決勝:宇野 佑紀(ターボオラクル) vs. 𠮷田 卓矢(アミュレットタイタン)
晴れる屋メディアチーム
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By Tsutomu Date
モダン東海王決定戦、9期となる今期は48名の参加者を数え、予選ラウンド6回戦と、トップ8による決勝ラウンドで行われた。
決勝戦まで勝ち上がった2人はいずれも古参と言って差し支えない強豪同士。ターボオラクルを使う宇野 佑紀と、アミュレットタイタンの𠮷田 卓矢のコンボ頂上対決となった。
予選ラウンドを2位で通過した宇野のマジック歴は長い。『テンペスト』発売時にマジックと出会い、一時期は離れていたが『ラヴニカへの回帰』で回帰した。現在ではスタンダード、パイオニア、モダン、レガシーと複数のフォーマットをプレイしている。
宇野「再開したばかりの頃は高額カードばかりのレガシーはやらないと思っていたけど、マジックは恐ろしいですね。今ではすべてのフォーマットをプレイしています」
宇野は東海圏では珍しくコンボデッキを好んで多く使用するプレイヤーだ。
宇野「変わった勝ち方ができるデッキが好きですね。レガシーでもリアニメイトやスニーク・ショーを使いますし、以前のスタンダードではケシスコンボを使っていました」
本大会でもその持ち味を生かし、ターボオラクル…《タッサの神託者》が登場したことで爆誕したコンボデッキで王座を狙う。
宇野「晴れる屋さんの記事のおかげでサイドのIn/Outが明確になったのがよかったですね」
一方の𠮷田は予選ラウンドを4位で通過。𠮷田は『メルカディアン・マスクス』からマジックを始めており、宇野同様マジックとの付き合いは長い。スタンダードを主戦場としているが、モダンのプレイ歴も長く《花盛りの夏》禁止前のアミュレットタイタン(アミュレットブルーム)を使用していたこともあるという。
アミュレットタイタンは《花盛りの夏》禁止以降、メタゲームからは外れた位置で雌伏していた。それから長い時を経て『エルドレインの王権』で《むかしむかし》が、『テーロス還魂記』で《イリーシア木立のドライアド》が加わると、一気にメタゲーム上最高峰のデッキに返り咲いた。
その新生アミュレットタイタンを携え、𠮷田は決勝戦の場に挑む。
モダンやレガシー、いわゆる「下環境」と言われるフォーマットのプレイヤーは、これと決めたデッキを長く使い続ける例が多い。だが𠮷田は環境の変化を敏感に捉え、多くのデッキを使いこなす。
𠮷田「マーフォークやドルイドコンボ、ホロウワンも使いますが、今はやはりこれが一番強いですね。特に《イリーシア木立のドライアド》が強いです。《原始のタイタン》がいなくても勝つぐらいです」
ターボオラクル vs. アミュレットタイタン。このマッチアップはどのようなものになるのだろうか。
宇野「同じコンボに属するデッキですが速度はこちらが上ですし、あちらに妨害してくるカードはほとんど入っていないので、概ね有利なマッチだと思っています。今回はこちらが先手ですしね」
𠮷田「(宇野さんとは)予選ラウンドでも当たりましたね。メインは3ターンキルされて、サイド後は《原始のタイタン》を引けずに負けました」
宇野「《真実を覆すもの》で殴って勝ちましたね」
𠮷田「コンボが決められる状態でかつ、それでしたね」
モダンは特にデッキ同士の相性が大きく、マッチアップは時にプレイスキル以上に重要な要素となる。順当に速度で勝る宇野が勝利条件を満たすか、はたまた𠮷田が土地コンボを決めるのが先か。「第9期モダン東海王決定戦」最後の戦いを見守ろう。
両者マリガンはせずに好ハンドをキープ。
