はじめに
みなさんこんにちは。
来週末にはアメリカでEternal Weekend 2019が開催されます。今月はSCGOやFormat Playoffなど、リアルやMOでレガシーのイベントが充実していました。
今回の連載では、SCGO PhiladelphiaとLegacy MOCS #11991023の入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCGO Philadelphia
《もみ消し》 Delverの復権
2019年10月5-6日
- 1位 Temur Delver
- 2位 Naya Loam
- 3位 Temur Delver
- 4位 Jeskai Mentor
- 5位 ANT
- 6位 Aluren
- 7位 Temur Delver
- 8位 Dredge
Ayers/Dilks/Rosum
トップ8のデッキリストはこちら
チーム戦でおこなわれたSCGO Philadelphiaは、現環境で最も安定した成績を残しているTemur Delverを選択したチームが多く、優勝もTemur Delverでした。
Slow Depthsなど非青デッキの活躍が著しかった最近のレガシーでしたが、今大会ではプレイオフに入賞したチームの半数が青いデッキを選択していました。
SCGO Philadelphia デッキ紹介
「Temur Delver」「Naya Loam」
Temur Delver
3 《Volcanic Island》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《汚染された三角州》
4 《不毛の大地》
-土地 (18)- 4 《秘密を掘り下げる者》
4 《タルモゴイフ》
3 《わめき騒ぐマンドリル》
-クリーチャー (11)-
今大会でチームを優勝に導いたDaryl Ayers選手は、グランプリ・アトランタ2019で併催されたPTQも同じ《もみ消し》型のTemur Delverで抜けていることからも完成度の高さが伺えます。
《レンと六番》が登場して以来、《もみ消し》で相手のフェッチランドを妨害しつつ《敏捷なマングース》など除去されにくい軽いクリーチャーでプレッシャーをかけていくテンポ戦略から、ミッドレンジ寄りにシフトしていきました。
Daryl Ayers選手のリストは、最近主流となっているミッドレンジ寄りのNo Bad Cards Temurと伝統的な《もみ消し》型のハイブリットのようなバージョンに仕上がっています。Golgari Depthsの《暗黒の深部》の誘発を止めることは不可能ですが、《吸血鬼の呪詛術士》や《不毛の大地》、《エルフの開墾者》の起動能力を妨害できるので、《もみ消し》を採用することによってとの相性が改善されています。
☆注目ポイント
《わめき騒ぐマンドリル》は、《稲妻》1枚で落とされないので同型において追加の《タルモゴイフ》のように機能し、《突然の衰微》や《致命的な一押し》でも処理されません。軽いスペルを多用するこのデッキではほぼ1マナで出せる主戦力として活躍し、トランプル付きなので《真の名の宿敵》で止まらないのもポイントです。
《もみ消し》はフェッチランドの起動を妨害して相手のマナを縛る以外にも、相手の《不毛の大地》からマナ基盤を守ったり、青白の「奇跡」や《安らかなる眠り》の誘発をカウンターしたりと、このデッキが比較的苦手とするマッチアップで活躍します。Golari Depths とのマッチアップでは1ターン凌ぐことができれば、《レンと六番》で《不毛の大地》を使い回す余裕も出てくるのでゲームが有利に進みます。
同型と《暗黒の深部》系を特に意識しており、サイドには《水没》が3枚と多めに採られています。MaverickやSelesnya Depthsの《聖遺の騎士》など、このデッキにとって対処が困難な高タフネスのクリーチャーも対策できる優秀なサイドボードカードです。
Naya Loam
1 《冠雪の森》
2 《Savannah》
2 《Taiga》
1 《Plateau》
1 《ドライアドの東屋》
1 《隠れた茂み》
4 《吹きさらしの荒野》
2 《樹木茂る山麓》
1 《地平線の梢》
1 《ボジューカの沼》
1 《カラカス》
1 《セジーリのステップ》
1 《平穏な茂み》
4 《不毛の大地》
2 《演劇の舞台》
1 《爆発域》
2 《暗黒の深部》
1 《イス卿の迷路》
-土地 (30)- 3 《エルフの開墾者》
1 《ガドック・ティーグ》
4 《聖遺の騎士》
1 《秋の騎士》
1 《ラムナプの採掘者》
-クリーチャー (10)-
