はじめに
みなさんこんにちは。
1月の禁止改訂で《王冠泥棒、オーコ》、《オパールのモックス》、《マイコシンスの格子》の3種類が環境を去り、モダンは激変しました。
《王冠泥棒、オーコ》はリリース当初からあらゆるフォーマットで活躍し、すでにスタンダードとパイオニアでは禁止カードとなっています。また、禁止改定直前に開催されたチームモダンのSCGO Columbusでは優勝チーム3名がそれぞれ異なる《王冠泥棒、オーコ》デッキを使用していたことからも分かるとおり、圧倒的な強さであり禁止は免れないだろうと考えられていました。
《オパールのモックス》も長い間禁止になると噂のカードだったため、ある程度予想されていた方も多いかと思われます。
前置きが長くなりましたが、新環境に入ってからすでにSCGのイベントがふたつ開催されました。今回の連載ではSCGO RichmondとSCGO Philadelphiaの入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCGO Richmond
Amult Titanが多数入賞
2020年2月1-2日
- 1位 Dimir Whirza
- 2位 Amulet Titan
- 3位 Golgari Yawgmoth
- 4位 Amulet Titan
Baumeister/Ingram/Kassis
トップ8のデッキリストはこちら
禁止改訂と『テーロス還魂記』のリリースによって大きく変化したモダン。新環境に入った直後に開催されたSCGO Richmondは、以前からトップメタの一角として結果を残しており、禁止改訂の影響を受けなかったAmulet Titanが最大勢力でした。『テーロス還魂記』からの新戦力も獲得し、環境最高デッキのひとつとして多くのチームが選択していました。
SCGO Richmond デッキ紹介
「Amulet Titan」「Golgari Yawgmoth」
Amulet Titan
2 《冠雪の森》
1 《繁殖池》
1 《樹木茂る山麓》
1 《吹きさらしの荒野》
4 《シミックの成長室》
2 《グルールの芝地》
1 《宝石鉱山》
1 《魂の洞窟》
1 《ゴルガリの腐敗農場》
4 《ギャレンブリグ城》
2 《トレイリア西部》
2 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》
1 《ボジューカの沼》
1 《死者の原野》
1 《ハンウィアーの要塞》
1 《幽霊街》
1 《光輝の泉》
1 《ヴェズーヴァ》
-土地 (30)- 4 《桜族の斥候》
4 《迷える探求者、梓》
4 《イリーシア木立のドライアド》
4 《原始のタイタン》
-クリーチャー (16)-
『テーロス還魂記』プレビュー段階から話題となっていた新カード、《イリーシア木立のドライアド》によって大幅に強化されたAmulet Titan。
《踏査》と《虹色の前兆》を内蔵したこのクリーチャーは、『テーロス還魂記』の中でモダン環境に最も大きな影響を与えたカードです。
☆注目ポイント
単体では用途の狭かった《虹色の前兆》よりも使いやすくなった《イリーシア木立のドライアド》。クリーチャーとなったため対処されやすいものの、タフネスが4あるため火力には耐性があります。
《踏査》効果も《シミックの成長室》をはじめとしたバウンスランドと相性がよく、序盤はマナ加速と事故防止が主な役割となります。中盤以降は《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》と必殺のシナジーを形成するなど、3マナとは思えない優秀なクリーチャーです。
《イリーシア木立のドライアド》と《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》のシナジーは、Amulet Titanの構成を変えてしまう程のインパクトでした。《原始のタイタン》に速攻を与える土地は《ハンウィアーの要塞》があり、フィニッシャーは《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》と《死者の原野》があるため、《処刑者の要塞》と《軍の要塞、サンホーム》のために白を足す必要がなくなりました。
また、デッキの安定性が向上しただけではなく《イリーシア木立のドライアド》、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》パッケージのおかげで、戦闘をすることなくプレインズウォーカーを対処しやすくなりました。
サイドに4枚採用されている《霊気の疾風》は, 同型で《原始のタイタン》に対して打ち消しのように機能します。ほかにもこのデッキにとって天敵となる《血染めの月》対策にもなり、Mono Red Prowessなど赤いアグロとのマッチアップでは、除去兼打ち消しと用途が広い優秀なスペルです。
《夢を引き裂く者、アショク》を対策する必要があるため、《内にいる獣》が採用されています。相手に3/3のトークンを与えてしまうデメリットも、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》や《死者の原野》で止まるためそこまで問題になりません。
Golgari Yawgmoth
