな型のブリッジヴァインがトップ32に10人も入賞していました。非常に由々しき事態です。
新環境最初のトーナメントでは、完全に新しいデッキを持ち込むのではなく、以前から使っていたデッキをちょっとだけアップデートして参加するようなプレイヤーが多いはずです。そのため、この形のブリッジヴァインを持ち込んだプレイヤーは少なかったのではないかと予想されますが……このデッキは非常に強力で、一貫性もあるように思えます。だからこそ頂点へ登りつめることができたのでしょう。
禁止する必要があるのかはわかりませんが、現在積まれている墓地対策カードの量では、間違いなくこの脅威を抑え込むことはできないでしょうね。
参考までに、リストを載せておきましょう。
4 《血の墓所》
4 《血染めのぬかるみ》
3 《汚染された三角州》
2 《新緑の地下墓地》
4 《黒割れの崖》
-土地 (18)- 4 《屍肉喰らい》
4 《墓所這い》
4 《傲慢な新生子》
4 《縫い師への供給者》
4 《恐血鬼》
4 《復讐蔦》
4 《甦る死滅都市、ホガーク》
-クリーチャー (28)-
今デッキを組むとしたら、間違いなくこのデッキへの対策が必要でしょう。デッキを大幅に変える必要すらあるかもしれません。私はFacebookで青白コントロールの調整グループに参加しているのですが、そこでは長い間青白コントロール使いが新たなリスト、そしてアイデアについて毎日語り合っています。その中でも、目を引いたのが以下のリストでした。
2 《平地》
2 《神聖なる泉》
4 《溢れかえる岸辺》
1 《沸騰する小湖》
4 《天界の列柱》
2 《氷河の城砦》
4 《廃墟の地》
-土地 (25)- 3 《瞬唱の魔道士》
2 《ヴェンディリオン三人衆》
-クリーチャー (5)-
4 《流刑への道》
2 《呪文貫き》
1 《糾弾》
1 《血清の幻視》
1 《論理の結び目》
2 《謎めいた命令》
2 《至高の評決》
1 《神の怒り》
1 《拘留の宝球》
3 《覆いを割く者、ナーセット》
2 《夢を引き裂く者、アショク》
3 《大いなる創造者、カーン》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
1 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (30)-
1 《呪詛の寄生虫》
1 《ワームとぐろエンジン》
1 《機を見た援軍》
1 《拘留の宝球》
1 《トーモッドの墓所》
1 《真髄の針》
1 《大祖始の遺産》
1 《ドラゴンの爪》
1 《罠の橋》
1 《マイコシンスの格子》
1 《夢を引き裂く者、アショク》
-サイドボード (15)-
誤解しないでほしいのですが、もちろん好みではない部分もありますよ。とはいえ、独特で面白いアプローチだと思いました。《夢を引き裂く者、アショク》と《大いなる創造者、カーン》は単体でも強力なカードで、(少なくとも《大いなる創造者、カーン》は)メインから採用してもおかしくないでしょう。もしメタゲームが墓地利用デッキを中心にあまりにも歪んでいくなら、これがベストな選択肢かもしれません。
ただ、《大いなる創造者、カーン》にも1つ不満な点があります。モダンでのコントロールデッキの主な強みは、サイド後にそのマッチアップに有効なカードを揃えられること、そしてそれらへのアクセス性が高いことでしょう。ところが《大いなる創造者、カーン》を使っていてはそうはいかないのです。
現在のデッキリスト、そして結論
先に述べていたように、まだあまり新しいカードを使えていませんし、青白コントロールの調整はメタゲームに大きく依存することになりますが……もし明日モダンの大会に出るとしたら、このリストを提出することでしょう。
2 《平地》
2 《神聖なる泉》
4 《溢れかえる岸辺》
1 《沸騰する小湖》
4 《天界の列柱》
2 《氷河の城砦》
4 《廃墟の地》
-土地 (25)- 3 《瞬唱の魔道士》
2 《ヴェンディリオン三人衆》
-クリーチャー (5)-
4 《流刑への道》
2 《呪文貫き》
1 《糾弾》
1 《血清の幻視》
2 《ドビンの拒否権》
1 《論理の結び目》
2 《否定の力》
3 《謎めいた命令》
2 《至高の評決》
1 《拘留の宝球》
2 《覆いを割く者、ナーセット》
1 《時を解す者、テフェリー》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
2 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (30)-
墓地対策
必要と思われる数よりも、1枚多く採用しています。《甦る死滅都市、ホガーク》と戦うにはより多くの助けが必要だと本当に思っていますからね。《安らかなる眠り》は4枚採用していないのですが、《大祖始の遺産》と《夢を引き裂く者、アショク》は他のマッチアップでも採用できますし、青白コントロールのサイドボードの枠は非常にギリギリですからね。
2枚の《否定の力》
《否定の力》は2枚だけ採用しています。驚く人も多いかと思いますが、世間の評判ほど強いカードとは思っていませんからね。自分のターンにはマナコストを支払わなければいけませんし、《ドミナリアの英雄、テフェリー》から唱える《ドビンの拒否権》には劣ってしまいます。
そうは言っても非常に強力な効果ではありますし、かなりの枚数を掘ることができるデッキですから、アクセスできるようにしておきたいですね。
《糾弾》?それとも《失脚》?
他のカードは非常に標準的なものですし、説明も不要でしょう。唯一触れておきたい点としては、この《糾弾》か《失脚》かの問題ですね。どちらも同じ用途の似たカードですが、メタゲームによってどちらが強いのかは変わってきます。
《失脚》は5色人間や《硬化した鱗》親和といったデッキに対して強いカードです。相手のクリーチャーはすぐ除去したいですし、《帆凧の掠め盗り》で《糾弾》を見られていたら、相手は攻撃してこないかもしれません。その一方、《糾弾》は《恐血鬼》や《復讐蔦》などに有効なカードですから、今はこちらを優先していますね。
さて、今回はここまでになります。最後まで読んでいただきありがとうございました。
ペトル・ソフーレク (Twitter)