コンボ完成までリーチの初手を持つ宇野と、2ターン目に《迷える探求者、梓》の着地が約束された初手の𠮷田。
宇野が《真鍮の都》から《血清の幻視》で2枚下に送るスタートに対し、𠮷田は《光輝の泉》から《精力の護符》。
続く宇野は《黒割れの崖》から《五元のプリズム》でマナを伸ばしターンを返す。
𠮷田は《ゴルガリの腐敗農場》を出して《精力の護符》でアンタップすると、3マナから《迷える探求者、梓》。この3枚で𠮷田は2ターン目にして6マナ生成を約束させる。
そして、《桜族の斥候》と《死者の原野》で次ターンに備える。アミュレットタイタンとしては100点満点に近いムーブではあるが、ターボオラクルを相手にする𠮷田に残されたターンは少ない。
宇野の3ターン目。予選ラウンドではこのターンで決めたというが、果たしてここでの宇野のムーブは…《真鍮の都》から《威圧のタリスマン》を出すのみでターンを返す。コンボはまだ決まらない。
自分のターンが残されている𠮷田、《ゴルガリの腐敗農場》から《むかしむかし》で《トレイリア西部》を手に入れると、《ゴルガリの腐敗農場》を2度出し入れし、6マナを浮かせて《召喚士の契約》。
そこから導かれるのはもちろん《原始のタイタン》。
この展開を読んでいた宇野は、《原始のタイタン》に対し《否定の契約》で対抗するが、なんと𠮷田も《否定の契約》でこれを通す!
宇野「ドブンじゃないですか!」
思わず声を漏らす宇野に対し苦笑いで返しながらも土地をサーチする𠮷田。まずは《ハンウィアーの要塞》と《グルールの芝地》を手に入れ《原始のタイタン》に速効を付与すると、さらに《繁殖池》と《トレイリア西部》を導く。これで宇野に王手をかけた形だ。
盤面上は圧倒されている宇野、まずは引いてきた《金属海の沿岸》をタップイン。手札の《大霊堂の戦利品》と《天使の嗜み》、戦場を交互に見ながら思いを巡らすが、ここはターンエンド。
宇野のコンボが決まらなかったことに安堵する𠮷田。アップキープに再び《桜族の斥候》から《ゴルガリの腐敗農場》を戦場に出すと、膨大なマナから2つの「契約コスト」を支払い切る。
そして《トレイリア西部》の変成から再び《召喚士の契約》。今度は《イリーシア木立のドライアド》を呼び出す。これで𠮷田の土地が全て《山》となる。《原始のタイタン》が攻撃とともに2つの《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を戦場に出し、致死ダメージを宇野に向けるが…ここで宇野はコンボパーツの一つである《天使の嗜み》をプレイして敗北を回避。
𠮷田「ミスったか?」
と眉間に皺を寄せる𠮷田だが、1ターンの猶予を得た宇野のドローは……《啓蒙の神殿》。
フッ、と笑って投了する宇野。
宇野 0-1 𠮷田
宇野「こっちの初手は揃ってたんですけど、勝ち手段が来なかったです。まさか《否定の契約》を《否定の契約》されるとは思わなかった(笑)」
再び先手の宇野は以下の手札をキープ。
𠮷田は「今日はヌルキープしないと決めたので」と決意を見せると、1マリガン後に2枚目の《イリーシア木立のドライアド》をボトムに送ってキープ。
宇野は《殻船着の島》、𠮷田は《ギャレンブリグ城》からスタート。
続いて宇野は《闇滑りの岸》から《五元のプリズム》でマナを整える。
𠮷田は《むかしむかし》で《トレイリア西部》を手札に加えると、《シミックの成長室》で《ギャレンブリグ城》を手札に戻す。
宇野の3ターン目、しばらく考えた後に「あ、揃ってるじゃん」と《天使の嗜み》《大霊堂の戦利品》《タッサの神託者》と3枚のコンボカードを公開する。
𠮷田はうなずくと、追放されたカード……つまり宇野のデッキの全てを確認して投了した。