1 《沼》
2 《草むした墓》
1 《ドライアドの東屋》
4 《新緑の地下墓地》
4 《黄昏のぬかるみ》
3 《花盛りの湿地》
2 《育成泥炭地》
1 《カルニの庭》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
-土地 (21)- 4 《極楽鳥》
4 《若き狼》
1 《貴族の教主》
4 《絡み根の霊》
4 《根の壁》
1 《血の芸術家》
4 《ゲラルフの伝書使》
4 《スランの医師、ヨーグモス》
1 《夜の騎兵》
-クリーチャー (27)-
2 《夏の帳》
1 《ファイレクシアの破棄者》
1 《台所の嫌がらせ屋》
1 《疫病を仕組むもの》
1 《再利用の賢者》
1 《打ち壊すブロントドン》
1 《強情なベイロス》
1 《突然の衰微》
1 《暗殺者の戦利品》
1 《失われた遺産》
1 《減衰球》
1 《夢を引き裂く者、アショク》
-サイドボード (15)-
《王冠泥棒、オーコ》などが禁止となる直前に行われた大規模イベント、SCGO Knoxvilleでも優勝した《スランの医師、ヨーグモス》と「不死」クリーチャーを使ったコンボデッキ。
2体の「不死」クリーチャーを用意して《スランの医師、ヨーグモス》を出します。「不死」クリーチャー1体をサクリファイスして「不死」を誘発させ、解決後に+1/+1カウンターが乗っていない「不死」クリーチャーをサクリファイスします。
+1/+1カウンターが乗った「不死」クリーチャーへ-1/-1カウンターを乗せることで相殺し、再度「不死」が誘発できるようになります。これによりライフ1点をドローに変換することができるようになり、《ゲラルフの伝書使》がいれば相手のライフを2点ずつ削ることが可能となります。
コンボパーツはすべてクリーチャーなため《むかしむかし》、《異界の進化》、《召喚の調べ》といったスペルが豊富に使えます。条件つきながら0マナでプレイできる《むかしむかし》は、動きを安定させ序盤のつまづきを解消してくれます。ほかの2種類の呪文はコンボパーツを揃えるだけではなく、サイドボードの選択肢を増やし、状況に応じて様々な能力のクリーチャーを使用できるツールボックス的な要素もあります。
☆注目ポイント
《若き狼》、《絡み根の霊》、《ゲラルフの伝書使》、これら3種類の「不死」クリーチャーは、《スランの医師、ヨーグモス》とのコンボ以外では《異界の進化》と相性が良く、かつて環境を支配した《出産の殻》を彷彿とさせます。追放系の除去以外には耐性があるため、アグロデッキとしても十分に戦えます。
《血の芸術家》が場にいる状況では《スランの医師、ヨーグモス》によるライフロスが相殺されるため、「不死」クリーチャー2体と《スランの医師、ヨーグモス》によるループでゲームに勝つことができます。この場合は《ゲラルフの伝書使》に限らず、「不死」クリーチャー2体であればどのクリーチャーでも条件を満たします。
《夜の騎兵》はクリーチャー除去でありながら、墓地に落ちた《血の芸術家》などキークリーチャーを使い回す手段となります。
《スランの医師、ヨーグモス》によってライフをドローに変換していくこのデッキでは、ライフは極めて重要なリソースとなるためマナ基盤にも工夫が見られます。《草むした墓》などショックランドよりも、フィルターランドの《黄昏のぬかるみ》が優先されています。また、《ゲラルフの伝書使》や《夜の騎兵》といった色拘束が強いカードを安定してキャストするために、《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》は重要な土地となります。
SCGO Philadelphia
禁止改定後の環境でも健在のWhirza
2020年2月8-9日
- 1位 Dimir Whirza
- 2位 Azorius Control
- 3位 Amulet Titan
- 4位 Amulet Titan
Firer/Jessup/Allen
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SCGO Richmondと同様に、禁止改定による影響を受けなかったAmulet Titanが二日目の最大勢力で、次点は『テーロス還魂記』から登場した《太陽冠のヘリオッド》と《歩行バリスタ》を使ったHeliod Companyでした。
最重要カードの1枚であった《オパールのモックス》を失っても存在し続けるDimir Whirza。今大会では優勝をという快挙を成し遂げ、依然としてトップメタの一角であることが証明されました。
SCGO Philadelphia デッキ紹介
「Dimir Whirza」「Heliod Company」
Dimir Whirza
1 《冠雪の沼》
2 《湿った墓》
3 《神秘の聖域》
4 《汚染された三角州》
3 《溢れかえる岸辺》
2 《霧深い雨林》
2 《沸騰する小湖》
1 《ダークスティールの城塞》
-土地 (23)- 4 《最高工匠卿、ウルザ》
-クリーチャー (4)-
3 《思考囲い》
2 《コジレックの審問》
1 《剥奪》
1 《湖での水難》
3 《大魔導師の魔除け》
3 《発明品の唸り》
2 《謎めいた命令》
4 《ミシュラのガラクタ》
4 《アーカムの天測儀》
1 《虚無の呪文爆弾》
1 《真髄の針》
