はじめに
みなさん、はじめまして!
私はルーカス・エスペル・ベルサウド/Lucas Esper Berthoud。プロツアー優勝 、Hareruya Latinとしてチームシリーズ決勝進出といった経歴があり、2019年シーズンのマジック・プロリーグに所属しています。晴れる屋は数年に渡って私をサポートし続けてくれているので、今回晴れる屋のコンテンツに貢献できることを嬉しく思います。
本日は、ミシックチャンピオンシップ VII(MC VII)の調整についてお話します。本大会において、私は新デッキであるシミックランプを使用しました。
6 《島》
4 《繁殖池》
4 《神秘の神殿》
2 《ギャレンブリグ城》
2 《ヴァントレス城》
-土地 (28)- 2 《樹上の草食獣》
1 《金のガチョウ》
4 《枝葉族のドルイド》
4 《ハイドロイド混成体》
4 《発現する浅瀬》
4 《茨の騎兵》
1 《裏切りの工作員》
1 《終末の祟りの先陣》
-クリーチャー (21)-
私はテストプレイや大会に向けた調整過程にこだわりを持っています。この点についてはかつてフリーフォーラムに書いたことがありますので、興味をお持ちの方はこちらからご覧ください。
私はマジック以外にもフルタイムの仕事をしていて、通常はテストプレイのために十分な時間を確保できないので、できるだけ効率化に努めています。私が重要視しているのは、そのマッチアップにおける根源的な問題を見極めること、そしてテストプレイ・動画視聴・記事閲覧から得た情報を有意義なメモとして記録しておくことです。一連の記録を見返すことで、自分が学んできたことを日記のように振り返れるようになっています。今回はこの日記を濃縮した形でみなさんにお伝えしていきましょう。
これからご紹介する思考プロセスを通じて、我々が新環境について学んだことを理解していただけたら幸いです。
今大会の調整メンバーは、私、カルロス・ロマオ/Carlos Romao、マルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalho、リー・シー・ティエン/Lee Shi Tian、アンドレア・メングッチ/Andrea Mengucci、そして同大会に出場しないにもかかわらず親切に協力してくれたアンソニー・リー/Anthony Leeでした。
調整録をご覧いただいた後は、サイドボードプラン、主要なマッチアップの戦い方、マリガン判断について解説していきます。
ルーカスの調整録
・調整初日から際立っていたデッキは、ジェスカイファイアーズ、ジャンドサクリファイス、ティムール再生、ラクドス騎士。なかでもジェスカイとジャンドが強いことはすぐにわかった。MC VIに向けた調整経験からわかっていることだが、ラクドス騎士は少し意識されただけで負け得る。
・ジェスカイは《予見のスフィンクス》で一気に強くなった。
・まだ調整を始めたばかりだが、ジェスカイはジャンドに有利に戦える。サイドボードから《解呪》と《敬虔な命令》を投入できるのが一因。
・アンドレア・メングッチが《戦争の犠牲》を4枚搭載したゴルガリランプを考案。ジェスカイに対してかなり強そうだった。マナ加速から《戦争の犠牲》を1回でも唱えれば、大体ゲームは終了する。マナ加速呪文の枠には、《轟音のクラリオン》で除去されない《豆の木の巨人》を入れるのが肝。ゴルガリランプは他にいくつかの問題を抱えていたが、とはいえジェスカイが無敵ではないことを示した。これと並行してわかったことだが、フラッシュやコントロールなどの打ち消し呪文を使うデッキはジェスカイに強力なゲームプランを用意できる。こういった事実を鑑みると、ジェスカイファイアーズは安全なデッキ選択ではないという印象。ジェスカイファイアーズの人気が高まれば、参加者たちは対抗策を用意してくることだろう。
・ゴルガリランプの大きな問題点は、ジャンドサクリファイスに対して負けが込んでいたこと。サクリファイスが使う低マナ域のカードが莫大なカードアドバンテージをもたらすものばかりなので、《戦争の犠牲》を唱えるころには十分すぎるほどのアドバンテージを獲得されてしまっている。
・マルシオ・カルヴァリョ、カルロス・ロマオ、リー・シー・ティエンはジャンドサクリファイスを調整し続けていた。その過程でマルシオはMTGアリーナのランク戦とMagic Onlineのリーグ戦を合わせて32-1という成績を叩き出した。これはすごい数字だ。(後になって、チーム全員がどのデッキを使ってもアリーナのランク戦で勝率が80%オーバーであることが判明。以降はランク戦の勝率を鵜呑みにしないようにした。)
・Magic OnlineのPTQトップ8にジェスカイファイアーズが4つ、サクリファイスが4つ入賞。メタゲームの二極化が進んでいる。
・ジェスカイファイアーズとジャンドサクリファイスのスパーリングを追加で行い、ジャンド側はさまざまなプランを試行。新たに投入された《フェイに呪われた王、コルヴォルド》が革命をもたらした。以前は、お互いにデッキエンジンを潰し合ってゲームが落ち着くとジェスカイファイアーズが勝つ傾向にあった。しかし《フェイに呪われた王、コルヴォルド》が状況を変えた。《フェイに呪われた王、コルヴォルド》はたった1ターンで2~4枚のカードを引けるため、ジェスカイ側の努力を水の泡にしたうえで大きな脅威が残る。《戦争の犠牲》や《フェイに呪われた王、コルヴォルド》を使うようになったジャンドは終盤戦に強くなり、ジェスカイはもっとテンポを重視したゲームにする必要が出てきた。だからこそ、ジャンドに《意地悪な狼》を2~3枚入れておくことが有効なプランになってきている。ジェスカイが展開する最初のクリーチャーをさばければ、時間を大きく稼げるからだ。
・上記のような変更により、両者の相性はかなり均衡してきた。同時に、プレイヤーの腕が試される要素が強まり、プレイしていて楽しい。脳内ではジャンド側が有利だと思っていたが、実際にはファイアーズの勝利数がわずかに多い。
・ジャンドは《フェイに呪われた王、コルヴォルド》に活路を見出しただけでなく、メインデッキに《打ち壊すブロントドン》と《戦争の犠牲》を採用し始めた。これは理にかなった選択だ。どちらのカードもミラーマッチ、ジェスカイ戦で活躍が見込める。ただし、より開かれたメタゲームではあまり効果的ではない。安易に投入するのは危険だろう。
・新しいデッキの開発は継続して行っていた。リー・シー・ティエンはイゼットフェニックスと白単が気に入っていたが、彼の意見に賛同するものはいなかった。イゼットフェニックスのカードは単純に取るに足らないものが多く、警戒すべき脅威は《弾けるドレイク》しかない。白単に関しては、デッキが素直過ぎてデッキ公開性では結果を出しづらい印象だ。《轟音のクラリオン》《波乱の悪魔》《虐殺少女》などがある手札を求めてマリガンされることが容易に想像される。
・今までに観たことのなかったツイッチチャンネルを見て回っていると、シミックランプを使っている配信に巡り合った。配信者でありミシックチャンピオンシップ予選の通過者であるFleshEatinGnomeが発端となって数を増やしたデッキである。従来との大きな違いは、終盤戦に強い呪文である《破滅の終焉》2枚と《終末の祟りの先陣》が採用されていることだ。《破滅の終焉》で《終末の祟りの先陣》をサーチすれば同一ターン内に一気に勝つことができるため、《集団強制》よりも断然良い選択肢だと思われる。さらに、《破滅の終焉》は序盤戦で柔軟に使えるという副次的な魅力がある。たとえば、3ターン目に《金のガチョウ》をサーチすれば4ターン目に《世界を揺るがす者、ニッサ》や《茨の騎兵》を唱えられる。
・シミックランプの動画アーカイブを10時間ほど視聴した結果、このデッキは強力かつ革新的であるという印象を抱いた。アンソニー・リーはより洗練された構成を練り上げ、PTQを優勝している。ただし、ジェスカイファイアーズとの相性は甲乙をつけがたい。ジェスカイが理想的な手札だったとしても、シミックランプは爆発的なマナ加速からブロッカーで盤面をこう着させ、勝利に結びつく決定打を唱えられる展開もある。その反面、こちらのマナクリーチャーに除去を打たれるとマナ加速が滞ってしまい、その間にフィニッシャーを展開され《時を解す者、テフェリー》でブロッカーを排除されるとあっという間にゲームが終わることもある。
