Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/3/25)
はじめに
実を言うと、最初は《むかしむかし》についての記事を書こうと思っていました。モダンで今よりもさらに使われるだけの価値があるカードだとお伝えしようと思っていたのです。最新の禁止制限告知を待ってから寄稿しようと思っていたのですが、この判断は正解でした。
《むかしむかし》の禁止には賛成です。アミュレットタイタンやエルドラージトロンは環境のほかのデッキに比べて少し強すぎましたし、このカードのためだけでも緑をタッチする価値があるというのは少々馬鹿げていると思っていましたからね。
《ウーロ》の最適な居場所を探して
というわけでテーマを切り替えまして、僕が今のモダンでもっともやるべきこと、つまり《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の最適な居場所を見つけ出すことにスポットライトを当てようと思います。昨今、《ウーロ》はモダンを席巻しており、ほぼ例外なく《謎めいた命令》と《神秘の聖域》と併用されています。
先日のモダンチャレンジでは高橋 優太が《ウーロ》にフィーチャーしたバントコントロールで優勝しており、その翌日にはMcWinSauceが同一の75枚でモダンのPTQを突破していました。
バントコントロール
2 《冠雪の平地》
1 《冠雪の森》
1 《繁殖池》
1 《神聖なる泉》
1 《寺院の庭》
1 《神秘の聖域》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《霧深い雨林》
4 《廃墟の地》
-土地 (24)- 4 《氷牙のコアトル》
3 《瞬唱の魔道士》
2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (9)-
3 《マナ漏出》
3 《否定の力》
2 《大魔導師の魔除け》
2 《謎めいた命令》
2 《至高の評決》
4 《アーカムの天測儀》
2 《時を解す者、テフェリー》
3 《精神を刻む者、ジェイス》
2 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (27)-
今現在、モダンで倒すべきデッキはバントコントロールだと想定しています。《ドミナリアの英雄、テフェリー》が登場してからというもの、アゾリウスコントロールはモダンでトップTierのデッキであり、『ドミナリア』の後もメインデッキに7種のカード、サイドボードに5種のカードを獲得し、その新戦力の数は75枚中の29枚にも上ります。多くのデッキが同じように強化を受けているようにも思えますが、以前からトップクラスのデッキが新たなセットから大幅な強化を受けたのです。
そのため、今後の大会に向けてバントコントロールを強力な選択肢としておすすめしますが、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》にはこれだけで済ませてはいけない多大なるパワーが秘められていると思うのです。ここ最近、《ウーロ》を《荒野の再生》と《運命のきずな》のセットに組み合わせようと試みています。
《運命のきずな》の可能性はモダンでは十分に試されていないと思っていますし、《ウーロ》はこのカードと相性が抜群です。除去耐性が高い脅威でありながら、獲得した追加ターンでアドバンテージを稼ぎますからね。
ネクサス・ウーロ(シミック型)
先日、アレン・ウー/Allen Wuが独自の構成のネクサスデッキでモダンリーグを5-0していました。僕自身もこのアーキタイプを試したいと思ったきっかけです。
さらに、もう一人のチームメイトであるコリン・ラウントリー/Collin Rountreeがダラスで開かれたStar City Games Regionalをオリジナルの構成のティムールネクサスで優勝したのです。
ネクサス・ウーロ(ティムール型)
コリンの構成は、僕が理想とするよりもはるかにフェアなゲームプランを想定しています。《氷牙のコアトル》や《レンと六番》などは諦めるには惜しいほどのパワーを持っているかもしれませんが、僕は極限まで無駄を排してアンフェアな構成にしたいと挑戦している最中です。ですから、僕のリストは当初のアレンのものに近しいですが、《運命のきずな》で勝つことに特化させています。
現在のデッキリスト
このリストを使ってみてわかりましたが、対戦相手のデッキタイプによって勝率が両極端なものになります。ネクサスデッキとして動く分には申し分なく、妨害要素を《謎めいた命令》だけに抑えたデッキの速度は、エルドラージトロンや《原始のタイタン》デッキなどに対して非常に相性が良いと思わせてくれました。
