USA Standard Express vol.163 -多様性溢れるスタンダード-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさんこんにちは。

今年も残りわずかとなりましたが、みなさんマジックを楽しんでいますか?2019年を振り返ってみると、マジック界にとっては激動の1年となりました。全体的にカードパワーが高いものが多く登場し、一時的にこれまでのスタンダードでは考えられないような強力なデッキが環境を支配しました。度重なる禁止カードにより、現在は再び多様な環境へと戻っていますけどね。

さて、今回の記事ではグランプリ・ポートランド2019The Finals 2019の入賞デッキを見ていきたいと思います。

グランプリ・ポートランド2019
Rakdos Knightsが無敗で駆け抜ける

2019年12月21-22日

  • 1位 Rakdos Knights
  • 2位 Jeskai Fires
  • 3位 Golgari Aggro
  • 4位 Temur Aggro
  • 5位 Simic Flash
  • 6位 Simic Flash
  • 7位 Rakdos Knights
  • 8位 Gruul Aggro
Ondrej Strasky

Dylan Nollen

PlayerLink Coverage

トップ8のデッキリストはこちら

先週末にアメリカ合衆国のオレゴン州ポートランドで開催されたグランプリは、トップメタのJeskai FiresやSimic Flashが上位に入賞する中、Rakdosカラーの騎士クリーチャーを中心としたアグロデッキが優勝を果たしました。

数多いたJund Sacrificeはプレイオフに残れず、代わりにGolgariやGruulのAdventureデッキやRakdos Knightsといった、攻撃的なデッキが高い勝率をあげていました。

グランプリ・ポートランド2019 デッキ紹介

「Rakdos Knights」「Simic Flash」

Rakdos Knights

今大会で見事に優勝を果たしたDylan Nollen氏は、Rakdos Knightsを使い初日を全勝、2日目のスイスラウンドも1マッチも落とすことなく(最終戦はID)プレイオフに進出しました。軽いクリーチャーを並べて攻め立てるアグレッシブな戦略は、現環境で人気がありプレイオフに2名を進出させたSimic Flashに対して強く、いいデッキ選択となりました。

☆注目ポイント

試合場ロークスワイン城

デッキ内のクリーチャーの多くが騎士のため、《試合場》を採用することで、デッキの安定性が格段に上昇しています。軽いクリーチャーが多く、手札の消耗が激しいため、息切れ防止に《ロークスワイン城》も採用されています。

熱烈な勇者漆黒軍の騎士嵐拳の聖戦士

1マナ域の《熱烈な勇者》は先制攻撃をもっているためブロックされにくく、序盤を支えるクリーチャーです。《漆黒軍の騎士》は3マナ揃うとブロックしにくく、一度でも+1/+1カウンターが乗れば、毎ターンサイズアップするか一方的なトレードを見込めるデッキの主力です。《嵐拳の聖戦士》は相手にもドローさせてしまいますが、軽い構成のこのデッキでは息切れ防止を防ぎつつ、能力とあわせて攻め手にもなってくれます

ドリルビットエンバレスの宝剣朽ちゆくレギサウルス

《砕骨の巨人》《残忍な騎士》の2種類は、1枚で除去とダメージソースの2役を担い、序盤だけではなく中盤以降のロングゲームへも対応可能なデッキとなっています。《ドリルビット》で相手の手から除去や全体除去を落とし、《エンバレスの宝剣》を付けることが主な勝ち手段となります。どのクリーチャーに付けても強力ですが、《朽ちゆくレギサウルス》につけば速やかにゲームを終わらせることができるのです。

Simic Flash

MC Ⅶでの活躍により一躍トップメタの仲間入りを果たしたSimic Flash。このデッキはJeskai Firesに強く、インスタントタイミングで動くカードが多く相手のミスを誘えるため、腕に自信のあるプレイヤーに好まれる傾向にあります。

《時を解す者、テフェリー》 が着地しない限りはコントロールにも強いデッキですが、パーマネント対策が薄いために《魔女のかまど》《パンくずの道標》など軽いキーカードに持つJund Sacrificeを苦手とします。

☆注目ポイント

成長のらせん

インスタントスピードでドローを進めつつ追加の土地をおける《成長のらせん》は、《夜群れの伏兵》《エリマキ神秘家》といった強力な4マナのカードを1ターン前倒しでキャストすることを可能にします。

霊気の疾風

環境には緑と赤の脅威が多数存在するため、引き続き《霊気の疾風》がメインから採用されています。このデッキでは《霊気の疾風》を自分の《エリマキ神秘家》《ハイドロイド混成体》に対して打ち、再利用できることも忘れてはいけません。

世界を揺るがす者、ニッサ

《世界を揺るがす者、ニッサ》はクリーチャー除去や全体除去で対処されないこのデッキのフィニッシャーであり、常在型能力のおかげでマナが大量に出るため《ハイドロイド混成体》と非常に相性がいいカードです。場に《繁殖池》があれば5ターン目にタップアウトで《世界を揺るがす者、ニッサ》を出しても、[+1]能力でアンタップさせることによって《霊気の疾風》《火消し》《否認》など2マナのインスタントを構えることができます

