USA Standard Express vol.153 -スタンダードを征服する吸血鬼軍-

Kenta Hiroki

みなさんこんにちは。

早いもので『基本セット2020』がリリースされて1ヵ月が経ちますが、現環境のスタンダードを楽しんでいますか?

今週末は第14期スタンダード神挑戦者決定戦も開催されるので、まだまだ現環境のスタンダードは続きます。

Red Bull Untapped
Bant Scapeshiftの圧倒

2019年8月4日

  • 1位 Bant Scapeshift
  • 2位 Bant Ramp
  • 3位 Bant Scapeshift
  • 4位 Esper Hero
  • 5位 Orzhov Vampire
  • 6位 Jund Dinosaur
  • 7位 Bant Scapeshift
  • 8位 Naya Feather
Lino Burgold

Lino Burgold

tournamentcenter.eu

トップ8のデッキリストはこちら

Red Bull UntappedはRed Bull社がスポンサーする賞金制の大会で、今回はMTGアリーナを用いたスタンダードで開催されました。

プレイオフには現環境のトップメタであるBant Scapeshiftが3名勝ち残り、優勝もBant Scapeshiftとなりました。ほかにはBant RampやOrzhov Vampire、Jund Dinosaur、Naya Feather、Esper Heroなどが勝ち残っていました。

Red Bull Untapped デッキ紹介

「Bant Scapeshift」「Esper Hero」

Bant Scapeshift

グランプリ・デンバー2019でブレイクを果たしたBant Scapeshiftは、今大会でもプレイオフに3名、そして優勝とそのパフォーマンスが本物であることが証明されました。

《風景の変容》+《死者の原野》コンボはデッキのフィニッシャーとして非常に強力で、コンボに頼らずとも中盤以降のランプスペルはすべてゾンビトークンの出るおまけつきと粘り強さもあります。デッキの内容が明らかとなり意識され始めている現在でも結果を残しています。

☆注目ポイント

時の一掃

除去枠に採用されている《時の一掃》は、自軍の《ハイドロイド混成体》をバウンスしつつ相手の場を更地にすることでさらにアドバンテージを稼ぐことができます。メインから採用することで、VampireやDinosaurといったアグロデッキに押し切られることも少なくなり、相性の改善が見られます。同型においてもゾンビトークンを対策できるのがポイントで、《時を解す者、テフェリー》の能力によってインスタントスピードでもキャストできるようになります。

拘留代理人夢を引き裂く者、アショク

同型戦を意識し、《拘留代理人》のほかに《夢を引き裂く者、アショク》がサイドに採用されています。常在型能力によって《風景の変容》コンボも含めて相手の行動を著しく制限します。基本的に同型戦のみで使えるプレインズウォーカーで、受けが狭いのがネックではありますが、Bant Scapeshiftは現環境のトップメタなので専用のサイドを用意することは理に適っています。

変容するケラトプス

追加の勝ち手段としてサイドに採用されている《変容するケラトプス》は、Mono Blue Tempoだけでなく《時を解す者、テフェリー》《拘留代理人》で対処されないので同型でも活躍が期待できます。

Esper Hero

旧環境からコンスタントに結果を残し続けているEsper Heroも勝ち残っていました。

Bant Scapeshiftの隆盛によりメイン、サイドボードともに環境の変化に対応しています。Bant Scapeshiftは除去が少ないので《第1管区の勇士》でプレッシャーをかける動きが強く、現在はコントロール型よりもHero型が主流になっています。

☆注目ポイント

拘留代理人漂流自我

Bant Scapeshiftのゾンビトークンを一掃できる《拘留代理人》がメインから4枚も採用されており、サイドにも《死者の原野》を追放する《漂流自我》がフル搭載されているなど対策が徹底しています。《運命のきずな》デッキも増えてきたので、《屈辱》も主要の除去として再評価されています。

以前の環境と比べるとコントロールやミッドレンジが減少傾向にあり、VampireやDinosaurなどアグロデッキとのマッチアップを考慮したのか《戦慄衆の指揮》の採用は見送られています。

秘本綴じのリッチ

メインには見慣れないクリーチャーの姿も確認できます。《秘本綴じのリッチ》は接死、絆魂持ちなのでブロッカーとしてもそこそこ機能し、ルーター能力は相手によって不要なカードを入れ替えることができます。

Standard MCQ #11935041
吸血鬼がプレイオフの半数を占める

2019年8月5日

  • 1位 Boros Feather
  • 2位 Orzhov Vampire
  • 3位 Esper Hero
  • 4位 Esper Hero
  • 5位 Izzet Phoenix
  • 6位 Orzhov Vampire
  • 7位 Orzhov Vampire
  • 8位 Orzhov Vampire

