パイオニアでのんびり青白コントール

Gregory Orange

Translated by Kohei Kido

原文はこちら
(掲載日 2020/01/09)

パイオニアの青白コントロールを使ってみよう!

新フォーマットのパイオニアが出来てから、しばらくは青白コントロールに逆風が吹いていました。《王冠泥棒、オーコ》《夏の帳》《死者の原野》のようなカードたちが乗り越えられないハードルとなっていたのです。しかし幾度かの禁止告知を経て、パイオニア環境は少し落ち着いてきましたね。今残っている問題は以前よりも対処しやすくなっています。青白コントロールは最強のデッキではないでしょうが、健闘できるデッキだと考えられます

デッキリスト

カードの取捨選択

パイオニアの青白コントロールはどれも似たようなデッキリストに落ち着いています。例えばみんな《アゾリウスの魔除け》を4枚入れることにしたようですね。では、私が面白いと感じたカードについて話していきましょう。

《灌漑農地》

灌漑農地

3

「サイクリング」能力はマナフラッドを減らしつつ、《時を越えた探索》を唱える助けになるのがいいですね。「サイクリング」はおそらく《啓蒙の神殿》の占術には劣るのですが、基本土地タイプを持っていることが《氷河の城砦》と『エルドレインの王権』の「城」サイクルにとって重要です。

アーデンベイル城氷河の城砦ヴァントレス城

本当に問題になるのは追加の基本土地よりも《灌漑農地》がいいのかどうかです。この手のデッキではタップインランドを何枚か入れることは、それほど負担にはなりません。最初の何ターンかは大した動きをしませんので、問題なく置けることが多いからです。1マナの動きは《選択》《排斥》の「サイクリング」しかない上に、通常は探したいカードが決まってからプレイするのがよいためです。

《廃墟の地》

廃墟の地

3

すごく良いカードです。相手の《城》《変わり谷》を破壊できることは大きいといえます。4枚の《吸収》がデッキに入っていることを考えると、無色の土地の枚数は3枚が妥当でしょう。3枚でも少し多いのかもしれませんね。

ガイアー岬の療養所覆いを割く者、ナーセット

《ガイアー岬の療養所》《廃墟の地》に劣っているように思えます。《覆いを割く者、ナーセット》が出ていれば強いのですが、《ナーセット》はデッキに2枚しかありませんし、プレインズウォーカーが定着しているならそもそも有利な状況です。

《選択》

選択

4

ここ数年で《選択》についての世論が変化したのは興味深いですね。『ドミナリア』期のスタンダードで青白コントロールはメジャーなデッキであり、《選択》もカードプールに存在していましたが、それでも私を含めてほとんど誰も使いませんでした。スロットがなく、「サイクリング」できる《排斥》《ヒエログリフの輝き》があるため必要ないと思っていたのを覚えています。

カードプールが狭いフォーマットほど引きたいものが限られ《選択》が必要になるはずなので、正しくなかったのでしょう。《選択》《時を越えた探索》の燃料になるからパイオニアで採用されているといった意見も散見されますが、これは《ヒエログリフの輝き》も同様です。それに過去のスタンダードのデッキも、《アズカンタの探索》をいち早く「変身」させるために墓地を肥やしたかったはずです。私が思いつく唯一の説明は、特定のカードを探すためにみんな「《選択》肢」を広げたくなったのだという説明ですね。

《封じ込め》

封じ込め

2

《神聖な協力》を使うデッキもあります。似たような役割のカードで、どのようなクリーチャーに対処したいのかによるのでしょう。今は多くの《弧光のフェニックス》《屑鉄場のたかり屋》が駆け回っている環境です。クリーチャーを追放できることは重要で、対象を選べるのも便利なところですね《ヴリンの神童、ジェイス》《搭載歩行機械》《ラノワールのエルフ》のように攻撃していないクリーチャーでも《封じ込め》なら対処できるのも魅力の一つです。

