USA Standard Express vol.150 -手繰りよせた絆、掴む栄光-

Kenta Hiroki

みなさんこんにちは。

先週末は、初となるMTGアリーナを使ったミシックチャンピオンシップⅢが開催されました。マジック・プロリーグ(MPL)選手32名と挑戦者に選ばれた36名が競い合い、どの勝負もレベルが高く見ごたえがありました。

今回の連載では、そんなミシックチャンピオンシップⅢの入賞デッキを見ていきたいと思います。

ミシックチャンピオンシップⅢ
歴史に残るトップデッキ

2019年6月22-23日

  • 1位 Simic Nexus
  • 2位 Esper Heroes
  • 3位 Esper Heroes
  • 4位 Mono Red

トップ4のデッキリストはこちら

Kai Budde選手Raphael Levy選手など、非常に豪華な参加者が集った本大会。優勝を果たしたのは、厳しい予選を勝ち抜き、ダークホースとして注目を集めていたMatias Leveratto選手でした。Simic Nexusを巧みに操り、《運命のきずな》をトップデッキして逆転勝利を掴みとり会場を沸かしました。Simic NexusはEsper Controlに強いデッキで、今大会では有力な選択肢のひとつだったようです。

また、MPL選手の多くがEsper ControlやEsper Heroesを選択していました。Esper Heroesにはプレインズウォーカーや《第1管区の勇士》など優秀なクリーチャー、除去、ハンデスと揃っており、様々な大会で勝ち続けていることが人気の理由です。

対策が厳しく、今大会では少数だったMono Redが勝ち残っていたのも印象的でした。

ミシックチャンピオンシップⅢ デッキ紹介

「Simic Nexus」「Esper Heroes」「Esper Control」「Mono Red」

Simic Nexus

Esper Controlとの相性の良さから、メタ的に有利な選択肢とされていたSimic Nexus。クロックが遅く《荒野の再生》の処理が難しいEsper Controlには強いものの、《時を解す者、テフェリー》に加えクロックのあるEsper Heroesには不利なマッチアップとされていましたが、Matias Leveratto選手は準決勝と決勝で勝利しています。

現環境では、対策カードも《古呪》などプレインズウォーカー対策に集中しており、《屈辱》などエンチャント対策が少ないのも追い風です。

《時を解す者、テフェリー》の影響で《荒野の再生》が機能しにくいのも事実ですが、同時にカウンターを採用したデッキが減少傾向にあり、《荒野の再生》《運命のきずな》などキーカードが通りやすくなっています。

☆注目ポイント

爆発域一瞬無神経な放逐

旧環境ではアグロの猛攻に苦戦していましたが、《爆発域》によって相性が改善されています。それだけでなく《爆発域》は、このデッキにとって厄介な《時を解す者、テフェリー》《覆いを割く者、ナーセット》などに対する回答にもなります。

ほかにも、《一瞬》《無神経な放逐》といったカードがメインから採用されており、《時を解す者、テフェリー》《覆いを割く者、ナーセット》を意識していたことが分かります。

世界を揺るがす者、ニッサ楽園のドルイド生体性軟泥

《世界を揺るがす者、ニッサ》も、《時を解す者、テフェリー》など相手のプレインズウォーカーに対してプレッシャーになります。サイド後は、《楽園のドルイド》や追加のフィニッシャーである《生体性軟泥》も加わり、ミッドレンジプランへと移行していきます。

Esper Heroes

Esper Controlを選択したプレイヤーの方が多かったのですが、最終的にプレイオフにまで勝ち残ったのはEsper Heroesでした。

トップ4入賞を果たしたBrad Nelson選手とKai Budde選手の2名のプレイヤーが、《精鋭護衛魔道士》《人質取り》《聖堂の鐘憑き》よりも優先して採用しており、一部を除いてほぼ同様のリストを使用していました。

ミッドレンジ寄りのEsper Heroesは、Esper Controlと異なり《第1管区の勇士》によるプレッシャーがある分Simic Nexusに強く、プレインズウォーカーを処理しやすくなるのでミッドレンジとのマッチアップで有利です。しかし、《ショック》など軽い除去で落ちてしまうので、多くの挑戦者が選択していたIzzet Phoenixとのマッチアップは若干不利が付きます。