また、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《霊気の疾風》を活用すれば「果敢」デッキとの相性も良好となっています(ありがたいことに「果敢」デッキはリーグのメタゲームで使用率が非常に高いアーキタイプなのです)。さらに、リソース勝負になる多くのマッチアップでも自信を感じています。長期戦を戦うツールが多く揃っているデッキですし、《荒野の再生》を設置できれば、その莫大なマナアドバンテージを勝利に結びつけることは容易です。
ところが、特に相性が悪いと思うマッチアップが2つあります。5色人間と《時を解す者、テフェリー》デッキです。5色人間に関しては、《スレイベンの守護者、サリア》《帆凧の掠め盗り》《翻弄する魔道士》への妨害手段不足をひどく咎められます。今現在、5色人間はあまり数が多くないようですから、デッキ構築の段階から意識することはなく、マッチングしないことを願う方向性を維持していこうと思っています。
現時点でのベストデッキがバントコントロールであると信じている以上、《時を解す者、テフェリー》の常在型能力に脆いのは明らかに問題です。対抗策をいろいろと試しましたが、今の構成で良いのではないかと考えています。バントコントロールはMagic Onlineで組み上げるには高価なデッキで、リーグで極端に多く当たる相手ではないんですけどね。
カード選択
《思考掃き》 4枚(メインデッキ)
僕が変更したなかでもっとも大きなものは、キャントリップ呪文の枠に《思考掃き》を入れたことです。色を3色目まで広げるなら《アーカムの天測儀》は重要だと思いますが、2色でまとめて《思考掃き》を採用するメリットは大きいです。《アズカンタの探索》が変身する速度は凄まじく、なんと4ターン目に変身することもよくあります。
また、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の「脱出」コストを確保できますし、運よく墓地に落ちれば3マナを使って《探検》を手札から唱える過程をスキップすることができます。さらに、ネクサスデッキとしてはできるだけ早く《運命のきずな》の連鎖に入れるように、ライブラリーの枚数をいち早く削ることに一定の価値があります。この連鎖を4ターン目にできることは意外なほどありますね。
《爆発域》 2枚(メインデッキ)
次に注目したいのは、2枚採用された《爆発域》です。実を言うと、スタンダードやパイオニアのネクサスが《時を解す者、テフェリー》やそのほかの厄介なパーマネント対策として入れているのを流用しています。
《神秘の聖域》をアンタップインさせるうえでは「島」ではない土地は邪魔になりますが、土地が27枚もあれば置き方に選択肢があるのが一般的なので、そこまで問題になりません。《爆発域》は打ち消されませんし、対処されにくく、《荒野の再生》と抜群の相性を持っているため、驚くほど強力なカードです。サイドボードにもっと採用しようかと思っているほどですよ。
《世界を揺るがす者、ニッサ》 2枚(サイドボード)
今現在、メタゲームに合わせて変更するサイドボードの枠に入っているのは《世界を揺るがす者、ニッサ》です。このプレインズウォーカーには主に2つの役割があります。まず、墓地に依存しない別軸の脅威となること。今の構成では墓地対策にやや脆くなっていますが、《安らかなる眠り》や《虚空の力線》などへの直接的な解答を増やしたくはありません。すでに《爆発域》や《謎めいた命令》が一種の解答になっているからです。
2つ目の役割は、《時を解す者、テフェリー》と《夢を引き裂く者、アショク》を対処しやすくすること。3/3のアタッカーを製造することで《時を解す者、テフェリー》を落しやすくなるだけでなく、常在型能力による膨大なマナによって《水没遺跡、アズカンタ》を起動しつつ《運命のきずな》を何度か連鎖させられる可能性があるのです。そうすれば、3/3のクリーチャーたちが《時を解す者、テフェリー》を落としてくれることでしょう。
このフリースロットの枠には《威圧の誇示》を試したこともありますが、今は《世界を揺るがす者、ニッサ》に惚れ込んでいます。
《霊気の疾風》 4枚(サイドボード)
最後に取り上げるのは《霊気の疾風》です。《神秘の論争》や《夏の帳》がモダンのサイドボードカードとして優れていることはある程度明らかになってきていますが、《霊気の疾風》も急速にその仲間入りをしつつあります。
単に《原始のタイタン》デッキや「果敢」デッキがメタゲーム上に多いからかもしれませんが、《霊気の疾風》は両デッキに強いのに対して《瞬間凍結》はどちらのデッキに対しても採用するほどのものではありませんから、《霊気の疾風》がいかに強力なデザインかお分かりいただけるでしょう。
《霊気の疾風》を採用していて良かったと思う場面はほかにも多く、たとえばドルイドコンボとのマッチアップが挙げられます。相手のドローステップに《献身のドルイド》へ《霊気の疾風》を唱えれば、莫大な時間を稼ぐことができ、コンボの成立を遠ざけられるのです。
《ウーロ》に対抗するには
