(編集者注:この記事は3月14日(土)のMTGアリーナ2020年ミシック予選前に書かれたものです。
Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/3/13)
グランプリ上位入賞
やぁみんな。サム・ロルフ/Sam Rolphだ。これでお会いするのは2度目になるね。
先々週、グランプリ・リヨン2020に参加し、12位に入賞した。このときに使用したジャンドサクリファイスについて今回は解説しよう。デッキリスト内のカード選択や、本番で運用したサイドボーディングを扱っていく。
デッキリスト
3 《沼》
1 《山》
4 《血の墓所》
4 《草むした墓》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《寓話の小道》
1 《ロークスワイン城》
-土地 (25)- 4 《大釜の使い魔》
4 《金のガチョウ》
4 《波乱の悪魔》
2 《残忍な騎士》
2 《意地悪な狼》
3 《フェイに呪われた王、コルヴォルド》
-クリーチャー (19)-
2 《エンバレスの盾割り》
2 《意地悪な狼》
2 《強迫》
2 《壮大な破滅》
2 《害悪な掌握》
1 《戦争の犠牲》
1 《戦慄衆の将軍、リリアナ》
-サイドボード (15)-
メタゲームに合わせたカード選択
一般的なリストにはないカードをいくつか使用している。それらのカードを選択した背景をお伝えしよう。
《アングラスの暴力》
地味なカードに思える気持ちはわかるけど、実はティムールアドベンチャーやバントランプと戦うときに大きな問題を解決してくれる呪文なんだ。《幸運のクローバー》を比較的きれいに対処できるし、先手なら《エッジウォールの亭主》もさばける。グランプリ当日はティムールアドベンチャーと対峙する機会が多いと思っていたから、他の役割も担えるアーティファクト対策をメインデッキから入れておきたかったんだ。
《アングラスの暴力》の守備範囲には《世界を揺るがす者、ニッサ》も含まれる。バントランプがマナ加速から展開すると厄介なカードだ。盤面に残ると厳しいタイミングもあり、その場合は彼女をわずかなマナで対処することが望ましい。それに《波乱の悪魔》の能力を誘発させることもできるし、実際に誘発させる場面は少なくない。ただし《伝承の収集者、タミヨウ》には気をつけなくちゃいけない。その常在型能力で《アングラスの暴力》を無力化してくるからね。
《意地悪な狼》(メイン2枚、サイド2枚)
調整中に何度も赤単と対戦することがあったが、1ゲーム目の出来にあまり満足していなかった。基本的に相性が良いマッチアップではあるものの、オンライン上の赤単はゲームを支配し得る《波乱の悪魔》を除去する手段を1ゲーム目から有していた。
その点、《意地悪な狼》は除去耐性があり、《エッジウォールの亭主》への追加の解答にもなる。《大釜の使い魔》と《魔女のかまど》のセットがないときには《パンくずの道標》を稼働させることができる。ジェスカイファイアーズ戦でも素晴らしいカードで、地上のあらゆるクリーチャーをブロックで討ち取り、《予見のスフィンクス》を格闘で落とすことも十分にあり得る。
《ゴルガリの女王、ヴラスカ》
このカードを採用したのは、《幸運のクローバー》への解答を増やすことに加え、ミラーマッチにおいて《パンくずの道標》を除去することで差をつけようとしたからだ。グランプリでは2枚にしたが、ゆくゆくは0枚に近づけた方が良いだろうと思う。使ってわかったことだけど、4マナの《突然の衰微》になってしまう場面が多々ある。それに[+2]能力は大したアドバンテージをもたらさないんだ。
このデッキはできるだけマナが欲しいデッキであり、土地を生け贄に捧げることがプラスに働くことは滅多にない。彼女を盤面に残しておけば《戦争の犠牲》や《エルズペス、死に打ち勝つ》の的を用意してしまう。サイドボードに1枚採用する可能性はあるだろうけど、ティムールアドベンチャーがよほど多いと予想しない限り2枚は過剰だろうね。
《狼柳の安息所》
これは採用して大成功だったもので、とても気に入っている。そもそもはマナ加速が欲しいという考えがあった。というのも、《ゴルガリの女王、ヴラスカ》《意地悪な狼》《フェイに呪われた王、コルヴォルド》をいち早く展開したり、1ターンに2アクションをとったり、《パンくずの道標》で手札を補充する機会を増やしたりすることは、ゲームを有利に進めるためにはどれも有効な手段だからだ。
マナ加速手段としては他に《楽園のドルイド》があるけど、《空の粉砕》や《轟音のクラリオン》に巻き込まれてしまっては目も当てられない。それにミラーマッチでも《波乱の悪魔》にやられてしまうおそれがある。
