優勝者デッキテク ~山本 圭一のウルザフード~
晴れる屋メディアチーム
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By Tsutomu Date
「押し付けが強い」とされるモダン環境。カウンターや除去のようなリアクティブなカードで受けきることは難しく、「いかに自分の得意なムーブで相手を倒すか」がテーマと言っても過言ではない。
爆発的なマナ加速からビッグムーブを叩きつけるトロンやアミュレットタイタン、いち速く相手のライフを削りきるバーン、自らのライフを糧とする《死の影》、各種部族のビートダウンも健在で、その勝ち筋とデッキタイプは多岐にわたる。
見事第8期モダン東海王に輝いた山本 圭一は、各カードのギミックが多く、アーティファクトシナジーを多く含んだ「《最高工匠卿、ウルザ》」デッキ、その最新型である「ウルザフード」を選んだ。
山本は以前から《最高工匠卿、ウルザ》デッキを使い続け、晴れる屋名古屋店の店舗大会や、「The Last Sun 2019予選」で上位に食い込んでいる。
その山本に、「ウルザフード」についてのインタビューをお願いした。
――「優勝おめでとうございます。本大会にあたり、どうしてこのデッキを選択したのでしょうか?」
山本「ありがとうございます。モダンでは、『モダンホライゾン』発売直後から《最高工匠卿、ウルザ》を使ったデッキを使っていました。《飛行機械の鋳造所》型や、《ジェスカイの隆盛》型、《練達飛行機械職人、サイ》や《崇高な工匠、サヒーリ》が入った《逆説的な結果》型も使いましたね。こちらは選択肢が多く、プレイが難しかったので断念しましたが」
山本「今回は《王冠泥棒、オーコ》の入ったフード型を試したかったので選択しました。せっかく高い《王冠泥棒、オーコ》を買ったので減価償却しないと(笑)」
――「一言で「ウルザ」デッキと言っても、型が随分存在するのですね。やはり《最高工匠卿、ウルザ》が好きでずっと使い続けていた、ということでしょうか?」
山本「そうですね。元々《ボーラスの工作員、テゼレット》が好きで、それよりももっと仕事するところが好きですね」
――「アーティファクトを一定数以上入れる構築が必要な箇所に共通点がありますね。ちなみにデッキの調整はどのように行ったのですか?」
山本「今は『Magic Online』をやっていないので、使ったことのないカードをその都度晴れる屋で試して、ブラッシュアップを繰り返していく感じですね。今回はPTQで抜けたデッキリストを見つけたので、そこから調整しています。メインの《神秘の聖域》は初手にくるとむかつく(笑)ので1枚減らしたり、サイドボードはエルドラージトロンを意識して《儀礼的拒否》を増やしたりしています。また、同系デッキには必ず当たると思っていたので《神秘の論争》も入れています」
――「《湖に潜む者、エムリー》や《王冠泥棒、オーコ》のように、『エルドレインの王権」のカードが多く入っていますが、既存の「ウルザ」デッキとはどう違うのでしょうか?」
山本「コンボ要素が高いデッキだったのですが、クリーチャーで殴る要素が大きくなっていますね。元々分岐が多くて難しいデッキではあるのですが、若干扱いやすくなりました」
――「なるほど。ではデッキの一押しカードを教えてください」
山本「さっき言った通り、減らしたけど《神秘の聖域》は強かったです」
――「決勝戦でも《発明品の唸り》や《謎めいた命令》を戻すムーブが強かったですね」
山本「《発明品の唸り》を戻して《飛行機械の鋳造所》をサーチしてコンボを完成させることもできました」
――「《発明品の唸り》も強力でしたね」
山本「《発明品の唸り》はサイドからが特に強いカードですね。今回はフード型で、殴るデッキになっているので枚数は少なめです」
――「前の質問と被るところもありますが、どのようなメタゲームを想定していましたか?
山本「バーン、トロン、ウルザあたりを意識していました。一般的なフェアデッキには2種類のレジェンド(《最高工匠卿、ウルザ》、《湖に潜む者、エムリー》)と《王冠泥棒、オーコ》がアドバンテージを取り続けるので、相性はいいです」
――「では各デッキとのマッチアップとサイドボードプランを教えてください」
山本「まだまだ検討段階なのであまりプランは固まってないです(笑) 相手のデッキ内容によって変わる部分も大きいので、暫定的なものです。先手か後手かでも調整が必要ですね」
山本「バーンはメインから有利なので、サイドから《致命的な一押し》を入れるぐらいですね」
山本「一番苦手なマッチアップです。《虚空の杯》X=0と《大いなる創造者、カーン》がつらいです。入れたいカードは決まっているけど、抜きたいカードはまだ固まっていません。今は少しずつパーツを抜いて試しています」
山本「恐らく有利なマッチアップです。アドバンテージを取るカードが多くて、《王冠泥棒、オーコ》が2ターンぐらい生き残れば勝てます。デッキの構成によっては《墓掘りの檻》や《虚無の呪文爆弾》を入れることもありえますね」
山本「対戦したことはないですが、相手の方が速いので苦手なはずです。つらいと思います」
山本「メインはつらいマッチアップです。《金属の叱責》を引いているかで大きく勝率が変わります。サイド後は《減衰球》でなんとかしたいですね」
山本「恐らく有利なマッチアップです。相手の攻撃が直線的なので、盤面を作ってしまえば巻き返されることは少ないです。注意しなければならないのは《呪文捕らえ》ぐらいですね」
――「本大会を踏まえて、調整していくとしたらどのような変更がありますか?」
山本「変えるとしたらデッキタイプ自体が変わってしまうので、メインはほぼ変えるところはないですね。これから詰めていくとしたらサイドボードです。IN/OUTをもう少し真面目に考えます(笑) 先のコメントもまだまだわかっていないところが多いので、参考程度にして貰えると」
――「未知数なところが多いということですね。では最後に、これからこのデッキを使いたいプレイヤーへのアドバイスをお願いします」
山本「引きによっては何もできない時もありますし、難易度高めのデッキですが、使い続けると味が出てくるスルメ系のデッキでもあります。《逆説的な結果》型に比べればそうでもないですが、プレイの選択肢がとても多いですね。《ミシュラのガラクタ》をいつ、どの対象に使うか、《謎めいた命令》を構えるか、メインで動くか、《最高工匠卿、ウルザ》の能力を起動するか否か。そのあたりを楽しめる人にはお勧めです。あと、禁止カードが出そうなデッキなので、そのあたりも注意して貰えれば(笑)」
――「ありがとうございました」
群雄割拠のモダン環境において、山本は《最高工匠卿、ウルザ》を信じ続けた。自らが語る通り、ここまでデッキを使いこなす道は容易ではなかったはずだ。そしてデッキは裏切ることなく、ついにこのモダン東海王決定戦で応えてくれた。その信念と栄誉を大いに讃えたい。