Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/11/29)
禁止後の環境を制する2つのデッキ
《王冠泥棒、オーコ》《むかしむかし》《夏の帳》が先月に禁止となりました。スタンダードは新たなメタゲームに向けて仕切り直しになったのです。
すでにMTGアリーナやMagic Onlineで新環境の大会結果が出ていますが、ベストデッキ/アーキタイプの筆頭にくるものが2つあることが明らかになってきました。ひとつはジェスカイファイアーズ(現状最も人気の型は、プレインズウォーカーのパッケージや《願いのフェイ》を採用せず、「騎兵」と《予見のスフィンクス》を搭載したもの)。そしてもうひとつがキャットオーブンです(他の《魔女のかまど》デッキと戦ううえでベストカードとなる《波乱の悪魔》を運用できるジャンドカラーが現在は最も有力)。
愛用してきたゴルガリキャットオーブン
Magic Onlineのグラインダーであるカルロス・アレクサンドル/Carlos Alexandre(Magic Onlineのアカウント名:_Batutinha_ )は禁止後初のPTQで準優勝を果たしました。そのときに使用したのが、ゴルガリカラーのキャットオーブンです。
私もこのアーキタイプを長らく愛用してきました。《王冠泥棒、オーコ》の禁止以前から、その健全なマナベースと《王冠泥棒、オーコ》の枠に入れた《真夜中の死神》の虜になっていたのです。そしてBatutinhaが予選通過の目前まで迫ったことで、私のこのデッキに対する確信は強まりました。
最善のフィニッシャー枠は何か
キャットオーブンのフィニッシャー枠は未だに意見が分かれているようです。《戦慄衆の将軍、リリアナ》?《呪われた狩人、ガラク》?《フェイに呪われた王、コルヴォルド》?《グレートヘンジ》?しかし私からすれば《夏の帳》禁止によってその答えがハッキリとわかるようになりました。最強のフィニッシャー枠は《戦争の犠牲》です。
Batutinhaはこの事実を認識していました。メインデッキに《戦争の犠牲》を4枚も入れていることからわかるように、戦術もデッキもこのフィニッシャーに期待したものになっています。《戦争の犠牲》は《夏の帳》の禁止で大幅に強化されただけでなく、《創案の火》《魔女のかまど》《パンくずの道標》、そしてクリーチャーやプレインズウォーカーが並ぶ現在のメタゲームに見事に合致しています。
現在のデッキリスト
《戦争の犠牲》は今後数週間に渡って大きな影響をもたらすでしょう。ただ、他にも言及しておきたいカードがいくつかあります。まずは現在のデッキリストを見ていただくことにしましょう。
カード選択
《探索する獣》
見落とされがちなカードとしてまず思い浮かぶのが《探索する獣》です。《死者の原野》が禁止になり、フードが環境を席巻すると、《意地悪な狼》に弱い《探索する獣》は姿を消しました。現在《意地悪な狼》はわずかに使われる程度となり、《時を解す者、テフェリー》が再び人気を博してきています。《探索する獣》は《時を解す者、テフェリー》を対処するだけでなく、ジェスカイファイアーズが全体除去枠に選択している《轟音のクラリオン》を生き抜くことができます。その大きなクロックによって《創案の火》がゲームを支配するだけの猶予を与えません。
また、ブロックされづらいという利点は健在です。キャットオーブンはパワー3以上のクリーチャーが数少なく、ましてや《探索する獣》と相撃ちすることは叶いません。《大釜の使い魔》のチャンプブロックで時間を稼がせないことが、ミラーマッチを制するひとつの重要なゲームプランとなります。
《暗殺者の戦利品》
《暗殺者の戦利品》もあまり見かけなくなりました。多大なアドバンテージを生む《創案の火》を破壊できますし、元々土地を多く採用しているジェスカイファイアーズに土地を1枚献上しても基本的に大した意味はありません。今現在、3番目に人気のアーキタイプは《朽ちゆくレギサウルス》に《エンバレスの宝剣》を装備させるデッキだと思われます。このコンボがこれほど強力なのは、インスタントタイミングで妨害できる有効な手段がごくわずかだからです。そしてその数少ない手段のひとつが《暗殺者の戦利品》です。
《大釜の使い魔》
コントロールやミッドレンジに対し、単体では弱いカードです。《魔女のかまど》2枚と《大釜の使い魔》1枚ならば毎ターン2点ドレインできますが、《大釜の使い魔》2枚と《魔女のかまど》1枚ではこの動きを実現できません。序盤に《大釜の使い魔》を2枚引きたくないですし、通常はロングゲームになってコンボパーツを揃えられます。
26枚の土地
以前のフードサクリファイスでは、24枚の土地に加えて《むかしむかし》が4枚採用されていました。今現在このアーキタイプで23枚しか土地を搭載していないリストには理解に苦しみますし、26枚以上のリストは見たことがありません。土地を伸ばすことはこのデッキにとって必須です。序盤に土地が置けなければ、後々《パンくずの道標》を起動する機会が減ります。つまり、土地が原因で手札に加わわる枚数が1枚、2枚、3枚と減っていくわけです。それにこのデッキには《ロークスワイン城》というマナの使い道があります!
《虐殺少女》の不採用
このカードは《世界を揺るがす者、ニッサ》や《エッジウォールの亭主》を使うデッキに対して抜群の働きをしていました。しかし、これらのデッキは《王冠泥棒、オーコ》と《むかしむかし》の禁止によって大きな損失を被り、使用率が低下しているのが現状です。75枚のなかに1枚も入れないのは大胆過ぎる可能性がありますが、以前ほど効果的ではないでしょうし、特定の相手に勝つために必要だとすら思いません。
サイドボードの《軍団の最期》
こちらも使われなくなった理由がわからないカードです。20体のゾンビトークンを一掃する派手さはなくなりましたが、クリーチャー1体を除去し、相手の手札を確認し、さらには手札から同名カードを追放できる可能性すらあります。ゴルガリアドベンチャーは《真夜中の騎士団》や《採取/最終》で墓地から《エッジウォールの亭主》を回収しますから、墓地送りにするだけでは足りないケースもあります。ラクドス騎士に対しては、手札を確認することに大きな価値があり、《エンバレスの宝剣》や《黒槍の模範》をケアできるようになれば一層戦いやすくなります。
《朽ちゆくレギサウルス》
《恋煩いの野獣》が欲しい相手には《朽ちゆくレギサウルス》の方が優れていると思います。具体的にはグルールやティムール再生です。とはいえ、正直言えば絶対の自信があるわけではありません。《恋煩いの野獣》はたまに攻撃できないですし、ティムール再生はこのクリーチャーを対処できる《霊気の疾風》を擁しています。
サイドボードガイド
環境に存在するデッキリストやメタゲームはまだ流動的な状態ですが、手始めに以下のサイドボードガイドが参考となるでしょう。
ジェスカイファイアーズ
対 ジェスカイファイアーズ
ジャンドサクリファイス
対 ジャンドサクリファイス
ラクドス騎士
対 ラクドス騎士
ティムール再生
対 ティムール再生
グルールアグロ / アドベンチャー
対 グルールアグロ / アドベンチャー
ゴルガリアドベンチャー
対 ゴルガリアドベンチャー
赤単
対 赤単
おわりに
私もまだ環境を模索しているしている最中ですし、今後数週間に渡って状況は変化し続けていくでしょう。とはいえ、今現在の自分の立ち位置に満足しています。この記事を通じ、みなさんが新たな環境を攻略し始めるきっかけになれたら幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
ファブリツィオ・アンテリ (Twitter)