Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/07/25)
風景の変容
『基本セット2020』が加わった新環境になってから数週間が経ちましたが、このセットもスタンダードに多大な影響を与えていることが明らかになってきました。
バント《風景の変容》デッキにとって新環境の2週目は鮮烈なものとなりました。あのルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargas(通称LSV)の手によってグランプリ・デンバー2019を制覇したのです。その他にも《風景の変容》を使ったデッキがその週に開かれた各所の大会で好成績を収めており、今倒すべき相手であることは確かでしょう。
デッキとカード選択
《風景の変容》が活躍した第2週、私はSCG Openのチーム構築戦に参加し、青単を選択しました。ロス・メリアム/Ross Merriamが第1週のSCG Openで青単を使って準優勝しており、現在のメタゲームに合致したデッキのひとつではないかと思います。
本記事では、私が現在使っているデッキリストの分析、主要なマッチアップのサイドボーディング、スタンダードの今後の3点について解説します。まずはデッキリストからご覧いただきましょう。
-土地 (20)- 4 《フェアリーの悪党》
4 《セイレーンの嵐鎮め》
2 《プテラマンダー》
2 《幽体の船乗り》
4 《マーフォークのペテン師》
4 《大嵐のジン》
-クリーチャー (20)-
カード選択(メインデッキ)
《フェアリーの悪党》
みなさんがデッキリストを見てまず気になったのは、今回再録された《フェアリーの悪党》ではないでしょうか。一般的にはカードパワーが低いと思われるクリーチャーですが、実はこのデッキにとても噛み合っているカードなのです。首尾よく《霧まといの川守り》と入れ替わった形であり、ドローできるメリットがつきました。ドローする目的なら、まずは《幽体の船乗り》を4枚採用した方が良いのではないかと思われるかもしれません。これらは同じドロー効果を持ちますが、実際には大きく性質が異なるカードたちなのです。
まず、個人的に《見張りによる消散》が好きなカードではないので、海賊クリーチャーの枚数をデッキ内に確保する必要がありませんでした。また、青単は土地が20枚しかないデッキであり、通常は土地が2~3枚の状態で戦うことになります。したがって、《幽体の船乗り》の能力に必要な4マナを確保できている頃にはゲームが長引いてしまっているため、青単が押されている展開になっていることが多いのです。対して《フェアリーの悪党》はたった1マナでドローできる可能性があり、ある程度相手にもプレッシャーをかけられます。これこそが私が《フェアリーの悪党》を好き好んで採用している理由なのです。
《翼ある言葉》
数少ないメインデッキの新入りとしては、他に《翼ある言葉》があります。ただ、《航路の作成》より優れているかは結論が出ていません。最初に唱えるクリーチャーが飛行を持たない《マーフォークのペテン師》になることもあるからです。戦闘前にドローすれば《執着的探訪》や《大嵐のジン》のパワーを上げる《島》を引き込める可能性があるので、そういった状況で手札を捨てたくないのならば《翼ある言葉》に軍配が上がるでしょう。どちらのドロー呪文も質が高いので、明確にどちらが良いとは言えないのが現状です。
《呪文貫き》と《潜水》
メインデッキで最後に言及しておきたいのは、4枚の《呪文貫き》と3枚の《潜水》です。《呪文貫き》は、絶対に打ち消さなければならない《時を解す者、テフェリー》を対処するために4枚必須だと考えています。《潜水》は《丸焼き》への唯一の対抗策です。《丸焼き》は、赤系のデッキがテフェリーデッキと戦うためにサイドボードに複数枚採用するようになってきているのですが、偶然にも青単への最善の解答になっています。こういった経緯があるので、《潜水》が3枚未満の構築は考えられません。
カード選択(サイドボード)
《紺碧のドレイク》
続いてはサイドボードの解説になります。『基本セット2020』から青単は優秀なサイドボード候補を獲得しました。《紺碧のドレイク》は紛れもなく大きな収穫であり、以前は相性の悪かった赤単との形勢を一変させました。赤単は《紺碧のドレイク》を対処する手段が全くないので、このクリーチャーに《執着的探訪》をエンチャントすれば勝ててしまうゲームもあるほどです。
《霊気の疾風》
次にご紹介するのは《霊気の疾風》です。現在のデッキリストでは2枚ですが、すぐに4枚になることでしょう。様々な構成の恐竜デッキを見かける機会が増えましたし、《変容するケラトプス》はこのうえなく対処に困るクリーチャーです。《変容するケラトプス》がスタック上にいるという条件付きですが、青単でこのカードを対処できるのは《霊気の疾風》しかありません。着地する前に山札に戻すことができれば、相手をテンポで押せることでしょう。総じて用途の広いカードであり、サイドボード後のオプションが増えました。デッキを大きく強化することになった新カードです。
《物語の終わり》
サイドボードに入った新カードの中から最後に解説するのは《物語の終わり》です。私がこのカードを2枚採用したのは、主に2つのマッチアップ――ネクサスとエスパーと戦うためでした。
《物語の終わり》はネクサスと戦ううえでキーカードになります。青単にとって厄介な《爆発域》の起動型能力を打ち消せるからです。《潜水》のようなクリーチャーを守る呪文では無力であることを一因として、青単は前環境でめっきり数を減らしていました。しかし今や《物語の終わり》で対処できるようになり、タイミングを見計らって《荒野の再生》の誘発型能力も打ち消すことも可能です。
エスパーとの一戦では、打ち消せる対象が複数あり、気がかりなカードをすべて対処することができます。具体的には2種のテフェリー、《ケイヤの誓い》、《黎明をもたらす者ライラ》です。このマッチアップでこれだけ汎用性があるのですから、サイドボードに2枚とるには十二分な理由があると言えます。
サイドボードガイド
赤単
対 赤単
バント《風景の変容》
対 バント《風景の変容》
エスパー
対 エスパー
ボロスフェザー
対 ボロスフェザー
オルゾフ吸血鬼
対 オルゾフ吸血鬼
ジャンド恐竜
対 ジャンド恐竜
さいごに
青単はTier1に舞い戻ったと言える仕上がりになったと思います。ローテーション前にもっとスタンダードを楽しんでおきたいですね。今の環境は比較的未熟であり、青単のような既存のデッキのなかにはイノベーションの余地を残しているものがあります。ぜひみなさんも色々な可能性を検討してみてください!
カルカノ (Twitter)