Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/02/05)
5色ニヴを選択したワケ
先日プレイヤーズツアー・ブリュッセルに出場し、私は5色《ニヴ=ミゼット再誕》(以下、5色ニヴ)を使用しました。
1 《島》
1 《沼》
1 《山》
1 《森》
2 《繁殖池》
2 《草むした墓》
2 《踏み鳴らされる地》
2 《寺院の庭》
1 《神無き祭殿》
1 《神聖なる泉》
4 《寓話の小道》
1 《欺瞞の神殿》
1 《啓蒙の神殿》
1 《天啓の神殿》
1 《悪意の神殿》
1 《静寂の神殿》
1 《陽花弁の木立ち》
1 《森林の墓地》
2 《マナの合流点》
-土地 (28)- 3 《金のガチョウ》
4 《森の女人像》
2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4 《ニヴ=ミゼット再誕》
-クリーチャー (13)-
4 《突然の衰微》
1 《戦慄掘り》
1 《殺戮遊戯》
1 《陽光の輝き》
4 《白日の下に》
1 《破滅の刻》
4 《時を解す者、テフェリー》
2 《先駆ける者、ナヒリ》
-呪文 (19)-
2 《冥府の報い》
2 《思考囲い》
2 《神秘の論争》
1 《復活の声》
1 《探索する獣》
1 《スカラベの神》
1 《セレズニアの魔除け》
1 《思考消去》
1 《轟音のクラリオン》
-サイドボード (15)-
Magic Onlineのメタゲームを追いかけていた方ならご存知だと思いますが、直近の禁止告知からパイオニアのメタゲームは常に流動的でした。たった数日の間に大きな変化が起こるのです。
5色ニヴの人気が爆発したのは、単色デッキが最盛期を迎えたときでした。アグロ型の単色デッキだけでなく、それらのデッキを狩ろうとするミッドレンジ型にも有利に戦えたのです。例をあげるならば、1マナ域を12枚採用した黒単にも相性が良いですし、土地26枚と《栄光をもたらすもの》を搭載した赤単ミッドレンジも戦いやすい相手でした。
メタゲームはすぐに5色ニヴに適応しました。イゼットエンソウルとスピリットが数を増やし、赤単ミッドレンジのメタゲームシェアを奪い始めたのです。同時にディミーア《真実を覆すもの》(以下、ディミーアインバーター)が頭角を現しはじめます。これらの変化への反応として、黒単アグロとマナカーブが低い型の赤単が再び人気を博しました。
デッキ登録締切の前日になり、当日のメタゲームにおける5色ニヴと各デッキの相性は以下のようになるだろうと予想しました。
予想支配率 | デッキ名 | 相性 |
---|---|---|
15% | 黒単アグロ | 良い |
15% | 5色ニヴ | 互角 |
10% | ディミーアインバーター | 互角 |
10% | 赤単アグロ(マナカーブが低い《栄光をもたらすもの》不採用型) | 良い |
10% | スピリット | 悪い |
5% | アゾリウスコントロール | 良い |
5% | イゼットエンソウル | 悪い |
5%未満 | ランプ | 緑単は互角。《ウーロ》や《ハイドロイド》をタッチしていると相性は悪い。 |
5%未満 | ロータスブリーチ | 悪い |
5%未満 | イゼットフェニックス | 互角 |
5%未満 | ドレッジ | 良い |
5%未満 | ヘリオッド | 良い |
10%未満 | その他 | 良い |
上記のメタゲーム予想に従う場合、5色ニヴを選択することが理に適っていました。将来的にスピリットやイゼットエンソウルの使用率が大幅に高まらなければ、5色ニヴは躍動し続けるでしょうし、各週末のメタゲームを意識したサイドボードを練れば成功できるでしょう。このデッキは対応力が高いのです。
デッキ間の相性を正しく評価するのはいつだって難しいことです。上記の評価もある程度の不確かさがあります。そのようななかで私が最も信頼していたもの、そして5色ニヴを選択する決定打となったのは、特定の相手に集中したテストプレイの結果でした。アゾリウスコントロール、黒単アグロ、最新の構成の赤単アグロ。そのどれにも堅実に戦えることがわかったのです。
- 2020/02/05
- メタゲームの山々
- マッティ・クイスマ
最も不透明だったのはディミーアインバーターとの相性でした。ですが、このディミーアデッキを調整していたゴンサロ・ピント/Goncalo Pintoやベルナス・トーレス/Bernas Torresによれば、総じて互角の相性であるとのことでした。
注記:昨今、デッキの相性に関して信頼できる情報を得るのが非常に難しくなっています。エターナルフォーマットにおいてはサイドボードのささいな変更が有利不利に大きく影響するという問題が今も昔もあります。しかし今回のテストプレイに何よりも大きな影響を与えたのは、ロンドンマリガンでした。このルールはMagic Onlineと現実世界とをより明確に分けました。Magic Onlineでプレイする場合、相手のマリガン技術の高低は運任せになってしまいますし、デッキの公開を前提としてキープ基準を決めるという事情も説明できません。さらに、Magic Onlineのリーグは競技とカジュアルが今は一体になっているため、対戦相手の質のブレ幅が大きくなっています。
これらの要素が意味するところは、チームメイトとの集中的な練習の価値は計り知れず、Magic Onlineの勝率だけをあてにしてデッキ選択をできないということです。Magic Onlineのデータに信ぴょう性がないため、より重視すべきはデッキパワーが高いものを選択し、勝つために必要なことやサイドボーディングへの理解を深めることです。
5色ニヴは純粋なミッドレンジであり、基本的にロングゲームを目指すと同時に、方向性がまったく異なる相手を倒すためにシルバーバレットに比重を置いています。メインデッキのシルバーバレットは(ディミーアインバーターの人気を考えると風向きが良い)《殺戮遊戯》や、《陽光の輝き》や《破滅の刻》といったカードです。
クリーチャーデッキを使う相手は序盤からビートダウンをしかけ、カードアドバンテージに押しつぶされる前に勝たなければならないという焦りがあるため、全体除去は非常に有効です。全体除去をケアできるほどの余裕は、現実的にはありません。
カード選択
当日に使用した最終的なデッキリストは、チェコハウスの天才たち、つまりスタニスラフ・ツィフカ/Stanislav Cifka、イヴァン・フロック/Ivan Floch、オンドレイ・ストラスキー/Ondrej Straskyの調整結果の賜物です。彼らはこのデッキに多大なる革新をもたらしたと思います。ここではそれらを見ていくことにしましょう。
「神殿」を含む土地28枚
一般的な構成は土地が26枚です。土地を5枚目まで順調に伸ばすことが重要ですので、枚数を増やしたことは本番でも有利に働きましたし、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の土地を置く効果も安定して使いやすくなるというメリットがあります。終盤にマナフラッドしてしまう副作用がありますが、「神殿」で多少軽減できますし、《先駆ける者、ナヒリ》もいます。全体としてバランスがとれたデッキだと思いますね。
《金のガチョウ》
この枠には《楽園のドルイド》が採用されるのが一般的ですが、《金のガチョウ》には見過ごせない利点がいくつかあります。3ターン目に《ニヴ=ミゼット再誕》をプレイできる可能性があり、終盤には継続的なライフ回復ができるのです。特に後者は頻繁に起きます。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》とともにライフ回復できるため、新たな境地として《包囲サイ》の不採用という考えが生まれました。
《先駆ける者、ナヒリ》
一時は3枚採用していましたが、マナカーブを少し低くする目的で2枚まで減らしました。《先駆ける者、ナヒリ》は偶然にも《太陽冠のヘリオッド》対策として優れていますし、奥義のサーチ先にも困らないデッキですが、何よりも重要な役割はマナフラッドへの耐性をつけることです。
《包囲サイ》の不採用
《包囲サイ》は悪くないカードですが、アグロ対策として必要ないと感じました。《致命的な一押し》で除去されてしまいますし、終盤でインパクトに欠けるカードになりがちという弱点もあります。それよりも序盤の妨害呪文の方が重要であることが多いと感じたため、《突然の衰微》を4枚、《戦慄掘り》を1枚採用しています。
もしアグロへのガードをもっと上げたい場合は、《包囲サイ》よりもまずは軽量の妨害を増加させた方が良いはずです。つまるところ、《包囲サイ》は終盤への架け橋としては力不足であり、スタンダードにいた当時とは違ってコントロールやコンボデッキへのプレッシャーとしてもインパクトに欠けるものなのです。
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