・《轟音のクラリオン》問題を解決するべく、シミックランプを異なる構成にしてみた。土地を増やし、《成長のらせん》や《樹上の草食獣》でマナ加速する形だ。ジェスカイファイアーズとの相性は若干改善されたが、意外にもジャンドサクリファイスとの相性も良くなった。《楽園のドルイド》や《金のガチョウ》は《波乱の悪魔》の格好の的になっていたからだ。
・対ジェスカイファイアーズに焦点を当てた練習を行っていると、依然として不利であるように感じた。一般的に爆発的なターンを迎えるのは相手の方が早く、《時を解す者、テフェリー》や《霊気の疾風》でブロッカーをバウンスされるとタイトなダメージレースで競り負けてしまう。《創案の火》を止めるカードをもっとサイドインできればサイド後は有利になると思うが、そうなるとサイドアウトするカードの判断が極めて難しくなる。完璧なサイドボードを目指して多大なる努力を費やすことにした。
・シミックについて考えを巡らせている最中、チームはジャンドサクリファイスの調整を続けていた。ミラーマッチでのトレンドは《戦争の犠牲》を多く詰め込むことになっていたが、これにはいくつかの課題が包含されていた。まず、《戦争の犠牲》を重視するならばマナ加速が重要になるため、マナ源や《楽園のドルイド》を増加させる必要がある。しかし他方でこういったカードは消耗戦に向いたカードではないため、矛盾を生んでいた。また、《パンくずの道標》と《魔女のかまど》がミラーマッチで繰り返し破壊されるのであれば、《大釜の使い魔》や《魔女のかまど》の枚数を大幅に減らすのがベストという可能性がある。しかしそうすれば全体的に見たときにデッキのエンジンが活躍する機会を減らしてしまう。こういった考えから、《戦争の犠牲》を使われても終盤戦で勝てるゲームプランを用意すべきだとチームは判断した。カルロス・ロマオやアンソニー・リーは《戦慄衆の指揮》《ボーラスの城塞》《僻境への脱出》《夜の騎兵》などを候補に挙げたが、《フェイに呪われた王、コルヴォルド》だけで求めているゲームプランを達成できることがわかった。
Here's the list that got me to #1: https://t.co/rTJaRrWNKE
— Aaron Gertler (@AaronGertler) November 25, 2019
Includes links to video gameplay, an exportable decklist, and a page that will update with my current record. @ArenaDecklists pic.twitter.com/fSHlHk5gQA
・一方そのころ、アーロン・ガートラー/Aaron Gertlerが考案した《幸運のクローバー》を搭載したティムールアドベンチャーが流行の兆しを見せていた。彼がredditに投稿した詳細なデッキ解説によれば、ジャンドサクリファイス戦に難があるという。ティムールアドベンチャーは《波乱の悪魔》に介入する手段が欠けているからだ。だとすれば、除去一式を彼のデッキに組み込めば有利に戦えるのではないか。それに彼のデッキを見ていて思ったが、強力かつ予想外の角度から終盤戦を戦えるデッキを使う価値は高い。シミックランプをもっと懸命に調整する気になってきた。もし上手くまとまらなかったら、マルシオ・カルヴァリョの素晴らしいジャンドをシェアしてもらおう。
・ズヴィ・モーショヴィッツ/Zvi Mowshowitz の記事を読んだところ、ジェスカイファイアーズは《打ち壊すブロントドン》と《戦争の犠牲》をメインデッキに入れたゴルガリサクリファイスに相性が悪いらしい。しかしこれは我々の調整結果と食い違う(私は互角だと思っていた)。異なる結論になったのは、我々のファイアーズはズヴィのものよりもサクリファイス系に対するサイドボードプランが強かったからだろう(《敬虔な命令》《解呪》《覆いを割く者、ナーセット》、そして《変容するケラトプス》に対する除去)。ただ、ズヴィの記事はファイアーズの使用率が低下することを示唆している可能性がある。そうなれば、シミックランプの立場がわずかに良くなるだろう。
・サイドボードプランを洗練させていくほどシミックランプの評価が高まっていった。マリガン基準、特定のデッキと戦ううえで必要とされるものをハッキリと理解できるようになっている。
・しかし調整終盤になってジャンドサクリファイスに対するある弱点に気づいてしまった。相手の手札にブロッカーへの除去があり、なおかつ早いターンから《波乱の悪魔》とキャットオーブンコンボが揃っていると、ゲームを落ち着かせるまえに決着をつけられてしまう。ロンドンマリガンが施行されたことにより、腕の立つプレイヤーならばこういった手札しかキープしない戦略をとってくるかもしれない。ジャンドサクリファイスに勝てることがシミックランプを使う理由のひとつだったため、こういった負け筋があるのは大きな懸念事項である。
・しかしテストプレイを重ねていくと、《霊気の疾風》と《打ち壊すブロントドン》をサイドインすれば上記の問題を幾分か緩和することができた。これらの呪文はジャンドサクリファイスの展開を十分に遅らせてくれる。それにメインデッキに除去を多く積んでいるジャンドサクリファイスはほとんどいないと予想していたため、速攻プランを上手く機能させられるとすればサイドボード後だけだろう。また、《波乱の悪魔》を使えないゴルガリカラーはシミックランプとのダメージレースに全く勝てない。そう考えれば優秀なプレイヤーたちはジャンドよりもゴルガリを優先することはないだろうと思われる。とはいえ、絶対にそうだと思いこむのは危険だ。
・最終選考に残ったデッキはジャンドサクリファイスとシミックランプだった。チームが選択したジャンドは非常に完成度が高いし、どんなデッキにも戦える。ランク戦の環境でも多様性のあるメタゲームでもベストデッキなのは明らかだった。しかし心配なのは参加者たちがジャンドをベストデッキだと考え、それに対抗するようなデッキ選択をした場合だ。このような状況ならこれまではベストデッキを使う側に立ってきた。実際、今年はホガークヴァイン、エスパーコントロール、ゴロスランプ、フードというデッキを選択してきたのだ。ジャンドは柔軟性があり、単一の角度から対策するだけではなかなか止まらない。
・とはいえ、シミックランプは試してみるだけの価値がある出来に仕上がっている。サイドボードプランには本当に満足している(これについては後ほど言及)。
・正直に言えば、これだけ丹精を込めて作ったデッキだから、MCでどれだけ通用するのかを試してみたかった。この気持ちこそがシミックランプを選択した本当の理由なのかもしれない。もし本大会がMPLメンバーとして最後の大会になるならば、全身全霊で調整したデッキを使って自分が思うようにやってみたい。
シミックランプの使い方
シミックランプは今年導入された2つのルール、ロンドンマリガンとデッキ公開制度を巧みに利用したデッキです。
このデッキはモダンのトロンに非常によく似ています。環境で最も強力なフィニッシュができるようにデザインされていますが、その一方で序盤戦には脆くなっています。そのため、スピード勝負を仕掛けてくるデッキに対する最善の解答は、微妙な初手がきたらマリガンしてしまうことです。この戦術が実行できるのは、ロンドンマリガンがあるからこそ。さらにデッキが公開されているのであれば、リスクをとるべき場面とそうでない場面を見極めることができます。
序盤は常に同じ展開になるようにしましょう。最終的にゲームプランを遂行するには多くのリソースが必要になりますが、初手が5枚になっても戦えるデッキです。ドローや占術があるため、必要に応じて不足しているパーツを探しやすくなっています。一度デッキが回り始めればめったにガス欠を起こしません。私はロンドンマリガンでカードを戻す際に土地やその他のマナ源を多めにキープして失敗してしまう傾向にありますが、多くの要因が絡むので絶対のルールはありません。
理想的な初手は、3ターン目に5マナの呪文を唱えられるものです。可能性は高くないですが、可能であることは知っておくべきでしょう。たとえば超攻撃的なデッキとの一戦において、後手で積極的に5枚までマリガンするように心がけると、確率的にはおよそ3ゲームに1回は3ターン目に5マナ域を唱えられることになります。相性が最悪な相手と戦うことを考えれば、十分に高い確率ではないでしょうか。(どうしても《世界を揺るがす者、ニッサ》を3ターン目に着地させたければ《模写》で《樹上の草食獣》コピーすることもあり得ます!)
