みなさんこんにちは。
『エルドレインの王権』がリリースされ、早くも新カードを使ったデッキがモダンでも活躍しています。
新セットが環境にどのような影響を与えたのか、SCGO Philadelphiaの入賞デッキを見ながら解析していきたいと思います。
SCGO Philadelphia
複数の異なるUrzaデッキが上位を支配する
2019年10月5-6日
- 1位 Amulet Titan
- 2位 Urza Outcome
- 3位 Urza Outcome
- 4位 4C Whirza
- 5位 Affinity
- 6位 Titan Shift
- 7位 Urza Outcome
- 8位 Tron
Ayers/Dilks/Rosum
トップ8のデッキリストはこちら
チーム構築で開催されたSCGO Philadelphia。上位入賞チームが選択していたのは、Urza系やTron、Titan ShiftやAmulet Titanといった直線的な戦略が多くを占めました。
チーム戦は個人戦と異なり、チームの勝率を上げるために環境のトップメタが選択される傾向が強く、そういった意味でも今大会の結果は今後のモダンの環境を考える上で参考になりそうです。
上位入賞デッキの中で最もポピュラーだったアーキタイプは、『エルドレインの王権』で登場した《湖に潜む者、エムリー》によって大幅に強化された《逆説的な結果》コンボでした。
SCGO Philadelphia デッキ紹介
「Urza Outcome」「4C Whirza」「Amulet Titan」「Jund Death’s Shadow」
Urza Outcome
1 《冠雪の沼》
1 《冠雪の森》
1 《湿った墓》
4 《虹色の眺望》
2 《霧深い雨林》
2 《汚染された三角州》
-土地 (18)- 4 《湖に潜む者、エムリー》
2 《練達飛行機械職人、サイ》
4 《最高工匠卿、ウルザ》
-クリーチャー (10)-
1 《運命のきずな》
4 《ミシュラのガラクタ》
4 《仕組まれた爆薬》
4 《オパールのモックス》
3 《モックス・アンバー》
2 《永遠溢れの杯》
4 《アーカムの天測儀》
3 《魔法の井戸》
1 《願い爪のタリスマン》
2 《崇高な工匠、サヒーリ》
-呪文 (32)-
今大会の上位を支配した《逆説的な結果》コンボ。
同じUrzaデッキでもこのバージョンはより爆発力を重視しており、《オパールのモックス》と《モックス・アンバー》の2種類のマナアーティファクトを最大限に活かしつつ、《崇高な工匠、サヒーリ》と《練達飛行機械職人、サイ》でトークンを生み出します。
最速3ターン目にゲームを決めることができますが、《練達飛行機械職人、サイ》や《最高工匠卿、ウルザ》などキーカードが3-4マナなので、マナ加速がないと動きがもっさりしてしまうこともあります。コンボに寄せている分妨害要素も貧しいため、同じく今大会で結果を残していたAmulet Titanなど自分より速いコンボはやや不利な相手となります。
低マナのアーティファクトを多数搭載したこのデッキでは、《最高工匠卿、ウルザ》や《逆説的な結果》によってカードを大量に引くことが可能で、《運命のきずな》によってライブラリーアウトになることもありません。
☆注目ポイント
メインからフル搭載されている《仕組まれた爆薬》は、このデッキではスイーパーとしてだけでなくX=0でキャストすることで《オパールのモックス》の「金属術」を達成させたり、《最高工匠卿、ウルザ》の能力によってマナ加速に利用することができます。
《練達飛行機械職人、サイ》や《最高工匠卿、ウルザ》の能力を利用するので、《石のような静寂》や《溜め込み屋のアウフ》といった対策カードにも耐性があります。《湖に潜む者、エムリー》はこのデッキではほぼ1マナで出すことができ、除去されずに生き残れば《ミシュラのガラクタ》や《魔法の井戸》を使い回すことで毎ターンアドバンテージを稼ぎ出します。
