ラクドスサクリファイスで臨んだミシック・ポイント・チャンレンジ

Raphael Levy

Raphael Levy

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2020/3/3)

世界選手権を終え

2月18日火曜日。28時間をかけてようやくハワイから帰宅した。世界選手権の第3ステージであるプレイイン・ステージまで進出したのはある程度の成功だったが、何かを達成したという感覚を得ることはできなかった。プレイヤーズツアー・ブリュッセルからずっと心に引っかかっている感覚だ。プレイヤーズツアーでは初日を好成績で折り返したものの、次期のマジック・プロリーグの残留に必要なミシック・ポイントを5点積み上げただけだった。

しかし今は故郷であるトゥールーズにいる。プレイヤーズツアー・ファイナル、プレイヤーズツアー・コペンハーゲン、ミシックインビテーショナルの調整を行う4月までようやく休むことができる……今から2週間後にミシック・ポイントを稼ぐイベントがなければ。あぁ、そうだ、MTGアリーナのミシック・ポイント・チャンレンジをすっかり忘れていた。まだ安息するには早いということだ。家族にはガッカリさせる結果となってしまった。

再び戦場へ

妻であるモニカ/Monicaに調整のために丸一日、それも夜遅くまで時間が欲しいと伝えるのは心苦しかった。だが、第一線で戦い続けるには休んでいる暇などない。気持ちを新たにし、環境の大半のデッキに再び回し、(上手くいかない)オリジナルデッキの構築に勤しんだ。世界選手権で使用したジェスカイファイアーズではもはや勝てなくなっていた。魔法は解けてしまったようだった。アゾリウスコントロールは今回も自分の選択肢にはなく(あのデッキは好きになれない)、ティムール再生も候補に挙がらなかった(同上)。

そんな最中、Twitterでラクドスサクリファイスを何度か見かけるようになっていた。有名プレイヤーの投稿ではなかったが、自身のデッキと結果を褒めたたえていた。随分と前に試したことがあるデッキで、あまり好きではないデッキだったが、いくつかの理由からもう一度試してみようと決めた。

オンラインで最も結果を出していたリストは欠陥がいくつもあった。そのリストでさえ勝ち星を積み重ねることができたものの、改良の余地が大きいのは確かだった。こうしてラクドスサクリファイスに調整を施していくことになり、これからご紹介するリストの完成に至った。

デッキ解説

このリストにたどり着いた経緯を理解してもらうために、まずはデッキの詳細をご説明しよう。

カード選択:メインデッキ

固定の”パッケージ”

大釜の使い魔

4

忘れられた神々の僧侶

3

波乱の悪魔

4


悲哀の徘徊者

4

初子さらい

3

魔女のかまど

4

この”サクリファイス・パッケージ”は、世に出回っているほぼ全てのラクドスサクリファイスのリストに含まれている。これらがデッキをまとめ、強力なものへと昇華させている。従来から存在していたアーキタイプではあるが、『テーロス還魂記』の《悲哀の徘徊者》によって大幅に強化された。アントニオ・デ・ローサ/Antonino De Rosaは似たようなデッキでミシックチャンピオンシップ VIIの予選を通過している。

《忘れられた神々の僧侶》《初子さらい》の採用枚数についてはコンセンサスがとれていないようだが、3~4枚が一般的だ。

ラクドスサクリファイスの構成はさまざまであるが、その大きな違いはこの”パッケージ”以外のほぼ全てに表れる。

1~2マナ域

どぶ骨

2

戦慄衆の解体者

4

モーギスの殺戮神官

4

《どぶ骨》はリストに入っていることが多い。1マナ域として優れているだけでなく、デッキ内の他のカードとの相性も良好なのだ。《忘れられた神々の僧侶》を有効活用するには軽量のクリーチャーが必要であるが、《どぶ骨》はティムールアドベンチャーが《恋煩いの野獣》から繰り出す人間トークンや赤単にあまりにも弱い。その一方で、序盤からのプレッシャーが欲しいマッチアップ(ジェスカイファイアーズ、ティムール再生、その他遅めのデッキ)では頼りになる存在となる。2枚が適切な枚数であろう