☆注目ポイント

精鋭護衛魔道士

Mono Redに対しては《聖堂の鐘憑き》の方が効果的ですが、《精鋭護衛魔道士》《戦慄衆の指揮》を有効に使うためのライフをゲインしつつアドバンテージを稼ぎ、回避能力持ちなのでプレインズウォーカーにプレッシャーをかけやすいのが魅力です。

人質取り屈辱

《人質取り》《ハイドロイド混成体》を使うBant系のデッキに特に有効です。ミラーマッチでも相手の《第1管区の勇士》を利用することができれば、マウントを取りやすくなります。Brad Nelson選手は、《アズカンタの探索》《荒野の再生》が増加傾向にあることに加えて、Mono Redが《実験の狂乱》をメインからフル搭載していることを加味し、《屈辱》をメインに採用しています。

アルゲールの断血ドビンの拒否権

サイドの《アルゲールの断血》は、《精鋭護衛魔道士》《ケイヤの誓い》によって得たライフをアドバンテージに変換していき、《戦慄衆の指揮》を唱えた後に変身させることで失ったライフを回復することができます。

《時を解す者、テフェリー》の採用率が高い現環境では、カウンターの信頼度が落ちていますが、同型の《戦慄衆の指揮》や今大会を制したSimic Nexusとのマッチアップを考慮すると、最低限《ドビンの拒否権》を数枚サイドに採用しておきたいところです。

Esper Control

プレイオフには残らなかったものの、多くのMPL選手が選択していたのでご紹介していきたいと思います。

2種類のテフェリーに《覆いを割く者、ナーセット》《戦慄衆の指揮》などエスパーカラーの強力なカードが詰め込まれており、《第1管区の勇士》の代わりに《ケイヤの怒り》がメインから採用されています。《アズカンタの探索》も採用することで、より長期戦を意識した構成となっています。

☆注目ポイント

ケイヤの怒り聖堂の鐘憑き

Gruul MidrangeやBant Midrangeが中心の現環境ではスイーパーが強く、《ケイヤの怒り》をメインから採用することで1ゲーム目から有利にゲームを進めることができます。また、序盤を凌ぐためにタフネスが4と固い《聖堂の鐘憑き》が優先されています。

アズカンタの探索

《アズカンタの探索》《屈辱》などが環境から減少したことで処理されにくく、一度変身することで強力なアドバンテージ源として機能します。手札に加える効果なので、《覆いを割く者、ナーセット》の影響を受けないのもこのカードの強みです。

夜帷の捕食者

サイドの《夜帷の捕食者》Esper同型用の秘密兵器で、《ケイヤの怒り》などスイーパー以外では対処されにくく、多くの場合スイーパーはサイドアウトされるので、信頼あるフィニッシャーとして活躍します。

Mono Red

環境的にMono Redに対するガードが固く、《聖堂の鐘憑き》やサイドから投入される《黎明をもたらす者ライラ》を乗り越えるのが困難なため、選択していた人は少数だったようです。最終的に結果を残したのは、《実験の狂乱》をメインからフル搭載した中速寄りの型でした。

《実験の狂乱》《炎の職工、チャンドラ》《舞台照らし》といったアドバンテージを稼ぐ手段が豊富で、ロングゲームでも息切れすることが少なくコントロールやミッドレンジとも渡り合える構成です。

☆注目ポイント

実験の狂乱炎の職工、チャンドラ

最近では、《実験の狂乱》《炎の職工、チャンドラ》の両方がメインから採用されたリストが主流になっています。多くのリストは2枚ずつの採用でしたが、Shahar Shenhar選手は《実験の狂乱》をメインから4枚採用していました。

火による戦い

最も注目するべき点は、サイドの《火による戦い》にあります。《聖堂の鐘憑き》《黎明をもたらす者ライラ》といった厄介なクリーチャーを処理しつつ、マナが余る中盤以降はエンドカードとしても機能する便利なスペルです。

総括

『基本セット2020』のリリースも迫っており、現環境のスタンダードも終盤を迎えました。占術ランドの再録や新たに収録される色対策カードなどが見られ、環境が変化することが予想されます。対抗色の占術ランドは、Izzet PhoenixやBoros、Simicなど2色の対抗色デッキの安定性の向上に貢献するので、どういった活躍をみせてくれるのか楽しみですね。

USA Standard Express vol.150は以上となります。

それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら