はじめに
みなさんこんにちは。
いよいよ今週末にはThe Last Sun 2019が開催されます。各地の厳しい予選を勝ち抜いた強豪プレイヤーが競い合うハイレベルなイベントなので楽しみですね。
さて、今回の連載ではミシックチャンピオンシップ Ⅶの入賞デッキを見ていきたいと思います。
ミシックチャンピオンシップ Ⅶ
多様性を取り戻したスタンダード環境
2019年12月6-8日
- 1位 Jund Sacrifice
- 2位 Simic Flash
- 3位 Simic Flash
- 4位 Simic Ramp
- 5位 Jeskai Fires
- 6位 Simic Flash
- 7位 Jund Sacrifice
- 8位 Golgari Adventure
Piotr Glogowski
トップ8のデッキリストはこちら
《王冠泥棒、オーコ》《むかしむかし》《夏の帳》といった強力な緑のカードが禁止になり、SImic Food系一強の環境からJund Sacrifice、Jeskai Fires、Golgari Adventure、Simic Flash、Simic Rampなど様々なデッキが見られるようになり多様性を取り戻した新環境のスタンダード。
世界のトッププレイヤーが集う今大会では、Jeskai Firesが最大勢力でその次点でJund Sacrifice、そしてGolgari Adventureが最もポピュラーなアーキタイプでした。
優勝を果たしたJund Sacrificeは、MPLメンバーを中心に多くの強豪プレイヤーが選択していたデッキであり、最大勢力であったJeskai Firesを含めて多くのマッチアップで互角かそれ以上の勝負ができることもあり注目を集めていました。
ミシックチャンピオンシップ Ⅶ デッキ紹介
「Jund Sacrifice」「Jeskai Fires」「Simic Flash」「Izzet Flash」
Jund Sacrifice
2 《沼》
1 《山》
4 《血の墓所》
4 《草むした墓》
4 《踏み鳴らされる地》
3 《寓話の小道》
2 《ロークスワイン城》
-土地 (25)- 4 《大釜の使い魔》
4 《金のガチョウ》
4 《波乱の悪魔》
3 《豆の木の巨人》
2 《残忍な騎士》
2 《打ち壊すブロントドン》
2 《フェイに呪われた王、コルヴォルド》
2 《虐殺少女》
-クリーチャー (23)-
3 《恋煩いの野獣》
2 《不死の騎士》
2 《意地悪な狼》
1 《残忍な騎士》
1 《打ち壊すブロントドン》
1 《フェイに呪われた王、コルヴォルド》
1 《虐殺少女》
-サイドボード (15)-
KanisterことPiotr Glogowski選手は、環境の本命の一つであるJund Sacriceを使用し2日目シードから全勝優勝という圧倒的強さをを見せつけました。
《魔女のかまど》や《大釜の使い魔》、《パンくずの道標》によるアドバンテージによって消耗戦に強く、Golagari系(Golgari Food, Adventure)に対して相性が良いデッキです。人気のJeskai Firesとのマッチアップもメイン戦ではやや難しいマッチではあるものの決して勝てないマッチではなく、環境の多くのデッキに対して互角以上に渡り合えるデッキです。
☆注目ポイント
GolgariバージョンよりもJundバージョンが優れている点は、《波乱の悪魔》と 《フェイに呪われた王、コルヴォルド》いう強力なカードにアクセスできることです。
《波乱の悪魔》は《魔女のかまど》+《大釜の使い魔》のコンボ1回につき1点ダメージの能力を2度誘発させることが可能で、盤面に定着すればゲームを素早く掌握することができます。《フェイに呪われた王、コルヴォルド》はクロックが速く、ドローエンジンとしても機能します。
Piotr Glogowski選手のリストは《ゴルガリの女王、ヴラスカ》が解雇され、《戦争の犠牲》がメインからフル搭載されています。《夏の帳》の禁止によって価値を上げたカードで、不利な盤面でも逆転するチャンスを生み出してくれる非常に強力な除去です。
《楽園のドルイド》の代わりに《豆の木の巨人》が採用されています。《魔女のかまど》+《大釜の使い魔》のコンボが対策されても、フィニッシャーとして活躍できるので息切れ防止にもなります。Jeskai Firesや同型などトップメタのデッキがメインからキーとなる置物を採用しているため、《打ち壊すブロントドン》がメインに昇格を果たしています。
Jeskai Fires
環境本命のデッキの一つだったため対策が厳しく母数に反して振るいませんでしたが、それでもプレイオフに残るあたりこのデッキのポテンシャルの高さが伺えます。
《創案の火》から《炎の騎兵》や《風の騎兵》といった強力なクリーチャーのコストを踏み倒し圧倒していくという明確な勝ち筋を持っているためデッキパワーが高く、使いやすいデッキであることも人気の理由です。
☆注目ポイント
メインからフル搭載されている《予見のスフィンクス》によってデッキの安定性が向上しており、初手に来れば占術3によって4ターン目に《創案の火》が置ける確率も上がります。4マナなので《創案の火》を置いた直後の2回目にキャストするスペルとしても最適で、後続の《炎の騎兵》や《風の騎兵》を探し出します。
《創案の火》という重いスペルに頼っているため打ち消しに弱く、今大会で活躍していたSImic FlashやIzzet Flashといったマッチアップを苦手とするため、打ち消しを無力化する《時を解す者、テフェリー》は重要なカードとなります。