《戦慄衆の解体者》もほとんどのリストで採用されている。このクリーチャーの魅力は、ゲーム序盤においてあらゆる小型クリーチャー/自身よりも少々サイズの大きいクリーチャーとトレードできる点、そして盤面が空のときに即座の解答を要求する点にある。生け贄に捧げることでダメージを飛ばせるため、終盤戦での最後の一押しにもなる。このデッキの動きに詳しくない方のために説明すると、このデッキは序盤はビートダウンをし、その後はクリーチャーを後退させ、《大釜の使い魔》《波乱の悪魔》の直接ダメージでライフを削りきるのが理想なのだ。このように、《戦慄衆の解体者》《義賊》よりも仕事量の多い堅実なクリーチャーであると言えるだろう

義賊

0

このデッキにおける《義賊》には問題点がある(採用しているリストを多く見かけたが)。相手よりも手札が少なくなる場面があまりないのだ。後述するがこのデッキのマナベースは理想的ではなく、多くのカードが2~3マナかかる。後手ならば相手のライブラリーからカードを盗むチャンスはごくわずかしかなく、仮にできたとしてもデッキ内のカードとシナジーを有する自分自身のカードを唱えた方が好ましいことが多いのだ。

リックス・マーディの歓楽者

0

オルゾフの処罰者

0

《リックス・マーディの歓楽者》《オルゾフの処罰者》を採用しているリストもある。ともに優れていたクリーチャーではあるが、少々心もとない。アタッカーとしては中途半端であるし、それぞれに美点はあっても、何らかのカードを試したいときに常に抜いていたカードであった。

適切な2マナ域を求めていたが、誰も《モーギスの殺戮神官》を試していないのには驚いた。私がアグレッシブな2マナ域に求めていたのは、デッキ内の他のカードと良好なシナジーを形勢していること、(《義賊》よりも)2ターン目に大きなプレッシャーをかけられること、終盤で完全には腐らないことだった。だとすれば、このミノタウルスこそが答えではないか《魔女のかまど》《大釜の使い魔》《寓話の小道》《進化する未開地》が横にいれば大ダメージを与えられる。解答を持たないスロースターターには4ターンキルができるし、いずれはブロックしなければならない存在になる。それに《初子さらい》に必要なサクリ台の増量にもなる。

3マナ域

波乱の悪魔

4

悲哀の徘徊者

4


災いの歌姫、ジュディス

1

真夜中の死神

1

このデッキを使うなら《悲哀の徘徊者》《波乱の悪魔》は確実に入る。3マナ域を8枚しか採用していないリストもあったが、《真夜中の死神》《災いの歌姫、ジュディス》がもたらすパワーは見過ごせないものがあった。本番の数日前にガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassifにデッキのことを話し、一緒に調整をしたのだが、《真夜中の死神》《災いの歌姫、ジュディス》のどちらが優れているか散々話し合った。私は5枚目の《波乱の悪魔》として機能し、《戦慄衆の解体者》とのシナジーもある《災いの歌姫、ジュディス》が大変気に入っていたのだが、彼は全体除去からの建て直しを図れる《真夜中の死神》を好んでいた。

ここで重要なのは、受けの広さだった《災いの歌姫、ジュディス》《真夜中の死神》も手札に重複させたくない。それに、両者は異なる方法で勝利をもたらしてくれる。だからこそ、1枚ずつで散らした今の構成には納得がいっている。

ヘビーヒッター

悪ふざけの名人、ランクル

2

《悪ふざけの名人、ランクル》はヘビーヒッターの枠を《騒乱の落とし子》《悪夢の番人》《破滅を囁くもの》と争う。私としては《悪ふざけの名人、ランクル》に勝るものはないと考えている。速攻の飛行クリーチャーであり、出したターンに4点分のダメージを与え、地上のクリーチャーをどけ、《波乱の悪魔》の効果を誘発させ、手札を増やし、相手に手札を捨てさせ……。《時を解す者、テフェリー》がいる環境では、4マナを投じて展開したクリーチャーが1ターン場に残って大仕事をしてくれるなんて期待しない方が良い。

マナベース

沼

7

山

6

血の墓所

4


寓話の小道

4

進化する未開地

2

ロークスワイン城

1

ほとんどのリストでは《悪意の神殿》が採用されている。タップインはこのデッキにとっては大きな痛手であり、メリットが占術1だけではその採用には見合わない。2色の友好色マナベースは脆いが、それは以前からわかっていたことであり、2色土地には占術1よりももう少し大きな役割を果たして欲しかった。