《オパールのモックス》などマナ加速やキーカードである《最高工匠卿、ウルザ》に依存しているため、対策されることが予想されるサイド後は《王冠泥棒、オーコ》を投入することでフェアなゲームでも勝負ができるようになります。このデッキに対して速さで勝るBurn対策には《集団的蛮行》、コンボ対策には《思考囲い》などメインで妨害要素が貧しい分サイドには多めに採用されています。
4C Whirza
1 《冠雪の沼》
1 《冠雪の山》
1 《繁殖池》
1 《蒸気孔》
1 《湿った墓》
4 《沸騰する小湖》
4 《汚染された三角州》
1 《産業の塔》
1 《発明博覧会》
-土地 (20)- 3 《ゴブリンの技師》
4 《最高工匠卿、ウルザ》
-クリーチャー (7)-
3 《発明品の唸り》
4 《ミシュラのガラクタ》
4 《オパールのモックス》
1 《溶接の壺》
4 《アーカムの天測儀》
2 《彩色の星》
2 《真髄の針》
1 《虚無の呪文爆弾》
1 《黄鉄の呪文爆弾》
4 《飛行機械の鋳造所》
2 《弱者の剣》
1 《減衰球》
1 《胆液の水源》
1 《罠の橋》
-呪文 (33)-
Hogaakの夏から結果を残し続けるUrzaは、現在環境のトップデッキの一角として幅を利かせており新環境のSCGOでも結果を残していました。
《アーカムの天測儀》や《オパールのモックス》といったアーティファクトの恩恵で色を足すのが容易で、万能除去である《暗殺者の戦利品》のために緑をタッチするスタイルが定着しています。
《飛行機械の鋳造所》+《弱者の剣》のコンボを搭載していますが、同じUrzaデッキでも先ほどご紹介した《逆説的な結果》コンボと異なり爆発力よりも《発明品の唸り》から《罠の橋》などアーティファクトを状況に応じてサーチしてくるコントロールデッキ的な要素もあり、フレキシブルに動けるのがこのバージョンの魅力です。
☆注目ポイント
メインから採用されている《感電破》は、同型やUrza Outcomeとのマッチアップにおいて《ゴブリンの技師》や《最高工匠卿、ウルザ》、《湖に潜む者、エムリー》、《練達飛行機械職人、サイ》対策になります。
《ゴブリンの技師》は重要なアドバンテージ源となると同時に、起動能力によってアーティファクトを除去から保護することもできます。《最高工匠卿、ウルザ》を除くと、メインの主なアドバンテージ源がこのクリーチャーとソプターコンボなので、《石のような静寂》や《安らかなる眠り》といった対策カードが刺さってしまうのがこのバージョンの弱点となります。
そのためサイドには《暗殺者の戦利品》だけでなく、それら対策カードの影響を受けない追加の勝ち手段として《ボーラスの工作員、テゼレット》が採用されています。[-1]能力でアーティファクトをクリーチャー化させ、アーティファクトが並ぶこのデッキでは[-4]能力だけでも勝つことができます。対策カードは確かに厄介ですが、《発明品の唸り》によって《罠の橋》や《虚無の呪文爆弾》といった特定の戦略に刺さるアーティファクトを状況に応じてサーチしてこれるフレキシブルさは捨てがたく、コントロールが好きなプレイヤーにもお勧めのデッキです。
Amulet Titan
2 《冠雪の森》
2 《繁殖池》
4 《シミックの成長室》
2 《グルールの芝地》
1 《セレズニアの聖域》
1 《ボロスの駐屯地》
2 《宝石鉱山》
1 《魂の洞窟》
3 《トレイリア西部》
2 《ギャレンブリグ城》
1 《ボジューカの沼》
1 《幽霊街》
1 《死者の原野》
1 《光輝の泉》
1 《処刑者の要塞》
1 《軍の要塞、サンホーム》
1 《ヴェズーヴァ》
-土地 (29)- 4 《桜族の斥候》
4 《迷える探求者、梓》
1 《再利用の賢者》
4 《原始のタイタン》
-クリーチャー (13)-
最速で2ターン目に《原始のタイタン》を出すこともできるAmulet Titanは、その爆発力とデッキパワーの高さが魅力で、課題だった安定性もロンドンマリガンが導入されたことで改善されています。
このデッキも『エルドレインの王権』から収穫があったデッキです。《むかしむかし》はプレビュー段階から話題になっていたカードで、条件付きとはいえマナを支払うことなくキャストでき、さらなる安定性の向上に貢献しています。
