Translated by Takumi Yamasaki
(掲載日 2019/12/29)
はじめに
新フォーマットとしてパイオニアが発表されたとき、私はちょうどリッチモンドでミシックチャンピオンシップ Ⅳ(モダン)に向けて練習していました。そのため、パイオニアのデッキをいろいろと作りたかったのですが、練習で忙しく中々パイオニアをプレイすることはできませんでした。また、MC後も毎週のように禁止改定がおこなわれるので、パイオニアに多くの時間を費やすことに抵抗を感じていたのです。
しかし、若きデンマークのスターであるオスカー・クリステンセン/Oscar Christensenのツイートを見て、そんな抵抗はどこかに去ってしまいました。
My friend @Runeskjold3, who qued for RPT Brussels last weekend, brewed this deck 4 days ago. Today our friends @HyttelCheese & @gottelicious top 8'ed the Pioneer PTQ on MTGO with it! Deck seems broken! We're ready for 2020! Turn 3 kill attached 🔥 @PioneerDLs pic.twitter.com/AMoRAY87RB
— Oscar Christensen (@OscarChrMTG) 2019年11月30日
(友達の1人がPTQを4日前に作ったデッキで抜けました!さらに今日、もう2人MOPTQでトップ8に入賞しています!デッキはぶっ壊れ!2020年への備えは万全です!3ターンキル!)
私はこのデッキに一目惚れし、すぐさまマジックオンラインにログインしてこのデッキを組みました。昔からコンボデッキを回すのが好きで、特にこの変わったリストは私にとってとても印象的だったのです。
初期変更
デッキを組んでまもなく、《むかしむかし》が禁止になりました。しかし、これは全く驚くことではありません。《むかしむかし》は2度と戻ってきてはいけないほど強力なカードでしたからね。そして、このカードが禁止になったということは、このデッキにとって必要な土地を見つけるのが少し難しくなったことを意味しています。
《むかしむかし》が禁止にされた後に組んだデッキがこちらです。
このリストは、オスカーが投稿していたデッキにまだ非常に近い形のものになります。デッキの動きは好きでしたが、納得のできていない部分も確かにあります。普段とは全く違うアングルから攻めることができるのはとても強いことなのですが、対策しようとほかのプレイヤーが準備すれば対策できてしまうのです。
ただ、このデッキが手札破壊やマリガンに対して強いのは感動しました。また、まだ最終形態に達していないと確信したので、さらにアップグレードすることができると思ったのです。
そんな中、悪名高いストーム愛好家であるカレブ・シェーラー/Caleb Schererのツイートが、私に新たな洞察をもたらしました。
Computer problems should be fixed so going live today at 1130am CST with some Pioneer and Modern Storming! https://t.co/BFksEF4ej7 pic.twitter.com/dGBr8gN5gj
— Caleb Scherer (@cws_MTG) December 10, 2019
このリストで注目すべきは、《願いのフェイ》の不採用と《二倍詠唱》の採用です。《願いのフェイ》はサイドボードを圧迫してしまうため、多大なコストがかかります。実際の勝利条件には4枚のスロットが必要で、おそらく追加の有用な《願いのフェイ》の対象となるサイドカードを用意する必要があります。
しかしながら、今まで回す中で《願いのフェイ》には良い印象しかありません。「出来事」は多くの選択肢を提示してくれますし、ブロッカーとしてもまともに機能します。なのでこのカードを不採用にしようとは思いませんでした。
逆に《二倍詠唱》は少しオーバーキルのように思えました。単体ではなにもしませんし、使うには事前に多くのマナを必要とします。
しかし彼はカレブ・シェーラー、ストームマスターと言われる男です。彼がしようとしていることをただ無視するのは愚かだろうと思い、彼の配信を1.5倍速で観て、実際にデッキが動いているところを確認したのです。そして、これだけは言わねばなりません。《二倍詠唱》は実に素晴らしいカードだったのです。《熟読》をコピーし《睡蓮の原野》を2つアンタップすれば、6枚ものドローと12マナを得ることができます。手札破壊にはかなり弱いので、4枚必要かどうかは確信が持てませんが、この動きには目を見張るものがありますね。
さて、ここには重要な教訓があります。それは、「自分が一番よく知っていると思ってはいけない」ということです。私はマジックの基本をきちんと理解している良い選手であると自負しています。しかし、自身の信念に挑戦せず、他の人が成功しているものを探ろうとしないのは、短絡的であると言わざる得ません。心を開いて、はじめて上達することができるでしょう。
まとめると、すべて一緒にブレンドしたのちにこのリストへ辿り着きました。
カード選択
土地
コンボのためにはこれらの土地が1枚づつ必要なので、減らすのは間違いのように思えます。《演劇の舞台》は《睡蓮の原野》以外の土地をコピーした方が良いこともあるので、その機会を見逃さないようにしましょう。
デッキのベースとなる土地です。中でも4枚採用している《神秘の神殿》は重要で、序盤の準備を手助けしてくれます。手札から置けるフリー占術はとても価値が高いのです。また、《睡蓮の原野》を置くと土地が減るので、《植物の聖域》をアンタップインさせることができるのは覚えておきましょう。
マナ加速
1ターン目を《樹上の草食獣》でスタートできれば、ゲームに勝つチャンスが大幅に向上します。悪名高い3ターンキルを実現可能にしてくれるとともに、アグロデッキにはきちんとしたブロッカーになってくれるのです。《成長のらせん》はそれほど印象的ではありませんが、《樹上の草食獣》のしっかりとしたバックアップとして機能します。2ターン目に《成長のらせん》をプレイできる土地が、実質16枚しかないという事実も痛いところではあります。
ドロー呪文
《時を越えた探索》は、現在パイオニアで禁止にされていないカードの中で最強であると個人的には思っています。《巧みな軍略》は墓地が肥やせるという理由から、《可能性の揺らぎ》よりも優先して採用しています。しかも、《睡蓮の原野》も《時を越えた探索》のために墓地を肥やしてくれるので、フェッチランドのない世界にしては恵まれていますよね。
コンボパーツ
コンボパーツたちです。《見えざる糸》は、《睡蓮の原野》が2枚あれば4マナ浮かせることができ、《睡蓮の原野》1枚と別の土地の場合は2マナ浮きます。《砂時計の侍臣》は「サイクリング」することで、さらなるマナを生み出せるようになります。《熟読》は、2枚《睡蓮の原野》があれば追加のマナを得ることができ、1枚と別の土地の場合は《Ancestral Recall》になります。
《二倍詠唱》はマナかカードのどちらが必要かによっていろいろと使い道がありますが、《熟読》をコピーするのが一番美味しいでしょう。《啓示の終焉》をX=10でプレイできればゲームに勝つはずです。墓地をデッキに戻すのも時には重要になります。
《願いのフェイ》とサイドボード
このカードはあらゆる問題に対処し、重すぎる不格好な勝利条件カードたちをすべてサイドボードに入れることができますが、その分サイドボードの枠を半分以上圧迫します。
いくつかのデッキに対しては、《願いのフェイ》を2ターン目にプレイする場合もあります。こうすることで、《見えざる糸》の「暗号」を付けることができるのです。主に、クリーチャー除去をサイドアウトしてくるであろう2ゲーム目以降に試すことをお勧めします。
《願いのフェイ》を使いこなして相手のボードを対処したり、必要に応じてカウンターなどを持ってきましょう。コンボ中であれば、一度「出来事」としてつかった《願いのフェイ》を場にプレイし、自身の能力で手札に戻すことができます。
汎用サイドボード
これらのカードには、それぞれに異なる用途があるので、常に1枚は残すことをお勧めします。もし対戦相手の盤面を崩壊させられれば、実質1ターン以上の追加ターンを得られるのでやり得です。ほとんどのデッキは、このデッキに対して可能な限りプレッシャーをかけなければいけません。ゆっくりしている余裕などないのです。
