チェコ産5色ニヴデッキガイド

Lucas Berthoud

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2020/02/05)

5色ニヴを選択したワケ

先日プレイヤーズツアー・ブリュッセルに出場し、私は5色《ニヴ=ミゼット再誕》(以下、5色ニヴ)を使用しました。

Magic Onlineのメタゲームを追いかけていた方ならご存知だと思いますが、直近の禁止告知からパイオニアのメタゲームは常に流動的でした。たった数日の間に大きな変化が起こるのです。

王冠泥棒、オーコ運命のきずな

5色ニヴの人気が爆発したのは、単色デッキが最盛期を迎えたときでした。アグロ型の単色デッキだけでなく、それらのデッキを狩ろうとするミッドレンジ型にも有利に戦えたのです。例をあげるならば、1マナ域を12枚採用した黒単にも相性が良いですし、土地26枚と《栄光をもたらすもの》を搭載した赤単ミッドレンジも戦いやすい相手でした。

アーティファクトの魂込め呪文捕らえ真実を覆すもの
漆黒軍の騎士僧院の速槍

メタゲームはすぐに5色ニヴに適応しました。イゼットエンソウルとスピリットが数を増やし、赤単ミッドレンジのメタゲームシェアを奪い始めたのです。同時にディミーア《真実を覆すもの》(以下、ディミーアインバーター)が頭角を現しはじめます。これらの変化への反応として、黒単アグロとマナカーブが低い型の赤単が再び人気を博しました。

デッキ登録締切の前日になり、当日のメタゲームにおける5色ニヴと各デッキの相性は以下のようになるだろうと予想しました。

予想支配率 デッキ名 相性
15% 黒単アグロ 良い
15% 5色ニヴ 互角
10% ディミーアインバーター 互角
10% 赤単アグロ(マナカーブが低い《栄光をもたらすもの》不採用型) 良い
10% スピリット 悪い
5% アゾリウスコントロール 良い
5% イゼットエンソウル 悪い
5%未満 ランプ 緑単は互角。《ウーロ》《ハイドロイド》をタッチしていると相性は悪い。
5%未満 ロータスブリーチ 悪い
5%未満 イゼットフェニックス 互角
5%未満 ドレッジ 良い
5%未満 ヘリオッド 良い
10%未満 その他 良い

上記のメタゲーム予想に従う場合、5色ニヴを選択することが理に適っていました。将来的にスピリットやイゼットエンソウルの使用率が大幅に高まらなければ、5色ニヴは躍動し続けるでしょうし、各週末のメタゲームを意識したサイドボードを練れば成功できるでしょう。このデッキは対応力が高いのです。

デッキ間の相性を正しく評価するのはいつだって難しいことです。上記の評価もある程度の不確かさがあります。そのようななかで私が最も信頼していたもの、そして5色ニヴを選択する決定打となったのは、特定の相手に集中したテストプレイの結果でした。アゾリウスコントロール、黒単アグロ、最新の構成の赤単アグロ。そのどれにも堅実に戦えることがわかったのです。

最も不透明だったのはディミーアインバーターとの相性でした。ですが、このディミーアデッキを調整していたゴンサロ・ピント/Goncalo Pintoベルナス・トーレス/Bernas Torresによれば、総じて互角の相性であるとのことでした。

注記:昨今、デッキの相性に関して信頼できる情報を得るのが非常に難しくなっています。エターナルフォーマットにおいてはサイドボードのささいな変更が有利不利に大きく影響するという問題が今も昔もあります。しかし今回のテストプレイに何よりも大きな影響を与えたのは、ロンドンマリガンでした。このルールはMagic Onlineと現実世界とをより明確に分けました。Magic Onlineでプレイする場合、相手のマリガン技術の高低は運任せになってしまいますし、デッキの公開を前提としてキープ基準を決めるという事情も説明できません。さらに、Magic Onlineのリーグは競技とカジュアルが今は一体になっているため、対戦相手の質のブレ幅が大きくなっています。

これらの要素が意味するところは、チームメイトとの集中的な練習の価値は計り知れず、Magic Onlineの勝率だけをあてにしてデッキ選択をできないということです。Magic Onlineのデータに信ぴょう性がないため、より重視すべきはデッキパワーが高いものを選択し、勝つために必要なことやサイドボーディングへの理解を深めることです。

殺戮遊戯陽光の輝き破滅の刻

5色ニヴは純粋なミッドレンジであり、基本的にロングゲームを目指すと同時に、方向性がまったく異なる相手を倒すためにシルバーバレットに比重を置いています。メインデッキのシルバーバレットは(ディミーアインバーターの人気を考えると風向きが良い)《殺戮遊戯》や、《陽光の輝き》《破滅の刻》といったカードです。

クリーチャーデッキを使う相手は序盤からビートダウンをしかけ、カードアドバンテージに押しつぶされる前に勝たなければならないという焦りがあるため、全体除去は非常に有効です。全体除去をケアできるほどの余裕は、現実的にはありません。

カード選択

当日に使用した最終的なデッキリストは、チェコハウスの天才たち、つまりスタニスラフ・ツィフカ/Stanislav Cifkaイヴァン・フロック/Ivan Flochオンドレイ・ストラスキー/Ondrej Straskyの調整結果の賜物です。彼らはこのデッキに多大なる革新をもたらしたと思います。ここではそれらを見ていくことにしましょう。

「神殿」を含む土地28枚

欺瞞の神殿啓蒙の神殿天啓の神殿
悪意の神殿静寂の神殿

一般的な構成は土地が26枚です。土地を5枚目まで順調に伸ばすことが重要ですので、枚数を増やしたことは本番でも有利に働きましたし、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の土地を置く効果も安定して使いやすくなるというメリットがあります。終盤にマナフラッドしてしまう副作用がありますが、「神殿」で多少軽減できますし、《先駆ける者、ナヒリ》もいます。全体としてバランスがとれたデッキだと思いますね。

《金のガチョウ》

金のガチョウ

3

この枠には《楽園のドルイド》が採用されるのが一般的ですが、《金のガチョウ》には見過ごせない利点がいくつかあります。3ターン目に《ニヴ=ミゼット再誕》をプレイできる可能性があり、終盤には継続的なライフ回復ができるのです。特に後者は頻繁に起きます。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》とともにライフ回復できるため、新たな境地として《包囲サイ》の不採用という考えが生まれました。

《先駆ける者、ナヒリ》

先駆ける者、ナヒリ

2

一時は3枚採用していましたが、マナカーブを少し低くする目的で2枚まで減らしました。《先駆ける者、ナヒリ》は偶然にも《太陽冠のヘリオッド》対策として優れていますし、奥義のサーチ先にも困らないデッキですが、何よりも重要な役割はマナフラッドへの耐性をつけることです。

《包囲サイ》の不採用

包囲サイ

0

《包囲サイ》は悪くないカードですが、アグロ対策として必要ないと感じました。《致命的な一押し》で除去されてしまいますし、終盤でインパクトに欠けるカードになりがちという弱点もあります。それよりも序盤の妨害呪文の方が重要であることが多いと感じたため、《突然の衰微》を4枚、《戦慄掘り》を1枚採用しています。

もしアグロへのガードをもっと上げたい場合は、《包囲サイ》よりもまずは軽量の妨害を増加させた方が良いはずです。つまるところ、《包囲サイ》は終盤への架け橋としては力不足であり、スタンダードにいた当時とは違ってコントロールやコンボデッキへのプレッシャーとしてもインパクトに欠けるものなのです。

《自然の怒りのタイタン、ウーロ》

自然の怒りのタイタン、ウーロ

2

驚くべきカードであり、これほど黒単アグロに有利に戦えるのも《自然の怒りのタイタン、ウーロ》がいるからです。このデッキはマナ加速に大きく依存しているため、このクリーチャーは序盤の橋渡しとして、終盤にはマナを有効に使う手段としての役割を担います。単体で勝ってくれることも少なくありません。