《狼柳の安息所》について特筆すべきは、自分のターンならインスタントタイミングでトークン生成効果を起動できることだ。これが何を意味するか。《フェイに呪われた王、コルヴォルド》を《霊気の疾風》で対処したい場合、相手はソーサリータイミングで唱えなくてはいけない場面もあるということだ。ターンを渡してしまえば《魔女のかまど》《大釜の使い魔》と合わせて何枚もドローされてしまう。
これはグランプリでも実際に起きたことで、相手はこちらのターンに《霊気の疾風》で《フェイに呪われた王、コルヴォルド》を対処しようとしたけど、《狼柳の安息所》《魔女のかまど》《大釜の使い魔》で3枚ドローできたんだ。
《残忍な騎士》
一般的なジャンドサクリファイスのリストには1枚しか採用されていない。しかしその構成ではバントランプが繰り出す《伝承の収集者、タミヨウ》の対処に苦労させられた。そこでプレインズウォーカーへの解答を増やしたんだ。《アングラスの暴力》を無効化されてしまうのは大きな痛手だからね。
サイドボードガイド
赤単アグロ
対 赤単アグロ
引き込んだ《波乱の悪魔》が盤面に残るという例外を除き、1ゲーム目は先手をとれるかどうかにかかってくる。だけど、2ゲーム目以降はデッキ内の無駄を省けるし、大量の除去と《意地悪な狼》をもってすれば相手は盤面を構築するのに苦労するはずだ。唯一の現実的な負け筋は、初動の遅い手札をキープして手数で圧倒されてしまうこと。だから比較的強気にマリガンして、遅めの手札はキープしないようにしよう(特に後手のとき)。
主に重要となってくるのは、ゲームをできるだけ長期化させることだ。カードアドバンテージをもたらすものが多いため、長引けば呪文の枚数に差をつけることができる。《パンくずの道標》や《フェイに呪われた王、コルヴォルド》をマリガンでライブラリーの下に戻しても問題ない。それでも手札のカードパワーは十分だろうし、圧倒的な差をつける必要はないんだ。ただ1対1交換を繰り返していけば、いずれ相手が《熱烈な勇者》のようなインパクトに欠けるカードを引いたり、マナフラッドしたりする。
バントランプ
対 バントランプ
有利だとは言えないね。特に《伝承の収集者、タミヨウ》を複数採用している構成には苦しめられる。アドバイスをするとすれば、《エルズペス、死に打ち勝つ》をうまく使わせないこと、《パンくずの道標》でできるだけ多くのアドバンテージを獲得することだ。それから、盤面の脅威を多様化して《空の粉砕》で一掃されないようにすることも大切だね。
バントランプと対戦する機会が多いと思うなら、サイドボードに《戦慄衆の将軍、リリアナ》の2枚目を採用するかもしれない。《霊気の疾風》で対処されない脅威を増やす狙いだ。最悪の相性とは言わないけど、やや不利であることは確かだろうね。
ティムール再生
対 ティムール再生
間違いなく最悪の相手だ。相手の方が強力な動きができるし、《発展/発破》で7枚もカードを引かれたのでは相手を消耗させる計画が台無しになってしまう。ティムール再生が多いと思うなら、個人的にはジャンドサクリファイスを選ばないと思う。グランプリではティムール再生と3度対戦して1-1-1だったけど、ティムール再生は終盤戦にマナフラッドしやすいデッキだから何か解決策があるんじゃないかという予感はしている。
《意地悪な狼》はサイドアウトしない。《夜群れの伏兵》を格闘で除去できることもあれば、多くサイドインされる《焦熱の竜火》への除去耐性があるからだ。《大釜の使い魔》《魔女のかまど》《波乱の悪魔》と合わされば、相手の逆転プランが始動する前に倒せることもある。
ティムールアドベンチャー
対 ティムールアドベンチャー(先攻)
対 ティムールアドベンチャー(後攻)
かなり楽に戦える相手だ。相手は高速展開の手札で押し切ることは難しいし、こちらには《幸運のクローバー》や《エッジウォールの亭主》への明確な解答が用意されている。苦戦する唯一の展開は、アドバンテージをもたらすアーティファクトである《幸運のクローバー》か《グレートヘンジ》が盤面に残ってしまう場合だ。
それでも《波乱の悪魔》と《魔女のかまど》+《大釜の使い魔》が揃えば盤面を一掃できるため、相手は《幸運のクローバー》と《願いのフェイ》を集める必要性が高い。《幸運のクローバー》への解答は6枚あり、その内の4枚が《パンくずの道標》で手札に加えられるものであるため、そこまで均衡した相性だとは思えない。ただ、ライフには気を配る必要がある。ライフの総量が少なくなってしまうと、いずれ《願いのフェイ》で手札に加わった《投げ飛ばし》でとどめを刺されかねない。
おわりに
グランプリ・リヨンまでの思考過程を理解してもらえたかな。ジャンドサクリファイスの理解も深まっていたら嬉しい!おそらくMTGアリーナのミシックインビテーショナル予選はジャンドサクリファイスで出場すると思うけど、多分《ゴルガリの女王、ヴラスカ》の枚数は減らすだろうね!
じゃあまた!元気でね!