USA Legacy Express vol. 162 -レガシー環境を脅かす新たなコンボデッキ!-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさんこんにちは。

リアルでのレガシーイベントが減少傾向にありますが、今週末にはマジックフェスト・名古屋2020にて日本レガシー選手権2020が開催され、2月にはBMO vol.11の併催イベントとしてBIG MAGIC Classic Legacyも開催されるなど、国内のイベントが充実しています。

さて、今回の連載ではLegacy Format Champsと先週末に開催されたLegacy Showcase Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。

Legacy Format Champs
あらゆる構築フォーマットを支配するオーコ

2020年01月06日

  • 1位 4C Loam
  • 2位 Izzet Delver
  • 3位 Izzet Delver
  • 4位 Grixis Delver
  • 5位 4C Loam
  • 6位 Dredge
  • 7位 Temur Oko
  • 8位 Slow Depths

トップ8のデッキリストはこちら

年明け早々にMOで開催されたレガシーの大規模なイベントです。『テーロス還魂記』リリース前の環境の結果ですが、強豪プレイヤーも多く参加していたイベントだったこともあり現環境のメタを考える上で参考になりました。

上位はコンボが少なく、Izzet、Grixisなどバリエーションの差はあるもののDelver系が多く勝ち残っていました。

DredgeやLoamなど墓地を使ったデッキも活躍しており、優勝を果たしたのも多色のLoamでした。

Legacy Format Champs デッキ紹介

「4C Loam」「Izzet Delver」「Grixis Delver」

4C Loam

今大会で最大勢力だったDelver系に相性が良かったことが主な勝因だと思われます。対するDelver側も《虚空の力線》をサイドに採用したリストも見られるなど、上位に残ったリストの多くは対策もしっかりしていましたが、そんな中での優勝を果たしました。

優勝したOzymandias17は、レガシーのSCGOで優勝経験のあるLoamのエキスパート、Matthew Vook氏で、デッキの理解力の高さも今回の結果に繋がったことが予想されます。

燃え柳の木立ち罰する火

《燃え柳の木立ち》《罰する火》のエンジンによってクリーチャーデッキに強く、Delver系が上位に多数勝ち残っていた今大会のようなメタでは最高の選択肢になり得ます。

☆注目ポイント

闇の腹心森の知恵聖遺の騎士虚空の杯

《闇の腹心》《森の知恵》などアドバンテージを取る手段が豊富で、火力で処理されにくい《聖遺の騎士》など多くのフェアデッキに強い要素が揃っています。特に今大会のようにDelver系が上位に多いメタでは、メインからフル搭載されている《虚空の杯》が刺さります。

王冠泥棒、オーコ

Miracles、Temur Delverなど多くのデッキに採用されている《王冠泥棒、オーコ》はこのデッキにも採用されており、墓地対策に引っかからない勝ち手段となります。このプレインズウォーカーのためだけに青を足しており、実質5色です。

虚空の力線疫病を仕組むもの

DredgeやHogaakなど墓地を使ったデッキが多くなることを想定していたようで、《虚空の力線》を採用するなど対策が徹底しています。《疫病を仕組むもの》は多くの場合スイーパーのように機能し、単体除去に耐性がある《真の名の宿敵》やトークンを並べてプレッシャーをかけてくる《若き紅蓮術士》を対策する手段になります。

Izzet Delver

Grixis、Temur、Sultaiなどバリエーションが多いDelver系ですが、今大会で最も優秀な成績を残していたのは2色のIzzet Delverでした。《王冠泥棒、オーコ》対策になり、除去として使用すれば《夏の帳》にも引っかからない《紅蓮破》を使えるIzzet(Grixis)が最もポピュラーな理由の一つです。

Izzet Delverはマナ基盤に基本地形を含める余裕があるので、《血染めの月》《不毛の大地》といったカードに耐性があるため動きが安定しています。マナ基盤がタイトなデッキには《不毛の大地》が効くので、ほかのDelver系に強い構成になります。2色にした分ハンデスや《王冠泥棒、オーコ》などを使うことができないのでデッキパワーではほかのバージョンに劣り、Miraclesなどコントロールやコンボに対しては少し弱くなります。

☆注目ポイント

厚かましい借り手

アメリカの強豪プレイヤーであるGriselpuff(Bob Huang)が、今回Izzet Delverを持ち込みトップ4に入賞していました。《厚かましい借り手》は、青赤の2色でもマリッドレイジや《タルモゴイフ》など高タフネスのクリーチャー、《虚空の杯》などの置物を対策できるようになり、パワー3の回避能力持ちとクロックとしても優秀です。

渋面の溶岩使いもみ消し

コンボやコントロールよりも同型やDeath and Taxesとのマッチアップを想定していたようで、《渋面の溶岩使い》がメインから採られています。《もみ消し》もメインから2枚採用されています。相手のフェッチランドの起動を妨害して事故らせたりする以外でも、「奇跡」の誘発を防いだりと使えるスペルです。最近では、Temur以外のバージョンでも見られるようになってきました。

虚空の力線イゼットの静電術師猛火の斉射

DredgeやHogaakとの相性が悪いDelver系ですが、Bob Huang氏はサイドに《虚空の力線》を採用しています。Death and Taxesも意識していたようで、《イゼットの静電術師》《猛火の斉射》といった複数の小型のクリーチャーを除去する手段が採用されています。

Grixis Delver

Grixis Delverとされていますが、《グルマグのアンコウ》が不採用でIzzetをベースに除去とハンデス、サイドボードの一部のカードのために黒を足した形になっています。《剣を鍬に》を使ったデッキの増加や、《厚かましい借り手》の採用数が増えたことが原因だと考えられます。

ハンデスを採用している分Izzetと比べるとコンボデッキやコントロールに強くなりましたが、3色ので基本地形が入っておらず《不毛の大地》デッキや《血染めの月》デッキとのマッチアップは厳しくなります。

☆注目ポイント

思考囲い致命的な一押し戦慄衆の秘儀術師厚かましい借り手

黒をタッチしたことで、《思考囲い》《致命的な一押し》などデッキ内の優秀な1マナスペルが増えたことにより、《戦慄衆の秘儀術師》をさらに強く使うことができるようになりました。

《厚かましい借り手》のおかげで天敵の《虚空の杯》やマリッドレイジをメインから対策できるようになったことは大きく、同じ3マナ域でこのデッキのレギュラーであった《真の名の宿敵》よりも優先されています。従来までのマリッドレイジ対策は《悪魔の布告》系の除去が主で、《エルフの開墾者》などが隣にいることが多く確実性に欠けていたので大収穫です。

コラガンの命令苦い真理神秘の聖域

《コラガンの命令》は、《虚空の杯》や装備品などを対策しつつアドバンテージを取ることができるスペルで、3マナはこのデッキにとって重く感じますが多くのフェアデッキとのマッチアップで活躍します。同じくアドバンテージカードである《苦い真理》は、Bant Snow Controlなどとのマッチアップで重宝するカードです。

3マナ域が増加するサイド後のマッチアップ用に追加の土地として採用されている《神秘の聖域》は、《目くらまし》とのシナジーが強力です。《目くらまし》の代用コストによって手札に戻し、《苦い真理》を再利用してアドバンテージを得る動きが強く、サイド後のコントロールとの相性が大分改善されています。これはIzzet Delverにはない要素でGrixisバージョンの強みの一つです。

単体除去が中心で横に並ぶデッキを苦手としていましたが、《疫病を仕組むもの》によってDeath and TaxesやElvesとの相性も緩和され、《真の名の宿敵》も対策しやすくなりました。Delver同型が多い環境ではIzzet、コンボやコントロールが多い環境ではGrixisが安定したDelver系の選択肢となりそうです。

Legacy Showcase Challenge
話題のあのカードを使ったコンボデッキが新環境のレガシーイベントを制する

2020年01月27日

  • 1位 Underworld Breach
  • 2位 Izzet Delver
  • 3位 Lands
  • 4位 Reanimator
  • 5位 4C Loam
  • 6位 Hogaak
  • 7位 Underworld Breach
  • 8位 Izzet Delver

トップ8のデッキリストはこちら

『テーロス還魂記』が加入した新環境のレガシーは、新カードの《死の国からの脱出》を使ったストーム系のコンボが早くも結果を残しています。

既存のデッキでは、Hogaakなど墓地を使ったデッキやIzzet Delverがコンスタントに結果を残しています。Izzet DelverはLegacy Format ChampsでBob Huang 氏やRich Cali氏といった強豪プレイヤーが使用し、結果を残していたことからも環境の青いフェアデッキの代表格として定着しているようです。

スタンダード、パイオニア、モダンで禁止カードに指定された《王冠泥棒、オーコ》を得た4C Loamも、Legacy Format Champsから引き続いて結果を残しています。

Legacy Showcase Challenge デッキ紹介

Underworld Breach

《死の国からの脱出》は、『テーロス還魂記』のプレビュー段階から《ヨーグモスの意志》を彷彿とさせる近年のカードパワーのインフレを象徴するカードとして話題になっていました。

《ヨーグモスの意志》のように無条件に墓地のカードを再利用できるわけではなく、「墓地からほかのカードを3枚追放する」という条件が付きますが再利用したスペルは条件さえ満たせば何度でも使用可能で、《ライオンの瞳のダイアモンド》《思考停止》を組み合わせることによってメリットに変えてしまっているのがこのUnderworld Breachコンボデッキです。

水蓮の花びら死の国からの脱出ライオンの瞳のダイアモンド思考停止

土地と《水蓮の花びら》《死の国からの脱出》《ライオンの瞳のダイアモンド》《思考停止》が揃っていればコンボをスタートできます。土地を置いて《水蓮の花びら》をキャストし、《死の国からの脱出》を置いて《ライオンの瞳のダイアモンド》を場に出します。《ライオンの瞳のダイアモンド》をサクリファイスして青青青を捻出し、 《思考停止》で自分を対象にして墓地を肥やし、そこから《ライオンの瞳のダイアモンド》《思考停止》 を再利用して墓地を肥やしつつストームカウントを稼いでいき、最終的に対戦相手のライブラリーを《思考停止》によって空にしてゲームに勝利します。

☆注目ポイント

オアリムの詠唱防御の光網退去の印章浄化の印章

コンボパーツ以外はキーカードを探し出すドロースペルやサーチスペル、コンボを通すためのカウンターや《オアリムの詠唱》《防御の光網》といった青いデッキ対策が多数積まれています。また、ヘイトベアー対策には《退去の印章》《虚空の杯》など、コンボを妨害してくる置物対策に《浄化の印章》も採用されています。

研磨基地タッサの神託者

《研磨基地》は追加の墓地を肥やす手段で、《死の国からの脱出》と組み合わせることでこのカードでもコンボを決めることができます。《タッサの神託者》は、《夏の帳》《神聖の力線》などでコンボを対策してくる相手や戦略に対する勝ち手段になります。

僧院の導師剣を鍬に

サイド後は追加の勝ち手段である《僧院の導師》や、追加のヘイトベアー対策として《剣を鍬に》が投入され、Jeskai Mentor Control寄りに変形する選択肢もあります。《神聖の力線》や各種墓地対策をサイドインしてくる相手に異なるアンサーを要求するので有効に作用します。

総括

死の国からの脱出

《死の国からの脱出》コンボの強さは本物で、今後レガシーをプレイする上で意識する必要が出てくることが予想されます。カウンターや《オアリムの詠唱》など各種妨害スペルを多数搭載しており、墓地に依存したデッキではありますがメインから置物対策が積まれており一筋縄ではいきません。

そのほか、《ライオンの瞳のダイアモンド》をシャットアウトする《無のロッド》《溜め込み屋のアウフ》も有力な対抗手段になります。置物よりもクリーチャーの方が対策されにくくクロックにもなるため、《溜め込み屋のアウフ》と墓地対策の組み合わせのように複数の異なる対策カードにアクセスできるデッキが理想です。ですので、《漁る軟泥》《虚空の杯》《スレイベンの守護者、サリア》《虚空の力線》などを使えるLoam系のデッキがよさそうです。

USA Legacy Express vol. 162は以上となります。

それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら