MC Vのメタゲームと来たる禁止改定

Arne Huschenbeth

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2019/10/16)

はじめに

みなさんこんにちは!今回は、ミシックチャンピオンシップ・ロングビーチ2019(MC V)のデッキリストをチェックしていこうと思います。本番は10/18から10/21にかけて開催されます。この記事では、構築の特徴的な部分を指摘し、各アーキタイプがどのような結果を残すかを予想していきます。

さらに、記事のおわりには禁止制限改定について軽く言及します。まずはメタゲームを簡単に概観していくことにしましょう。

ミシックチャンピオンシップ・ロングビーチ2019 メタゲームブレイクダウン

アーキタイプ 割合
バントゴロス 33.8
シミックフード 16.2
ゴルガリアドベンチャー 8.8
ゴロスファイアーズ 7.4
バントランプ 7.4
グルールアグロ 5.9
バントフード 4.4
マルドゥナイト 4.4
セレズニアアドベンチャー 4.4
その他 7.4

マルドゥナイトを除き、全てのデッキが緑を使用しています。緑を含めなかったのは、68人中6人だけです。今の緑はカードの選択肢が多いため、その色を使わないという判断はなかなかできません。

バントゴロス

現環境の王者はゴロスランプです。世間の注目はゴロスランプから何らかの禁止カードを出すかどうかのようですが、本大会がその回答に一役買うことでしょう。特に注目されているのは《死者の原野》です。歴代でも屈指のスタンダード巧者であるブラッド・ネルソン/Brad Nelsonは、環境の一番の敵であるデッキを選択しました。彼のリストを見てみましょう。

裏切りの工作員帰還した王、ケンリス

ブラッドは《願いのフェイ》《神秘を操る者、ジェイス》のパッケージを採用していません。また、ミラーマッチの1戦目から有利に戦えるツールとして、《ハイドロイド混成体》を1枚減らし、《裏切りの工作員》2枚と《帰還した王、ケンリス》1枚を選択しています。

ゴロスランプが登場して間もないころから、メインデッキに《裏切りの工作員》を2枚入れた構成が非常に気に入っています。このカードは飛びぬけたカードパワーを持っており、ゴロスランプならば無理なく取り入れられます。ミラーマッチの切り札であり、シミックフード/バントフードに対して全体除去とともにベストカードとなるでしょう。

夢を引き裂く者、アショク拘留代理人

サイドボードは比較的見慣れたものになっています。ブラッドはミラーマッチ対策として《夢を引き裂く者、アショク》《拘留代理人》を採用。《拘留代理人》は素晴らしいサイドボードであり、3ターン目の《夢を引き裂く者、アショク》は優秀です。

否認時を解す者、テフェリー軽蔑的な一撃

最後にひとつ。ゴロスランプにおいて《時を解す者、テフェリー》の枚数が減る傾向にあるのは、本大会で《否認》《軽蔑的な一撃》を登録した人にとって朗報です。特に本大会はデッキリストが公開されてから各マッチアップのサイドボードプランを練る時間があるため、《時を解す者、テフェリー》が少ないという弱点を突きやすくなるでしょう。

シミックフード

続いてはシミックフードです。日本の調整チームとPantheonがこのアーキタイプを選択しています。

この2週間、僕自身はスタンダードの調整があまりできていません。グランプリ・ユトレヒト2019に向けてリミテッドの練習にリソースを割きたかったのです。ですが、僕が考えていることはお伝えできます。

軽蔑的な一撃

もしゴロスランプを倒したいのであれば、僕なら《軽蔑的な一撃》をメインデッキに搭載したシミックフードを使うでしょう。配信でユーザーに意見を求められたときに、こう発言したことがありました。おそらくこのときカイ・ブッディ/Kai Buddeかリード・デューク/Reid Dukeが聞いていたのでしょう。彼らはシミックフードを選択したのですから!真実はわかりませんが、もしシミックフードが優勝したら全て僕の手柄といって良いでしょう!

