はじめに
みなさんこんにちは。
先週末は第16期スタンダード神挑戦者決定戦が開催されるなどイベントが充実していました。大規模な大会も一通り終了し、メタゲームも大分固まってきた感があります。
今回の連載ではSCGO Philadelphiaと第16期スタンダード神挑戦者決定戦の入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCGO Philadelphia
勝ち続けるAzorius Control
2020年2月8-9日
- 1位 Azorius Control
- 2位 Azorius Control
- 3位 Mono Red Aggro
- 4位 Azorius Control
Firer/Jessup/Allen
トップ8のデッキリストはこちら
今大会でもAzorius Controlが最大勢力となり、決勝戦まで進んだチームもこのデッキを選択していました。
前週に開催されたSCGO RichmondではJund Sacrificeなどのミッドレンジデッキに対して有利なTemur Reclamationが最大勢力となり、多数の上位入賞者を輩出しました。しかし、打ち消しと《覆いを割く者、ナーセット》、《時を解す者、テフェリー》といったプレインズウォーカーを有するAzorius Controlには分が悪く、数を減す結果となりました。
Temur ReclamationやAzorius Controlに対して速度で勝負できるMono Red Aggroは、デッキ構造に大きな変化はないため組みやすく、他のデッキに比べてプレイングが比較的簡単なことから人気があったアーキタイプでした。
SCGO Philadelphia デッキ紹介
「Azorius Control」「Mono Red Aggro」
Azorius Control
4 《吸収》
4 《空の粉砕》
2 《薬術師の眼識》
4 《海の神のお告げ》
4 《メレティス誕生》
4 《エルズペス、死に打ち勝つ》
1 《ガラスの棺》
4 《時を解す者、テフェリー》
3 《覆いを割く者、ナーセット》
-呪文 (32)-
打ち消しや3マナプレインズウォーカーを多数採用したAzorius Controlは、アグロデッキ全般だけでなく使用率が高いTemur Reclamationに対しても強く、今大会を支配していました。
追加のドローを封じる《覆いを割く者、ナーセット》も強力ながら、Temur Reclamationとのマッチアップでは《時を解す者、テフェリー》が勝負を決めます。《荒野の再生》でいくら土地をアンタップしようとも、スペルをキャストできないため意味を成しません。
メイン戦ではMono Red Aggroに押し切られてしまうことがあるものの、サイド後は軽い除去を追加し相性が改善されます。
☆注目ポイント
5マナと少し重いものの、現環境において《エルズペス、死に打ち勝つ》は非常にマッチしたカードです。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《荒野の再生》《創案の火》《朱地洞の族長、トーブラン》《覆いを割く者、ナーセット》《時を解す者、テフェリー》など強力なパーマネントは全て3マナ以上であり、対象に困りません。
また、上記のカードと一緒に使われることが多い《神秘の論争》に対しても、軽減コストの対象となりません。《時を解す者、テフェリー》で使い回すことが可能であり、Azorius Controlの強さを支えるカードです。
メインボードではMono Red Aggroには押し切られてしまうことが多くなりますが、サイドに忍ばせてある《太陽の恵みの執政官》が効果的に機能します。タフネス4のため対処手段が限られ、《海の神のお告げ》、《払拭の光》といったメインボードのカードたちとシナジーを形成し、時間が経つほど強固な場を築きます。《霊気の疾風》や《敬虔な命令》といった軽い除去も追加されるので、サイド後のMono Red Aggroとの相性は大きく改善されます。
Mono Red Aggro
3 《エンバレス城》
-土地 (20)- 4 《熱烈な勇者》
4 《焦がし吐き》
4 《ブリキ通りの身かわし》
4 《遁走する蒸気族》
3 《義賊》
4 《鍛冶で鍛えられしアナックス》
2 《灰のフェニックス》
-クリーチャー (25)-
4マナ域を削り1マナクリーチャーを多めに採用した軽めの赤単で、Azorius ControlやTemur Reclamationに対して速度で押し切りれる構成になっています。