弧光のフェニックス屑鉄場のたかり屋
ヴリンの神童、ジェイス搭載歩行機械ラノワールのエルフ

《神聖な協力》《時を越えた探索》と相性が良く、ライフゲインが重要な場面もあります。だから《神聖な協力》という選択肢も忘れないでくださいね。

《思考を築く者、ジェイス》

思考を築く者、ジェイス

0

このカードはそこまでよくないと思っています。かつてのスタンダードではみんな青白コントロールで何枚か使っていましたが、今はもっと強いプレインズウォーカーが使えるのです。《時を解す者、テフェリー》《ドミナリアの英雄、テフェリー》をあわせて8枚使ってもいないのに、どうして《思考を築く者、ジェイス》を使うのでしょう?同様にどうして《太陽の勇者、エルズペス》を使うのでしょう?

まずは本当に強いプレインズウォーカーから使うべきです《ドミナリアの英雄、テフェリー》《アーデンベイル城》を合わせれば勝利条件は満たせるので、試合を終わらせる手段について心配はいりません。

マッチアップとサイドボードガイド

青白コントロールミラー

時にはいろいろな駆け引きがありますし、どちらかが《時を解す者、テフェリー》を叩きつけてその場で勝負が終わることもあります。サイドボード後は打ち消し呪文が増えるので、3ターン目に《テフェリー》をプレイするにはリスクがともないます。その結果として、甘美なドロー・ゴーの試合が多くなります。これこそがMTGの意図された遊び方なのでしょう。

対 青白コントロールミラー

Out

至高の評決 至高の評決 至高の評決 至高の評決
封じ込め 封じ込め 残骸の漂着

In

ドビンの拒否権 ドビンの拒否権 僧院の導師 僧院の導師
神秘の論争 神秘の論争 神秘の論争

ほかにサイドインするものがあるなら、次点でサイドアウトすべきカードは《アゾリウスの魔除け》です。サイドインするものが十分ない場合は《黎明をもたらす者ライラ》を入れてもいいとは思いますが、そこまで強いカードではありません。

イゼットフェニックス

相手のメインデッキに入っている打ち消し呪文はおそらく《イゼットの魔除け》だけなので忘れないでください。試合を有利に運ぶためには《覆いを割く者、ナーセット》を定着させる必要がありますね。青白コントロールミラーと違ってサイドボード戦略は複雑であり、プレイヤーの判断力が試されます。

対 イゼットフェニックス

Out

吸収 吸収 アゾリウスの魔除け アゾリウスの魔除け
ドミナリアの英雄、テフェリー 至高の評決 中略

In

霊気の疾風 霊気の疾風 霊気の疾風 黎明をもたらす者ライラ
神秘の論争 神秘の論争 神秘の論争

《黎明をもたらす者ライラ》

黎明をもたらす者ライラ

《黎明をもたらす者ライラ》は場にいるだけで驚異となり、多くの打ち消し呪文を回避しますが、《丸焼き》に対して無力なのでサイドボードに取りすぎないでください。1枚でも十分すぎるでしょう。

《至高の評決》

至高の評決

《若き紅蓮術士》、そしてサイドボードから投入されるであろう《ゴブリンの熟練扇動者》は必ず除去しなければなりません。とはいえ《宝船の巡航》《弧光のフェニックス》に対して効果が薄いため、1枚は減らします。

