Translated by Nobukazu Kato
世界最高峰の大会!
さぁ、とうとうこのときがやってきた!最高額の賞金に、最強の選手たちが揃った世界最高の大会だ!そう、世界選手権2019が幕をあけた!
この記事は世界選手権で使用されるデッキ同士の一般的な相性を簡単に予想し、同じアーキタイプでも構成が異なるものを解説していくものとなっている。
では早速デッキを見ていくことにしよう。
細かな違いが見られる世界選手権のデッキたち
赤単アグロ
まずは古くからの友人であり、個人的に#FindYourChampionにも選んだセバスティアン・ポッツォ/Sebastian Pozzoだ。そしてイーライ・ラヴマン/Eli Loveman、さらには驚くべき2人組であるセス・マンスフィールド/Seth Manfieldとアンドレア・メングッチ/Andrea Mengucciも赤単を選んでいる。セスとアンドレアは共同でデッキを組み上げ、全く同じ75枚を使用している。
4 《エンバレス城》
-土地 (22)- 4 《熱烈な勇者》
4 《焦がし吐き》
2 《不気味な修練者》
4 《リムロックの騎士》
4 《義賊》
4 《遁走する蒸気族》
4 《鍛冶で鍛えられしアナックス》
2 《朱地洞の族長、トーブラン》
-クリーチャー (28)-
4 《エンバレス城》
-土地 (21)- 4 《熱烈な勇者》
4 《焦がし吐き》
1 《ブリキ通りの身かわし》
4 《義賊》
4 《遁走する蒸気族》
4 《鍛冶で鍛えられしアナックス》
4 《砕骨の巨人》
3 《朱地洞の族長、トーブラン》
-クリーチャー (28)-
4 《エンバレス城》
-土地 (22)- 4 《熱烈な勇者》
4 《焦がし吐き》
4 《リムロックの騎士》
4 《義賊》
4 《遁走する蒸気族》
4 《鍛冶で鍛えられしアナックス》
4 《砕骨の巨人》
3 《朱地洞の族長、トーブラン》
-クリーチャー (31)-
メインデッキに大きな違いが見られる。ピックアップしてみよう。
サイドボードはそれぞれ異なるアプローチをとっているけど、いずれも共通しているのは《解き放たれた狂戦士》を複数採用していることだ(《時を解す者、テフェリー》や《轟音のクラリオン》を運用するデッキに有効な2マナ域)。
その他のサイドボードのカードに目を向けてみると、《レッドキャップの乱闘》《溶岩コイル》に加え、《無頼な扇動者、ティボルト》《アクロス戦争》《魔術遠眼鏡》といった1枚挿しのカードがある。プレインズウォーカーである《炎の侍祭、チャンドラ》や《実験の狂乱》でアドバンテージをとる工夫も見られるね。
赤単はその他のデッキにどんな相性か気になる人もいるよね。それはあとで解説していくよ。
ジェスカイファイアーズ
このアーキタイプには2人組のチームが2つある。お互いを完璧に補完し合っているハビエル・ドミンゲス/JavierDominguezとマルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalhoのデュオの方が注目だろうね。もうひとつのデュオはラファエル・レヴィ/Raphael Levyとガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassifだ。2人ともフランスの強豪で、殿堂プレイヤーでもある。
2 《山》
2 《平地》
4 《蒸気孔》
3 《神聖なる泉》
3 《聖なる鋳造所》
4 《寓話の小道》
4 《凱旋の神殿》
2 《天啓の神殿》
2 《ヴァントレス城》
-土地 (28)- 4 《砕骨の巨人》
3 《厚かましい借り手》
4 《予見のスフィンクス》
4 《炎の騎兵》
3 《帰還した王、ケンリス》
-クリーチャー (18)-
3 《神秘の論争》
2 《チャンドラの螺旋炎》
1 《巨人落とし》
1 《敬虔な命令》
1 《解呪》
1 《ドビンの拒否権》
1 《焦熱の竜火》
1 《エルズペス、死に打ち勝つ》
-サイドボード (15)-
相違点を見てみよう。フランスのチームの方が土地が1枚多い(28枚)。11枚目のショックランドをやめ、4枚目の《寓話の小道》と追加の基本土地を1枚採用している。
いくつかの定番のカードは両チームで共通している。《時を解す者、テフェリー》4枚、《創案の火》4枚、《予見のスフィンクス》4枚、赤のクリーチャー8枚だ(《砕骨の巨人》は2ターン目と3ターン目の動きを1枚で埋めてくれる。《炎の騎兵》は手札の入れ替え能力と全体に速攻を付与する能力で勝利をもたらす)。しかしその他の構築については異なるアプローチをとっている。枚数が異なるものを抽出してみよう。
ハビエルとマルシオの特徴
ラファエルとガブリエルの特徴
ラファエルとガブリエルはアグロデッキが多いと予想していたようだ。《厚かましい借り手》という2ターン目のアクションを追加しているし、ハビエルやマルシオと違って大型のクリーチャーの枚数を抑えてある。だけど、もっと大きな違いはサイドボードにあるんだ。
《神秘の論争》、1枚挿しの《解呪》《敬虔な命令》《エルズペス、死に打ち勝つ》、それからクリーチャー除去が搭載されている点では似ている。最大の違いは、コントロールと対戦したときにサイドボードから投入するカードとしてフランス勢は《義賊》を選択しているのに対し、もう一方のチームは《軍勢の戦親分》を選択していることだ。《軍勢の戦親分》の方がプレッシャーは大きいけど、1マナの差が大きな差を生むこともある。
アゾリウスコントロール
分析を始める前に言っておきたいことがある。(俺が思う)世界最強の選手が最強カラーのデッキ(青白)を使っているところを観戦できるのは、いつだってできることじゃない。コントロールをもっと上手く使えるようになりたいと思うなら、ぜひ注目して欲しい。パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor damo da Rosaは、今もっともホットな選手の1人であるオンドレイ・ストラスキー/Ondrej Straskyと調整をすることにしたようだ。他方、トラルフ・セヴラン/Thoralf Severinの構成はかなり違うアプローチをとっていることが伺い知れる。
3 《平地》
4 《神聖なる泉》
2 《寓話の小道》
4 《啓蒙の神殿》
3 《アーデンベイル城》
1 《ヴァントレス城》
1 《廃墟の地》
-土地 (25)- 1 《太陽の恵みの執政官》
1 《夢さらい》
-クリーチャー (2)-
4 《吸収》
3 《意味の渇望》
2 《神秘の論争》
3 《空の粉砕》
4 《海の神のお告げ》
3 《メレティス誕生》
2 《払拭の光》
3 《エルズペス、死に打ち勝つ》
4 《時を解す者、テフェリー》
2 《覆いを割く者、ナーセット》
-呪文 (33)-
2 《紺碧のドレイク》
2 《太陽の恵みの執政官》
2 《神秘の論争》
2 《終局の始まり》
1 《ドビンの拒否権》
1 《ガラスの棺》
1 《覆いを割く者、ナーセット》
-サイドボード (15)-
3 《吸収》
1 《神秘の論争》
4 《空の粉砕》
4 《海の神のお告げ》
4 《メレティス誕生》
4 《エルズペス、死に打ち勝つ》
4 《覆いを割く者、ナーセット》
4 《時を解す者、テフェリー》
-呪文 (31)-
3 《神秘の論争》
2 《幽体の船乗り》
2 《敬虔な命令》
1 《太陽の恵みの執政官》
1 《ヘリオッドの介入》
1 《有事の力》
1 《魔術遠眼鏡》
1 《放浪者》
-サイドボード (15)-
何よりも目を引くのは、《夢さらい》の枚数が1枚と4枚であることだろう。パウロとオンドレイは多分こういう思考をたどったのだと思う。「相手を止める手段をできる限り用意したい。だからこれ以上の6マナ域は不要だ」とね。彼らは単体除去(《払拭の光》)の枚数が多く、カードアドバンテージ源やライブラリーを掘り進める呪文も多い(セヴランが《覆いを割く者、ナーセット》4枚だけなのに対して、《覆いを割く者、ナーセット》2枚と《意味の渇望》3枚を採用)。ゲームプランはいずれも同じだ。脅威を全て排除して、プレインズウォーカーや新たな英雄譚が経過とともにもたらすアドバンテージで勝利する。
