これからのモダンの話をしよう

Immanuel Gerschenson

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2019/08/02)

マジックニュース7

みなさんこんばんは、7時になりました。マジックニュース7の時間です。司会は私、イマニュエル・ゲルシェンソン/Immanuel Gerschensonでお送りします。さて、本日は特別ゲストをお招きしております。マジックで最も人気のフォーマット、モダンさんです。

イマニュエル:早速ですが、モダンさん。これからどのような活動をされていくのでしょうか。《甦る死滅都市、ホガーク》が受け入れがたいほどの支配力を見せる中で、禁止を叫ぶ声も多く耳にします。2ターン目にはたった2~3マナでパワー10以上を盤面に並べますよね。

甦る死滅都市、ホガーク

モダン:イマニュエルさん、これまでにどのように対処してきたか思い出してみてください。今はただ待ち、環境が適応するのを待つべきです。

イマニュエル:しかしモダンさん、本当にそれで解決されるのでしょうか。すでに私たちはある程度の時間見守ってきましたが、結果は《甦る死滅都市、ホガーク》を使うか、大量の対策カードを詰め込むかになっただけです。直近のプレミアイベント、ミシックチャンピオンシップ・バルセロナ2019においても、最も使用された枚数が多かったのは《虚空の力線》でした。それだけにとどまらず、私たちの愛する巨大生物、ホガークはミラーマッチ以外での勝率が最も高いという事実もあります。

虚空の力線

モダン:なるほどなるほど。確かにあなたのおっしゃる通り、ホガークの支配力は見過ごせないものがあります。ですが、私としましても2か月足らずで期待の新人を手放したくありません。必ず禁止以外の道もあるはずです。お願いですから、ホガークを私から奪い取らないでください!

モダン:仮にイマニュエルさんのおっしゃる通りにホガークを禁止にした場合、《弧光のフェニックス》が勢力を増すおそれがあります。場合によっては、さらに恐ろしい事態になります――ウルザトロンが本領を発揮してくるのです。全てのプレイヤーがフェニックスかウルザトロンを使っている状況を想像してみてください。どんな結末が待っていると思いますか?プレイヤーたちが混乱に陥って、さらなる禁止で対応するのではないですか?環境にはデッキパワーが非常に高いものが多く存在し、その中のひとつが圧倒的な支配力を見せるたびに排除しようとする。突出したデッキを更生させるより良い方法は本当にないのでしょうか?

弧光のフェニックス解放された者、カーン

禁止一辺倒の未来

モダンを紙のマジックに導入する際、ウィザーズはモダンを(平均して)4ターンのフォーマットにすると宣言した。そして多くのプレイヤーはルールの壁を壊そうとし、成功した暁には禁止行きになるカードも出てくる結果となった。しかし、モダンを健全に保つにはルールの壁を破るカードを禁止にするしか方法はないのだろうか?

俺が思うに、禁止は唯一無二の解答ではないし、正しいやり方でもない。今までもこれからもモダンの健全なルールを破ろうとする新たなデッキが出てくるからだ。今現在は型破りなカードであるホガークを禁止する要請が強いが、『モダンホライゾン』の発売前を思い出してみて欲しい。フェニックスやドレッジは禁止の鉄槌を受けるべきだ、という意見が当時はあったはずだ。

巨像の鎚

試しにドレッジ、イゼットフェニックス、ホガークがいないモダンを少し想像してみよう。確実にウルザトロンが飛びぬけて強いデッキとなり、禁止しろという声が上がるはずだ。ではさらに推し進めてウルザトロンまで禁止の対象にしたら、その先に何が待っているだろうか?確固たる根拠はないというのが正直なところではあるが、《献身のドルイド》《オパールのモックス》《最高工匠卿、ウルザ》あたりが次なる標的に近しい存在となるだろう。このように繰り返していけば、モダンのルールを破るデッキを絶滅させることができる。しかし、そんなことをして面白いフォーマットになるのだろうか?