相手の脅威は《砕骨の巨人》や《轟音のクラリオン》で処理していき時間を稼いでいきます。《王冠泥棒、オーコ》を始めとした強力な緑のカードが退場したとはいえ、Simic FlashやSimic Rampなど緑系のデッキは形を変えて環境に残留しています。そのため、Paulo Vitor Damo da Rosa選手のリストには《霊気の疾風》がメインから採用されています。今大会で最もポピュラーだった同型戦において、相手の《創案の火》に対して疑似的な打ち消しとして機能するのでメイン採用は英断だったと言えます。
Simic Flash
惜しくも優勝は逃したものの、同デッキを使用していたBrad Nelson、Javier Dominguez、Seth Manfieldの3名をプレイオフに送り込むという凄まじいパフォーマンスを披露したSimic Flash。
青緑の優秀な瞬速持ちクリーチャーと打ち消しのおかげでテンポ面で勝り、非常に対戦難易度も高いデッキです。最大勢力であったJeskai Firesに有利で、各種食物系デッキにも不利が付かないため今大会勝ち組デッキの一つでした。
《楽園のドルイド》や《成長のらせん》といったマナ加速が採用されており、《ハイドロイド混成体》や《世界を揺るがす者、ニッサ》といったカードも採用されているなど、Simic FlashとSimic Rampのハイブリットのような構成となっています。
☆注目ポイント
《厚かましい借り手》を最も強く使えるデッキの一つで、打ち消しを免れたパーマネントをバウンスしつつカウンターを構えながらクロックを展開できる隙のないクリーチャーです。
このデッキの4マナ域には《エリマキ神秘家》と《夜群れの伏兵》という強力な瞬速クリーチャーが揃っているため、相手はこのデッキが4マナを立たせている時には非常に攻めにくくなります。相手が《エリマキ神秘家》を警戒して何もアクションを起こさなかった場合は《夜群れの伏兵》を出すことができるので、ターンを無駄にすることなく攻め手を展開することができます。
Simic Flash定番の2マナ域である《塩水生まれの殺し屋》よりも《楽園のドルイド》が優先されており、《エリマキ神秘家》や《夜群れの伏兵》を3ターン目から構えたり4ターン目から《世界を揺るがす者、ニッサ》を出しやすくなっています。Flash系のデッキの弱点である線の細さもカバーされており、《ハイドロイド混成体》のおかげで中盤以降も息切れをしにくくなっています。
サイドの《魔術遠眼鏡》は主に《魔女のかまど》 を止めるためのカードですが、もちろんプレインズウォーカーなども対処できるので幅広いマッチアップで活躍します。
Izzet Flash
4 《山》
4 《蒸気孔》
2 《寓話の小道》
4 《天啓の神殿》
2 《ヴァントレス城》
1 《爆発域》
-土地 (26)- 4 《塩水生まれの殺し屋》
4 《砕骨の巨人》
4 《厚かましい借り手》
4 《老いたる者、ガドウィック》
-クリーチャー (16)-
今大会でトップ16に入賞し、見事MPL昇格を果たしたGabriel Nassif選手を含めた6名のプレイヤーが選択していたIzzet Flash。
Simic Flashと同様にデッキ内の多くのスペルがインスタントスピードなので対戦難易度が非常に高く、最大勢力であったJeskai Firesに有利なデッキです。
☆注目ポイント
《砕骨の巨人》と《厚かましい借り手》はこのデッキの主力です。《砕骨の巨人》はコストも軽めなのでカウンターを構えながらキャストするのが容易です。《厚かましい借り手》はSimic Flashと同様にテンポ面で優れており隙のない攻めが展開できます。
《塩水生まれの殺し屋》を2ターン目に出せれば、デッキ内のほとんどのスペルがインスタントスピードでキャストできるので、すぐに手の付けられない大きさになります。《ラルの発露》はアドバンテージが取れるインスタント除去として使いやすい火力ですが、4マナと重いため3枚の採用に留まっています。
《老いたる者、ガドウィック》はこのデッキの数少ないソーサリースピードのカードです。色拘束は強くなりますが、中盤以降ではカードアドバンテージを多く稼ぐことができるので息切れの防止にもなる優秀なクリーチャーです。このタイプのデッキは線の細さが弱点となるので、《エンバレスの宝剣》がサイドに採用されています。クリーチャーがそれほど並ばないためコストは軽減しづらいですが、瞬速持ちなので大きな隙を作らずに出せるので問題なく運用していけます。
総括
《王冠泥棒、オーコ》《むかしむかし》《夏の帳》といったカードを失いSimicカラーのデッキは衰退していくと思われましたが、Simic Flash、Simic Rampのように形を変えて環境に留まりほかのトップメタとも互角以上に渡り合っています。
禁止改定の影響でJeskai Firesが台頭し、それに有利なSImic FlashやIzzet Flashといったデッキにもチャンスが巡ってきました。特に《夏の帳》が禁止カードに指定されたことによって、今まで肩身の狭い立場に追いやられていた打ち消しや《戦争の犠牲》など黒い除去スペルの価値も上がり様々なデッキが活躍できる環境となりました。
トップ16に入賞を果たしたデッキを見渡しても環境はまだまだ研究の余地がありそうなので、The Last Sun 2019も楽しみです。
USA Standard Express vol.162は以上となります。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!