サイドボードには《有事の力》と《終局の始まり》といった目を引くカードがいくつかある。他には相手が除去を全てサイドアウトした隙を突く《幽体の船乗り》や《太陽の恵みの執政官》といった優秀なクリーチャー、赤単対策の《紺碧のドレイク》などもある。一方で伝統的なアゾリウスコントロールのサイドボードにならうように、追加の打ち消しやプレインズウォーカー、除去も用意されている。
ティムール再生
》 2 《島》
1 《山》
4 《繁殖池》
4 《蒸気孔》
4 《踏み鳴らされる地》
2 《寓話の小道》
4 《神秘の神殿》
2 《天啓の神殿》
2 《ヴァントレス城》
-土地 (27)- 2 《ハイドロイド混成体》
4 《厚かましい借り手》
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (9)-
2 《山》
1 《森》
4 《繁殖池》
4 《蒸気孔》
4 《踏み鳴らされる地》
2 《寓話の小道》
3 《天啓の神殿》
2 《神秘の神殿》
1 《奔放の神殿》
2 《ヴァントレス城》
-土地 (27)- 4 《厚かましい借り手》
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
1 《老いたる者、ガドウィック》
1 《パルン、ニヴ=ミゼット》
-クリーチャー (9)-
エンドステップに相手を倒すデッキが生まれ変わった。優秀なキャントリップ呪文が追加されたんだ。一方はマナが余っているときに占術2ができ、もう一方は言うまでもないだろうけど、新たな巨人《自然の怒りのタイタン、ウーロ》だ。
メインデッキの最大の違いは、クリス・カヴァルテク/Chris Kvartekが《世界を揺るがす者、ニッサ》を4枚搭載しているのに対し、他の3人のプレイヤーが一切採用していないことだ。ジャン=エマニュエル・ドゥプラ/Jean Emmanuel-Deprazはクリーチャー7枚だけだが、マティアス・レヴェラット/Matias Leverattoはそこに《老いたる者、ガドウィック》と《パルン、ニヴ=ミゼット》を1枚ずつ追加し、オータム・バーチェット/Autumn Burchettとクリスは《ハイドロイド混成体》を2枚入れている。
デッキの動きを知っている人は多いだろう。《成長のらせん》を駆使して《荒野の再生》を3ターン目に展開し、大量のマナが生む。豊富に採用されたXマナの呪文があるから、ここからは簡単だ。
サイドボードは類似点を見出せるけど、サイドボード後に投入するクリーチャーや、打ち消し呪文、軽量のクリーチャーをさばく除去には違いが見られる。
ジャンドサクリファイス
3 《沼》
1 《山》
4 《血の墓所》
4 《草むした墓》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《寓話の小道》
1 《ロークスワイン城》
-土地 (25)- 4 《大釜の使い魔》
4 《金のガチョウ》
4 《波乱の悪魔》
3 《打ち壊すブロントドン》
1 《残忍な騎士》
3 《フェイに呪われた王、コルヴォルド》
2 《虐殺少女》
1 《永遠神バントゥ》
-クリーチャー (22)-
2 《変容するケラトプス》
2 《見栄え損ない》
2 《強迫》
2 《壮大な破滅》
2 《害悪な掌握》
1 《死の飢えのタイタン、クロクサ》
1 《戦争の犠牲》
1 《戦慄衆の将軍、リリアナ》
-サイドボード (15)-
以前からそう変わらないデッキだけど、ピオトル・グロゴゥスキ/Piotr Glogowskiが選んだデッキだ。彼がこのデッキで偉業を成し遂げられることはみんなも知るところだろう。
- 2019/12/20
- ミシックチャンピオンシップ Ⅶを優勝するまで
- ピオトル・グロゴゥスキ
このアーキタイプを選んだのは彼ただ一人で、デッキの核は以前と変わらない。従来と大きく異なるのは、《苦悶の悔恨》を4枚採用し、《金のガチョウ》以外のマナ加速カードを一切入れていないことだ。サイドボードはアグロやコントロールと戦えるように枚数を散らしてある。サイドボード後の戦いに向けてデッキリストを調整するには最高のデッキだ。ピオトルがサイドボード後にどんなアプローチをとるのか期待しよう!
今大会の勝ち組は?
