世界選手権2019の勝ち組を探せ!

Luis Salvatto

Translated by Nobukazu Kato

世界最高峰の大会!

さぁ、とうとうこのときがやってきた!最高額の賞金に、最強の選手たちが揃った世界最高の大会だ!そう、世界選手権2019が幕をあけた!

この記事は世界選手権で使用されるデッキ同士の一般的な相性を簡単に予想し、同じアーキタイプでも構成が異なるものを解説していくものとなっている。

では早速デッキを見ていくことにしよう。

細かな違いが見られる世界選手権のデッキたち

赤単アグロ

まずは古くからの友人であり、個人的に#FindYourChampionにも選んだセバスティアン・ポッツォ/Sebastian Pozzoだ。そしてイーライ・ラヴマン/Eli Loveman、さらには驚くべき2人組であるセス・マンスフィールド/Seth Manfieldアンドレア・メングッチ/Andrea Mengucciも赤単を選んでいる。セスとアンドレアは共同でデッキを組み上げ、全く同じ75枚を使用している。

メインデッキに大きな違いが見られる。ピックアップしてみよう。

時を解す者、テフェリー解き放たれた狂戦士轟音のクラリオン

サイドボードはそれぞれ異なるアプローチをとっているけど、いずれも共通しているのは《解き放たれた狂戦士》を複数採用していることだ(《時を解す者、テフェリー》《轟音のクラリオン》を運用するデッキに有効な2マナ域)。

炎の侍祭、チャンドラ実験の狂乱

その他のサイドボードのカードに目を向けてみると、《レッドキャップの乱闘》《溶岩コイル》に加え、《無頼な扇動者、ティボルト》《アクロス戦争》《魔術遠眼鏡》といった1枚挿しのカードがある。プレインズウォーカーである《炎の侍祭、チャンドラ》《実験の狂乱》でアドバンテージをとる工夫も見られるね。

赤単はその他のデッキにどんな相性か気になる人もいるよね。それはあとで解説していくよ。

ジェスカイファイアーズ

このアーキタイプには2人組のチームが2つある。お互いを完璧に補完し合っているハビエル・ドミンゲス/JavierDominguezマルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalhoのデュオの方が注目だろうね。もうひとつのデュオはラファエル・レヴィ/Raphael Levyガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassifだ。2人ともフランスの強豪で、殿堂プレイヤーでもある。

相違点を見てみよう。フランスのチームの方が土地が1枚多い(28枚)。11枚目のショックランドをやめ、4枚目の《寓話の小道》と追加の基本土地を1枚採用している。

時を解す者、テフェリー

4

創案の火

4

予見のスフィンクス

4


砕骨の巨人

4

炎の騎兵

4

いくつかの定番のカードは両チームで共通している。《時を解す者、テフェリー》4枚、《創案の火》4枚、《予見のスフィンクス》4枚、赤のクリーチャー8枚だ(《砕骨の巨人》は2ターン目と3ターン目の動きを1枚で埋めてくれる。《炎の騎兵》は手札の入れ替え能力と全体に速攻を付与する能力で勝利をもたらす)。しかしその他の構築については異なるアプローチをとっている。枚数が異なるものを抽出してみよう。

ラファエルとガブリエルはアグロデッキが多いと予想していたようだ。《厚かましい借り手》という2ターン目のアクションを追加しているし、ハビエルやマルシオと違って大型のクリーチャーの枚数を抑えてある。だけど、もっと大きな違いはサイドボードにあるんだ

義賊軍勢の戦親分

《神秘の論争》、1枚挿しの《解呪》《敬虔な命令》《エルズペス、死に打ち勝つ》、それからクリーチャー除去が搭載されている点では似ている。最大の違いは、コントロールと対戦したときにサイドボードから投入するカードとしてフランス勢は《義賊》を選択しているのに対し、もう一方のチームは《軍勢の戦親分》を選択していることだ。《軍勢の戦親分》の方がプレッシャーは大きいけど、1マナの差が大きな差を生むこともある。

アゾリウスコントロール

分析を始める前に言っておきたいことがある。(俺が思う)世界最強の選手が最強カラーのデッキ(青白)を使っているところを観戦できるのは、いつだってできることじゃない。コントロールをもっと上手く使えるようになりたいと思うなら、ぜひ注目して欲しいパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor damo da Rosaは、今もっともホットな選手の1人であるオンドレイ・ストラスキー/Ondrej Straskyと調整をすることにしたようだ。他方、トラルフ・セヴラン/Thoralf Severinの構成はかなり違うアプローチをとっていることが伺い知れる。