3 《虚空の力線》
2 《活性の力》
2 《窒息》
2 《アメジストのとげ》
1 《溜め込み屋のアウフ》
1 《紅蓮破》
1 《赤霊破》
-サイドボード (15)-
今回Zan Syed選手が使用したNaya Loamは、Delver系以外で《レンと六番》の能力を最大限に活用できるデッキとして今大会で注目を集めていたデッキの一つでした。
Loam系とされていますが、メインに採用されている《壌土からの生命》はわずか1枚なことからも、《レンと六番》がいかに強力なカードなのかを物語っています。
《不毛の大地》を使い回せる《レンと六番》を始めとして、《暗黒の深部》や《聖遺の騎士》など対処困難な脅威が多数搭載されているため、現環境トップメタのTemur Delverに強いデッキです。
☆注目ポイント
《レンと六番》のほかに《ラムナプの採掘者》も採用されており、《不毛の大地》を使い回す手段が豊富です。《爆発域》や《地平線の梢》を再利用しアドバンテージを稼ぐことも可能で、《レンと六番》の強さを最大限に活かせる構成になっています。
《セジーリのステップ》をサーチできる《聖遺の騎士》にアクセスできるので、マリッドレイジトークンも守りやすくなります。《緑の太陽の頂点》によって状況に応じてクリーチャーをサーチしてくることができることを活かし、メインから《秋の騎士》や《ガドック・ティーグ》、サイドには《溜め込み屋のアウフ》といった特定の戦略に刺さるクリーチャーが見られます。
このタイプのデッキの弱点とされている《基本に帰れ》や 《血染めの月》といったアンチ特殊地形エンチャントも、《活性の力》で対処できるようになったののでコンボ以外で苦手なマッチアップが少なくなりました。
Legacy MOCS #11991023
2019年10月12日
- 1位 Grixis Delver
- 2位 Temur Delver
- 3位 Grixis Ninja
- 4位 Hogaak
- 5位 Temur Delver
- 6位 Temur Delver
- 7位 Dredge
- 8位 UW Stoneforge
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MOで開催されたMOCSの予選大会で、多くの強豪プレイヤーが参戦していました。
6-2以上の結果を残していたデッキを見ていくと、唯一全勝を果たしたデッキは《厚かましい借り手》を採用したGrixis Delverでした。7-1のデッキは、SCGOでも結果を残していた《もみ消し》型のTemur DelverとGrixis《虎の影、百合子》で、青いアグロコントロールが幅を利かせています。
Legacy MOCS #11991023 デッキ紹介
「Grixis Delver」「Temur Delver」「Grixis Ninja」
Grixis Delver
3 《Underground Sea》
2 《血染めのぬかるみ》
2 《溢れかえる岸辺》
2 《汚染された三角州》
1 《霧深い雨林》
1 《沸騰する小湖》
4 《不毛の大地》
-土地 (19)- 4 《秘密を掘り下げる者》
4 《戦慄衆の秘儀術師》
2 《厚かましい借り手》
2 《グルマグのアンコウ》
-クリーチャー (12)-
下の環境でも使われる可能性のあるカードとして話題となっていた《厚かましい借り手》を採用したGrixis Delverで、今大会で唯一全勝を果たしたデッキでした。
Grixisバージョンの強みは《グルマグのアンコウ》や《思考囲い》、《疫病を仕組むもの》にアクセスできることです。
☆注目ポイント
「出来事」としてバウンス能力を持ち合わせている《厚かましい借り手》は、現環境で幅を利かせているマリッドレイジトークンを含めた厄介なパーマネントを対処する手段となります。クリーチャーとしても瞬速3/1飛行というスペックで、メインからも十分に戦力になる性能だということが証明されました。
《レンと六番》や《疫病を仕組むもの》などで対処されやすくなった《若き紅蓮術士》よりも《戦慄衆の秘儀術師》が優先されており、《思考囲い》やキャントリップスペルを再利用することでアドバンテージを稼ぎだします。
メインから採用されている《再活性》は《思考囲い》との相性が良く、Temur Delverとのマッチアップでは《タルモゴイフ》や《真の名の宿敵》を釣ったり、Reanimatorとのマッチアップでも相手が墓地に落とした大型クリーチャーを逆に利用するという使い方もできます。サイドの《金粉のドレイク》はマリッドレイジトークン対策になり、《厚かましい借り手》でバウンスさせることで再利用することもできます。
