優勝者デッキテク ~林 達哉の黒緑鱗~
晴れる屋メディアチーム
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By Tsutomu Date
昨年10月にフォーマットが発表され、瞬く間に人気を博しているパイオニア。開催を来週2/1に控えるマジックフェスト・名古屋2020本戦で採用されていることも後押しし、今国内で最も盛り上がりを見せているフォーマットと言える。
「第1期パイオニア東海王決定戦」はそのMF名古屋の1週間前であり、また『テーロス環魂記』発売直後でもある1/25に行われた。メタゲームの変遷が著しく、新セットの影響も計り知れない本環境での参加人数は101人を数え、晴れる屋名古屋店の大会参加人数を更新した。
歴代の東海王も多く参戦する中、101人の頂点に立ったのは東海レガシー界でその名を知らぬ者はいない強豪、林 達哉。ジャンドカラーのミッドレンジやコントロールを使わせれば右に出る者はいない林だが、本大会に持ち込んだデッキは黒緑の《硬化した鱗》デッキだった。
「第1期パイオニア東海王」に輝いた林に、その使用デッキについてインタビューをお願いした。
――『第1期パイオニア東海王決定戦』、優勝おめでとうございます。まずは本大会にあたってこのデッキを選択した理由を教えてください。
林「色が好きだから!本当は黒緑のミッドレンジが組みたかったんだけど、パイオニアではヤバイからね。やめました。その後、対戦相手として《硬化した鱗》デッキと戦ってみたんだけど、《搭載歩行機械》や《歩行バリスタ》がうざくって。じゃあ自分でも使ってみよう、ってとこからスタートです。パイオニアでアグロをやる上では、緑単タッチ黒も候補にあったんだけど、4ターンで勝てるデッキが使いたかったから速度に勝るこっちにしました」
――東海でジャンドと言えばハヤタツ(林選手のニックネーム)、と言われるだけあって、やはりデッキの選択の理由は色にあったのですね。ハヤタツさんは非青のミッドレンジやコントロールを使うイメージがあったのでアグロを選択したのは意外でした。
林「好みで言えば『5色《ニヴ=ミゼット再誕》』をやりたかったんだけど、ミラーマッチはやりたくなかったし、(黒緑鱗は)メタゲームの裏側にいるので立ち位置は良さそうなんだよね。アグロなのに意外に全体除去耐性もある。初めは青白コントロールに対して勝つプランが見えなかったけど、除去を噛み合わせないようにできれば勝負になることがわかった。あと、よく誤解されますけどアグロは好きですよ。特に《死の影》のようなピーキーなデッキは大好きです」
――なるほど、では練習内容はどうでしたか?
林「赤単と黒単との練習は結構してたので自信あったんだけど、青白コントロールとの練習が不足してたのが不安だったね。でも今日は思ったプランを実行できたので楽しかった。サイドボードは青白コントロールと《死の国からの脱出》デッキを意識して構築しました」
――ちなみに『テーロス環魂記』からの新しいカードは…入ってませんね?
林「入ってますよ!ほら!」(7枚の『テーロス環魂記』版の《森》を指さす)
――ああ確かに……。
林「『テーロス環魂記』の《森》は楽しいし、きれい。好きです。あと『アングル―ド』の土地も好き。けーちんさんにサインを貰った土地もあるんですよ。今回使いたかったけど枚数が足りなくて。あとは現状『テーロス環魂記』で入れたいカードはないですね」
――『アンヒンジド』の土地は特に人気がありますし、基本土地はこだわりが出るところですよね。他にこだわっているカードはありますか?
林「このデッキは固定パーツが多いのでこだわりを出すところは少ないんですが《ゴルガリの女王、ヴラスカ》ですかね。《大食のハイドラ》の4枚目が飽和感あったので変えてます。後半のマナフラッドを受ける、メインでアーティファクトを割れる、《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》とも相性が良くて、[+1]で出した0/1の植物トークンをサクってドローすることもできる。あと《搭載歩行機械》を自分で破壊することができたり、相当いい仕事します」
――汎用性の高いカードではあるのですが、ちょうどこのデッキに噛み合う位置づけなんですね。デッキの構築で悩んだ部分はありますか?