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が墓地に依存しているため対策カードに弱いことは明白ですが、《ウーロ》を用いるデッキが狙っていることに思考を巡らせるべきだと思います。これらのデッキの多くはアドバンテージを確保する手段を多く備えているため、《安らかなる眠り》のような墓地対策は試合が長引いたときに期待通りの結果をもたらしてくれるとは限りません。
個人的には《ウーロ》への最善の対抗策は《大祖始の遺産》《魂標ランタン》《虚無の呪文爆弾》だと考えています。これらの墓地対策は《ウーロ》が「脱出」するのを防ぐ力がありながら、1枚分のカードを消費することなくその任務を遂行します。メインデッキに入れやすく、特定のデッキにおいてはアーティファクトであることがメリットにもなり得ます。
ウーロザ(Uroza)
1 《冠雪の森》
2 《繁殖池》
2 《神秘の聖域》
4 《霧深い雨林》
3 《汚染された三角州》
2 《溢れかえる岸辺》
2 《沸騰する小湖》
-土地 (22)- 4 《金のガチョウ》
4 《湖に潜む者、エムリー》
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4 《最高工匠卿、ウルザ》
-クリーチャー (15)-
1 《剥奪》
3 《金属の叱責》
3 《謎めいた命令》
4 《ミシュラのガラクタ》
3 《仕組まれた爆薬》
1 《モックス・アンバー》
4 《アーカムの天測儀》
2 《上天の呪文爆弾》
-呪文 (23)-
この《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と《最高工匠卿、ウルザ》を併用したデッキは頻繁に結果を出しています。今後のモダンイベントにおいて、《魂標ランタン》をメインデッキに何枚か搭載したこのデッキを僕が選ぶ可能性はかなり高いと思っています。
《ウーロ》は《湖に潜む者、エムリー》の副次的な墓地肥やし効果と相性が良いですし、このデッキはほかの《ウーロ》デッキと比べても遜色のないパワフルな動きが多くあります。
多くのプレイヤーが墓地対策の役割を《夢を引き裂く者、アショク》に担わせている今、墓地を活用するデッキは非常に立ち位置が良いと思います。《夢を引き裂く者、アショク》はドレッジや《復讐蔦》デッキに対してやや重いため、これらのデッキは復権するだろうと予想しているのです。《安らかなる眠り》や《虚空の力線》の採用数が減っていますからね。
適切な墓地対策を選択する以外の《ウーロ》対策としては、強力かつ能動的で、今現在使用者が多くないデッキを選ぶことです。最初に思い浮かぶのは5色人間やストームでしょうか。高速で勝利できることが多いですし、《ウーロ》デッキが雑多なデッキに勝つには相応の準備が必要です。モダンにおいて広く言えるアドバイスですが、ほかの誰も使用していない強力なデッキを選ぶべきです。受動的な要素が多いデッキが人気なときに特に当てはまることですね。
おわりに
これまで《自然の怒りのタイタン、ウーロ》のカードパワーを存分に味わってきましたが、これからも居場所を探し続けます。僕が思うに、モダンは自ら環境を適正化する力があるため、《ウーロ》は禁止が必要なほど問題あるカードではありません。
ですが、モダンにおける数ある柱のひとつではあるでしょう。今の環境は非常に健全で、実際のゲームは遊びごたえのあるものとなっていると感じます。こうなった大きな要因は、《神秘の聖域》がコントロールを環境のトップに再び押し上げたことにあるでしょう。
モダンが昨年刷られたばかりのカードに支配される光景を良く思わない人もいるでしょうが、僕としてはこの変化を楽しんでいます。《王冠泥棒、オーコ》が禁止を一度免れ、モダン最強と呼ばれるほどのパワフルなカードを使えた時期を楽しんでいたほどです。
昨今のモダンの変化のなかで、特に納得できないのは《オパールのモックス》の禁止でした。 フォーマットで最上位のカードであることは確かなものの、これを禁止することは実質的に多くのカード、たとえば《電結の荒廃者》を禁止しているようなものです。禁止された当時、《オパールのモックス》デッキへの対抗策はかつてないほど優れていたと思いますし、新セットが発売されればモダンのほかのデッキもまた大幅な強化を受けていたことでしょう。
強力なカードが刷られる時代になったのですから、さらなる禁止カードの解禁にも期待したいところです。あらゆるフォーマットで解禁しても問題ないという前例があります。《出産の殻》や《欠片の双子》などが今もなお強すぎる結果に終わったとすれば、再び禁止されてもなんら驚きではありませんけどね。
『イコリア:巨獣の棲処』がモダンに何をもたらすのか、今から楽しみにしています。最近はかつてないほどマジックに励んでいますので、プレビューが始まったら思いついた素敵なアイディアをいち早くみなさんに共有できたらと思っています。
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