ただその犠牲としてカードパワーが下がっているため、《砕骨の巨人》や《朱地洞の族長、トーブラン》を有するBig Red寄りの赤単とのマッチアップでは不利となります。
☆注目ポイント
《焦がし吐き》、《ブリキ通りの身かわし》といった軽いクリーチャーで攻めつつ、《義賊》でカードアドバンテージを取っていくのがこのデッキの特徴です。軽いクリーチャーが多いため、他のアグロデッキに比べ《エンバレスの宝剣》も早めに場に出すことが可能です。
《焦がし吐き》は攻撃しつつ1点を飛ばせるので、《時を解す者、テフェリー》などのプレインズウォーカーを対策しやすくなります。《ブリキ通りの身かわし》は回避能力持ちなため、中盤以降もダメージソースとして信頼できます。ならず者である《義賊》とシナジーを形成する点も、無視できません。
1マナ域を多用するデッキの構成上手札消費も速いため、《義賊》の能力が誘発しやすくなります。前述の《ブリキ通りの身かわし》とも相性がよく、また、相手のライブラリートップを追放するため占術カードを多用するAzorius ControlやTemur Reclamationのゲームプランを崩すこともできます。対戦相手にとっては必ず除去しなければならず、《エンバレスの宝剣》のための露払いにもなります。
サイドに4枚採用されている《解き放たれた狂戦士》は除去耐性をもつ3点クロックであり、スイーパー以外では対処できないためAzorius Controlとのマッチアップでは最高の2マナクリーチャーとなります。《初子さらい》は赤単同型やTemur Reclamationの《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を奪うのに適しており、1マナと軽いため使いやすいコントロール奪取スペルです。戦闘後に自軍のクリーチャーをアンタップさせてブロッカーに回すという小技も覚えておきたいところです。
第16期スタンダード神挑戦者決定戦
決勝戦はTemur Reclamationのミラーマッチ
2020年2月15日
- 1位 Temur Reclamation
- 2位 Temur Reclamation
- 3位 Temur Reclamation
- 4位 Simic Ramp
- 5位 Jeskai Fires
- 6位 Jund Sacrifice
- 7位 Azorius Control
- 8位 Mono Red Aggro
宇都宮 巧
トップ8のデッキリストはこちら
先週末に開催された第16期スタンダード神挑戦者決定戦の決勝戦はTemur Reclamationによるミラーマッチでした。
現環境トップメタのAzorius ControlやMono Red Aggro、Jeskai Fires、Simic Rampとさまざまなデッキが勝ち残っていました。特にJeskai Fires は世界選手権でも結果を残していたデッキであり、要注目です。
第16期スタンダード神挑戦者決定戦 デッキ紹介
「Jeskai Fires」「Simic Ramp」
Jeskai Fires
2 《山》
1 《平地》
4 《神聖なる泉》
4 《聖なる鋳造所》
4 《蒸気孔》
3 《寓話の小道》
3 《凱旋の神殿》
2 《天啓の神殿》
2 《ヴァントレス城》
-土地 (27)- 4 《砕骨の巨人》
3 《厚かましい借り手》
4 《予見のスフィンクス》
4 《炎の騎兵》
3 《帰還した王、ケンリス》
1 《夢さらい》
-クリーチャー (19)-
3 《神秘の論争》
2 《霊気の疾風》
2 《チャンドラの螺旋炎》
1 《徴税人》
1 《解呪》
1 《ドビンの拒否権》
1 《敬虔な命令》
1 《エルズペス、死に打ち勝つ》
-サイドボード (15)-
マナコストを支払うことなくスペルをキャストできる《創案の火》を軸にしたコンボデッキ。ルーティング効果をもつ《炎の騎兵》、追加ドローができる《帰還した王、ケンリス》を使い必要牌を集め、一気に押し切ります。
軽いスイーパー《轟音のクラリオン》があるためMono Red AggroやJund Sacrificeなどのクリーチャーデッキに対して強い反面、《創案の火》への対処手段と追加ドローをシャットアウトする《覆いを割く者、ナーセット》をもつAzorius Controlは苦手なマッチアップとなります。Azorius ControlやTemur Reclamationとのマッチアップでは、打ち消しを無力化する《時を解す者、テフェリー》を着地させられるかが勝負の分かれ目となります。
☆注目ポイント
Azorius Controlと同様に、『テーロス還魂記』からインスタントスピードの《定業》こと《海の神のお告げ》を得たことで、安定性が向上しています。新たなフィニッシャー《夢さらい》も追加され、わずかですが前環境から強化されています。
この手のデッキの定番として、サイドボードに《創案の火》以外の勝ち手段が用意されています。サイド後はクリーチャー除去が減らされるため、軽いクリーチャーが採用されていることが多く、今大会で入賞を果たした小林選手のリストには《義賊》が採用されています。
《義賊》は2マナと軽く、回避能力をもつ《厚かましい借り手》もならず者であるためアドバンテージを取り易くなっています。《神秘の論争》や《ドビンの拒否権》などの打ち消しを構えつつ、軽いクリーチャーで攻めていくクロックパーミッションのように振舞うこともできます。《徴税人》は《時を解す者、テフェリー》や《創案の火》を通す助けになります。
Simic Ramp
4 《島》
4 《繁殖池》
1 《寓話の小道》
4 《神秘の神殿》
2 《ギャレンブリグ城》
2 《ヴァントレス城》
1 《爆発域》
-土地 (28)- 4 《金のガチョウ》
4 《楽園のドルイド》
4 《ハイドロイド混成体》
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
2 《探索する獣》
4 《茨の騎兵》
1 《終末の祟りの先陣》
-クリーチャー (22)-
《金のガチョウ》、《楽園のドルイド》、《成長のらせん》でマナを伸ばし、《茨の騎兵》、《世界を揺るがす者、ニッサ》へ繋げ、最終的に膨大なマナを使って《ハイドロイド混成体》をキャストして多大なアドバンテージを獲得します。
『テーロス還魂記』からは《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を獲得しました。序盤はライフゲイン付きの《成長のらせん》として、中盤以降はフィニッシャーとして活躍します。
☆注目ポイント
《茨の騎兵》は《自然の怒りのタイタン、ウーロ》自身を探しだし、同時に墓地を肥やすことで「脱出」コストも稼いでくれる相性のいいカードです。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》はそのサイズだけではなく、攻撃のたびに多大なアドバンテージをもたらすため、コントロールデッキとの長期戦でも渡り合うことができます。
《世界を揺るがす者、ニッサ》の能力によって得られる膨大なマナを活用することで、《破滅の終焉》はこのデッキのエンドカードになります。《破滅の終焉》をX=10でキャストして《終末の祟りの先陣》をサーチすることで、全体強化+トランプルによってゲームを速やかに終わらせることができます。
現環境のトップメタのAzorius Controlに対しては《探索する獣》、《変容するケラトプス》といった速攻クリーチャーや、《世界を揺るがす者、ニッサ》でプレッシャーをかけていきます。特にサイド後に投入される《変容するケラトプス》は打ち消されないため、Azorius Controlにとっては対処が難しい脅威となります。
このようにAzorius ControlやTemur Reclamationなど遅いデッキに対してはサイド後には有利に立ち回れます。一方、除去が少ないためMono Red Aggroは苦手なマッチアップとなります。サイドの《霊気の疾風》や《大食のハイドラ》、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》によって時間を稼ぎながらマナを伸ばし、《ハイドロイド混成体》を着地させるのが主な勝ちプランとなります。
総括
Azorius ControlはメインボードからTemur Reclamationに対して効果的な《時を解す者、テフェリー》をもち、アグロに対してはサイドボードを含め軽量除去やライフゲインなどを数多く採用しています。絶望的に相性の悪いマッチアップが少ないことが、各イベントで結果を残し続けている要因でしょう。
赤単などのアグロデッキに強いため、Jeskai Firesも有力な選択肢です。サイドボードにはAzorius Control用に《義賊》が忍ばせてあるリストが主流となっています。
来月にはグランプリ・リヨン2020、グランプリ・デトロイト2020とスタンダードの大規模なイベントが充実しているので、今から楽しみです。
USA Standard Express Vol.166は以上となります。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!