驚くべきカードであり、これほど黒単アグロに有利に戦えるのも《自然の怒りのタイタン、ウーロ》がいるからです。このデッキはマナ加速に大きく依存しているため、このクリーチャーは序盤の橋渡しとして、終盤にはマナを有効に使う手段としての役割を担います。単体で勝ってくれることも少なくありません。
ブリュッセルで使用したサイドボードプラン
黒単アグロ
対 黒単アグロ
ミラーマッチ
対 ミラーマッチ
イゼットエンソウル
対 イゼットエンソウル
アゾリウススピリット
対 アゾリウススピリット
赤単アグロ
対 赤単アグロ
対 赤単ミッドレンジ
アゾリウスコントロール
対 アゾリウスコントロール
緑単アグロ
対 緑単アグロ
緑単ランプ
対 緑単ランプ
ロータスブリーチ
対 ロータスブリーチ
イゼットフェニックス
対 イゼットフェニックス
ドレッジ
対 ドレッジ
白単ヘリオッド
変更なし。ディミーアインバーター
対 ディミーアインバーター
これから5色ニヴを使う場合
検討している変更点
デッキリストの入れ替えを考えているカード群をご紹介しましょう。
《突然の衰微》を1枚減らす
序盤に動けることは重要ですし、《突然の衰微》は最も相性の悪いイゼットエンソウルとスピリットに特に有効な呪文です。ですが、使用者が増えてきているディミーアインバーターなどに対して使用用途が限られてしまっています。
そのため、《突然の衰微》の4枚目の枠は《思考消去》が良いかもしれません。《思考囲い》も好きですが、《思考消去》は《ニヴ=ミゼット再誕》の効果でめくれて嬉しいカードというメリットがあります。これまで体験したゲーム展開から判断するに、5ターン目より後でも手札破壊呪文の価値はありますし、どれだけ終盤になろうとも《時を解す者、テフェリー》の[+1]能力を使えば相手のドローステップに唱えられます。
《突然の衰微》に代わる別の候補としては《自然の怒りのタイタン、ウーロ》も考えられます。重複したときに弱く「脱出」コストが軽くないため3枚目はリスクが高いですが、それに見合うだけの強さと活躍の頻度があります。
《安らかなる眠り》を2枚減らす
イゼットフェニックスとのテストプレイ結果が芳しくなかったため、墓地デッキと戦うためのツールが必要だと思わされました。その想いは変わっていませんが、墓地デッキが今後もメタゲームシェア率が低いままである可能性はあるでしょうから、この枠を別の何かと入れ替えても良いはずです。
《ラクドスの復活》と《思考囲い》が候補になるでしょう。先ほどと同様、ディミーアインバーターと(予想以上にブリュッセルで人気だった)アゾリウスコントロールとの相性を改善する狙いです。
《復活の声》を1枚追加
《復活の声》は予想をはるかに上回る活躍をしてくれました。アゾリウスコントロールやアゾリウススピリットはもちろん、黒単の《自傷疵》に対して強かったのです。サイドボードの《神秘の論争》を減らして1枚追加することを検討しています。
《永遠神の投入》を1枚追加
チェコハウスの天才たちとパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor damo da Rosaが大会前に見事に発見したカードです。《朱地洞の族長、トーブラン》をキーカードとする最新の赤単に非常に有効ですし、理論上は注意を怠ったディミーアインバーターのプレイヤーの不意打ちができます。
私はディミーアインバーターへの有効性をテストする時間がなかったのですが、十分に機能するプランだと聞いています。というわけで、《永遠神の投入》を1枚入れるために《冥府の報い》を抜いてみるのも良いかもいれません。
最新のデッキリスト
1 《島》
1 《沼》
1 《山》
1 《森》
2 《繁殖池》
2 《草むした墓》
2 《踏み鳴らされる地》
2 《寺院の庭》
1 《神無き祭殿》
1 《神聖なる泉》
4 《寓話の小道》
1 《欺瞞の神殿》
1 《啓蒙の神殿》
1 《天啓の神殿》
1 《悪意の神殿》
1 《静寂の神殿》
1 《陽花弁の木立ち》
1 《森林の墓地》
2 《マナの合流点》
-土地 (28)- 3 《金のガチョウ》
4 《森の女人像》
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4 《ニヴ=ミゼット再誕》
-クリーチャー (14)-
3 《突然の衰微》
1 《戦慄掘り》
1 《殺戮遊戯》
1 《陽光の輝き》
4 《白日の下に》
1 《破滅の刻》
4 《時を解す者、テフェリー》
2 《先駆ける者、ナヒリ》
-呪文 (18)-