《吸収》/《ドミナリアの英雄、テフェリー》

吸収ドミナリアの英雄、テフェリー

どちらも悪くはないけど、良くもないカードです。《神秘の論争》のいい的になってしまいます。

《中略》

中略

《若き紅蓮術士》を打ち消せるので先攻では残したほうがいいです。

《神秘の論争》/《霊気の疾風》

神秘の論争霊気の疾風

イゼットフェニックスに対して最高とまではいきませんが、いいカードたちです。チャンスがあれば積極的に使ってください

黒単アグロ

色対策カードがどれも強くないのは残念ですね《敬虔な命令》はこのマッチアップでも《封じ込め》よりも劣ります。

対 黒単アグロ

Out

中略 中略 ドビンの拒否権
覆いを割く者、ナーセット 覆いを割く者、ナーセット

In

ニクス毛の雄羊 ニクス毛の雄羊 黎明をもたらす者ライラ
僧院の導師 僧院の導師

《僧院の導師》

僧院の導師

《僧院の導師》のトークンは良いブロッカーです。出したターンに追加で呪文を唱えられるまで待ちたいと思うでしょうけど、毎回その余裕があるとは限りません

緑単ランプ

イゼットフェニックスのように多角的に攻めてくるデッキです。状況次第でカードの強弱も変わるため、どのカードをサイドアウトすべきなのか判断するのが難しいマッチアップになります。

対 緑単ランプ

Out

至高の評決 至高の評決 アゾリウスの魔除け アゾリウスの魔除け
覆いを割く者、ナーセット 残骸の漂着

In

霊気の疾風 霊気の疾風 霊気の疾風 ドビンの拒否権
僧院の導師 僧院の導師

《僧院の導師》

僧院の導師

《絶え間ない飢餓、ウラモグ》が唱えられる前に勝てるのは素敵ですね。

《ドビンの拒否権》

ドビンの拒否権

打ち消せる呪文は多くありません。でもその一部の打ち消せる呪文が強いのです

《残骸の漂着》

残骸の漂着

このマッチアップにおいて、メインデッキで唯一弱いカードです。

《至高の評決》

至高の評決

これをサイドアウトするのはおかしいと思うかもしれませんが、相手のデッキの大部分に対してあまり効果的ではありません。《ラノワールのエルフ》が8枚入っているとわかっているなら評価は上がりますが、4枚しかないなら大したことはありません。《樹上の草食獣》《エルフの再生者》は出た時点で仕事を終えているため、それほど有効ではありません。

赤単/バーン

黒単と似ていますが、火力呪文があってハンデスがありません。つまるところ生き残ることさえできれば引き込んだ強力なカードを確実に唱えることができるため、《ドミナリアの英雄、テフェリー》などの重いカードを少々サイドアウトしても問題ありません。また、《ドビンの拒否権》は、火力呪文への対抗策として役立つので、それほど悪くはありません。

対 赤単/バーン

Out

覆いを割く者、ナーセット 覆いを割く者、ナーセット 中略 中略
ドミナリアの英雄、テフェリー 時を越えた探索

In

霊気の疾風 霊気の疾風 霊気の疾風 黎明をもたらす者ライラ
ニクス毛の雄羊 ニクス毛の雄羊

《僧院の導師》

僧院の導師

火力呪文が多く入ったデッキを相手にして生存する見込みは薄いです。もし相手のデッキのクリーチャーが今より少なければ、《残骸の漂着》《至高の評決》よりも優先すべきカードとなります。モダンの場合、相手のデッキには致死量以上の火力があり、焼き切られる前に勝つ必要があるため、サイドインします。しかしパイオニアでは序盤を生き残れば《吸収》が試合をコントロールしてくれるため、よくある負け方はクリーチャーに押し切られるパターンです

終わりに

今のパイオニアで青白コントロールは十分強いデッキです。抜群に強いわけでも、環境で最強のデッキでもありませんが、居場所は確保されています。青白コントロールは動きがにぶくて、すごく強力でもありません。でも青白コントロールってそういうものですよね。私にとっては、今はこれ以上を望んだら多くを望みすぎだろうと思うくらい良いデッキです。

グレゴリー・オレンジ (Twitter)

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Gregory Orange アメリカ出身のプロプレイヤー。HotSauceGames.comの一員であり、ゴールド・レベル・プロとしてプロシーンの第一線で長年戦っているアメリカの強豪。グランプリ・サントニオ2017優勝のほか、プロツアーでも安定した成績を残し続けている。2018年8月に開催されたマジック25周年記念プロツアーでアレン・ウー、ベン・ハルと共に優勝。さらなる研鑽を積むべく、チームメイトたちと共にHareruya Prosに加入した。 Gregory Orangeの記事はこちら