非常に強い6枚の初手というと、たとえばこのようなものです。
この手札であれば3ターン目にチャンプブロッカーを並べ、4ターン目に5マナの呪文を唱えられる確率が高いです。相手からのプレッシャーが少ない場合は、”チャンプブロッカー”を後々カードアドバンテージを生むリソースとして運用できます。つまり、この手札はどの相手にも戦える素晴らしい手札です。
詳しいマリガン判断については、後述のジェスカイファイアーズとの戦い方でご紹介します。
マッチアップ
ジャンド/ゴルガリサクリファイス
主なゲームプランは、土地を滞りなく置いていき《破滅の終焉》を(X)=10で唱えることです。《大釜の使い魔》をトランプルで突破したいときは《終末の祟りの先陣》をサーチすれば良いでしょう。
《虐殺少女》と《戦争の犠牲》が脅威的なので、《世界を揺るがす者、ニッサ》で[+1]しても土地をクリーチャー化しないことはよくあります。《世界を揺るがす者、ニッサ》はほぼ《ほとばしる魔力》であり、長期戦では3/3のクリーチャーは大して重要ではありません。
《波乱の悪魔》がいるため、できることなら《発現する浅瀬》は効果を2回誘発できるタイミングまで温存しましょう。ただ、5マナ域へのマナ加速手段が《発現する浅瀬》しかない場合は臆せず3ターン目にプレイしていきます。《波乱の悪魔》をプレイするタイミングがあったのにもかかわらず唱えてこなかった場合、おそらく安心して《発現する浅瀬》を展開できるはずです。理論上はブラフの可能性がありますが、相手側は序盤にプレッシャーをかけることが何よりも優れた選択肢ですから、その可能性は低いでしょう。
厄介なのは、キャットオーブンコンボで《茨の騎兵》の攻撃が無力化され、手札から《終末の祟りの先陣》を出しても致死量のダメージが与えられないパターンがあることです。ですから、《破滅の終焉》が2枚とも墓地に行ってしまった場合はダメージ計算を丁寧に行わないと倒しきれない可能性があります。このような場合、《裏切りの工作員》で《魔女のかまど》を奪い、その効果で《茨の騎兵》を生け贄に捧げ、死亡時の誘発効果で《破滅の終焉》をライブラリートップに戻すことが選択肢になります。
《裏切りの工作員》1枚と《破滅の終焉》2枚、計3枚の内の2枚が墓地にある場合は、できるだけ《茨の騎兵》をそれ以上唱えないようにしましょう。戦場に出たときの能力で残りの1枚が墓地に落ちると勝てなくなってしまうからです。このようなときはより長いゲームを目指し、《ヴァントレス城》や《ハイドロイド混成体》を駆使して残る1枚の勝ち手段にアクセスします。
相手からすれば《終末の祟りの先陣》を戦場に放置する余裕はないので、早々に手札に来てしまったら唱えてしまい、相手に対処を迫りましょう。そして《破滅の終焉》で墓地から《終末の祟りの先陣》を復活させ、一気にとどめを刺します。ただし、相手が《壮大な破滅》をサイドインしてくるときは例外です。まずは《裏切りの工作員》で《魔女のかまど》を奪取し、《終末の祟りの先陣》を追放されないようにします。試合があまりにも長引くと思われるときは、余分な土地を手札に持っておき、いずれかのタイミングで《ハイドロイド混成体》で大量にドローし、手札の上限枚数を超えることで《終末の祟りの先陣》を墓地に捨てるというバックアッププランがあります。
3ターン目に《世界を揺るがす者、ニッサ》と《茨の騎兵》の選択肢があるときは、《茨の騎兵》を先に展開しましょう。《害悪な掌握》や《残忍な騎士》で除去されたときの被害を抑えられます。
《模写》は対象を見つけるのに多少苦労するので、クリーチャー化した土地に恐れずに唱えていきます(できれば《神秘の神殿》が望ましいです)。土地をコピーすればさらなるマナ加速につながります。
覚えておいて欲しいのですが、ジャンド側のベストプランは高速で攻めることなので、遅すぎる手札はマリガンしましょう。3ターン目に《茨の騎兵》を出さなくても勝てますが、上手いプレイヤーに対してはマナ加速も《霊気の疾風》もない手札をキープしていられません(《発現する浅瀬》はマナ加速に含みます)。というのも、相手は高速で攻められる手札を求めてマリガンをしてくるからです。
対 ジャンド/ゴルガリサクリファイス
ゴルガリサクリファイスに対しては《霊気の疾風》を3枚もサイドインする必要はないので、2枚だけに抑えて《自然への回帰》を1枚入れましょう。
ジェスカイファイアーズ
このマッチアップでどちらが有利なのかを正確に判断することは、テストプレイ中に多大な努力を注いだテーマでした。マリガン判断は有利不利に影響されますし、サイドボード前後、先手/後手によっても変化します。
サイドボード前
狙うべきは、4ターン目に《茨の騎兵》を唱えること、あるいは《世界を揺るがす者、ニッサ》に続いてインパクトの大きい呪文を唱えることです(《世界を揺るがす者、ニッサ》は単体では不十分)。4ターン目に5マナを用意できるものの5マナ域の呪文がない手札は、占術とキャントリップが合わせて2枚以上あるならばキープに値します。3ターン目に5マナを捻出できる手札は、マナ加速先の呪文やキャントリップがなくてもキープして構いません。
よって、初手に欲しい要素は以下のA、B、Cの3つです。
上記の理想的な初手とほとんど差がないボーダーライン上の手札もあります。そういった手札は以下のような細かな問題点を1つ、または複数抱えている手札です。
積極的にマリガンするのは、こういった細かな問題点が多すぎる手札です。このマッチアップには数多くの問題を解消している時間などありません。マリガン後の初手の方が強いことを願ってマリガンすべきです。
マリガンの判断は繊細であり、先手か後手か、相手がマリガンしたかしてないかに左右されます。たとえば相手が先手で7枚をキープした場合。問題の多い7枚をキープしても勝てるかどうかをじっくりと真剣に考えましょう。一度マリガンをしたのなら、7枚のときよりもリスクをとる意識を強めます。あるいはこちらが先手で相手がダブルマリガンした場合。細かな問題点が多少多い手札でもキープする余裕はあるはずです。こういった具合で、状況に応じてマリガン判断を行います。
際どいマリガン判断において考慮すべき事項がもうひとつあります。それは、《轟音のクラリオン》に弱い《枝葉族のドルイド》が最も頼りないマナ加速呪文であるということ。マリガンするかどうか考慮する際の判断材料として念頭に入れておきましょう。反対に、《世界を揺るがす者、ニッサ》が手札にある場合、理想的なマナ加速呪文は《樹上の草食獣》になります(手札に土地が潤沢にある場合)。速攻を付与された飛行クリーチャーたちをチャンプブロックできるからです。
サイドボード後
サイドボード後は”良い手札”の幅が広がります。マナ源と《自然への回帰》/《打ち壊すブロントドン》/打ち消し呪文があれば戦えるでしょうし、《変容するケラトプス》は大きな脅威となります。
対戦するうえでのアドバイスですが、《世界を揺るがす者、ニッサ》の使い方には注意が必要です。3/3のクリーチャーとなった土地を盤面に多く並べて勝つことはほとんどありません。《轟音のクラリオン》で大損害を被れば、終盤のゲーム展開に支障が出ます。《世界を揺るがす者、ニッサ》の[+1]能力を使っても土地をクリーチャーしないという選択肢を常に検討しましょう。