2 《威圧のタリスマン》
2 《飛行機械の鋳造所》
1 《弱者の剣》
-呪文 (33)-
3 《神秘の論争》
3 《夢を引き裂く者、アショク》
2 《真冬》
1 《ゲトの裏切り者、カリタス》
1 《墓掘りの檻》
1 《弱者の剣》
1 《飛行機械の鋳造所》
-サイドボード (15)-
最高のマナ加速《オパールのモックス》を失ったことにより、ハンデス、除去、カウンターを搭載したミッドレンジ寄りにシフトしていきました。《最高工匠卿、ウルザ》+ソプターコンボによる無限マナ/トークン/ライフは健在で、それに加えて《謎めいた命令》+《神秘の聖域》のハーフロックも採用されているため、長期戦に強いデッキです。
《コジレックの審問》、《思考囲い》といったハンデスで相手のプランを妨害しつつ、《最高工匠卿、ウルザ》+ソプターコンボや《謎めいた命令》+《神秘の聖域》によるロックを準備していきます。ソプターコンボは《発明品の唸り》で、《神秘の聖域》はフェッチランドでそれぞれサーチ可能なため、動きも安定しています。
☆注目ポイント
《大魔導師の魔除け》はカウンターやドロースペルとして機能するフレキシブルなスペルで、このデッキでは主にロックプラン達成のためにドローモードが使われます。《剥奪》の土地を戻す追加コストを利用し、《神秘の聖域》を使い回すことも可能です。
ソプターコンボによるロックよりも《謎めいた命令》+《神秘の聖域》で相手の行動を制限しつつ、《最高工匠卿、ウルザ》と構築物トークンによるビートダウンが主な勝ちパターンとなります。
サイドボードを見てみると《夢を引き裂く者、アショク》や《霊気の疾風》など、現環境のトップメタであるAmulet Titan対策に力を入れていることが分かります。特に《霊気の疾風》は打ち消しではないため、《魂の洞窟》からキャストされた《原始のタイタン》にも有効です。また、スペルを対象にする場合に限り《夏の帳》にも引っかからないため、青いデッキの定番サイドボードとして定着しています。
Heliod Company
2 《平地》
1 《神無き祭殿》
1 《草むした墓》
1 《寺院の庭》
4 《吹きさらしの荒野》
3 《新緑の地下墓地》
1 《湿地の干潟》
4 《地平線の梢》
2 《剃刀境の茂み》
-土地 (21)- 1 《歩行バリスタ》
4 《極楽鳥》
4 《貴族の教主》
1 《ルーンの与え手》
1 《臓物の予見者》
3 《族樹の精霊、アナフェンザ》
4 《太陽冠のヘリオッド》
4 《台所の嫌がらせ屋》
4 《イーオスのレインジャー長》
4 《スパイクの飼育係》
1 《永遠の証人》
-クリーチャー (31)-
パイオニアでも活躍している《太陽冠のヘリオッド》+《歩行バリスタ》による即死コンボのモダンバージョン。モダンでは《むかしむかし》などのスペルにも恵まれているため動きも安定し、《スパイクの飼育係》と組み合わせることで無限にライフを得ることができます。
無限ライフについては《歩行バリスタ》と異なり、《太陽冠のヘリオッド》の能力を起動する必要がありません。《スパイクの飼育係》以外では、《台所の嫌がらせ屋》+《臓物の予見者》の組み合わせでも「頑強」の-1/-1カウンターが相殺されるため、無限ライフが成立します。《臓物の予見者》によって《歩行バリスタ》を引き当てるまで占術を繰り返し、最終的にコンボを決めて勝利します。
☆注目ポイント
スタンダードやパイオニアでは禁止カードに指定されている《むかしむかし》ですが、モダンでは健在であり、デッキの安定性向上に貢献しています。《集合した中隊》はコンボに必要なクリーチャーを調達しつつ、テンポ/カードアドバンテージ両面を稼げるため、ミッドレンジアグロとしてプレイすることも可能です。
《イーオスのレインジャー長》は《臓物の予見者》などのコンボパーツをサーチできるだけではなく、除去から守るために《ルーンの与え手》を先に用意することもできます。また、《イーオスのレインジャー長》自身もクリーチャーでないスペル限定の《沈黙》効果をもつため、コンボを妨害から守ることができます。
Jundやアゾリウス系など除去や妨害スペルを多用する相手とのマッチアップでは、コンボを決めることが難しくなるためロングゲームに対応していく必要もあります。サイド後は《夏の帳》、《思考囲い》、《流刑への道》といった低マナの妨害スペルを投入し、コンボデッキからミッドレンジ寄りにシフトしていきます。
総括
1月の禁止改訂によって激変したモダンですが、新カード《イリーシア木立のドライアド》によって強化されたAmulet Titanが安定した成績を残しています。『テーロス還魂記』からは《太陽冠のヘリオッド》を使ったコンボデッキも結果を残していますが、今回紹介した以外にも《献身のドルイド》+《療治の侍臣》による無限マナコンボもみられます。
《オパールのモックス》と《王冠泥棒、オーコ》を禁止により瓦解するかと思われた《最高工匠卿、ウルザ》を軸としたデッキも、ソプターコンボを内蔵したコントロールデッキに形を変え、メタゲーム上位に留まっています。対応力の高いデッキであるため、今後の動向にも要注目です。
USA Modern Express vol.37は以上となります。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!