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先週末にMOで開催されたMCQでは、猛威を振るっていたBant Scapeshiftの姿はプレイオフにはなく、Orzhov Vampireが半数以上プレイオフに勝ち残るなどメタに動きが見られました。

Vampireはクロックも速く、白黒の組み合わせの強みのひとつとしてサイドボードの豊富な選択肢があります。現環境のTier1デッキとして、Bant Scapeshiftと並んで活躍しているのがこのデッキです。

Standard MCQ #11935041 デッキ紹介

「Boros Feather」「Orzhov Vampire」

Boros Feather

今大会で見事に予選を通過したBoros Featherは旧環境でも存在しており、『基本セット2020』によってさらに強化されました。

《果敢な一撃》《無謀な怒り》《贖いし者、フェザー》で使い回すことによってアドバンテージを稼ぎつつビートダウンしていくデッキで、過去のスタンダードでも活躍したHeroicを彷彿とさせるデッキです。

☆注目ポイント

凱旋の神殿神々の思し召し

再録された占術ランドの《凱旋の神殿》のおかげで、デッキの安定性が向上しました。《神々の思し召し》クロックを単体除去から保護、コンバットトリック、回避能力を付与させたりと用途の多い軽く優秀なスペルです。《第10管区の軍団兵》《贖いし者、フェザー》との相性が非常によく、このデッキにとって一番の収穫です。

高山の月丸焼き

Bant Scapeshift対策としてサイドには《死者の原野》を無力化できる《高山の月》が採用されています。《丸焼き》《時を解す者、テフェリー》《黎明をもたらす者ライラ》などフィニッシャーをわずか2マナで処理できるので、赤を使うのなら必ず採用したいスペルです。

Orzhov Vampire

Orzhov Vampireは、『基本セット2020』から《傲慢な血王、ソリン》《漆黒軍の騎士》を獲得したことで強化されたデッキで、一躍環境のトップメタへと躍り出ました。

《強迫》《害悪な掌握》《灯の燼滅》《黒き剣のギデオン》などサイドボードの選択肢が豊富なのがこのデッキの魅力で、現環境でお勧めのアグロデッキです。

☆注目ポイント

漆黒軍の騎士軍団の副官アダントの先兵

《漆黒軍の騎士》《空渡りの野心家》《敵意ある征服者》といった1マナの吸血鬼クリーチャーが豊富で、それらを《軍団の副官》で強化してプレッシャーをかけていく動きが強力です。除去耐性がありアグロデッキの主力として活躍していた《アダントの先兵》は、吸血鬼なのでこのデッキではさらに強く使うことができます。

傲慢な血王、ソリン薄暮の勇者マガーンの鏖殺者、ヴォーナ

《傲慢な血王、ソリン》このデッキをトップメタに押し上げたプレインズウォーカーで、能力の全てが吸血鬼クリーチャーとのシナジーを前提としているのが特徴です。特に[-3]能力が強く、《薄暮の勇者》のコストを踏み倒すことでテンポ、ハンドアドバンテージを両方同時に獲得することができます。サイド後は《マガーンの鏖殺者、ヴォーナ》も出せるので、ライフに余裕があれば除去や置物対策のようにも機能します。

軍団の最期害悪な掌握

《軍団の最期》は、Bant Scapeshiftのゾンビトークン対策になり同型対策にもなるため、現環境ではメインから採用されてもおかしくないスペルです。サイドにも追加で2枚採用されているなど徹底しており、今大会でScapeshiftが上位に少なかったことも頷けます。

緑と白の脅威が多数存在する現環境において、《害悪な掌握》は非常に優秀な除去として活躍します。《時を解す者、テフェリー》《ドミナリアの英雄、テフェリー》《世界を揺るがす者、ニッサ》《ハイドロイド混成体》《喪心》では除去できない《原初の飢え、ガルタ》など対象は様々です。

総括

風景の変容傲慢な血王、ソリン

多種多様なデッキが結果を残している現環境のスタンダードですが、Red Bull UntappedとStandard MCQの結果から、Bant ScapeshiftOrzhov Vampireのふたつのデッキがトップに君臨していることが分かります。

Orzhov VampireはBant Scapeshiftに強く、サイドボードも強力です。Bant Scapeshift側もOrzhov Vampireなどアグロデッキ対策として《時の一掃》をメインから採用しており、同型に対しても活躍するので今後の主流となることが予想されます。

USA Standard Express vol.153は以上となります。

それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら