3つの選択肢
プレイヤーズツアーに関して、プレイヤーたちには3つの選択肢が与えられた。2/1~2日の名古屋とブリュッセル、翌週のフェニックスから参加場所を選択できるのだ。ここ日本で開催されるプレイヤーズツアー・名古屋2020へも、リー・シー・ティエン/Lee Shi Tianやドミトリー・ブタコフ/Dmitriy ButakovといったHareruyaProsが来日していた。その中でも一際目を引くプレイヤーがいた。
プロツアー『イクサラン相克』優勝、そして2017-18シーズンプレイヤー・オブ・ザ・イヤー受賞と輝かしい成績残しているルイス・サルヴァット/Luis Salvattoだ。強者は場所を選ばないとはいえ、数ある選択肢の中から、なぜ日本を選んだのだろうか?晴れる屋トーナメントセンターの初来店にあわせ、インタビューを実施した。
【店舗情報】超有名プレイヤーたちが晴れる屋トーナメントセンターに集結!
— 晴れる屋トーナメントセンター (@hareruya_TC) January 29, 2020
アレクサンダー・ヘイン選手
クリスティアン・カルカノ選手
ルイス・サルヴァット選手がご来店されました!
Welcome to Japan,@CCalcano @InsayneHayne @LuisSalvatto !! pic.twitter.com/LBa48u4o5Z
絶好の機会
――今回はヨーロッパやアメリカでもプレイヤーズツアーが開催されますが、なぜ日本のプレイヤーズツアーを選択したのでしょうか?
「以前日本で開催されたプロツアー『破滅の刻』に参加したんだ。トーナメント自体は上手くはいかなかったけど、その時日本に滞在したのは今でもいい思い出として、僕の中に残っている。新鮮で興味深いものばかりだったし、滞在中は快適に過ごすこともできた」
「確かにフェニックスへ行く方が安上がりではあったけど、日本もほとんど変わらない。それに費用よりも、大切なことがあるんだ。忘れてはいけないのは、日本には強い味方がいるってことさ。そう、晴れる屋のことさ!僕のスポンサーである晴れる屋は日本が拠点だ!」
「以前(プロツアー『破滅の刻』の時)はまだ晴れる屋にはスポンサードされていなかった。けれども今は違う。自分をサポートしてくれる企業の本拠地であり、ファンもいてくれる。だから今回は日本に行く絶好の機会だと思ったんだ」
体調管理は繊細に
――日本で会うことができ、嬉しく思います。ただ、今回のような長旅が大会中のパフォーマンスに影響をおよぼさないか心配ではあります。プロプレイヤーを続けるうえで海外遠征は必要不可欠だと思いますが、体調管理にはどう気を配っているのですか?
「確かに競技の世界で戦うには、健康に気を使う必要がある。僕は時差ボケが酷いから特にだね。だから睡眠と食事にはことさら気を使い、機内ではよく寝るようにして体調を整えているね。寝れば治ってしまうから、今のところたいした問題ではないね。それと食事についてだけど、僕はベジタリアンなんだ」
――ベジタリアンだと海外遠征中、余計に大変ではないですか?
「付き合っている彼女の影響もあって、僕の食生活は大きく変わった。確かに僕にとってチャレンジではあったし、最初は戸惑ったけど、なんとか続けてるよ。去年から少しずつ動物性たんぱく質の摂取を減らしていって、今年に入ってベジタリアンへと切りかえた。これまでは肉を食べてきたけど、殺してまで食べたいとは思わない。何よりも、動物は好きだからね」
「勘違いしないでほしいのは僕はベジタリアンであって、ヴィーガンではないってこと。ベジタリアンにはたくさんのオプションがあって牛乳も卵も食べられるから、健康面も問題ないよ」
――そういえば、Enter the Battlefieldではチーズが好きだと言っていましたね?
「はは、そうそう!チーズは好きだし、今もよく食べているよ」
気分転換
――食生活もだけど、プロプレイヤーの私生活が気になります。マジック以外でも頭を使ったゲームが好きだったりするのでしょうか?
「ボードゲームは大好きだね。あとは運動も。PADELって知ってるかい?アルゼンチンやスペインでは有名なんだけど」
※PADEL……コート内でラケットを用いてボールを打ち合うテニス/スカッシュに似た競技
「どちらも室内でできるから、よく友人を招いているよ。気分転換には最適だね」
大会中にすべきこと
――練習を十分に積み、コンディションを整えたとしても、大会では思うようにいかない時があるかと思います。そうした際はどう対応していますか?「大会中に最も大切なのは気持ちを切り替えることだと思っているよ。だから頭の中から追い出す必要がある。負けたゲームを反省するのはいいことだけど、次のゲームのためにはならない。今すべきことは、すぐに今のゲームを忘れ、次に集中することなんだ」
「ただし、ミスして負けたなら自分はもっと上達できることを意味している。だから大会後に考えるようにしているね、本当はどうすべきだったのか」
さいごに
――最後になりますが、今シーズンの目標と日本のファンたちへメッセージをお願い致します。
「プレイヤー・オブ・ザ・イヤーを獲得できたことは自分の中で素晴らしいことだったし、名誉なことに違いなかった。ただ、燃え尽き症候群とでもいうべきかな、モチベーションを失ってしまったんだ。僕はただ練習するだけじゃダメなんだ。よりよいパフォーマンスを発揮するには、情熱が必要不可欠なんだ。僕は情熱をもち続け、プレイしなければならない」
「今シーズンはライバルズリーグを維持しつつ、MPLへと戻りたいと思っている。より上を目指すためにこの先のプレイヤーズツアーでトップ8、さらには優勝という結果を残せるように挑戦していくよ」
「晴れる屋にも、そして応援してくれているファンにもありがとうと言いたい。好意はとても嬉しいし、僕自身へのパフォーマンスへも繋がっている。今後も応援してほしい。きっと最高の成績を残してみせるから」
インタビューを通じて感じたのは、ルイス・サルヴァットがプロフェッショナルだということだった。自身の立ち振る舞いはもとより、競技に対する姿勢、コンディション管理を自分の中でどう処理すべきかを理解しているように思えた。自分という人間を知り、魅せ方を分かっている、そこにあったのは本物のプロプレイヤーの姿であった。
プレイヤーズツアー・名古屋2020は終わり、残念ながらルイス・サルヴァットは初日敗退となってしまった。ただ彼が最後に言い残した「今後も応援してほしい、きっと最高の成績を残してみせるから」は、偽りでも、リップサービスでもない。情熱をもって競技シーンへと挑めば、自分には言葉を現実とするだけの力はすでに持ち合わせていることを意味している。
まだ、今シーズンは始まったばかりだ。ルイス・サルヴァットの活躍を期待しよう。