はじめに
みなさんこんにちは。
今週末は、アメリカではSCG Regionals Championship、日本国内では第16期モダン神挑戦者決定戦が開催されるなどイベントが充実しています。
さて、今回の連載ではSCG Indianapolis ClassicsとModern Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCG Classics Indianapolis
Jundの復権
2020年2月23日
- 1位 Jund
- 2位 Traverse Shadow
- 3位 Dimir Urza
- 4位 Amulet Titan
- 5位 Heliod Company
- 6位 Amulet Titan
- 7位 Field Control
- 8位 Titan Shift
Farrell, Michael
トップ16のデッキリストはこちら
今大会では、現環境のトップメタであるAmulet TitanやDimir Urzaのほかに、パイオニアでも活躍している《太陽冠のヘリオッド》コンボを搭載したHeliod Companyなどが上位に入賞していました。その中でも優勝を勝ち取ったのは、環境の代表的なフェアミッドレンジのJundでした。
SCG Classics Indianapolis デッキ紹介
Jund
1 《山》
1 《森》
2 《草むした墓》
1 《血の墓所》
1 《踏み鳴らされる地》
4 《新緑の地下墓地》
3 《血染めのぬかるみ》
1 《樹木茂る山麓》
4 《黒割れの崖》
2 《怒り狂う山峡》
1 《育成泥炭地》
1 《やせた原野》
-土地 (24)- 4 《タルモゴイフ》
2 《死の飢えのタイタン、クロクサ》
2 《漁る軟泥》
4 《血編み髪のエルフ》
-クリーチャー (12)-
4 《稲妻》
2 《致命的な一押し》
2 《思考囲い》
2 《暗殺者の戦利品》
2 《コラガンの命令》
1 《大渦の脈動》
3 《レンと六番》
4 《ヴェールのリリアナ》
-呪文 (24)-
2 《疫病を仕組むもの》
2 《集団的蛮行》
2 《略奪》
2 《墓掘りの檻》
2 《夢を引き裂く者、アショク》
1 《台所の嫌がらせ屋》
1 《高原の狩りの達人》
1 《減衰球》
-サイドボード (15)-
『テーロス還魂記』からの新戦力を獲得し強化されたJundが、環境のミッドレンジの代表格として復権の兆しを見せています。
ハンデスや除去、《タルモゴイフ》など軽い優秀なクリーチャーが多数採用されており、《ヴェールのリリアナ》と《レンと六番》の2種類のプレインズウォーカーや《血編み髪のエルフ》によってアドバンテージを得ていくデッキで、固定ファンも多いデッキです。
☆注目ポイント
《闇の腹心》の枠に採用されている《死の飢えのタイタン、クロクサ》は、「脱出」しなければ場に残れませんが、中盤以降のマナフラッド防止になり、フェッチランドや《ヴェールのリリアナ》など墓地を肥やす手段も豊富なので比較的簡単に「脱出」させることができます。
Titan系、特にAmulet Titanが多くなることを見越していたのか、サイドには《大爆発の魔道士》や《略奪》といった土地破壊や、《減衰球》《夢を引き裂く者、アショク》といった対策カードが多く見られます。特に《略奪》は興味深いチョイスです。《石の雨》よりも色拘束は強くなりますが、アーティファクト対策としても機能するのでサイドのスペースの節約にもなり、UrzaやStonebladeなどのマッチアップでも使えます。
Modern Challenge #12090356
Stonebladeが優勝
2020年2月15日
- 1位 Azorius Stoneblade
- 2位 Ad Grace
- 3位 Gruul Moon
- 4位 Amulet Titan
- 5位 Amulet Titan
- 6位 Amulet Titan
- 7位 Traverse Shadow
- 8位 Amulet Titan
トップ8のデッキリストはこちら
現環境のトップメタであるAmulet Titanがプレイオフの半数を占める中、優勝を果たしたのはAzorius Stonebladeでした。
Modern Challenge #12090356 デッキ紹介
「Azorius Stoneblade」「Ad Grace」
Azorius Stoneblade
2 《冠雪の平地》
2 《神聖なる泉》
2 《神秘の聖域》
1 《大草原の川》
4 《溢れかえる岸辺》
1 《霧深い雨林》
1 《汚染された三角州》
1 《沸騰する小湖》
3 《廃墟の地》
-土地 (23)- 4 《瞬唱の魔道士》
4 《石鍛冶の神秘家》
3 《呪文捕らえ》
-クリーチャー (11)-
4 《流刑への道》
2 《血清の幻視》
2 《呪文嵌め》
2 《マナ漏出》
1 《剥奪》
2 《否定の力》
2 《謎めいた命令》
1 《饗宴と飢餓の剣》
1 《殴打頭蓋》
2 《時を解す者、テフェリー》
3 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文 (26)-
2 《遺棄の風》
2 《神秘の論争》
2 《機を見た援軍》
2 《夢を引き裂く者、アショク》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《霊気の疾風》
1 《軽蔑的な一撃》
1 《安らかなる眠り》
1 《太陽の宿敵、エルズペス》
-サイドボード (15)-
《石鍛冶の神秘家》は過去の構築環境を支配したカードで、禁止解除当時は注目を集めていましたが、それとほぼ同時期に登場した《王冠泥棒、オーコ》によって期待されたほどの活躍はできませんでした。
しかし、《王冠泥棒、オーコ》が禁止カードに指定され環境が変化し、《石鍛冶の神秘家》を使ったデッキはモダンの大きな大会でも結果を残し始めています。
☆注目ポイント
《否定の力》は、Neobrand、Tron、Stormなどモダン環境におけるアンフェアな戦略に対抗する手段として定着しています。Burnに対しても、2ターン目に出した《石鍛冶の神秘家》を相手の除去から守ることで、3ターン目に《殴打頭蓋》を安全に着地させやすくなります。コンボやBurnが多い環境では、枚数を増やしてもいいでしょう。
《神秘の聖域》を活用するために《謎めいた命令》のほかにも 《剥奪》が採用されています。《剥奪》の土地を戻すという追加コストにより、《神秘の聖域》を再利用し、何度も相手のスペルを打ち消せる状態に持ち込むことができるのです(《謎めいた命令》でも可)。
《時を解す者、テフェリー》によって《饗宴と飢餓の剣》を装備したクリーチャーの攻撃が通りやすくなり、プロテクション(緑)(黒)により《死者の原野》から湧き出てきたゾンビトークンで止まらないので、Amulet Titanとのダメージレースにおいてキーとなります。マナアドバンテージを活かすことで《神秘の聖域》+《謎めいた命令》によるロックに持ち込みやすくなる点もメリットです。
サイドボードのカードも説明していきます。《夢を引き裂く者、アショク》は、墓地対策はもちろん最近環境に増えているAmulet TitanやAd Grace、Neobrand対策として機能し、多数のマッチアップで活躍する現環境で最もフレキシブルなサイドカードの一枚です。
《霊気の疾風》もAmulet TitanやMono Red Prowessなど多くのマッチアップで使えるスペルです。打ち消しではないので《魂の洞窟》からキャストされた《原始のタイタン》に対応でき、《夏の帳》にも引っかからないのがこのスペルの強みです。現環境はTronが少なく、《原始のタイタン》を使ったデッキやMono Red Prowessと当たる確率の方が高いため、《軽蔑的な一撃》よりも優先される傾向にあります。
Ad Grace
惜しくも優勝は逃したものの準優勝という好成績を収めたAd Grace。このデッキも、『テーロス還魂記』から新戦力を獲得したコンボデッキということで話題になっています。
《ファイレクシアの非生》 or 《天使の嗜み》+《大霊堂の戦利品》 or 《むかつき》+《稲妻の嵐》によってゲームを決めるコンボデッキです。決勝で当たったカウンターを多用するAzorius Stonebladeや、ハンデスでゲームプランを妨害しつつクロックをかけてくるDeath’s Shadowなどは苦手なマッチアップとなりますが、妨害手段が限られているTitan系のデッキに対しては有利なマッチとなります。
このデッキの強みは、コンボをインスタントスピードで決めることができることです。奇襲性がありカウンターを多用する青いデッキとのマッチアップでもプレイング次第では接戦になり得ます。
☆注目ポイント
『テーロス還魂記』から登場した《タッサの神託者》は、このデッキに新たな勝利手段を授けてくれました。2マナと軽く、《大霊堂の戦利品》によってライブラリーを空にしたあとにゲームに勝つことができます。以前まで採用されていた《研究室の偏執狂》よりも軽く、カードをドローするまでのタイムラグもないためこのデッキの新たなコンボパーツとして定着しています。
苦手な打ち消しとハンデスを対策するために、サイドには《夏の帳》がフル搭載されています。コンボが通りやすくなり、ハンデスを無効化しつつドローも進められるのでコントロールデッキやJund、Death’s Shadowなど様々なマッチアップで活躍します。
Modern Challenge #12098093
タイタン強し
2020年2月29日
- 1位 Golgari Titan
- 2位 Eldrazi Tron
- 3位 Amulet Titan
- 4位 Eldrazi Tron
- 5位 Dredgevines
- 6位 Bant Snow Control
- 7位 Eldrazi Tron
- 8位 Jund
トップ8のデッキリストはこちら
トップメタであるTitan系のデッキは、今大会でもコンスタントに結果を残しており、優勝を収めたのはGolgari Titanでした。
そのほかはEldrazi Tronがプレイオフに3名、Dredge vines、Bant Snow Controlなどが勝ち残っていました。
Modern Challenge #12098093 デッキ紹介
「Golgari Titan」「Bant Snow Control」
Golgari Titan
1 《沼》
3 《冠雪の森》
1 《冠雪の沼》
2 《草むした墓》
4 《新緑の地下墓地》
2 《魂の洞窟》
2 《ゴルガリの腐敗農場》
1 《育成泥炭地》
4 《ギャレンブリグ城》
2 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》
1 《ボジューカの沼》
2 《死者の原野》
1 《爆発域》
1 《幽霊街》
1 《光輝の泉》
-土地 (31)- 2 《樹上の草食獣》