宇野「(いつもなら気付くことに気付かないとは)この席(東海王決定戦決勝)の魔力ですね。まだまだ走り込みが足りない」
と決勝の場に臨んでも謙虚な姿勢を崩さない。
宇野 1-1 𠮷田
初めての先手を取った𠮷田は、1マリガンから以下の手札をキープ。そこから2枚目の《召喚士の契約》をボトムに送る。
《繁殖池》から《桜族の斥候》の𠮷田に対し、宇野は長考すると、多くの選択肢の中から《真鍮の都》と《思考囲い》を選んだ。
詳らかになった𠮷田の手札から、《むかしむかし》か《召喚士の契約》のいずれかを落とすことになるが、選択は後者。
《ハンウィアーの要塞》を出してターンを返す𠮷田に対し、宇野は《殻船着の島》で《否定の契約》を「秘匿」しコンボの妨害に備える。
《血清の幻視》でトップに《タッサの神託者》を積み、着々とコンボパーツを集めていく宇野。その終了ステップに𠮷田は手札破壊から生き残った《むかしむかし》をプレイ、《原始のタイタン》を手札に入れ、こちらもコンボ完成までの秒読みを思わせる。
そのままターンを貰った𠮷田は、《グルールの芝地》を出しつつ、引いてきた《イリーシア木立のドライアド》を展開、さらには《吹きさらしの荒野》をプレイし宇野へターンを返す。
宇野「これで手札は1枚?なるほどねー?」
残る𠮷田の1枚。消去法で残るのは、先ほど《むかしむかし》で引き入れた《原始のタイタン》。そして𠮷田が擁するマナは5マナ…ということは次ターンに土地を引き込めば一気にゲームが動くことを意味する。
宇野に残されたターンは少ない。《タッサの神託者》でトップの《タッサの神託者》と《思考囲い》を確認すると、前者を上にして希望を託す。
そして𠮷田のドローは……《森》!待望の6マナに達成し、満を持して登場する《原始のタイタン》。《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》と《ヴェズーヴァ》からその能力は2度誘発し、次ターンには宇野のライフを削りきることを確約させる。
宇野はそのエンドに《大霊堂の戦利品》をプレイし、トップに積み込んだ《タッサの神託者》を宣言、これを手札に引き込む。
宇野にとってのラストターン。ここで引いてくるカードは…無慈悲にも《平地》。
𠮷田のターン、戦闘開始時に宇野は《大霊堂の戦利品》を再びプレイするが、残ったライフで《天使の嗜み》が捲れることはなかった。
𠮷田の擁する《原始のタイタン》の軍勢が宇野を蹂躙し、新たな東海王の誕生となった。
宇野 1-2 𠮷田
𠮷田「今回は特にジャンドを意識してサイドを組みましたね。《大祖始の遺産》、《強情なベイロス》も入れました。《大祖始の遺産》はドレッジにも効いたのがよかったです」
――「フェアデッキには概ね有利な印象がありますが、ジャンドを意識されていたのは意外でした」
𠮷田「地域メタというか、愛知は一定数ジャンドが好きなプレイヤーが多いですからね。店舗大会でもジャンドにはよく当たります。対ジャンドは手札破壊がきついです。大体4-3ぐらいで勝ち越していますが、意識しないと不利な印象はありますね」
――「最近ではずっとアミュレットタイタンを使われていましたが、ほかにデッキの候補はありましたか?」
𠮷田「ヘリオッドカンパニーは面白いデッキだし、勝っているデッキなので《太陽冠のヘリオッド》を持っていたら本大会に持ち込んでいた可能性はありますね。今のデッキも強いですが、《むかしむかし》が禁止になりそうなのが怖いです。失ったらデッキ難民になってしまいますね」
――「そうならないことを祈っています。第9期モダン東海王決定戦、優勝おめでとうございます!」
𠮷田「ありがとうございます!」
『第9期モダン東海王』に輝いたのは𠮷田 卓矢!おめでとう!