冗談はさておき、仮に僕と無関係だったとしても、Pantheonのプレイヤーが僕の思い描いていたものを実践しているというのは最高の気分です。

ヴァントレス城ギャレンブリグ城

デッキリストは非常にシンプルで、土地は24枚、呪文は全て4枚挿しとなっています。ゴロスランプに対してベストカードである《探索する獣》も採用されていますね。Pantheonは《ヴァントレス城》を使わず、《ギャレンブリグ城》を1枚だけ採用。対して、日本のチームは2種類とも搭載しています。Pantheonは安定性を優先し、日本のチームは終盤戦に強くしたのでしょう。

大食のハイドラ

サイドボードも特段変わったところはありません。サイドボードに忍ばせてある《大食のハイドラ》はゴロスランプ以外なら大抵はサイドインされるでしょう。僕ならミラーマッチ用に《裏切りの工作員》を数枚入れたと思いますが、Pantheonは上記の構成が良いと判断したようです。対する日本のチームはサイドボードを含め、1枚だけ採用しています。

枝葉族のドルイド楽園のドルイドマラリーフのピクシー

Pantheonのデッキリストにはもうひとつ面白い点があります。どうやらリード・デュークはマナクリーチャーの選択に苦しんだようなのです。彼以外のチームメンバーは《楽園のドルイド》の4枚体制ですが、リードは《枝葉族のドルイド》2枚・《楽園のドルイド》1枚・《マラリーフのピクシー》1枚という構成になっています。彼がどういった思考でこの構成に行き着いたのかが非常に気になりますね。

いずれにせよ、シミックフードが最大勢力であるゴロスランプに勝ち越すようなことがあれば、本大会で特にパフォーマンスが高かったデッキになっても何ら驚きではありません。

ゴルガリアドベンチャー

次はゴルガリアドベンチャーです。マジック・プロリーグのサファイア・ディビジョンを制した、カニスターことピオトル・グロゴゥスキ/Piotr Glogowskiが選択しています。

楽園のドルイドアーク弓のレインジャー、ビビアン世界を揺るがす者、ニッサ

このアーキタイプに施された最新技術は、《楽園のドルイド》《アーク弓のレインジャー、ビビアン》《世界を揺るがす者、ニッサ》です。

クロールの銛撃ち打ち壊すブロントドン虐殺少女夜の騎兵

《アーク弓のレインジャー、ビビアン》の強さはサイドボードに採用しているクリーチャーによって決定されます。カニスターが選択したのは、《クロールの銛撃ち》《打ち壊すブロントドン》《虐殺少女》《夜の騎兵》でした。良く練られた構成だと思います。

エッジウォールの亭主グレートヘンジ

《楽園のドルイド》はゲーム速度を上げ、《世界を揺るがす者、ニッサ》は常在型能力で追加のマナを生成し、終盤に《エッジウォールの亭主》《グレートヘンジ》で確保したリソースを展開するのに役立つでしょう。

はぐれ影魔道士、ダブリエル夢を引き裂く者、アショク戦慄衆の将軍、リリアナ

デッキ全体として、「出来事」シナジーへの依存度を下げ、素のデッキパワーを上げることを意識しているのが見て取れます。このアプローチの仕方は納得で、特に《アーク弓のレインジャー、ビビアン》がどんな働きをするのかが楽しみです。これまで彼女はあまり目立ってきませんでしたからね。サイドボードからはプレインズウォーカーが増量できるようになっています。リソースを削る《はぐれ影魔道士、ダブリエル》、主にゴロスランプ対策の《夢を引き裂く者、アショク》、ミッドレンジミラーで頼りになる《戦慄衆の将軍、リリアナ》といった面プレインズウォーカーが顔を揃えます。

バントランプ

次はバントランプです。ここではチェコフードと呼ぶことにしましょう(チェコは食べ物がとても美味しいですし、チェコフードという名前も面白いですからね)。このデッキは構築の天才であるスタニスラフ・ツィフカ/Stanislav Cifkaとそのチームメイトが使用しています。

拘留代理人時を解す者、テフェリー狼の友、トルシミール

チェコチームは、安定したシミックカラーの”オーコデッキ”ではなく、バントカラーを使用。75枚中の白の要素は、《拘留代理人》3枚・《時を解す者、テフェリー》2枚・サイドボードの《狼の友、トルシミール》2枚です。

《拘留代理人》はその登場以来、最も評価が高い時期でしょう。ゾンビトークンの軍勢がいますし、《ハイドロイド混成体》は塵になりますからね。《時を解す者、テフェリー》が万能なカードであることは言うまでもないでしょう。そして《狼の友、トルシミール》は攻撃的なクリーチャーデッキに対して最高の対策カードであり、《意地悪な狼》との相性も良好です。

王冠泥棒、オーコ世界を揺るがす者、ニッサ

シミックフードの方が、積極的なマナ加速から大型のクリーチャーやプレインズウォーカーにつなげていくことに注力したデッキです。このバントランプもプレインズウォーカーを駆使し、《ヴァントレス城》《ハイドロイド混成体》で息切れしないように勝利を目指すプランを採ります。しかし当然、環境でトップクラスの強さを誇る2つの動きで相手を圧倒することも可能です。その動きとは、2ターン目の《王冠泥棒、オーコ》と3ターン目の《世界を揺るがす者、ニッサ》です。

《拘留代理人》《裏切りの工作員》への反撃手段となります。コントロール奪取されたパーマネントを《拘留代理人》で取り返せば、戦場を離れた際にこちら側にコントロールが戻ってきます。ゴロスランプにとって《裏切りの工作員》はプレインズウォーカーに対する唯一の頼れる解答ですから、《拘留代理人》を採用しておくのは有効だと言えるでしょう。《むかしむかし》はデッキを円滑に動かすツールとして採用されています。

このデッキの完成度は高く、ゴロスランプと渡り合えると考えています。ですが、メインデッキに《軽蔑的な一撃》を入れなければ、ゴロスランプが軽量のマナ加速から強力な引きをしたときに問題となることでしょう。チェコチームのデッキは非常に上手く調整されているので、メタゲームやゴロスランプとの戦い方を十分に理解しているのだと思います。このデッキの活躍が楽しみで仕方ありません。

バントフード

マルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalhoアンドレア・メングッチ/Andrea Mengucciバントフードを選択しました。シミックフードとバントランプの中間に位置するようなデッキですね。

枝葉族のドルイド拘留代理人

Pantheonのシミックフードに非常に近しい構成です。メインデッキの違いは、マナベースを除くと、《むかしむかし》2枚が《枝葉族のドルイド》2枚になり、《軽蔑的な一撃》4枚が《拘留代理人》4枚となっています。他に注目すべき点は、サイドボードに4枚採られた《軽蔑的な一撃》です。僕がゴロスランプのプレイヤーなら、アンドレアやマルシオと対戦したくありません。

狼の友、トルシミール大食のハイドラ

このデッキの戦略は、盤面に脅威を高速展開しながらクロックを刻んでいき、《拘留代理人》で邪魔なブロッカーをどかしてゴロスランプにとどめを刺すことです。デッキリストは非常に美しいですが、サイドボードの青のカードが《狼の友、トルシミール》《大食のハイドラ》だったらさらに良かったと思います。その他の点は素晴らしいですね。

チェコチーム、Pantheon、マルシオとメングッチが《王冠泥棒、オーコ》《世界を揺るがす者、ニッサ》《ハイドロイド混成体》を使ったデッキを異なる構成にしたのは非常に面白いところです。はたして勝利をもたらすのはシミックの安定性か、チェコチームの爆発力か、あるいはそれらをミックスしたものか。答えは出ませんが、それぞれに勝つだけの力が備わっていると思います。世界のトッププレイヤーたちが3つの異なる構築を持ち込んだのですから、今のスタンダードはまだ全てが解明されたわけではなく、意見の一致をみていないということなのでしょう。

ゴロスファイアーズ

ゴロスファイアーズをチョイスした人数は5人。ここではミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019の覇者であるオータム・バーチェット/Autumn Burchettのデッキリストを見ることにしましょう。

個人的にゴロスファイアーズはあまり好きではありません。ゴロスランプより強くするために、安定性やサイドボードの選択の幅を犠牲にしてしまっています。サイドボード後に相手は有効なカードをサイドインできますが、こちらは《願いのフェイ》のためにサイドボードの枠を多く割いてしまっているため負けやすくなるでしょう。

轟音のクラリオン

このデッキは《時を解す者、テフェリー》がいない限り、打ち消しに非常にもろいです。土地が28枚なのも疑問ですし、基本土地が6枚しかないのに《豆の木の巨人》《寓話の小道》をそれぞれ3枚ずつ採用しているのもどうなのでしょうか。ゴロスファイアーズの良い点を挙げるとすれば、《轟音のクラリオン》《軽蔑的な一撃》で打ち消されないことです。ですが、このアーキタイプが今後も活躍するとしたら驚きでしょうね。

グルールアグロ

さて、次はハビエル・ドミンゲス/JavierDominguezグルールアグロです。

グルールはゴロスランプに強いことで知られていますが、強みはそれぐらいでしょう。《王冠泥棒、オーコ》や「出来事」を用いるデッキは、グルールが嫌がる要素を持ち合わせています。

