デッキテク:早田 晃の赤単アグロ
晴れる屋メディアチーム
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By Tsutomu Date
今期のスタンダード東海王決定戦は、マジックフェスト・名古屋2020の熱も冷めやらぬ翌週の2月9日に行われた。『テーロス還魂記』のリリースから2週間を数えるが、多くのトーナメントプレイヤーはパイオニアに注力しており、国内での研究は手付かずに等しい。
この環境下で「第9期スタンダード東海王」に就いたのは早田 晃。
早田は何人もの「東海王」を輩出する「岐阜勢」の一員で、そして自らも「第5期リミテッド東海王」である。奇しくも同じ「岐阜勢」である後藤 洋昭からその座を引き継ぐ形となった。
如月王はーーーー!!
— アドバンテージ@大須のカードショップ (@TCG_ADVANTAGE) February 8, 2020
AdvantagePros所属のHayata Akiraさんです!!おめでとうございます!!#MTG pic.twitter.com/95Qe8GLvsM
早田の活躍は著しく、昨年末に「AdvantagePros」にスポンサードされたことは記憶に新しい。実績としてもマジックフェスト・名古屋2020でも初日8-1からのマネーフィニッシュ、また昨日行われた「Advantage」主催の「如月王戦」でも優勝しており、その実力を疑うものはいない。間違いなく東海圏のトッププレイヤーと言える。
早田が本日使用したデッキは赤単アグロ。使用デッキについて、早速インタビューをお願いした。
――第9期スタンダード東海王決定戦、優勝おめでとうございます。まずは本大会に臨むにあたり、赤単アグロを選択された理由を教えてください。
早田「そもそも今朝まで出場するつもりはなかったんです。 昨日の大会(Advantageの「如月王戦」)に出た後、明日起きることができたら出ようかなと思っていたんですけど、起きれてしまった(笑)。 それで赤単アグロについて造詣の深い仲間の一人がこのデッキを貸してくれまして、初めて回しました」
――今日初めて回したのですか?それで優勝とは素晴らしいですね!
早田「環境理解という意味では、『赤単アグロ』『アゾリウスコントロール』『ティムール《荒野の再生》』あたりがメジャーなデッキという情報は持っていたのですが、出場前に喫茶店で回し方や環境について話せたのが大きかったですね。2時間半…赤単アグロに限って言えば2時間ぐらいかな。短い時間の割にはとても濃い話ができました。仲間がゲームプランに対する疑問点を洗い出してくれて、そのおかげでたくさん考えることができたのがよかったです」
――なるほど。ではデッキの構成と基本的な動きを教えてください。
早田「元のリストは『crokeyz』というプレイヤーがTwitterで公開していたものになります」
早田「自分が一から作ったデッキではないので、構築やプレイについて話すことは、飽くまで自分と仲間達が感じたものですが…。ベースからはメインはそのままで、サイドボードを一部変更しています」
早田「《焦熱の竜火》は《溶岩コイル》に。インスタントであることよりも、タフネス4に触りたかったので変更しています。《太陽の恵みの執政官》、《探索する獣》に対処できるのが大きいですね。そして、《実験の狂乱》は《灰のフェニックス》に。こちらは《実験の狂乱》を使ったゲームプランを理解できなかったので、簡単でかつ好きなカードに変更しました」
早田「デッキの動きは2つあると思っています。《鍛冶で鍛えられしアナックス》に《エンバレスの宝剣》を装備して一撃必殺を狙うプランAと、盤面の微有利を保ちつつライフを削っていくプランBです」
――赤単のアグロデッキというと、アドバンテージよりも速度を重視するイメージがありますが、プランBを狙うような意外なカードが多く採用されていますね。
早田「そうですね。《義賊》、《砕骨の巨人》、《鍛冶で鍛えられしアナックス》、《舞台照らし》、《無頼な扇動者、ティボルト》のようなカードがそれにあたります」
――採用が珍しいカードについて、聞かせてください。
早田「《無頼な扇動者、ティボルト》はメタゲーム上位のデッキ、特に赤単に対してはデビル・トークンが、アゾリウスコントロールにはそれに加え相手のライフの回復を阻害もできることが有用です。メインデッキの4枚採用は半信半疑でしたが、前述の自分の想定したメタゲームでは役に立ちます。特に強いのは後手でのプレイで、攻めっ気は薄いのですが守りにも使えるのがいいです。ただ、ここのスロットは環境によって差し替えられると思っていて、現在は《ショック》が不採用ですが、メタゲームによって採用もあり得ますね」
――《朱地洞の族長、トーブラン》の不採用は珍しいですね。
早田「《朱地洞の族長、トーブラン》を入れると土地を多めに取らなければならず、マナフラッドのリスクになるように感じました。サイド後も《レッドキャップの乱闘》のようなカードで簡単に対処されてしまうのもリスクですね」
――デッキの一押しカードはありますか?
早田「《鍛冶で鍛えられしアナックス》ですね。前述したプランA、プランB双方に噛み合うのが強いです。あとは《義賊》、こちらはプランBを成立させている要素です。 《ブリキ通りの身かわし》も『ならず者』なのでシナジーがあり、能力を活かしやすいです」
――では本日苦戦したマッチアップを教えてください。
早田「シミックフラッシュですね。予選ラウンドの第3回戦と、決勝ラウンドの第2回戦で当たりました。初めて対戦した時は不利に感じましたが、決勝ラウンドでは少し楽になりましたけど」
――苦戦した理由はどのようなところにあったのですか?
早田「特にサイド後ですが、プランAが決まりにくいですね。その上、相手のクリーチャーのサイズが大きいのでプランBも難しい」
――ではどのようなところが改善されたのでしょうか?
早田「プランBを強化して臨みました。具体的には《解き放たれた狂戦士》をサイドインしましたね。理由は2つあって、1つは《恋煩いの野獣》が出す人間トークンにブロックされないことと、もう1つは2マナ以下でパワー3あるカードであるためです。3マナ以上のカードはカウンターにひっかかりますからね」
――では、想定したメタゲームに対するサイドボーディングを教えてください。
早田「アグロ同士の対戦なので除去を増やすのは定石として、減らしているのはブロッカーとして役に立ちにくいクリーチャーです。《無頼な扇動者、ティボルト》が入っているのは有利要素ですね。ちなみに《無頼な扇動者、ティボルト》をアウトするマッチはミッドレンジ系です。メタ上位ではないと思っていますが」
早田「今日の大会では当たっていないので、仮のサイドボーディングプランになります。サイド後はロングレンジのゲームを見越していますので、1マナを引き過ぎたくありません。なので《熱烈な勇者》を減らしています。《エンバレスの宝剣》は相手にばれていると決めづらくなるので減らします。《エンバレスの盾割り》は、《ガラスの棺》や《メレティス誕生》から出る壁・トークンに対処できます。《解き放たれた狂戦士》は言わずもがな、《灰のフェニックス》は速効でダメージが入るのでいいですね」
――マッチアップはどう考えていますか?
早田「不利だと思いますが、除去耐性があり回復を防ぐことができる《無頼な扇動者、ティボルト》の活躍に期待したいですね」
早田「全体除去のあるデッキなので、単体で左側の数字が高い(パワーが高い)カードを増やしています」
――ほか、Tier2以下のデッキについても簡単に教えてください。
早田「黒単はプランAを邪魔してくるし、1対2交換を要求されたりとリソースを削りにくるので苦手なマッチだと思っています。白単はシステムクリーチャーデッキなので、除去が少ないこのデッキは苦手ですね」
――ではこのデッキを使いたい人へのアドバイスをお願いします。
早田「シンプルにライフを削りに行くデッキに見えがちですが、前述のプランについて話した通り、盤面の微有利を維持して勝ちに行くことも多いデッキです。『タルキール龍紀伝』のアタルカレッドにイメージが近いかもしれません。横に並べる展開と1体のクリーチャーを強化して1点突破をする二面性は共通していると思います。簡単なデッキではないですが、これが使えるようになればコンバットはうまくなるはずですので、使い込む価値はあると思います」
早田「また、常に最大値を取りに行くのではなく、リスクを考慮することが必要です。例えば《舞台照らし》をプレイできる場合、他の手札を優先した方がいいケースもありますし、リスクを背負ってでもプレイした方がいいケースもあります。特に難しいのは不利な状況の時ですね。手なりでプレイせずにしっかりリスクとリターンを計ってプレイしましょう」
――では最後に一言お願いします。
早田「『マジック』は素晴らしいゲームなので、これからも楽しいと思える『マジック』を続けていきたいと思っています。 『AdvantagePros』をよろしくお願いします!」
――ありがとうございました。
躍進を続ける早田の姿に華々しさを感じるプレイヤーも多いことだろう。しかしその栄光は常に他者から学びを得る謙虚さと、深淵に向けての思索を続ける姿勢が結実させたに他ならない。
おめでとう、新たなる『第9期スタンダード東海王』は早田 晃!!!