Temur Delver
3 《Volcanic Island》
3 《溢れかえる岸辺》
2 《汚染された三角州》
2 《沸騰する小湖》
1 《霧深い雨林》
1 《冠水樹林帯》
4 《不毛の大地》
-土地 (19)- 4 《秘密を掘り下げる者》
2 《呪詛呑み》
4 《タルモゴイフ》
2 《真の名の宿敵》
-クリーチャー (12)-
スタンダードやモダンでも活躍している《王冠泥棒、オーコ》は、レガシーでも通用する逸材であることが証明されました。
《レンと六番》と《王冠泥棒、オーコ》の2種類のプレインズウォーカーが採用されるようになり、Temur Delverはよりミッドレンジ寄りの構成になりました。
☆注目ポイント
《王冠泥棒、オーコ》は初期忠誠値が4と高めで火力で落ちにくく、[+2]能力から入れば《マグマの陥没孔》からも生き残れます。食物トークンを生成する[+2]能力は、BurnやUR Delverなど火力スペルを多用するデッキに対して延命手段となり、相手にとっては想像以上に厄介な能力です。
[+1]能力は食物トークンを3/3に変えてクロックを強化したり、《虚空の杯》など厄介な置物を無力化したりと多くのマッチアップで活躍します。このデッキにとっては貴重な、メインから採用できるマリッドレイジトークン対策にもなり、墓地を使用しない勝ち手段としても機能する優秀なプレインズウォーカーです。
サイドに3枚と多めに採られている《墓掘りの檻》は、MOに多いHogaakやDredge、Reanimatorなど墓地を使うコンボデッキとのマッチアップを想定したものです。今大会でも上位に多く入賞していたことからも、MOでは墓地対策を多めに用意することをお勧めします。
Grixis Ninja
2 《沼》
1 《山》
1 《Badlands》
1 《Underground Sea》
1 《Volcanic Island》
4 《汚染された三角州》
4 《虹色の眺望》
1 《血染めのぬかるみ》
1 《沸騰する小湖》
-土地 (20)- 4 《悪意の大梟》
3 《瞬唱の魔道士》
2 《ボーラスの占い師》
1 《虎の影、百合子》
2 《疫病を仕組むもの》
2 《巧妙な潜入者》
1 《堕ちた忍び》
-クリーチャー (15)-
忍者クリーチャーでアドバンテージを取っていくアグロコントロール。《虎の影、百合子》や《巧妙な潜入者》といった忍者クリーチャーで《悪意の大梟》などをバウンスし、再利用することでアドバンテージを稼ぐことができます。軽いハンデス、除去など一通り揃っているので多くのフェアデッキに強い構成です。
クロックが細いのでDelver系と比べるとコンボデッキとのマッチアップは相性が悪くなりますが、ハンデスとカウンターがあるので、《トーラックへの賛歌》など追加の妨害スペルが投入されるサイド後は互角以上の勝負ができます。
☆注目ポイント
忍者クリーチャーの《虎の影、百合子》、《巧妙な潜入者》は「忍術」コストも軽く、継続的なアドバンテージ源として活躍します。《堕ちた忍び》は「忍術」コストは重くなりますが打点が高く、ライブラリーのカードを盗み出す能力はゲームを決定付けるほどのインパクトがあります。
「忍術」は打ち消しにも耐性があるので青いフェアデッキに強く、《悪意の大梟》や《瞬唱の魔道士》、《ボーラスの占い師》など場に出たときの能力持ちのクリーチャーを多数採用しているので、それらを再利用することでさらにアドバンテージを稼ぐことができます。《疫病を仕組むもの》を戻して宣言をリセットする手段にもなるので覚えておきたいところです。
『エルドレインの王権』からの新カードも採用されています。墓地のカードの枚数を参照にする《湖での水難》は、フェッチランドを切ったり軽いスペルをキャストすることが多いレガシーでは、序盤から相手の墓地にカードが数枚あることも珍しくなく、万能なカウンターや除去として機能します。
総括
『エルドレインの王権』で登場した《王冠泥棒、オーコ》は、レガシーでも使えるプレインズウォーカーだということが証明されました。
Temur Delverを中心に《レンと六番》を採用したデッキは安定した成績を残し続けており、特にMOでは《レンと六番》を無視できるDredgeやHogaakなど墓地を使ったデッキが活躍しています。
以上、USA Legacy Express vol.159でした。来週末にはアメリカでEternal Weekend 2019が開催されるのでレガシーファンの方はお見逃しなく。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!