Translated by Ryosuke Igarashi
(掲載日 2019/07/23)
はじめに
“Meet me on the Horizon, at the point of no return”
これはEDC(Electric Daisy Carnival)というフェスで流れた中でも今気に入っている、Andrew RayelによるHorizon (feat. Lola Blanc) の一節なんだが、『モダンホライゾン』ドラフトをするときはいつもこの曲を聴いている。この曲とドラフトに何の関係が?なんて思っているかもしれないけど、何か関係があるわけではないよ。ただ同じ名前を冠しているもんだから、触れておく価値はあるだろうと思ってね。
『モダンホライゾン』ドラフトはこれまで遊んできた中でも屈指の面白さだ。とんでもなくぶっ壊れたカードがないからね。爆弾レアも大抵は対処できるから多くのゲームは健全に進んでいき、マジックのスキルを鍛えることができる。それに加え『モダンホライゾン』ドラフトでは、特定の戦略に固執することなく、多くの種類のアーキタイプをドラフトすることができるんだ。
強い色、そして各色トップ5コモン
ランク外:白
俺からのアドバイスだが……この色はやめておけ!間違いなくこの環境で最弱の色だ。白いカードを採用することがあったら、3色目としてタッチしているときだろう。俺は滅多に白を主体としたデッキは組まないね。白のコモンは非常にカードパワーが低いと思っている。
最も優秀なコモンは《変容の軍勢》で、続いてタッチのしやすい《超現実的決着》だ。まあ《金切るときの声》や《慈悲深きセラ》のような非常に強力なカードでも引かない限り、白を取り続けようとは思わないね。
今紹介したトップコモン2種をピックして、部族デッキのサポートとして白がかなり役に立ったようなドラフトも何回かは見たことがある。とはいえ、しっかりしたデッキを組むには複数枚はピックしておかねばならない。《持久スリヴァー》や《叶えられた祈り》が輝くこともあるが、それでは不十分だろう。
では最後に、『モダンホライゾン』ドラフトの白に一言……また今度遊ぼうな!
4位:赤
さて、白とかなりの差をつけて4位は赤だ。優秀な色たちからもまたかなりの差をつけられてはいるものの、だからといってサポートカラーとしても弱いなんてことはない。強力な3色……緑、青、黒と組み合わせて使っているよ。
赤は2色目として非常に優秀で、《ボガーダンの龍心》と《山羊盗り》や、緑のカードではあるものの《春花のドルイド》と《炎血の精霊》(この環境にはタフネスが2のクリーチャーが山ほどいるんだ)といった素晴らしいコンボも存在している。
惜しくも選外となったカードとして、《多角ミノタウルス》と《炎の拳》を挙げておこう。赤青のデッキをドラフトしていて、なおかつ《多角ミノタウルス》のために大量のドロー呪文を入れてる場合に限るけどね。この環境では戦闘でタフネス3を打ち倒すのが難しく、序盤からかなりのダメージを稼いでくれるんだ。
赤を好んでいる理由としては、素敵なアンコモンの数々だね。《ウルザの激怒》や《復讐に燃えた悪魔》、《炎の稲妻》に《高山の案内人》、《貪欲な巨人》、《頭空スリヴァー》、そして《鉱石鱗の守護者》。見ての通り赤のアンコモンはほとんどが優秀で、それゆえに堅実な色になっている。
3位:黒
赤もいい色だったが、黒はもっといい色だ。大体どの色と合わせてもかなり上手くいくね。唯一この色と組み合わせたくない色はわかるかい?白だよ。
黒のコモンは非常に優秀だ。《変わり身ののけ者》や《暴食するナメクジ》は青黒の忍者デッキ、赤黒の攻撃的なゴブリンデッキのどちらともよく噛み合う。コモン最強の除去、《殺到》もあるね。緑の多色デッキで非常にタッチしやすく、極端に言えばどんなデッキでも採用しやすいカードだ。黒のコモンはほとんどが優秀だといってもいいくらいだね。
アンコモンのカード群も負けちゃいない。《投石攻撃の副官》みたいなカードはデッキの中心にもなるんだ。このカードをピックできたときは、いつもすごく速い赤黒ゴブリンデッキを狙いに行くよ。
さて、みんなランキングは好きだろう?トップ5の時間だ!
青黒「忍術」デッキの《変わり身ののけ者》は惜しかったな。個人的には、このアーキタイプでの優先度は非常に高い。全ての忍者へと繋がるカードなんだ。《巧妙な潜入者》との相性は最高だね。赤黒で組んでも、打点を稼げる上にゴブリンだ!「多相」ってなんて素晴らしいんだろう!
2位:緑
2位は緑だと考えている。この環境はどの試合でもマナカーブ通りに動きたいんだが、緑はマナ加速をもってしてズルい動きを可能にしてくれる。
《霧氷守り》と《春花のドルイド》はその助けになり、中でも後者は《ムラーサのビヒモス》や《炎血の精霊》など様々なカードとのシナジーも見込める。
緑には最強の2マナコモンである《母熊》がいるが、栄えある1位は《吠え象の群れ》だ。カードアドバンテージを得て、2/2の多い環境において巨大なクリーチャーが2体出てきてテンポも取れる……とドラフトで必要なすべてが詰まっている。
1位:青
青のカードを眺めていると、「なんでロマオは緑より青を上位に?」なんて考え始めるんじゃないだろうか。俺がここで青を選んだのは、この環境の全色と非常に相性がいい、というのが理由だ。黒の項目でも言った通り、強力な緑白デッキを組むのは難しいが、青白ならシナジーもありうまく働くデッキを組むことができる。
ありえないと思うかもしれないが、俺は《大クラゲ》が『モダンホライゾン』のベストコモンだと思っている。テンポを得ることもできるし、こちらのクリーチャーをバウンスすることでさらなるカードアドバンテージを得ることもできる。また、Magic Onlineをプレイしているみんなは《締めつける綱》が好みじゃないようだが、俺は違うね。非常に強力なフィニッシャーでありながら、序盤でも活躍するカードだ。
おかしいと思ってくれて構わない。青はベストカラーだし、これがそのトップ5だ。
『モダンホライゾン』ドラフトの5つの掟
『モダンホライゾン』ドラフトの5つの掟:
1 – マナカーブ!