できることなら《寓話の小道》をもっと採用したいと思ったが、そこで《進化する未開地》が現在のカードプールにあることに気づいた。確かに《寓話の小道》とは比べ物にならないが、《悪意の神殿》と同様にマナベースの安定に役立つ(「神殿」の方がやや優れているが、色マナの要求がそこまで厳しいデッキではないため、黒と赤のいずれかしかサーチできないのは気にならない)。なによりも、そのメリットがとてつもなく大きい《波乱の悪魔》《モーギスの殺戮神官》の能力を誘発させるだけでなく、《悲哀の徘徊者》の「脱出」に必要な墓地のカードを肥やしてくれるのだ。

マナベースに関するもうひとつの課題は、《ロークスワイン城》の採用枚数だ。私は1枚にしているのだが、70マッチ以上のテストプレイをして使った機会はほとんどなかったし、初手にタップイン土地が重なってしまうと動きがぎこちなくなるからだ。初手に《寓話の小道》/《進化する未開地》《ロークスワイン城》があったらどうなるかお察しがつくだろう。2ターン目に2マナ域を唱えられない。私はこれらの土地が手札に重なる確率を極力下げたいと考えた。ガブリエルはそれでも2枚の方が良いと考えているようだ。意見が合わないものだね!

カード選択:サイドボード

エンバレスの盾割り

4

レッドキャップの乱闘

4

害悪な掌握

3


ファリカの献杯

2

初子さらい

1

実験の狂乱

1

《実験の狂乱》は最後の最後に加えた。特別深い理由があるわけではないので、何か別のものが良ければ入れ替えて良いだろう。

強迫

0

苦悶の悔恨

0

このサイドボード構成で注目すべきは、《強迫》《苦悶の悔恨》といった手札破壊呪文がないことだ。コントロールやコンボを叩くには必須とも呼べるカードであるが、このデッキに限っては採用する余地がないと考えている。というのも、このデッキには適切なタイミングでプレイしないと効果が減じてしまうカードが多く存在しているからだ。丸々1ターンを飛ばし、カードを1枚消費しながら、厄介な1枚のカードを射抜けると期待するのはあまりにも楽観的だ。捨てさせたいカードが2枚以上あるときもあるだろうし、時にはそういったものが全くないこともあるだろう。そうなればカードとマナを無駄にすることになる。このように、手札破壊をプレイすることはこのデッキ戦略にとって害以外のなにものでもない

アングラスの暴力

0

《アングラスの暴力》は多くのリストで見受けられたカードだったが、必要でもなければ有効なものだとも思わない。除去したいカードにはまずヒットしない。ティムールアドベンチャーの特定のアーティファクト(《グレートヘンジ》《魔術遠眼鏡》)を破壊したいことがときおりあるが、《アングラスの暴力》ではその役割を果たせない。さらに言えば、このデッキはクリーチャーが必要であり、アーティファクトの問題を解消したいのなら《エンバレスの盾割り》の方が圧倒的に優れた解答になる

各マッチアップの戦い方

赤単

対 赤単

Out

戦慄衆の解体者 戦慄衆の解体者 どぶ骨 どぶ骨
悪ふざけの名人、ランクル 悪ふざけの名人、ランクル 真夜中の死神

In

レッドキャップの乱闘 レッドキャップの乱闘 レッドキャップの乱闘 レッドキャップの乱闘
エンバレスの盾割り エンバレスの盾割り 初子さらい

相性は総じて非常に良い。デッキの動きが連鎖し始めれば、相手はなかなか劣勢をくつがえせなくなる。《鍛冶で鍛えられしアナックス》を生存させようとする相手には、そのコントールを奪って生け贄に捧げることで一気に劣勢に追い込むことができる。相手のサイドインする除去の枚数が多いほど相性は悪くなるが、それでもかなり有利に戦えるはずだ。

ジェスカイファイアーズ

対 ジェスカイファイアーズ

Out

初子さらい 初子さらい 初子さらい
悲哀の徘徊者 悲哀の徘徊者

In

レッドキャップの乱闘 レッドキャップの乱闘 レッドキャップの乱闘
ファリカの献杯 ファリカの献杯

相性は良くないと思っていたが、結果を見てみるとそこまで悪くない。このデッキには相手に時間の猶予を与えないだけの攻撃性があり、序盤のブロッカーをどける手段もある。《レッドキャップの乱闘》《予見のスフィンクス》《砕骨の巨人》を対処できる。《ファリカの献杯》は1体目の大型クリーチャーに使ってもいいし、サイドアウトされていなければ《創案の火》を除去しても良い。

