Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/09/27)
バント石鍛冶を研究して
私は《石鍛冶の神秘家》の解禁以来、バント石鍛冶をさまざまな構成で試してきました。メタゲームは固まりつつあり、倒すべきデッキがウルザソプター、タイタンシフト、バーン、《死の影》デッキであるという印象を受けています。そして、以下のデッキリストは私が行き着いたものであり、Magic Onlineのリーグ戦で5-0を2回経験しました。
バントカラーである理由
私がバントカラーで気に入っている点は、《極楽鳥》や《貴族の教主》によって他の《石鍛冶の神秘家》デッキにマナアドバンテージを取れることです。従来、マナクリーチャーは序盤は強いが終盤は弱いという問題を抱えていました。しかし、《石鍛冶の神秘家》と装備品のセットが使えるようになったことで、マナクリーチャー1体1体が確実に除去しなければならない脅威になったのです。
また、バントカラーは《氷牙のコアトル》を採用できます。このクリーチャーは追加の除去として機能するだけでなく、装備品を装備させるクリーチャーとして優れています。さらに、サイドボードには《秋の騎士》を取り入れられます。《石鍛冶の神秘家》のミラーマッチで強いですし、バーンやウルザソプターとの対戦でも有用です。
バントカラーの数少ない弱点は、マナベースによるライフ損失がバーンとの一戦で痛手になる可能性があること、そしてマナクリーチャーが《レンと六番》に弱いことです。
《聖遺の騎士》の枠に《聖トラフトの霊》を採用
以前に私がTwitterでシェアしたデッキリストをご存知の方もいるかもしれませんが、《聖遺の騎士》を《聖トラフトの霊》と入れ替えました。《聖遺の騎士》はサイズの大きい脅威となりますし、状況に応じて必要な土地をサーチする能力もあります。ただ、《聖トラフトの霊》はバント石鍛冶が苦手としているマッチアップのいくつかを改善してくれるのです。
また、《否定の力》を採用しているデッキですので、手札に余った《聖トラフトの霊》はその代替コストに使用できるメリットがあります。《聖トラフトの霊》の攻撃を通すために大量の除去を採用しなければならないのが従来の問題点でしたが、《ルーンの与え手》の登場と《石鍛冶の神秘家》と装備品のセットの採用により、格段に攻撃を通しやすくなっています。
トロンと対決するうえでは、《聖遺の騎士》は《幽霊街》や《廃墟の地》をサーチできる能力に価値を有しています。しかし《聖遺の騎士》で妨害していても、《永遠の証人》で《幽霊街》や《廃墟の地》を回収したり、《集合した中隊》で一気に攻め込んだりしなければ、いずれは相手にウルザランド3種を揃えさせる時間を与えてしまうのです。
対して《聖トラフトの霊》ならば、脅威となるのは呪禁クリーチャーを対処できる《忘却石》と《精霊龍、ウギン》だけです。しかも、これらの呪文には《否定の力》や《呪文捕らえ》といった対抗策がありますし、《呪文捕らえ》なら《聖トラフトの霊》と合わせて3ターンで相手のライフを削りきることができます。《ワームとぐろエンジン》や《絶え間ない飢餓、ウラモグ》といったサイズの大きいクリーチャーと対峙しても、《時を解す者、テフェリー》や《流刑への道》で道を開けることが可能です。
バーンと赤単「果敢」と調整した際は、早々にゲームに決着をつけられるようにしたいと感じました。その意味で《聖トラフトの霊》はうってつけのクリーチャーでしょう。ここで重要なのは、《聖トラフトの霊》が呪禁を持っており、これらのデッキが有する除去に当たらないことです。
青白コントロールや青白石鍛冶との対戦においては、《聖遺の騎士》は単体除去に弱いだけでなく、《時を解す者、テフェリー》や《精神を刻む者、ジェイス》への耐性もありません。《聖トラフトの霊》はプレインズウォーカーを退場させ、相手にアドバンテージを与えさせないため、リソース争いを有利に運びやすくなります。
「剣」の選択