弟のピーターに青白コントロールを使ってもらい練習しましたが、《ドビンの拒否権》を何枚か持たれているだけで勝つのは難しいと感じました。なので、《思考のひずみ》はそれらに対する素晴らしい解決策でしたね。
コンボパーツ
使い方は非常に簡単です:
残りのサイドボード
これらのカードは実際にサイドインする唯一のカードたちです。《変容するケラトプス》は青白コントロールに対して有効で、相手のプレインズウォーカーを出た返しに倒すことができます。相手のサイドボード次第では、このカードに対して解答を用意していない可能性もあります。
プレイパターン
このデッキの基本的な動きは、まず《睡蓮の原野》を見つけ出して《演劇の舞台》でコピーすることです。そして、ドローを進めながらこれらをアンタップできるカードをたくさんプレイしてください。最終的にサイドにあるフィニッシャーを持ってきて勝利です。これは理論的には簡単です。しかし、実際にデッキを回す中で、よりスムーズな準備をおこなえるプレイパターンをいくつか見つけました。
モダンの《睡蓮の原野》コンボを回したことのある人ならば、《睡蓮の原野》をプレイする際に、《睡蓮の原野》を《砂時計の侍臣》でアンタップさせるためのマナを浮かせたいと思うことがよくあることでしょう。しかしこれは、パイオニアではあまり正しいプレイではないことが分かりました。
一般的なパターンは、《睡蓮の原野》が場に出ているところからスタートし、まず《演劇の舞台》をプレイします。《睡蓮の原野》からマナを出し、《砂時計の侍臣》でアンタップ(浮き1マナ)。最初に出したマナとアンタップした《睡蓮の原野》で計4マナになり、その内2マナを《演劇の舞台》でコピーし、残り2マナで《見えざる糸》を使ってそれらの土地2枚を起こします。そこから《熟読》をプレイし…という流れになります。
別のパターンとしては、《演劇の舞台》なしで《睡蓮の原野》が場にある状態のときです。《睡蓮の原野》からマナを出し、《砂時計の侍臣》でアンタップ(浮き1マナ)。次は緑マナをだし、《森の占術》から《演劇の舞台》をサーチし、残ったマナでコピーすれば次のターンに備えることができます。
《睡蓮の原野》とあらかじめ場に出しておいた《砂時計の侍臣》とのコンボも可能です。《砂時計の侍臣》は《熟読》ではアンタップできませんが、《見えざる糸》とは上手く機能します。《演劇の舞台》にアクセスできていないが、次のターンにコンボを行う必要があるときは、このパターンもあるということを覚えておきましょう。
ドローがあまり芳しくないときは、《時を越えた探索》を早めにプレイしコンボパーツを探してください。墓地を肥やすために、《樹上の草食獣》でチャンプブロックすることはよくあることです。
コンボを開始できるかどうか判断する場合は、マナの数を慎重に数えてください。最終的に《熟読》を唱えるマナが足りないという状況は避けたいのです。このデッキは大量のマナを生成できますが、無限ではありません。《全知》まで辿り着き場に置けたとしても、《願いのフェイ》を手札に戻すためには、まだマナが少し必要になるのです。
このデッキは時々、コンボをスタートさせても途中で尻すぼみすることがあります。が、そういうときはだいたい大量のカードを引いていることを意味します。《見えざる糸》だけが使うと絶対手札を1枚損する唯一のカードです。コンボがストップしたときに、《願いのフェイ》で相手を止めるためになにを持ってくるかは、このデッキで難しいプレイのひとつですね。
これから
パイオニアは、今後開催される地域プレイヤーズツアーの構築フォーマットになります。これらのトーナメントの前にさらなる禁止改定が行われるかは明らかではありませんが、すぐに公式のアナウンスがあることを願っています。《時を越えた探索》と《睡蓮の原野》は確実に禁止候補リストに載っていると思うので、もしこれらをプレイできればそれは嬉しいことです。
私はこれがロータスストームの最終形態ではないと思いますし、このデッキがさらに進化することを楽しみにしています。今度ベルギーで非公式のベルギー選手権があるので、そこでこのデッキを持ち込むつもりです。このトーナメントが終わった後に、ツイッター(@VierenPascal)で最新リストを必ず投稿するので楽しみにしておいてください!また、質問や提案などあれば気軽に聞いてくださいね!
パスカル・フィーレン (Twitter)