赤単アグロの視点
自分が赤単のプレイヤーだったとしたら、ジェスカイファイアーズには当たりたくないと思うだろう。赤単は手札破壊呪文がないにもかかわらず、ジェスカイファイアーズは最初の数ターンを生き残ることにとても長けていて、しかも赤単にあまりにも強いカードをたくさん抱えているし、ライフを回復する手段も豊富だ。
赤単が平均的なドローをしたときにアゾリウスコントロールとの1ゲーム目を圧倒できることは想像に難くないだろう。2ゲーム目以降はアゾリウスコントロールが有効な赤単対策を追加できるけど、先手の赤単を止めるのはあまりにも難しく、依然として厳しい戦いになる。赤単戦に限って言えば、《夢さらい》を4枚採用したトラルフの構成の方が戦いやすいはずだ。6ターン目に展開できる確率が高いからね。
赤単とティムール再生は接戦であり、先手であるプレイヤーが圧倒的に有利になる。赤単が序盤に止められてしまった場合は、巻き返すのが難しくなるだろう。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は本当に強くて、赤単戦では計り知れない価値をもたらすからね。
ジャンドサクリファイスとの戦いは厳しいものになるだろう。ピオトルは大きな脅威である《エンバレスの宝剣》から身を守る方法を心得ているし、《大釜の使い魔》と《魔女のかまど》の一般的なコンボで時間を稼がれたら、攻撃されずとも赤単側が負けることだってある。
赤単のミラーマッチは引きによるところが大きい。というのも、《エンバレスの宝剣》のような強力なカードは相手のライフを高速で削るため、最初に戦場に出したプレイヤーが優勢を保ってゲームに決着をつけられる可能性が高いからだ
いまさらだけど、個人的に赤単のような高速アグロ戦略はあまり好きじゃない。だけど、今大会のベストデッキだと思っているよ。相性が悪いのはジェスカイファイアーズの4人とジャンドサクリファイスの1人だけだからね。
アゾリウスコントロールの視点
アゾリウスコントロールを使っていたら、赤単とジャンドは避けたいだろうね。《時を解す者、テフェリー》はティムール再生に対して最良のカードであるだけでなく、ジェスカイファイアーズにもとても強い。ジェスカイファイアーズとの相性は良いと思うけど、赤単との相性はあまり良くない。というわけで、アゾリウスコントロールは今大会の2番手のデッキだ。
ティムール再生の視点
ティムール再生のプレイヤーなら、赤単は避けたいところだ。序盤を生き延びるのに苦労するし、ショックランドやタップイン土地が多いのも苦しい。熟練のプレイヤーが駆るアゾリウスコントロールと当たった場合はかなり苦戦するだろう。《覆いを割く者、ナーセット》が《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《時を解す者、テフェリー》のドローを妨げるのは非常に厄介だ。
ティムール再生が唯一有利に戦えるのはジェスカイファイアーズじゃないだろうか。そこまで相性が良いっていうわけでもないけどね。ジャンドサクリファイスに対しては互角といったところだけど、さっきも言ったようにピオトルはこのデッキを完璧に扱う。ティムール再生は今大会で一番苦戦するデッキだと思っている。
ジェスカイファイアーズの視点
ジェスカイファイアーズのプレイヤーだったとすれば、どの赤単と当たっても嬉しいだろう。ただ、アゾリウスコントロール戦は厳しいと思う。ジェスカイファイアーズの平均的な引きではアゾリウスコントロールに負けるだろうし、それはティムール再生戦も同じだ。前者は《時を解す者、テフェリー》と打ち消し呪文を兼ね備えているし、後者は《厚かましい借り手》を有し、妨害がなければ自由自在に動いてしまうデッキだ。
とはいえ、ジェスカイファイアーズはサイドボード後から調整する力に富んでいる。これらのデッキとの2ゲーム目以降に逆転劇を見せることはあると思うよ。クリーチャーを増量して序盤のプレッシャーを強めれば、メインのゲームプランを別のものに変えられるからね。
ジャンドサクリファイスの視点
ジャンドサクリファイスについては何と言えば良いだろうか……相変わらずパワフルなデッキだし、今最も強い選手の1人が使用している。ほとんどのデッキとほぼ互角に戦えると思うし、最近は墓地対策の姿を見かけない。だからピオトルが《大釜の使い魔》+《魔女のかまど》+《パンくずの道標》のコンボを決めて、勝ち星を重ねてくれる可能性はあるよ。
まとめ
では、各デッキの相性をまとめてみよう。
デッキ | 相性 |
---|---|
赤単アグロ | ジェスカイ > 赤単 = ジャンド > アゾリウス > ティムール |
ジェスカイファイアーズ | ティムール > アゾリウス > ジェスカイ = ジャンド > 赤単 |
ティムール | 赤単 > アゾリウス > ティムール = ジャンド > ジェスカイ |
アゾリウスコントロール | 赤単 > ジャンド > アゾリウス > ジェスカイ > ティムール |
ジャンド | 赤単 = ティムール = ジェスカイ = ジャンド > アゾリウス |
さっきも言ったように、構成によって相性は変わってくる。だけど、各デッキ間の一般的な相性は上の表のようになると思う。もちろんその試合の引きの強さや、選手ごとのサイドボード戦略にも影響されるけど、今大会ではこうなると予想しているよ。
メタゲーム解析を楽しんでくれたなら嬉しい。誰がトロフィーを掲げることになるのか、みんなで見守ることにしよう!