2 – マナカーブ!!
3 – マナカーブ!!!
4 – マナカーブ!!!!
5 – 除去
さて、今回の特別賞であるマナカーブについて話そうじゃないか。この環境で成功するためには、素晴らしいマナカーブが求められる。ここまでマナカーブについてはあまり語ってこなかったものの、非常に重要なことだと思っているから、この5つの掟、そしてマナカーブのことを覚えておいてほしい。この環境には強力な2マナ域が山ほどあるんだ。楽しんでくれよな!
アーキタイプ
赤黒ゴブリン / 《山羊盗り》
攻撃的なデッキを組みたいなら、このカラーリングだ。鍵となるのは《投石攻撃の副官》に《山羊盗り》、《屍肉喰らい》と《ボガーダンの龍心》だね。早い段階で《投石攻撃の副官》をピックできたら、そこからはゴブリンデッキを狙っていくようにしている。このカードは本当にすごくて、戦場に出れば5~6点は易々と削っていく優秀なフィニッシャーでありつつも、《ボガーダンの龍心》の餌を供給し、プレッシャーをかけ続けるんだ。《山羊盗り》と《屍肉喰らい》や《ボガーダンの龍心》のコンボはよく見ることだろう。
このカラーリングで驚かされたのは、《新月の忍者》だ。1/1の小さなクリーチャーが盤面に並んでいるとき、「忍術」で追加の5点を与えられるのは素晴らしい!《イボ眼の魔女》は、《新月の忍者》とは違う手法で手助けしてくれる。ゲームを通してかなりの数のクリーチャーを生け贄に捧げたり相打ちしたりするため、「占術」で未来を予知し、それを変えてくれる彼女は非常に強力だ。
このアーキタイプでは、自分のクリーチャーをそこまで守ろうと思ってはいけない。彼らは大義のため、生け贄となる運命なんだ。こちらのクリーチャーは1/1が多いから、公平なトレードをするなんてことは本当に難しい。《ボガーダンの龍心》を唱えて、オールインだ。もしいないなら全員タップして総攻撃だが……ちゃんと責任は持つこと!1点を与えるためだけに盤面を壊滅させてしまっては元も子もない。戦況を読むんだ!
青黒忍者
この環境で最も強力なカラーリングだろう。回避能力持ちの小型クリーチャーがたくさんいて、こいつらが恐ろしい能力を持った忍者へと変化するんだ。初めてドラフトをしたときには、《フェアリーの予見者》や《変わり身ののけ者》がプレイアブルだなんて信じられなかった。今までのリミテッドに縛られた俺の頭は、1/1のクリーチャーたちが優秀だなんて信じようとしなかったんだ。「こんなの実質1マリガンじゃないか?」……ところが違ったんだ!これらのカードこそデッキの核なんだ。彼らのおかげで、忍者は安全に着地することができるんだからね。
戦略は極めて単純、小さなクリーチャーを忍者に変身させ、次のターンに《煙の覆い》をエンチャントすれば……まるでダイアモンドのように煌めくことだろう。《新月の忍者》と次のターンの《煙の覆い》で13点ダメージ!なんてとんでもないコンボもあるね。
単純明快なこともあり、まさに環境のベストデッキだ。軽いクリーチャー、忍者、除去。1ターン目からゲームが終わるまでずっと厄介なアーキタイプだね。
緑多色
ブラジルには”X-tudo”と呼ばれるサンドイッチがある。これは何種類もの肉、チーズ、野菜にソースを混ぜているもので、“Tudo”という言葉には「全て」という意味が込められている。このブラジル料理を表すのに真にふさわしい言葉と言えるだろう……望むものは何を入れても多分大丈夫、何とかなるだろう、ってね。この緑多色もそんな感じだ。
《春花のドルイド》と《クローサの大牙獣》がいれば、緑を中心とした3~4色のデッキを組むのはかなり容易だ。どんなカードでもデッキに入れられるね。3色目の除去を何枚かタッチしたり、はたまた2色のカードですらタッチしたりと、この2枚を何枚か採用していればマナ基盤に困ることはないだろう。
緑という色はとんでもない動きも多く、4ターン目に8/8トランプルのクリーチャーが出てきたりもする。俺がマジックを始めてから今に至るまでの間にこのゲームが変わってしまったのかどうかは分からないが、かなり愉快じゃないか。
まとめ
さて、ここまでが『モダンホライゾン』ドラフトに対する所感になる。ミシックチャンピオンシップ・バルセロナ2019に向けて鍛錬の必要があるから、これからもプレイし続けるだろうね。もし何らかの心境の変化があれば、新たな記事を書く機会を得て、この超面白いドラフトについてまたちょっと語ることになるだろう。何か疑問点があれば、俺のツイッターまでメッセージを送ってくれ。可能な限り助けになろうじゃないか。
最後まで読んでくれてありがとう!