The Finals 2019
安定のJund Sacrifice

2019年12月21日

  • 1位 Jund Sacrifice
  • 2位 Simic Ramp
  • 3位 Jeskai Fires
  • 4位 Rakdos Aggro
  • 5位 UW Control
  • 6位 Rakdos Aggro
  • 7位 Rakdos Sacrifice
  • 8位 Rakdos Aggro

トップ8のデッキリストはこちら

日本国内で開催された年内最後の大規模なスタンダードイベント、The Finals 2019は参加者174名と大盛況でした。メタゲームブレイクダウンによれば大方の予想通りMC Ⅶでも強豪プレイヤーが選択していたJund SacrificeとSimic Flashがトップメタでした。

優勝はJund Sacrificeであり、環境最高デッキの一つであることが改めて確認できました。

The Finals 2019 デッキ紹介

「Jund Sacrifice」「UW Control」

Jund Sacrifice

MC Ⅶを制したJund Sacrificeは今大会でも安定した強さを見せました。優勝者の佐藤選手のリストは《孵化/不和》《席次/石像》といった分割スペルがメインから採用されており、現環境にあわせた調整のあとがうかがえます。

Jund SacrificeについてはMC Ⅶを制したPiotr Glogowski選手の記事もあがっています。

☆注目ポイント

波乱の悪魔孵化+不和大釜の使い魔

佐藤選手のリストで特徴的なのは同型でも決定力のある《戦争の犠牲》が不採用で、代わりに《孵化/不和》《席次/石像》の2種類の分割スペルが採用されています。《孵化/不和》はデッキの動きを安定性だけではなく、《波乱の悪魔》《大釜の使い魔》などのキーとなるクリーチャーもサーチできるため、コンボ達成に一役買っています。

創案の火席次+石像魔女のかまど

《席次/石像》《波乱の悪魔》に接死を付与することによって、一方的な全体除去のように機能します《席次/石像》の方も《魔女のかまど》《パンくずの道標》《創案の火》《エンバレスの宝剣》など現環境では除去したいパーマネントが多く、使いやすいスペルです。

UW Control

《王冠泥棒、オーコ》《夏の帳》といったコントロールにとって厳しかったカードが退場したことにより、青白系のコントロールも上位で見られるようになりました。

多数の打ち消しと除去、全体除去を搭載しているため、現環境で幅を利かせているJund SacrificeやJeskai Firesに強く意識した構成となっています。反面、全体的に重めの構成となので、カウンターと瞬速クリーチャーを多用するSimic Flashは不利なマッチアップとなります。

☆注目ポイント

厚かましい借り手時の一掃老いたる者、ガドウィック

《時の一掃》《次元の浄化》という2種類の全体除去を搭載しています。それまでは《厚かましい借り手》でバウンスしたり、《老いたる者、ガドウィック》でドローしつつ時間を稼いでいきます。青いインスタントが多いので《老いたる者、ガドウィック》は実質的にタッパーとして運用しやすく、《時の一掃》で回収することでマナが余る中盤以降は強力なカードアドバンテージ源としても機能します。

次元の浄化

《次元の浄化》は色拘束が強く6マナと重いカードですが、Jund Sacrificeの《魔女のかまど》《パンくずの道標》もまとめて流せるため、現環境では非常に強力な全体除去です。Simic Food一強の時代は過ぎ去りましたが、現環境のトップメタであるJund Sacrifice、Jeksia Fires、Simic Flashの三つに対して効果的な《霊気の疾風》は引き続いてメインからの採用となっています。

時を解す者、テフェリー徴税人巨人落とし

《時の一掃》などの全体除去をインスタントタイミングでキャストすることを可能にする《時を解す者、テフェリー》は、このデッキにとって非常に重要なカードであるため4枚フル投入されています。また、《夏の帳》も退場し、《創案の火》のような重いスペルをキーとしたデッキが環境の中心になっているため、《ドビンの拒否権》《吸収》などのカウンターの価値が上昇しています。苦手なSimic Flashに対してもサイド後は相手のスペルのコストを増量させる《徴税人》やインスタント除去兼タッパーの《巨人落とし》などが投入されるので、改善が見込めそうです

総括

グランプリ・ポートランド2019とThe Finals 2019で入賞していたデッキを一通り見ていきましたが、現環境のスタンダードをさらに研究してみたいという方のためにグランプリ・ポートランド2019の本戦に参加していた全プレイヤーのデッキリストもあがっています。

Simic Flash、Jund Sacrifice、Jeskai Firesの環境の三強に加え、グランプリ・ポートランド2019を無敗で制したRakdos Knights、そしてThe Finals 2019でも結果を残したUW Controlなど現在のスタンダードは多様性に満ちています。来月には新セット『テーロス還魂記』の発売が控えており、さらに環境が変化していきます。どのようなスタンダード環境になるか、今から楽しみでなりません。

以上、USA Standard Express vol.163でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!そしてみなさん良いお年を!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら