新環境を勝ち抜く3つの構築方法

木原 惇希

新環境を戦うヒント

みなさんこんにちは。Hareruya Prosの木原 惇希です。

明日10月4日は待ちに待った新セット『エルドレインの王権』の発売日ですね!新カードは非常に強力で使うのが待ち遠しいです。

王冠泥棒、オーコ王家の跡継ぎ探索する獣

マジックの魅力は数多いですが、僕はローテーション直後のスタンダード環境が最も好きです。ゼロからデッキを組み上げたり、自分が思いもしないような発想のデッキが出てきたり、新環境は新たな出会いに満ち溢れていて本当に楽しいですよね。カードプールはやや狭くなってしまいますが、自分だけのオリジナルデッキを作るチャンスです!

昨今はMTGアリーナの普及により、新規のプレイヤーが増えてきています。スタンダードローテーションを経験したことがないプレイヤーも多く、新しいデッキの可能性は無限大なだけにデッキ構築で悩むプレイヤーもいることでしょう。僕は長年マジックをプレイしているので、その分多くのローテーションを経験しています。その経験から環境初期に勝ちやすいデッキの作り方をサンプルデッキとともに3つ紹介したいと思います。

新環境におすすめのデッキ構築

1:前環境で強かったデッキを踏襲しよう!

1つ目は、前の環境で強かったデッキ(Tier1~2)を新環境に適応させる方法です。

前環境の上位デッキのなかから、ローテーション落ちしたカードが少なく、デッキの核となるカードがローテーション後も使用できるデッキを探し、できるだけデッキの動きはそのままに新カードを足していきます。ここで大事なのはそのデッキの動きとコンセプトを維持できるかどうかなので、多くのカードがローテーション落ちしていたとしても、役割や効果が似たカードがあるのであれば代用可能です。

では今の環境を例に、この構築方法を試してみましょう。まずはアーキタイプを3段階評価してみます。

ボロスフェザー:

第10管区の軍団兵贖いし者、フェザー第1管区の勇士

《アダントの先兵》《無謀な怒り》を失いましたが、赤と白には他にも優秀な2マナ域のカードが多くありますし、デッキ名を冠する《贖いし者、フェザー》も残っています《第1管区の勇士》と多色のカードを多めに採用して、点ではなく面で攻めてみるのも面白いかもしれません。

赤単:

実験の狂乱遁走する蒸気族

《ギトゥの溶岩走り》《ゴブリンの鎖回し》など多くのカードがローテーション落ちしますが、《実験の狂乱》《遁走する蒸気族》は健在なため「高速アグロ」としてデッキコンセプトは維持できそうです

4色ケシス: ×

隠された手、ケシスモックス・アンバー精励する発掘者

日本選手権2019の決勝ではミラーマッチになるほど強いデッキでしたが、デッキの核となる《モックス・アンバー》《精励する発掘者》がローテーション落ちしてしまったためこの方法は使えません

バントスケープシフト:×

風景の変容死者の原野

このデッキもローテーション落ちするカードが少ないものの、デッキの核となる《風景の変容》がローテーション落ちしてしまったので、従来の形では使えません。ですが、《死者の原野》は依然として使えて強力なので、違ったアプローチの《死者の原野》デッキは出てくるかもしれません。

エスパーヒーロー:

第1管区の勇士思考消去時を解す者、テフェリー

ほとんどのカードがローテーション落ちしないので、この方法に適したデッキです。マナ基盤を支えていたチェックランド3種(12枚)を失ったことは大きいですが、弱くなったマナベースに合わせてダブルシンボルのカードを極力採用しないなどカード選択を多少変えるだけで、カードパワーの低下はあまり見られなそうです。

この方法でデッキを作る利点は、元が強いデッキなので極端に弱いデッキになりにくく、デッキ全体の動きを前環境から引き継ぐので、プレイの習熟度を落とさずにデッキを使えるところです。

また、前環境から使い慣れたカードが多いうえにコンセプトも変わっていないのでゲームプランを練りやすいです。相手のデッキの内容が今までにないデッキだとしても、アグロ、ミッドレンジ、コントロールなどのアーキタイプ毎の戦い方はあまり変わりません。ですので、新しいデッキに慣れていない対戦相手とのかけ引き等では前環境から使い慣れたデッキを使った方が対応しやすいので、プレイでも差を付けやすいです。

2:新しいカードを使おう!

2つ目は、新しく収録されたカードをふんだんに使って作る方法です。デッキ全体の75枚のなかに35枚ほど新しいカードを使うイメージです。大型セットには毎回新たなギミックがあり、カード同士の相性もいいようにデザインされています。自分が思う強い動きやコンボを探しながらひたすらカードリストを眺めたり一人回しをしましょう。

一人回しをするときは、仮想敵のデッキリストを頭に入れて対戦相手は常に最高の動きをしてくることを想定して回すことをお勧めします。はじめはほとんど負け続けますが、負けパターンやそのマッチアップで弱いカードが浮き彫りになります。

エッジウォールの亭主殺戮の火金のガチョウ
鼓舞する古参型破りな協力

『エルドレインの王権』には「出来事」 、「一徹」、 「食物トークン」、 「騎士」 「2枚目のカードを引くたび~」など、パッと見で分かりやすいギミックがいくつか用意されています。これらのなかから1つにスポットを当ててデッキを作っていきます。

今回は「食物トークン」にスポットライトを当ててみましょう。

煌めくドラゴン

《煌めくドラゴン》を最初に見たときは、あまりの強さに目を疑いました。素のスペックが6マナ5/6飛行で、条件さえクリアすれば呪禁に加えて毎ターン2枚以上ドローできるため、過去に猛威を振るった《聖別されたスフィンクス》以上の活躍が期待できます!

その条件達成にはアーティファクトが必要となりますが、『エルドレインの王権』には「食物トークン」というメカニズムが用意されています。今回はこのドラゴンを軸に相性の良さそうなカードをひたすら詰め込んで完成させました。

この方法でデッキを作る利点は、とにかく新しいカードを使えることです。一人回しをしながら「このカードは唱えにくい」「このコンボ強すぎ」「土地引かない」「色が出ない」など、試行錯誤してデッキをいじって強くしていくのって楽しいですよね(笑)。真面目な話をすると、最近のカードパワーは凄まじく、新セットのカードは大体強くデザインされています。新セットのギミックやコンセプトに従ってシナジーが多いデッキを作ると強いデッキになりやすいです。

3:誰よりも速く!

3つ目の方法は、高速アグロデッキです。2色ぐらいまで(できれば単色)で新旧カード問わず、低マナでダメージ効率の良さそうなカードをとにかく入れて最速で対戦相手のライフを削りきります。自分のデッキの動きを最優先にして重い除去などは採用せず、ひたすらこちらの脅威を押し付けられるデッキが好ましいです。

今回の新環境であれば、赤単が《実験の狂乱》《遁走する蒸気族》から1マナのカードを連打して対戦相手との膨大なテンポ差を生み出すことができそうです

1マナのカードを大量に連打してから《実験の狂乱》《朱地洞の族長、トーブラン》に繋げて一気に勝ちに行きます。このデッキの展開力は凄まじく、普通のデッキでは2~3ターン目から1ターンに1枚しか呪文を唱えられないので、こちらの脅威に対応される前にゲーム勝つことができます。

この方法でデッキを作る利点は、環境初期は高速アグロデッキに対するマークが一番甘いので、その隙をつけることです。環境初期は洗練されたデッキは少なく、ぎこちない動きをするデッキがほとんどですよね。ほとんどのプレイヤーは新カードを使って上手くアドバンテージを得たり、新しいコンボを作ったり、多くのシナジーを形成することを考えているからです。そんななかで自分だけは対戦相手に最速で勝つことだけを考えているので、テンポ差は体感3倍!!!

環境初期のサイドボードを考えよう!

環境初期はサイドボードを考えるのが一番難しい時期です。時期的にまだTier1と呼べるデッキがほとんど存在しないので、対戦相手が使ってくるデッキの見当をつけづらいからです。そのため、ここでお伝えするのは大まかな指針になります。

高速アグロへの対策カード(6~9枚程度)

自分の使うデッキが高速アグロに有利かどうかにもよりますが、環境初期は一定数の高速アグロデッキがいるのでしっかり枚数を取りましょう。具体的には1~2マナの除去、ライフを回復するカード、低マナでタフネスの高いカードなどです。

ショック見栄え損ないケイヤの誓い
秘本綴じのリッチ翼の司教

メインボードの相性が悪いと思う相手への対策カード(7~9枚程度)

メインボードを落としやすい分、サイド後はこちらが有利になれるくらいの変更が必要なため、多くの枚数を変更したいですよね。ここで想定するのは特定のデッキというよりもアーキタイプであり、自分の使うアーキタイプが不利だと思うアーキタイプへの対策で構いません。

たとえば、特定のカードを軸にしたコンボデッキが苦手なら《漂流自我》を、打ち消し呪文の入ったデッキに不利なら《変容するケラトプス》を入れるといった具合です。

漂流自我魔女の復讐義賊
耳の痛い静寂変容するケラトプス

色対策カードや限定的な相手への対策カード(0~3枚程度)

色対策カードは限定的な分、強くデザインされているので使える環境ならぜひ使いたいところです。ただし、汎用性が低く使用頻度が低いため、あまり枠を使いすぎないように注意しましょう。

レッドキャップの乱闘夏の帳害悪な掌握
敬虔な命令神秘の論争

これらの指針はあくまで参考程度に考えていただき、自分のデッキに合ったサイドボードを深く考えましょう。サイドボードを考えることでデッキの強みや弱点も理解しやすくなるので、メインボード以上に時間をかけて考えみるのも面白いです。

おわりに

今回は上記3つのデッキ構築論の紹介でした。これらの理論は今回のローテーションだけに限らず、次のローテーションでも適用できると思うので、ぜひ試してみてください

実際にどの構築方法を選択するかは、みなさんの好みで構いません。全てを試してみて自分に合った方法を見つけるのも良いでしょう。ローテーション後にデッキ構築で悩んだら、いずれかの理論を実践すれば新環境で勝ちやすくなるはずです

それではまたどこかで!Good Luck!!!

木原 惇希 (Twitter)

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木原 惇希 木原 惇希は構築戦を得意とするゴールドレベルプロ。環境把握、そしてメタゲームに合わせたデッキ構築に長けており、彼が作り上げるデッキは「キハラワークス」と呼ばれ多くのプレイヤーから信頼を集めている。グランプリ準優勝2回を筆頭に構築戦の戦績が目立つものの、苦手なフォーマットがないオールラウンダーで、リミテッド戦で開催されたグランプリ・京都2017でも準優勝に輝いている。 木原 惇希の記事はこちら