献身のドルイドオパールのモックス最高工匠卿、ウルザ

禁止以外の道

俺はモダンがパワフルで楽しいものであって欲しいと思っている。しかし2か月単位で禁止を出しているようでは、面白いものには全くならないだろう。環境を健全にするためには、禁止という手段に頼るのではなく、制限という方法も使うべきだ。制限で十分であることも多いだろうし、この方法ならば同時にモダンの楽しさやパワフルさも維持できるはずだ。

たとえばホガークが1枚しか採用できないとしたら、今ほどの恐怖を感じるだろうか?答えはNoだろう。《魔力変》が1枚しか使えなかったら《氷の中の存在》《弧光のフェニックス》は今の強さを維持できるだろうか?こっちも答えはNoだ。

魔力変

昨今のウィザーズは色々とテストしているようだが、禁止以外の方法として制限を試さない理由はないはずだ。もし俺に決定権限があるなら、おそらく現在の禁止カードの大半を禁止解除するだろう。いくつかは禁止にしたままにするが、その多くを制限にするのだ。そして数か月の猶予を与え、プレイヤーたちがどんな行動に出るのかを様子見する。

このアプローチにより環境はより開放的になり、群を抜いて強いデッキが存在することなく、多種多様なデッキが横並びになると思う。現にヴィンテージでは機能している方法なのだから、モダンで機能しない理由があるだろうか?

Black LotusAncestral RecallTime Walk

他のトレーディングカードゲームにおいても制限という手段は機能しているし、何らの不満も耳にしたことがない。たとえば遊☆戯☆王には禁止カード、デッキに1枚まで採用できる制限カード、デッキに2枚まで採用できる準制限カードというカテゴリが存在している。

仮に《欠片の双子》を準制限カードという扱いにすれば、往年の双子コンボが復活することも視野に入ってくるだろう。たった2枚のカードさえあればこのデッキは節度ある強力なデッキとして蘇るのだ。

欠片の双子欠片の双子

禁止は常に奥の手であるべきだと思う。平和で健全な環境に多大なる害をもたらすカードにだけ、禁止という制裁を加えるのだ。

まとめ

ウィザーズに願うのは、禁止一辺倒にならず、試験的に数枚のカードを制限にしてみることだ。この方法は有効に機能すると思うし、プレイヤーたちは購入したばかりのデッキが使えなくなる恐怖におびえずに済む。とにかく数か月だけでも試してみて欲しい。何も失うものはないし、上手くいけば多くのプレイヤーを幸せにすることができるのだから。

それだけでなく、プレイヤーのみなさんにも現在の禁止リストを今一度確認して欲しいと思っている。定期的にモダンを嗜んでいるプレイヤーならば、誰しもが制限で問題ないカードをパッと2枚ほど思いつくはずだ。

俺の考えに対して何か意見やコメントがある人は、気兼ねなく教えて欲しい。モダンが最高のフォーマットになるポテンシャルを秘めていることを俺は信じて疑わない。ルールを破るカードたち、それぞれに適した処遇を見つけていく責任が俺たちにはあるのだ。

では本日はここまで。真夜中までニュースをお送りしました。

イマニュエル (Twitter)

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Immanuel Gerschenson イマニュエルは構築戦を得意とするプレイヤーで、グランプリ・マドリード2014 (モダン)、そしてグランプリ・セビリア2015 (スタンダード) という2つの大会で頂点をつかみ取った、オーストリア屈指の実力派。 プロツアー『イクサランの相克』ではサイドに《遅延》を採用した独特のトラバース・シャドウを手に、構築ラウンドを9勝1敗で駆け抜け14位に入賞。さらにオーストリア選手権2018では準優勝に輝き、オーストリア代表の座を手にするとともに、ゴールドレベルを手中におさめた。 Immanuel Gerschensonの記事はこちら