ミッドレンジ時代に生きる赤単

Brandon Ayers

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2019/10/15)

はじめに

『エルドレインの王権』が参入してから数週間が経過した。これまでの結果を分析する限りでは、ミッドレンジが環境を支配し続けているといって差し支えないだろう。MTGアリーナ・Magic Online・Star City Games フィラデルフィアの結果によれば、ゴロスランプ・ジェスカイファイアーズ・ゴルガリアドベンチャーの3つがトップの座をかけて争っているようだ。攻撃的な戦略が環境から姿を消したことで、こういったミッドレンジたちは単体除去や攻撃的なクリーチャー戦術への対策を減らしてきている

死者の原野不屈の巡礼者、ゴロス

本題に入る前に、10月21日に前倒しとなった禁止制限告知について簡単に触れておこう。現在のスタンダードにはいくつか問題点があると思うが、新環境は始まってまだ数週間しか経っていない。ウィザーズは判断を急ぐのではなく、その前日のミシックチャンピオンシップ・ロングビーチの結果を精査すべきだろう。《死者の原野》あるいは《不屈の巡礼者、ゴロス》の禁止が必須だとは思わないが、この2枚がゲームを長期化・定型化しているのも事実だ。いずれかが禁止されても驚きではないだろう。

ミッドレンジからの脱却

砕骨の巨人朱地洞の族長、トーブラン

ゴロスランプやジェスカイファイアーズで疲れるロングゲームを繰り返すうちに、もっと攻撃に一直線な戦略を使い、ミッドレンジに偏重したメタゲームを避けたいと思うようになっていった。調整を重ねた結果、大きく感銘を受けたのは赤単であった。『エルドレインの王権』には《砕骨の巨人》《朱地洞の族長、トーブラン》といった赤単を強化するカードが何枚か収録されている。前環境からの定番である《遁走する蒸気族》《実験の狂乱》などと組み合わせれば、赤単の核は依然として強固だ。ではデッキリストを見ていくことにしよう。

サイドボードガイド

ゴロスランプ

炎の侍祭、チャンドラ轟音のクラリオン無頼な扇動者、ティボルト秋の騎士

先手のプレイヤーが圧倒的に有利になるマッチアップだ。ゲームが長引くこともある。終盤に《朱地洞の族長、トーブラン》《ショック》《批判家刺殺》を強化して押し切れるようなゲーム運びにして勝つことが多い。ゴロスランプは《敬虔な命令》《霊気の疾風》《秋の騎士》から数枚をサイドインしてくるのが一般的だ。赤単のメインデッキはゴロスランプを想定して構築されているため、ほとんどサイドインの入れ替えはない。先手で《炎の侍祭、チャンドラ》を投入するのは、除去されづらく、全体除去を使われてもプレッシャーをかけ続けられるからだ。《秋の騎士》が複数入っている/入っている可能性があるならば、残りの2枚の《ショック》《無頼な扇動者、ティボルト》にすると良いだろう

対 ゴロスランプ (先手)

Out

ショック ショック

In

炎の侍祭、チャンドラ 炎の侍祭、チャンドラ

ジェスカイファイアーズ

遁走する蒸気族轟音のクラリオン溶岩コイル願いのフェイ

何度でも対戦したい相手だ。ジェスカイファイアーズはある程度《創案の火》に依存しているし、赤単はプレインズウォーカーを火力呪文で焼きつつプレッシャーをかけることに長けている。このマッチアップで重要なのは、《遁走する蒸気族》をタフネス4にして《轟音のクラリオン》で除去されないようにすることだ。また、ロングゲームになると《次元を挙げた祝賀》がゲームを決定づけてしまうため、赤単とって惨めな結末になりやすい。《溶岩コイル》をサイドインしているのは、《願いのフェイ》《主無き者、サルカン》のドラゴントークンを除去するためだ。

対 ジェスカイファイアーズ

Out

批判家刺殺 批判家刺殺 批判家刺殺 批判家刺殺
ショック ショック

In

溶岩コイル 溶岩コイル 丸焼き 丸焼き
炎の侍祭、チャンドラ 炎の侍祭、チャンドラ

セレズニア / ゴルガリアドベンチャー

溶岩コイル炎の一掃

どちらに転ぶかわからない熱戦になる。どちらかと言えば、セレズニアアドベンチャーの方が厳しい。《敬慕されるロクソドン》で序盤から圧倒的な盤面を作ってくるからだ。2戦目以降は、弱めのクリーチャーを効率的な除去と入れ替えられるので、はるかに戦いやすくなる。「出来事」デッキは《炎の一掃》に弱いのだ。この類のデッキが多いメタゲームならば、3枚目の《炎の一掃》を採用する可能性は高いだろう。

対 セレズニア / ゴルガリアドベンチャー

Out

熱烈な勇者 熱烈な勇者 熱烈な勇者 熱烈な勇者
焦がし吐き 焦がし吐き 焦がし吐き 焦がし吐き

In

溶岩コイル 溶岩コイル 溶岩コイル 溶岩コイル
無頼な扇動者、ティボルト 無頼な扇動者、ティボルト 炎の一掃 炎の一掃

シミックランプ

無頼な扇動者、ティボルト王冠泥棒、オーコ

できればシミックランプには当たりたくない。1ゲーム目は《王冠泥棒、オーコ》への明確な解答がない。《王冠泥棒、オーコ》《ハイドロイド混成体》《金のガチョウ》によるライフ回復を使われると、残り数点のライフを削りきることがほぼ不可能になる。このマッチアップはサイドボード後が本番だ《丸焼き》《王冠泥棒、オーコ》を効率的に対処し、《無頼な扇動者、ティボルト》はライフ回復を妨害する大役を担う。

対 シミックランプ

Out

熱烈な勇者 熱烈な勇者 熱烈な勇者 熱烈な勇者
批判家刺殺 批判家刺殺 批判家刺殺 批判家刺殺

In

溶岩コイル 溶岩コイル 溶岩コイル 溶岩コイル
無頼な扇動者、ティボルト 無頼な扇動者、ティボルト 丸焼き 丸焼き

赤単ミラー

実験の狂乱

ミラーマッチは《実験の狂乱》を巡る戦いだ。《実験の狂乱》をマナカーブ通りに設置できたプレイヤーが大きなアドバンテージを得る。このエンチャントを唱える前後のターンは守備を重視したプレイをした方が良いだろう。サイドボード後は両者とも除去を増加させる傾向にある。エンチャントを除去する手段がお互いにないため、平均を下回る初手はマリガンし、《実験の狂乱》が手札に来ることを期待した方が良い

対 赤単ミラー

Out

批判家刺殺 批判家刺殺 批判家刺殺 批判家刺殺
焦がし吐き 焦がし吐き

In

溶岩コイル 溶岩コイル 溶岩コイル 溶岩コイル
レッドキャップの乱闘 レッドキャップの乱闘

おわりに

『エルドレインの王権』が加入したスタンダードが今後どうなるのか楽しみだ。ミシックチャンピオンシップ・ロングビーチの結果は、その将来に大きく影響することだろう。ミッドレンジはここまで環境を支配してきたが、アグロが使えないわけではない。ゲームを長引かせてゾンビの群れで押し込む展開に疲れている人、攻撃することが単純に好きな人。そういった人たちに赤単は最高の選択だろう。赤単はパワフルで、楽しくて、テンポが良くて、経済的だ

ミシックチャンピオンシップ後に何らかの禁止があったら、最新の赤単のデッキリストやサイドボードの記事を書くかもしれない。ぜひ楽しみにしていてくれ!

ブランドン・エアーズ (Twitter)

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Brandon Ayers ブランドン・エアーズは、熟練した腕を持つアメリカのプロプレイヤー。グランプリTOP8に複数の入賞経験があり、ゴールドレベルを維持している。2017-2018シーズンでは、プロツアー『ドミナリア』とマジック25周年プロツアーで安定した成績を残し、来シーズンもゴールドレベルが確定している。同じ街の親友でありチームメイトでもあるジョン・ロルフと共に、2018-2019シーズンにHareruya prosに加入。 Brandon Ayersの記事はこちら