ティムールアドベンチャー

対 ティムールアドベンチャー

Out

戦慄衆の解体者 戦慄衆の解体者 どぶ骨 どぶ骨
モーギスの殺戮神官 モーギスの殺戮神官 災いの歌姫、ジュディス

In

エンバレスの盾割り エンバレスの盾割り エンバレスの盾割り エンバレスの盾割り
害悪な掌握 害悪な掌握 害悪な掌握

ラクドスサクリファイスを使うことに決めた理由のひとつが、赤単とティムールアドベンチャーに相性が良いと考えていたことだ。ティムールアドベンチャーはミシック・ポイント・チャンレンジ前に大きな話題を集めていたデッキであり、これには勝てるようにしておきたいと思っていた。デッキの構成を見ての通り、特にサイドボード後は相手のカードアドバンテージエンジンを機能させないようにしてある。《エッジウォールの亭主》《幸運のクローバー》を除去できる手段が豊富にあるのだ。

ティムール再生

対 ティムール再生

Out

忘れられた神々の僧侶 忘れられた神々の僧侶

In

ファリカの献杯 ファリカの献杯

群を抜いて相性が悪い相手だ。相手の引きが強く、《嵐の怒り》《荒野の再生》を持っている場合、速度勝負で勝つことが難しくなる。たまに速度勝負できることがあるが、それは相手の引きが強くないとき、あるいは《ファリカの献杯》で1枚目の《荒野の再生》を除去できたときだ。後者の場合は、合わせて盤面のプレッシャーを用意する必要がある。相手は大きなプレッシャーに晒されて《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を「脱出」させざるを得ないことがあるが、その場合は《初子さらい》で奪った《自然の怒りのタイタン、ウーロ》で勝てることがある。

できればティムールアドベンチャーに当たりたくないものだね。

ミシック・ポイント・チャンレンジの結果

ミシック・ポイント・チャンレンジは7-3で、ミシック・ポイントを3点稼いだ

ラウンド 対戦デッキ 対戦結果
1回戦 ジェスカイファイアーズ
2回戦 バントランプ
3回戦 ティムール再生
4回戦 バントランプ
5回戦 スゥルタイランプ
6回戦 グルール ×
7回戦 ティムールアドベンチャー
8回戦 イゼットフラッシュ
9回戦 ジェスカイファイアーズ ×
10回戦 ジャンドフード ×

7-1からの連敗。悪くない結果だったが、またもや「達成した感覚」がなく、後味が悪い結果となった。

愛する家族の元へ

さて、いろいろと言ってきたけど、とうとう本当にこの時がやってきた。家族に時間を捧げる時が!これまで家族には寂しい想いをさせてしまっただろうけど、今からその時間を埋めていこうと思う。それが良き父のやるべきことだから。

家族と恐竜博覧会に出かけるレヴィ

ここまで読んでくれてありがとう。昨シーズンのランク戦では好成績を収めたが(一時は2位になったが最終的には8位)、ランク戦や何らかのイベントにラクドスサクリファイスで臨むみなさんにも同じような結果が出ることを期待している。

ではまた!

ラファエル・レヴィ (Twitter / Twitch)

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Raphael Levy

Raphael Levy ラファエル・レヴィはフランスの古豪。初のプロツアー参戦は1997年で、そこから2017年のプロツアー『イクサラン』まで、91回連続でプロツアーに出場し続けたという驚異の経歴の持ち主だ。そして、2019年のミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019にて、歴史上で初めて100回のプロツアーに参戦したプレイヤーとなった。これまでに築き上げてきた実績は数知れず、2019年2月の時点でプロツアートップ8が3回、グランプリトップ8が23回(優勝6回)、その他にもワールド・マジック・カップ2013ではキャプテンとしてチームを優勝に導くなど、数々の輝かしい成績を残している。生涯獲得プロポイントは750点を超えており、2006年にはプロツアー殿堂にも選出されている。 Raphael Levyの記事はこちら