4 《桜族の長老》
4 《イリーシア木立のドライアド》
4 《原始のタイタン》
-クリーチャー (14)-
《精力の護符》が抜けてバウンスランドを最小限にしたバージョンで、爆発力よりも安定性を重視しています。バウンスランドに大きく依存しない構成であるため、《減衰球》の効果が薄いこともこのバージョンの特徴です。
《樹上の草食獣》や《探検》で土地を伸ばし、《原始のタイタン》で《死者の原野》をサーチして毎ターンゾンビトークンを生み出すこのデッキは、《原始のタイタン》デッキの中でもコントロール寄りの構成となっています。
ほかの《原始のタイタン》デッキと同様に、《イリーシア木立のドライアド》と《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》によるコンボも搭載されているので、戦闘を介すことなく勝利することも可能です。
☆注目ポイント
Amulet Titanなどほかのバージョンと異なる点はサイドの除去の多さで、《致命的な一押し》《突然の衰微》《暗殺者の戦利品》と揃っており、クリーチャーデッキとの相性がほかのビッグマナ系と比べると改善されています。
コンボデッキや同型対策には、相手のキーカードを追放する《頭蓋の摘出》と《記憶殺し》が採用されています。ミラーマッチではどうしても《原始のタイタン》をめぐるゲームになりやすいので、相手の《原始のタイタン》を追放できるカードは強力な妨害手段として機能します。
追加の勝ち手段としてアドバンテージ源にもなる《不屈の追跡者》が3枚と多めに採られています。Amuletパッケージを採用していない分デッキスペースにも余裕ができたため、置物対策にもなる《突然の衰微》と《暗殺者の戦利品》の枚数を取れるのは大きく、《夢を引き裂く者、アショク》のようなアンチカードも対策しやすくなります。
Bant Snow Control
1 《冠雪の平地》
1 《冠雪の森》
2 《神秘の聖域》
2 《繁殖池》
1 《神聖なる泉》
1 《寺院の庭》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《霧深い雨林》
2 《廃墟の地》
-土地 (24)- 4 《氷牙のコアトル》
2 《瞬唱の魔道士》
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (9)-
2 《選択》
1 《呪文嵌め》
2 《マナ漏出》
3 《否定の力》
2 《大魔導師の魔除け》
2 《謎めいた命令》
2 《至高の評決》
4 《アーカムの天測儀》
2 《時を解す者、テフェリー》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
1 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (27)-
《王冠泥棒、オーコ》の退場により衰退すると思われていたBant Snow Controlでしたが、『テーロス還魂記』から登場した《自然の怒りのタイタン、ウーロ》という新戦力を得てMOの大会を中心にコンスタントに結果を残しています。
《アーカムの天測儀》のマナフィルター能力によって3色でありながら基本地形を多数採用する余裕があり、マナ基盤も安定しています。
☆注目ポイント
《氷牙のコアトル》は、《アーカムの天測儀》と氷雪土地の恩恵で接死能力の条件も満たしやすく、キャントリップ付きの疑似的な除去として機能する地味ながら優秀なクリーチャーです。このクリーチャーの存在をちらつかせることで、相手も迂闊に攻撃をしにくくなるのでプレインズウォーカーを守りやすく、必然的にクリーチャーを並べることになるので《至高の評決》が刺さりやすくなります。
《王冠泥棒、オーコ》禁止後にその枠を埋めたのは《自然の怒りのタイタン、ウーロ》でした。もちろん《王冠泥棒、オーコ》ほどの強さではありませんが、規格外の強さを持つカードです。序盤に手札に来た際は《探検》として機能しつつ、ライフゲインによって時間を稼ぎやすくなります。墓地が肥える中盤以降は「脱出」でたったの4マナでアドバンテージが取れるフィニッシャー級のクリーチャーとして活躍してくれます。墓地がある限りなんどでも再利用可能であるため、コントロールやミッドレンジとの消耗戦でも息切れがしにくくなる点は言わずもがなでしょう。
《神秘の聖域》+《謎めいた命令》のコンボが搭載されており、《夏の帳》のおかげでコントロール同型やJundなどハンデスを多用するデッキにも強くなっています。
総括
どの大会結果を見てもAmulet Titanが上位入賞しており、『テーロス還魂記』の新カードである《イリーシア木立のドライアド》が環境に及ぼした影響が大きいことが分かります。サイドボードに《夢を引き裂く者、アショク》を採用したデッキも多く、現環境は《原始のタイタン》デッキを中心に回っているようです。
また、環境を代表するミッドレンジであるJundが復権してきたり、新たな勝ち手段として《タッサの神託者》を獲得したコンボデッキなど、《王冠泥棒、オーコ》が禁止になる前の環境と比べると多様性があります。
来週の月曜日には禁止改定の告知が予定されていますが、果たして何か変化はあるのでしょうか。
USA Modern Express vol.38は以上となります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!