装備品の選択ですが、最初は《殴打頭蓋》と《火と氷の剣》にしていました。しかし、《饗宴と飢餓の剣》を装備したクリーチャーで攻撃し、土地をアンタップし、《呪文捕らえ》、《流刑への道》、《氷牙のコアトル》を構えたいというタイミングが何度かありました。とはいえ、《火と氷の剣》は小型クリーチャーデッキに対して何度も使える除去であり、依然として捨てがたいです。特に《ルーンの与え手》を採用するデッキは除去を多く要求してくるため、《火と氷の剣》が特に有効な相手となります。
また、この装備品はカードアドバンテージ源でもあるため、《精神を刻む者、ジェイス》は不採用としました。《精神を刻む者、ジェイス》を次の自分のターンまで守るのは困難であると感じましたし、《石鍛冶の神秘家》でサーチする3枚目の装備品はいつも欲しいと思っていたのです。
《光と影の剣》は試しませんでした。墓地から回収したいクリーチャーは大していませんし、大抵の相手にはライフを3点回復してもあまり意味がないからです。唯一評価すべき点は、《流刑への道》と《致命的な一押し》への耐性を付与できることでしょう。
プレインズウォーカーの選択
当初のプレインズウォーカーは《時を解す者、テフェリー》3枚と《精神を刻む者、ジェイス》2枚であり、分散して採用していました。《時を解す者、テフェリー》は《呪文捕らえ》とコンボであり、非常に感銘を受けました。《呪文捕らえ》が除去されても相手は《時を解す者、テフェリー》の常在型能力により唱えなおすことができないのです。しかも、《呪文捕らえ》を[-3]能力でバウンスすれば、さらなる打ち消しに使えます。
《時を解す者、テフェリー》の魅力はそれだけにとどまらず、装備品を装備させる際に除去で大損害を被るのではないかという不安を抱えずに済みます。他方の《精神を刻む者、ジェイス》はあまり印象がよくありませんでした。4ターン目というのは往々にしてタップアウトしたくないですし、《時を解す者、テフェリー》よりも1マナ重い《精神を刻む者、ジェイス》の方が圧倒的に守りづらいのです。また、メタゲームにミッドレンジが増えた場合には、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が有効なサイドボードとなるでしょう。
サイドボードガイド
ここからは各マッチアップのサイドボード方法を一通りチェックするとともに、ワンポイントアドバイスもご紹介しましょう。
バーン
バーンは相変わらず厳しい相手となります。ここでのキーカードは《石鍛冶の神秘家》です。《石鍛冶の神秘家》を着地させ、《否定の力》や《ルーンの与え手》で守ることができれば、《殴打頭蓋》が単体でゲームを決めてくれることでしょう。
サイドボード後は、《秋の騎士》や追加の打ち消し呪文により、相手のゲームプランを妨害することができます。召喚酔いをしていない《石鍛冶の神秘家》に対して相手が攻撃してきた場合は油断してはいけません。大抵は《粉々》を持っていることを示唆するプレイです。
対 バーン(先手)
対 バーン(後手)
ジャンド
相性は良好です。こちらには装備品をサーチしてアドバンテージをもたらす《石鍛冶の神秘家》がいますし、相手は装備品への対抗手段を構えなければなりません。相手が《コラガンの命令》を持っていると感じるならば、決してまんまとに引っかからないようにしましょう。バント石鍛冶は相手のターン終了時に展開する瞬速持ちのクリーチャーが多くいますから、相手が装備品が出てくるまで《コラガンの命令》を唱えないという選択をした場合、相手にテンポで差をつけることが可能です。
また、《氷牙のコアトル》は相手のクリーチャーを戦闘で相打ちをとるという大きな仕事を果たし、カードアドバンテージをもたらします。《時を解す者、テフェリー》は《血編み髪のエルフ》の「続唱」を封じることができるので、忘れないようにしましょう。
対 ジャンド
ウルザソプター
このマッチアップで大活躍するのが《呪文捕らえ》と《時を解す者、テフェリー》のタッグです。[-3]能力で《呪文捕らえ》を手札に戻して、繰り返し打ち消していきます。相性は均衡しており、こちらのドローが相手の動きに噛み合うかどうかにかかってくるでしょう。