参考のために、土地をクリーチャー化する一般的な状況を示しましょう。上にあるものほどクリーチャー化する必要性が高くなります。
対 ジェスカイファイアーズ
《変容するケラトプス》は相手のライフを急速に削り、《炎の騎兵》や《帰還した王、ケンリス》によるブロックを強要させ、たっぷりと時間を稼いでくれるという強みがあります。ジェスカイファイアーズのあらゆるカードに対応するために終盤戦に使用する呪文を数枚削るプランを採用していますが、もしかしたら少し削りすぎているかもしれません。盤面がこう着し、狙い通り《創案の火》を盤面に残さないようにできている状況であれば《ヴァントレス城》を上手く使えるのは明らかにこちらです。《ハイドロイド混成体》、《模写》、あるいは《茨の騎兵》を素早く見つけ、こう着したゲームを打開できるでしょう。
《エンバレスの宝剣》アグロ
ジェスカイファイアーズ戦でのマリガン基準がここでも適用できます。先ほどと違うのは、赤単やラクドス騎士に対しては極めて積極的にマリガンする点です。通常はダブルマリガンまで行い、3ターン目に5マナ域を唱えることを狙います。それ以外の手札はほぼ間違いなくマリガンです。
対 《エンバレスの宝剣》アグロ
シミックランプはブロッカーで盤面を安定させることに長けているものの、結局《エンバレスの宝剣》にやられてしまうことが練習でわかりました。だからこそ、上記のように多くの解答をサイドインしています。
アゾリウスコントロール(その他コントロールデッキ)
コントロールデッキ全般に対する入れ替えですが、《枝葉族のドルイド》《樹上の草食獣》《金のガチョウ》《模写》をサイドアウトし、《変容するケラトプス》《打ち壊すブロントドン》各種打ち消し呪文をサイドインするようにしています。対コントロールの練習を重点的に行うことはしませんでしたが、ランク戦で負けた記憶がありません。とはいえ、これはあまり鵜呑みにすべきではないでしょう。こちらには”打ち消しが必須の脅威”が数多く入っていますので、最終的には相手が対応しきれなくなります。このマッチアップは戦っていて楽しいですね。
戦ううえでの秘訣はあまりありませんが、特に知っておいてもらいたいのは、1本目はリスクをとったプレイを心がけて欲しいということです(たとえば、《時の一掃》をケアせずにプレイするなど)。というのも、あまりゲームを長引かせてしまうといずれにしても《老いたる者、ガドウィック》にやられてしまうからです。
イゼットフラッシュ
対 イゼットフラッシュ
(対シミックフラッシュ戦では、《世界を揺るがす者、ニッサ》をさらに2枚サイドアウトし、《霊気の疾風》を追加で2枚入れます)
楽しいマッチです。こちらの目標は1対1交換を繰り返し、《ハイドロイド混成体》の誘発型能力によって有利な状況を作り出すことです。《ハイドロイド混成体》を唱えるに当たっては、はやる気持ちを抑えるようにし、アドバンテージを最大限に確保しましょう。イゼットフラッシュはプレッシャーをかけ、ゲームを長引かせないようにしてきます。私の数少ない経験からすると、このプランを完遂するには3ターン目までにクリーチャーを出しておく必要性が高いです。クリーチャーを早く展開できないと、シミックランプがマナを伸ばしてしまうため手遅れになってしまいます。イゼットフラッシュが切羽詰まって《老いたる者、ガドウィック》でカードアドバンテージの差を埋めようとしてきたら、シミックランプはインパクトの大きい呪文を通すチャンスです。
《砕骨の巨人》が持つ「出来事」の効果はダメージを軽減できなくなるので、《変容するケラトプス》で青のクリーチャーをブロックするときは注意が必要です。