☆注目ポイント
《むかしむかし》は、バウンスランドや《原始のタイタン》、《迷える探求者、梓》といったキーとなるカードを探し出せるのでAmulet Titanというデッキにフィットしたスペルです。このカードのおかげでより安定して《原始のタイタン》に繋げやすくなりました。
《ギャレンブリグ城》は、このデッキでは《原始のタイタン》へ速い段階から繋げることを可能にする土地で、《むかしむかし》からサーチできるマナ加速となります。
Titan Shiftでも採用されている《死者の原野》は、このデッキにも追加の勝ち手段として採用されています。以前は《原始のタイタン》が出てしまっても、それを除去して後続をカウンターすることで凌ぐことができましたが、《死者の原野》により多角的に攻めることが可能となりました。バウンスランドの能力を利用することで、ほぼ毎ターントークンを生み出すことができるようになります。
Jund Death’s Shadow
1 《森》
2 《血の墓所》
1 《草むした墓》
1 《踏み鳴らされる地》
4 《新緑の地下墓地》
3 《血染めのぬかるみ》
2 《樹木茂る山麓》
2 《育成泥炭地》
-土地 (17)- 4 《死の影》
4 《タルモゴイフ》
1 《疫病を仕組むもの》
4 《通りの悪霊》
-クリーチャー (13)-
4 《思考囲い》
4 《ウルヴェンワルド横断》
3 《致命的な一押し》
2 《むかしむかし》
2 《ティムールの激闘》
1 《突然の衰微》
1 《暗殺者の戦利品》
2 《コラガンの命令》
1 《四肢切断》
4 《ミシュラのガラクタ》
2 《ヴェールのリリアナ》
-呪文 (30)-
《むかしむかし》の恩恵を受けたのはAmulet TitanやTronなど土地コンボだけではありません。
元々《ミシュラのガラクタ》や《通りの悪霊》といったフリーキャントリップによる圧縮によってデッキの動きが安定していたDeath’s Shadowも、《むかしむかし》によってさらに安定性が増しています。
☆注目ポイント
土地を切り詰めたこのデッキでは、土地とクリーチャーを探し出せるスペルは必須です。《むかしむかし》は追加の《ウルヴェンワルド横断》として機能します。《通りの悪霊》から《むかしむかし》をキャストする動きも可能で、《ウルヴェンワルド横断》の「昂揚」の達成にも貢献します。
《ウルヴェンワルド横断》は、《疫病を仕組むもの》や《溜め込み屋のアウフ》などを状況に応じてサーチすることができるので、サイドに特定の戦略に刺さるクリーチャーを多数採用したシルバーバレット戦略をとることが可能になり、Jund型のDeath’s Shadowを選択する理由のひとつになります。
土地コンボを苦手とするので《高山の月》などの対策は必須です。サイド後は《レンと六番》も投入され、ミッドレンジ寄りにシフトしていきます。軽いクロックをハンデスや軽量除去でバックアップする戦略は、土地コンボを除いて現環境に存在する多くのデッキと互角以上に勝負をすることができるデッキなので、土地コンボやUrza系以外のデッキを使いたいという方にもお勧めできます。
総括
《信仰無き物あさり》と《甦る死滅都市、ホガーク》が禁止カードに指定され、《石鍛冶の神秘家》が禁止解除されたことで環境は激変しました。『エルドレインの王権』の影響は大きく、SCGO PhiladelphiaはUrzaやAmulet Titan、Titan Shiftといった直線的な戦略が中心でした。
今週末には、SCGO Indianapolisがモダンで開催されるのでメタがどのように動くのか要注目です。
USA Modern Express vol. 33は以上になります。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!
この記事内で掲載されたカード
Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。