夢さらい払拭の光覆いを割く者、ナーセットエルズペス、死に打ち勝つ

何よりも目を引くのは、《夢さらい》の枚数が1枚と4枚であることだろう。パウロとオンドレイは多分こういう思考をたどったのだと思う。「相手を止める手段をできる限り用意したい。だからこれ以上の6マナ域は不要だ」とね。彼らは単体除去(《払拭の光》)の枚数が多く、カードアドバンテージ源やライブラリーを掘り進める呪文も多い(セヴランが《覆いを割く者、ナーセット》4枚だけなのに対して、《覆いを割く者、ナーセット》2枚と《意味の渇望》3枚を採用)。ゲームプランはいずれも同じだ。脅威を全て排除して、プレインズウォーカーや新たな英雄譚が経過とともにもたらすアドバンテージで勝利する。

有事の力終局の始まり幽体の船乗り太陽の恵みの執政官

サイドボードには《有事の力》《終局の始まり》といった目を引くカードがいくつかある。他には相手が除去を全てサイドアウトした隙を突く《幽体の船乗り》《太陽の恵みの執政官》といった優秀なクリーチャー、赤単対策の《紺碧のドレイク》などもある。一方で伝統的なアゾリウスコントロールのサイドボードにならうように、追加の打ち消しやプレインズウォーカー、除去も用意されている。

ティムール再生

海の神のお告げ自然の怒りのタイタン、ウーロ

エンドステップに相手を倒すデッキが生まれ変わった。優秀なキャントリップ呪文が追加されたんだ。一方はマナが余っているときに占術2ができ、もう一方は言うまでもないだろうけど、新たな巨人《自然の怒りのタイタン、ウーロ》だ。

世界を揺るがす者、ニッサ老いたる者、ガドウィックパルン、ニヴ=ミゼットハイドロイド混成体

メインデッキの最大の違いは、クリス・カヴァルテク/Chris Kvartekが《世界を揺るがす者、ニッサ》を4枚搭載しているのに対し、他の3人のプレイヤーが一切採用していないことだジャン=エマニュエル・ドゥプラ/Jean Emmanuel-Deprazはクリーチャー7枚だけだが、マティアス・レヴェラット/Matias Leverattoはそこに《老いたる者、ガドウィック》《パルン、ニヴ=ミゼット》を1枚ずつ追加し、オータム・バーチェット/Autumn Burchettとクリスは《ハイドロイド混成体》を2枚入れている。

成長のらせん荒野の再生発展+発破

デッキの動きを知っている人は多いだろう。《成長のらせん》を駆使して《荒野の再生》を3ターン目に展開し、大量のマナが生む。豊富に採用されたXマナの呪文があるから、ここからは簡単だ。

サイドボードは類似点を見出せるけど、サイドボード後に投入するクリーチャーや、打ち消し呪文、軽量のクリーチャーをさばく除去には違いが見られる。

ジャンドサクリファイス

以前からそう変わらないデッキだけど、ピオトル・グロゴゥスキ/Piotr Glogowskiが選んだデッキだ。彼がこのデッキで偉業を成し遂げられることはみんなも知るところだろう。


苦悶の悔恨

4

金のガチョウ

4

このアーキタイプを選んだのは彼ただ一人で、デッキの核は以前と変わらない。従来と大きく異なるのは、《苦悶の悔恨》を4枚採用し、《金のガチョウ》以外のマナ加速カードを一切入れていないことだ。サイドボードはアグロやコントロールと戦えるように枚数を散らしてある。サイドボード後の戦いに向けてデッキリストを調整するには最高のデッキだ。ピオトルがサイドボード後にどんなアプローチをとるのか期待しよう!

今大会の勝ち組は?

赤単アグロの視点

遁走する蒸気族

自分が赤単のプレイヤーだったとしたら、ジェスカイファイアーズには当たりたくないと思うだろう。赤単は手札破壊呪文がないにもかかわらず、ジェスカイファイアーズは最初の数ターンを生き残ることにとても長けていて、しかも赤単にあまりにも強いカードをたくさん抱えているし、ライフを回復する手段も豊富だ。

赤単が平均的なドローをしたときにアゾリウスコントロールとの1ゲーム目を圧倒できることは想像に難くないだろう。2ゲーム目以降はアゾリウスコントロールが有効な赤単対策を追加できるけど、先手の赤単を止めるのはあまりにも難しく、依然として厳しい戦いになる。赤単戦に限って言えば、《夢さらい》を4枚採用したトラルフの構成の方が戦いやすいはずだ。6ターン目に展開できる確率が高いからね。

赤単とティムール再生は接戦であり、先手であるプレイヤーが圧倒的に有利になる。赤単が序盤に止められてしまった場合は、巻き返すのが難しくなるだろう。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は本当に強くて、赤単戦では計り知れない価値をもたらすからね。

ジャンドサクリファイスとの戦いは厳しいものになるだろう。ピオトルは大きな脅威である《エンバレスの宝剣》から身を守る方法を心得ているし、《大釜の使い魔》《魔女のかまど》の一般的なコンボで時間を稼がれたら、攻撃されずとも赤単側が負けることだってある。

エンバレスの宝剣

赤単のミラーマッチは引きによるところが大きい。というのも、《エンバレスの宝剣》のような強力なカードは相手のライフを高速で削るため、最初に戦場に出したプレイヤーが優勢を保ってゲームに決着をつけられる可能性が高いからだ

いまさらだけど、個人的に赤単のような高速アグロ戦略はあまり好きじゃない。だけど、今大会のベストデッキだと思っているよ。相性が悪いのはジェスカイファイアーズの4人とジャンドサクリファイスの1人だけだからね。

アゾリウスコントロールの視点

時を解す者、テフェリー

アゾリウスコントロールを使っていたら、赤単とジャンドは避けたいだろうね。《時を解す者、テフェリー》はティムール再生に対して最良のカードであるだけでなく、ジェスカイファイアーズにもとても強い。ジェスカイファイアーズとの相性は良いと思うけど、赤単との相性はあまり良くない。というわけで、アゾリウスコントロールは今大会の2番手のデッキだ

ティムール再生の視点

荒野の再生

ティムール再生のプレイヤーなら、赤単は避けたいところだ。序盤を生き延びるのに苦労するし、ショックランドやタップイン土地が多いのも苦しい。熟練のプレイヤーが駆るアゾリウスコントロールと当たった場合はかなり苦戦するだろう。《覆いを割く者、ナーセット》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《時を解す者、テフェリー》のドローを妨げるのは非常に厄介だ。

ティムール再生が唯一有利に戦えるのはジェスカイファイアーズじゃないだろうか。そこまで相性が良いっていうわけでもないけどね。ジャンドサクリファイスに対しては互角といったところだけど、さっきも言ったようにピオトルはこのデッキを完璧に扱う。ティムール再生は今大会で一番苦戦するデッキだと思っている

ジェスカイファイアーズの視点

創案の火

ジェスカイファイアーズのプレイヤーだったとすれば、どの赤単と当たっても嬉しいだろう。ただ、アゾリウスコントロール戦は厳しいと思う。ジェスカイファイアーズの平均的な引きではアゾリウスコントロールに負けるだろうし、それはティムール再生戦も同じだ。前者は《時を解す者、テフェリー》と打ち消し呪文を兼ね備えているし、後者は《厚かましい借り手》を有し、妨害がなければ自由自在に動いてしまうデッキだ。

とはいえ、ジェスカイファイアーズはサイドボード後から調整する力に富んでいる。これらのデッキとの2ゲーム目以降に逆転劇を見せることはあると思うよ。クリーチャーを増量して序盤のプレッシャーを強めれば、メインのゲームプランを別のものに変えられるからね。

ジャンドサクリファイスの視点

パンくずの道標

ジャンドサクリファイスについては何と言えば良いだろうか……相変わらずパワフルなデッキだし、今最も強い選手の1人が使用している。ほとんどのデッキとほぼ互角に戦えると思うし、最近は墓地対策の姿を見かけない。だからピオトルが《大釜の使い魔》《魔女のかまど》《パンくずの道標》のコンボを決めて、勝ち星を重ねてくれる可能性はあるよ

まとめ

では、各デッキの相性をまとめてみよう。

デッキ 相性
赤単アグロ ジェスカイ > 赤単 = ジャンド > アゾリウス > ティムール
ジェスカイファイアーズ ティムール > アゾリウス > ジェスカイ = ジャンド > 赤単
ティムール 赤単 > アゾリウス > ティムール = ジャンド > ジェスカイ
アゾリウスコントロール 赤単 > ジャンド > アゾリウス > ジェスカイ > ティムール
ジャンド 赤単 = ティムール = ジェスカイ = ジャンド > アゾリウス

さっきも言ったように、構成によって相性は変わってくる。だけど、各デッキ間の一般的な相性は上の表のようになると思う。もちろんその試合の引きの強さや、選手ごとのサイドボード戦略にも影響されるけど、今大会ではこうなると予想しているよ。

メタゲーム解析を楽しんでくれたなら嬉しい。誰がトロフィーを掲げることになるのか、みんなで見守ることにしよう!

ルイス・サルヴァット (Twitter / Twitch)

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Luis Salvatto 長きにわたってプロツアーでの成功を夢見ていたルイスは、2016年に開催されたプロツアー『イニストラードを覆う影』で悲願のトップ8入賞を成し遂げた。その後さらなる研鑽を積み、プロツアー『イクサランの相克』ではアルゼンチン出身のプレイヤーとして初となるプロツアー王者に輝く。この優勝によりプレイヤーオブザイヤーへの足掛かりを得たルイスは、熾烈なタイトル争いの末にセス・マンフィールドを下し年間最優秀賞のタイトルをも獲得。史上最高の南米選手の1人として認知されるほどの成長を遂げ、2019年にはマジック・プロ・リーグに選出された。 Luis Salvattoの記事はこちら