ブリュッセルで使用したサイドボードプラン

黒単アグロ

対 黒単アグロ

Out

時を解す者、テフェリー 時を解す者、テフェリー 時を解す者、テフェリー
殺戮遊戯 思考囲い

In

冥府の報い 冥府の報い 復活の声
轟音のクラリオン スカラベの神

ミラーマッチ

対 ミラーマッチ

Out

突然の衰微 突然の衰微 突然の衰微 突然の衰微
陽光の輝き
破滅の刻

In

神秘の論争 神秘の論争 思考囲い 思考囲い
スカラベの神
思考消去

イゼットエンソウル

対 イゼットエンソウル

Out

時を解す者、テフェリー 時を解す者、テフェリー
思考囲い
殺戮遊戯

In

冥府の報い 冥府の報い
セレズニアの魔除け
轟音のクラリオン

アゾリウススピリット

対 アゾリウススピリット

Out

先駆ける者、ナヒリ 先駆ける者、ナヒリ
殺戮遊戯
白日の下に

In

神秘の論争 神秘の論争
思考囲い
轟音のクラリオン

赤単アグロ

対 赤単アグロ

Out

殺戮遊戯

In

思考消去

対 赤単ミッドレンジ

Out

時を解す者、テフェリー 時を解す者、テフェリー 時を解す者、テフェリー
殺戮遊戯

In

思考囲い 思考囲い スカラベの神
思考消去

アゾリウスコントロール

対 アゾリウスコントロール

Out

金のガチョウ 金のガチョウ 金のガチョウ
突然の衰微 突然の衰微 突然の衰微
陽光の輝き

In

思考囲い 思考囲い 復活の声
神秘の論争 神秘の論争 探索する獣
思考消去

緑単アグロ

対 緑単アグロ

Out

思考囲い
殺戮遊戯

In

探索する獣
セレズニアの魔除け

緑単ランプ

対 緑単ランプ

Out

突然の衰微 突然の衰微 突然の衰微 突然の衰微
先駆ける者、ナヒリ 破滅の刻 陽光の輝き

In

思考囲い 思考囲い 冥府の報い 冥府の報い
思考消去 セレズニアの魔除け 探索する獣

ロータスブリーチ

対 ロータスブリーチ

Out

突然の衰微 突然の衰微 自然の怒りのタイタン、ウーロ 自然の怒りのタイタン、ウーロ
先駆ける者、ナヒリ 先駆ける者、ナヒリ 破滅の刻 陽光の輝き
戦慄掘り

In

神秘の論争 神秘の論争 思考囲い 思考囲い
安らかなる眠り 安らかなる眠り 安らかなる眠り 探索する獣
思考消去

イゼットフェニックス

対 イゼットフェニックス

Out

金のガチョウ 金のガチョウ 金のガチョウ 自然の怒りのタイタン、ウーロ
白日の下に 破滅の刻 陽光の輝き 戦慄掘り

In

安らかなる眠り 安らかなる眠り 安らかなる眠り 思考囲い
神秘の論争 神秘の論争 轟音のクラリオン 思考消去

ドレッジ

対 ドレッジ

Out

突然の衰微 突然の衰微 突然の衰微 突然の衰微
時を解す者、テフェリー 殺戮遊戯

In

安らかなる眠り 安らかなる眠り 安らかなる眠り セレズニアの魔除け
思考囲い 思考囲い

白単ヘリオッド

変更なし。

ディミーアインバーター

対 ディミーアインバーター

Out

突然の衰微 突然の衰微 突然の衰微 突然の衰微
破滅の刻 陽光の輝き

In

神秘の論争 神秘の論争 思考囲い 思考囲い
思考消去 探索する獣

これから5色ニヴを使う場合

検討している変更点

デッキリストの入れ替えを考えているカード群をご紹介しましょう。

《突然の衰微》を1枚減らす

突然の衰微

序盤に動けることは重要ですし、《突然の衰微》は最も相性の悪いイゼットエンソウルとスピリットに特に有効な呪文です。ですが、使用者が増えてきているディミーアインバーターなどに対して使用用途が限られてしまっています

思考消去自然の怒りのタイタン、ウーロ

そのため、《突然の衰微》の4枚目の枠は《思考消去》が良いかもしれません《思考囲い》も好きですが、《思考消去》《ニヴ=ミゼット再誕》の効果でめくれて嬉しいカードというメリットがあります。これまで体験したゲーム展開から判断するに、5ターン目より後でも手札破壊呪文の価値はありますし、どれだけ終盤になろうとも《時を解す者、テフェリー》の[+1]能力を使えば相手のドローステップに唱えられます。

《突然の衰微》に代わる別の候補としては《自然の怒りのタイタン、ウーロ》も考えられます。重複したときに弱く「脱出」コストが軽くないため3枚目はリスクが高いですが、それに見合うだけの強さと活躍の頻度があります

《安らかなる眠り》を2枚減らす

安らかなる眠り

イゼットフェニックスとのテストプレイ結果が芳しくなかったため、墓地デッキと戦うためのツールが必要だと思わされました。その想いは変わっていませんが、墓地デッキが今後もメタゲームシェア率が低いままである可能性はあるでしょうから、この枠を別の何かと入れ替えても良いはずです。

ラクドスの復活思考囲い

《ラクドスの復活》《思考囲い》が候補になるでしょう。先ほどと同様、ディミーアインバーターと(予想以上にブリュッセルで人気だった)アゾリウスコントロールとの相性を改善する狙いです。

《復活の声》を1枚追加

復活の声

《復活の声》は予想をはるかに上回る活躍をしてくれました。アゾリウスコントロールやアゾリウススピリットはもちろん、黒単の《自傷疵》に対して強かったのです。サイドボードの《神秘の論争》を減らして1枚追加することを検討しています。

《永遠神の投入》を1枚追加

永遠神の投入

チェコハウスの天才たちとパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor damo da Rosaが大会前に見事に発見したカードです。《朱地洞の族長、トーブラン》をキーカードとする最新の赤単に非常に有効ですし、理論上は注意を怠ったディミーアインバーターのプレイヤーの不意打ちができます

私はディミーアインバーターへの有効性をテストする時間がなかったのですが、十分に機能するプランだと聞いています。というわけで、《永遠神の投入》を1枚入れるために《冥府の報い》を抜いてみるのも良いかもいれません。

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ルーカス・エスペル・ベルサウド (Twitter / Twitch)

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Lucas Berthoud ルーカス・エスペル・ベルサウドはブラジルの古豪。プロツアー『霊気紛争』では決勝戦で友人のマルシオ・カルヴァリョを下し、スタンダードラウンドを12-0という圧倒的な成績で王座についた。翌年にはマルシオたちとHareruya Latinを結成し、チームシリーズで決勝戦に進む快挙を達成。その後も好成績を残し続け、2019年にはマジック・プロ・リーグに選出された。 Lucas Berthoudの記事はこちら