2戦目以降は、《石のような静寂》で相手のコンボを阻止し、《統一された意思》でカードアドバンテージをもたらす《最高工匠卿、ウルザ》を着地させないようにします。また、《秋の騎士》は《罠の橋》を破壊できるため、良い働きを見せます。
対 ウルザソプター
トロン
トロンとの1ゲーム目は苦戦を強いられます。相手のドローした脅威が《ワームとぐろエンジン》であったり、《否定の力》でフィニッシャーを対処しきれることを祈るしかありません。もし《聖トラフトの霊》を出し、《忘却石》と《精霊龍、ウギン》を打ち消す《否定の力》を構えることができれば、勝利に向けて十分な態勢が整っていると言えるでしょう。ときには《否定の力》を1ターン目の《探検の地図》に使うのが正しいこともあります。その他にウルザランドを揃える手段を持っていないと期待してのプレイです。サイドボーディングでは、打ち消し呪文をフル投入して脅威に対応できるようになるため、1ゲーム目よりも戦いやすくなります。
対 トロン
《死の影》デッキ
バントカンパニー時代から相性が良い相手のひとつです。《氷牙のコアトル》が万能になる相手であり、相手が対応するには《ルーンの与え手》か除去が必要になります。仮に除去されたとしても、1対2交換で毎回損をさせられるのです。
また、こちらの《ルーンの与え手》は「プロテクション(黒)」を付与することで《死の影》を抑え込みます。これを乗り越えるには《ルーンの与え手》を除去したり、《ティムールの激闘》を用意しなければなりません。さらに、《流刑への道》は《死の影》をあっさり対処してくれます。
対 《死の影》デッキ
青白石鍛冶
マナアドバンテージの点で優位に立てます。それだけでなく、《氷牙のコアトル》は《殴打頭蓋》の細菌トークンと相打ちにしやすく、その装備品を手札に戻すのに1ターン消費させ、相手がプレッシャーを継続するには再び唱えることを要求します。また、《時を解す者、テフェリー》がメインデッキに4枚入っており、彼が着地してしまえば、相手の打ち消し呪文を無価値にし、さらには「剣」を装備させる際に相手に妨害をさせません。
《流刑への道》は2ターン目の《石鍛冶の神秘家》に使わないようにしましょう。早いターンにプレインズウォーカーを唱えられるようにしてしまうからです。《流刑への道》は温存し、《饗宴と飢餓の剣》を装備させて攻撃しようとしたときを狙いましょう。
サイドボード後は、《秋の騎士》が相手の装備品を破壊し、《呪文嵌め》が序盤の《石鍛冶の神秘家》を打ち消します。さらには、相手が《石鍛冶の神秘家》の能力で装備品を出そうとしたら、それに対応して《ヴェンディリオン三人衆》で介入可能です。
対 青白石鍛冶
タイタンシフト
相手が《原始のタイタン》を引いていなければ、大抵は勝てます。《風景の変容》を打ち消す手段として《否定の力》と《呪文捕らえ》があるからです。サイドボード後は、《夢を引き裂く者、アショク》が相手のデッキ全般に刺さり、《統一された意思》と《ヴェンディリオン三人衆》が《原始のタイタン》を着地させません。ただし、《神々の憤怒》に注意し、クリーチャーを並べ過ぎないようにしましょう。
対 タイタンシフト
エルドラージトロン
2ターン目に《石鍛冶の神秘家》で《殴打頭蓋》をサーチする動きは、エルドラージトロンに対して非常に強力です。相手は《殴打頭蓋》の対処に苦しむことでしょう。《殴打頭蓋》をサーチする際は、《難題の予見者》に狙い撃ちされないように気を配る必要があります。それこそが容易に負けてしまうシナリオの1つだからです。また、《ルーンの与え手》が「プロテクション(無色)」を与えられることに大きな意味が出てくるマッチアップとなります。というのも、《聖トラフトの霊》の攻撃を安全に通すことができるからです。
対 エルドラージトロン
さいごに
今回の記事はここまでとなります。バント石鍛冶への理解を深めていただけたら幸いです。このデッキに関連してお聞きになりたいことがありましたら、喜んでTwitterでお答えいたします。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
ケルヴィン・チュウ (Twitter)