林「《硬化した鱗》デッキでは、他に《アーク弓のレインジャー、ビビアン》型もあって、青白コントロールに強いのならそっちも使ってみたかったね。[-5]で《変容するケラトプス》を持ってきたりとか。でもパイオニアは4ターンキルを目指す前提があったのでやめました」
――なるほど。全体的にも低マナ域のカードが多く取られていて、前のめりな印象ありますね。ではデッキの一押しカードを教えてください。
林「《実験体》ですね。これは今日一番偉かった。『5色《ニヴ=ミゼット再誕》』に勝てたのもこれのおかげです。2回ともこれの再生のおかげでクロックが途切れなかった。あとサイドボードの《霧裂きのハイドラ》。全除去の返しで本体やプレインズウォーカーを狙いに行くことができるし、コンボとのスピード勝負にも有効です。速攻は大事。《変容するケラトプス》は速攻で殴ることはなかなかできないので、そういう意味ではこちらの方が優秀です」
――では各デッキとのサイドボーディングのプランを教えてください。
林「ほぼ五分だけど、サイズが大きい分若干有利かな」
林「一見有効そうですが、面で押していくマッチなので《霧裂きのハイドラ》は入れません。《霧裂きのハイドラ》は青白コントロール専用サイドボードのイメージです」
林「《搭載歩行機械》は除去に対して強いカードなので、除去がないデッキに対しては数を減らします」
林「《ゴルガリの魔除け》はエンチャントでの追放系除去や《至高の評決》対策も兼ねています。相手が除去を増やしてくるのもあって、遅いカードは抜いていきます」
林「《至高の評決》が入ってくるので、そこを意識してサイドインしています。サイドアウトはGame1で相手のデッキ内容を見てから検討してふわっと抜いていきます」
林「きついマッチアップです。相手の除去が強いので、《大食のハイドラ》のような重くて除去耐性のないカードは抜けますね」
林「コンボ系のデッキとはスピード勝負になりますので、クロックが弱いカードや、重いカードは抜いていきます。対策カードは多めに取ってますね。特に《減衰球》は1枚で色々なデッキに有効です」
――ではこれからこのデッキを使いたい方にアドバイスをお願いします。
林「《硬化した鱗》に接着剤を付けておいてください!っていうと叩かれるかな(笑)」
――キープ基準が大事ということでしょうか?
林「そうですね。そこは重点的に練習しました。初手に《硬化した鱗》や《巻きつき蛇》があるか否かで勝率が大きく変わってくるので。また、マナカーブ順に展開していくデッキなので簡単なデッキに見えるのですが、状況に応じて押し引きが必要になるので、そういうのが好きな人には特にお勧めですね。《実験体》や《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》から出す植物トークンで持ちこたえて巻き返したり、想像よりもずっと選択肢の多いデッキです」
林「相手が繰り出してくる除去の種類を想定してサイドイン/アウトしたり、ハンドを予想して展開の順を変えたりするところも楽しい。例えば、《アゾリウスの魔除け》や《拘留の宝球》を持っていそうなら《石とぐろの海蛇》、《至高の評決》のような全体除去を撃ってきそうなら《搭載歩行機械》、と合わせていく。このあたりはレガシーのデルバーデッキに通じるものがありますね。 クロックを重視したいなら《秘密を掘り下げる者》、 ピン除去をケアするなら《若き紅蓮術士》や《真の名の宿敵》…といったように」
――レガシーでの経験もしっかり生きているということですね。ありがとうございました。MF名古屋の活躍も期待しています。
林「こんなんでいい?もう飲み会終わっちゃうよ!俺が幹事のフグ鍋の飲み会なのに!フグなくなっちゃう!途中で負けると思ってたのに!」
慌ただしく会場を後にする林。仲間達からの祝福も格別なものに違いない。
栄えある第1期パイオニア東海王、林 達哉に惜しみない称賛を送りたい。