Zhur-Taa Goblin争闘+壮大

ハビエルは《成長室の守護者》ではなく《ザル=ターのゴブリン》を選択しており、長く戦うことよりもテンポを意識していることがわかりますね。《ドムリの待ち伏せ》《争闘/壮大》の枠を作るためにサイドボードへ移されています。この点からもハビエルがゴロスランプとの相性をできるだけ改善しようとしていることがわかるでしょう。

セレズニアアドベンチャー

僕の良き友人であり、チームメイトでもあるクリスティアン・ハウク/Christian Hauckセレズニアアドベンチャーを持ち込んでいます。

敬慕されるロクソドン不敗の陣形開花+華麗

僕はこのデッキを使った経験も、使われた経験もほとんどありません。クリスティアンのことですから、ゴロスランプに強い能動的な戦略を見つけたのでしょう。環境トップのデッキたちに対してどんな動きをするのか見当もつきません。《王冠泥棒、オーコ》が厳しいのではないかと思いますが、それはつまりフードデッキを使う人間にとって喜ばしい相手が増えてしまったことになりますね。

マルドゥナイト

最後に紹介する形になりましたが、この一風変わったデッキも軽視できません。マルドゥナイトの使用者には2人の殿堂プレイヤー、ベン・スターク/Ben Starkエリック・フローリッヒ/Eric Froehlichが含まれています。

エンバレスの宝剣

この戦略が狙いとするのは、低マナのカードで積極的にビートダウンすることです。低いマナカーブからテンポ良く相手を圧倒し、《エンバレスの宝剣》でとどめの一撃を刺します。

イタチ乗りのレッドキャップ立派な騎士

《イタチ乗りのレッドキャップ》《穢れ沼の騎士》よりも優先されています。《穢れ沼の騎士》は接死を持ち、ドロー効果によって終盤に機能することがありますが、それよりも《イタチ乗りのレッドキャップ》のパンプ効果の方が重要だと判断したのでしょう。

除去が必須な《立派な騎士》が採用されていない点も面白いですね。このデッキはゴロスランプに強そうですが、セレズニアアドベンチャーやグルールアグロと同様に《王冠泥棒、オーコ》に苦戦する可能性が高いと思われます。

まとめ

というわけで、本大会でトップの使用率のデッキを紹介し、僕の見解を示してきました。メタゲームを見る限りでは、明確な勝者はフードデッキでしょう。非常に強力なカードを多く使い、最大勢力であるゴロスランプに対して有効なプランがありますから、最も高い勝率が見込めるポジションに位置しています。とはいえ、”優勝する”とまでは言えません。

というのも、2日目進出のシード権を持っているMPLの各ディビジョンの勝者が一歩リードした立場にいるからです。彼らはフードデッキではなく、カルロス・ロマオ/Carlos Romaoとセス・マンフィールド/Seth Manfieldはゴロスランプを、リー・シー・ティエン/Lee Shi Tianは《災厄の行進》入りの赤単を、ベン・スターク/Ben Starkはマルドゥナイトを選択しています。

ランキングが好きなみなさんのために、ミシックチャンピオンシップで期待できるアーキタイプを格付けしました。上位3つは僅差であり、どれが優勝してもおかしくないと思います。ただひとつ言えるのは、青緑を使うフードデッキが本大会を支配するだろうということです。

ランキング アーキタイプ
1位 チェコフード
2位 バントフード
3位 シミックフード
4位 ゴルガリアドベンチャー
5位 バントゴロス
6位 セレズニアアドベンチャー
7位 ゴロスファイアーズ
8位 グルールアグロ
9位 マルドゥナイト

禁止改定について

死者の原野不屈の巡礼者、ゴロス王冠泥棒、オーコ

最後に禁止改定についても軽く言及しておきましょう。先週、ウィザーズは禁止制限告知の予定を11/18から10/21に早めるというアナウンスを行いました。これは彼らがスタンダードのカードに目を光らせ、ミシックチャンピオンシップの結果次第では何らかのカードを禁止するというサインかもしれません。《死者の原野》が最有力候補で、《不屈の巡礼者、ゴロス》も検討に値します。《王冠泥棒、オーコ》もウィザーズの監視対象に入っていると理想的ですね。

《死者の原野》に関してはもう少し詳しくお話しましょう。僕個人の意見としては、この土地はスタンダードにあっても全く問題ないレベルのカードです。ただ、同じ環境に《不屈の巡礼者、ゴロス》がいること、アグロが非常に弱くミッドレンジが王者の時代であること、そして何よりも《死者の原野》への対策が非常に限定的であることから、《死者の原野》デッキが支配的な存在になってしまっています。

塵への崩壊酸のスライム高山の月

この問題を解決するのは簡単で、《塵への崩壊》《酸のスライム》《高山の月》のようなカードを登場させれば良いでしょう。

金のガチョウ王冠泥棒、オーコ意地悪な狼探索する獣

しかし、ここからが問題の核心です。《金のガチョウ》《王冠泥棒、オーコ》《意地悪な狼》《探索する獣》は印刷されるべきではありませんでした。《王冠泥棒、オーコ》に率いられたこれらのカードは、環境からアグロデッキを締め出してしまっています。ただでさえビートダウン向けのカードが弱くなった中で、《王冠泥棒、オーコ》たちはビートダウンデッキの存在そのものを否定してしまうほどに強力なのです。《死者の原野》《王冠泥棒、オーコ》の強さにばかり目を向けている人が多く、真実に気づいていないように思います。本当の問題は環境全体に存在しているのです。

健全な環境にはアグロ・ミッドレンジ/コントロール・長期戦最強のデッキ/コンボデッキが混在するものですが、今のスタンダードには最後のふたつしか存在しません。もちろんアグロデッキをプレイすることはできますが、正直に言って今の環境でそうするのは賢明な判断ではないでしょう。

ではどうすれば状況は改善できるでしょうか?まず、緑のミッドレンジを弱体化させる必要があるでしょう。フードデッキは《王冠泥棒、オーコ》に依存しています。《王冠泥棒、オーコ》がいなければ、《金のガチョウ》は非常に平凡なデッキとなり、もしかしたら必要とされなくなるかもしれません。今の緑はあまりにも強すぎます。環境を楽しいものにするには《王冠泥棒、オーコ》に制裁を加えるべきです。このカードはデザインミスだったでしょう。値下がりを気にする方もいらっしゃると思いますが、《王冠泥棒、オーコ》はあらゆるエターナルフォーマットで試されている最中です。

死者の原野

僕の予想では、《王冠泥棒、オーコ》はモダンで定番のカードとなり、場合によってはレガシーでもそうなるかもしれません。もちろん禁止直後は値段が落ちるでしょうが、6か月から1年ほど資産として持っておけば、かつての値段へと戻っていくでしょう。《王冠泥棒、オーコ》を禁止にするだけでは、おそらく《死者の原野》が暴れまわることになるはずです。なぜなら攻撃的なカードが今はそこまで強くないからです。《死者の原野》に対するさらに強力な対策カードがあれば、この土地はおそらく問題とならず、禁止せずに放置できるでしょう。しかしそういった対策カードがないのが現実ですから、《王冠泥棒、オーコ》を禁止するなら、当面の間は《死者の原野》にも何らかの手を加えるべきです。

時を解す者、テフェリー

《時を解す者、テフェリー》を禁止すべきという意見もあるかと思います。《時を解す者、テフェリー》はゲームの面白さを損なわせ、対戦相手にとって不満がたまるカードです。エターナル環境の定番カードにたとえるならば、《血染めの月》《虚空の杯》あたりでしょう。非常に厄介ですが、フォーマットをゆがめるほどではなく、単体で極端に強いカードではありません。《時を解す者、テフェリー》が禁止されたら喜ばしいですが、決してその必要はないでしょう。

僕の提案はこうです。まず、《王冠泥棒、オーコ》をスタンダードから永久追放します。そして、《死者の原野》を1枚だけ使用できる制限カードとし、土地対策/強力なビートダウン向けのカードが環境に参入した際に制限解除するかもしれないとの声明を付け加えるのです。もちろんこれはひとつの可能性として提案したのであり、現状に即して判断しただけです。ミシックチャンピオンシップの動向によっては、今回の提案事項も変わり得るでしょう。ただ、そうなる確率は低いように思います。

とはいえ、今はミシックチャンピオンシップを楽しむことにしましょう。そして、近いうちに”ぶっ壊れのオーコ”にお別れを告げられることを期待して。

ではまた次回。

アーネ・ハーシェンビス (Twitter/Twitch)

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Arne Huschenbeth ドイツの若きプロプレイヤー。スタンダードへの造詣が深く、グランプリ・リミニ2016優勝、プロツアー『破滅の刻』では構築ラウンド10勝0敗など数々の実績を誇る。 他にも3度のGPトップ8経験を持つ彼は、2017-2018シーズンでも安定した成績を残し、41点ものプロポイントを獲得。見事ゴールド・レベルに到達した。 Arne Huschenbethの記事はこちら