USA Legacy Express vol.164 -進撃のウーロ-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさんこんにちは。

新型コロナウイルスの影響により多くの方が外出を控えていることもあり、Legacy Super Qualifierなどのイベントが追加されたMOは、これまで以上に重要度を増しています。また、今週末にはMOを活用したKMC Magic Online Tournamentも開催される予定ですので、レガシー好きの方はお見逃しなく。

さて、今回の連載ではLegacy Super Qualifierの入賞デッキを見ていきたいと思います。

Legacy Super Qualifier #12117237
群雄割拠な環境再び

2020年3月27日

  • 1位 Temur Delver
  • 2位 Doomsday
  • 3位 Darkdepths
  • 4位 Valakut
  • 5位 Esper Vial
  • 6位 Oracle Combo
  • 7位 Temur Delver
  • 8位 Maverick

トップ8のデッキリストはこちら

MOに追加されたプレイヤーズツアーへの参加権をかけ戦うビッグイベント、Legacy Super Qualifier。競技性も高いため、《死の国からの脱出》禁止後の環境を占うには絶好の機会となりました。

これまでBreach Storm Comboに不利なため環境から淘汰されていたデッキも復権してきており、レガシーらしい群雄割拠な時代へと戻りつつあります

Legacy Super Qualifier #12117237

「Doomsday」「Darkdepths」

Doomsday

最後の審判タッサの神託者

《死の国からの脱出》禁止後も《最後の審判》を新たなキーカードとして、《タッサの神託者》を搭載したコンボデッキは健在です。

このデッキの強みは《最後の審判》とサーチ先のカード、勝ち手段である《タッサの神託者》以外固定パーツを必要としないことにあります。このためほかのコンボデッキよりもドロースペルや相手に干渉するカードを多く採用でき、コンボからフェアなゲームプランへシフトしやすくなっています。

☆注目ポイント

時を解す者、テフェリー予報

《時を解す者、テフェリー》はカウンターなどの妨害呪文を無力化する強力なプレインズウォーカーです。また、[+1]能力によって《最後の審判》を相手のエンド時にキャスト、そのまま自分のターンで《タッサの神託者》を召喚と干渉できる隙を与えずに勝負を決めることもできます

主にMiraclesのカードアドバンテージ源として使われている《予報》ですが、このデッキではドローも含めた削れる最大枚数(3枚)に着目し、《最後の審判》後に速やかに《タッサの神託者》の勝利条件を満たせるように採用されています。

剣を鍬に終末相殺僧院の導師

このデッキで最も注目すべきポイントはサイドボードにあります《剣を鍬に》《終末》《相殺》といった一連のカードを加えることで、コンボデッキからMiraclesに変形します。《最後の審判》コンボ以外の勝ち手段としてキャントリップと相性の良い《僧院の導師》も採用されています。

Darkdepths

演劇の舞台暗黒の深部

アメリカのレガシーのエキスパートGriselpuff(Bob Huang)も、新環境に合わせたSultaiカラーのDark Depthsを使用し入賞していました。

青を足したことで《渦まく知識》が使えるようになり、デッキの安定性が向上しています。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《王冠泥棒、オーコ》が加わったことで、《演劇の舞台》+《暗黒の深部》コンボを対策されたとしても、ミッドレンジデッキとして振舞えるようになりました

☆注目ポイント

自然の怒りのタイタン、ウーロ

3マナの《探検》である《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《演劇の舞台》+《暗黒の深部》のセットを揃えるのを助け、さらには追加の勝ち手段としても機能します。「発掘」スペルである《壌土からの生命》とも相性がよく、「発掘」により《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を探しつつ、墓地に落ちたカードを「脱出」のコストにあてることで、リソース負けせずにミッドレンジデッキとして渡り合うことを可能にしています。

暗黒の深部王冠泥棒、オーコ

多数の戦略を抱えるこのデッキの強みとして、対戦難易度の高さがあげられます。たとえ《剣を鍬に》《厚かましい借り手》《マリット・レイジ トークン》を一度対処したとしても、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《王冠泥棒、オーコ》でアドバンテージを稼ぐことができ、ミッドレンジプランをとりつつ再度コンボをしかけることが可能です。隙を見せずにミッドレンジとコンボの両方を同時に対処することは、決して楽ではありません

狼狽の嵐夏の帳疫病を仕組むもの漁る軟泥

サイドには《狼狽の嵐》《夏の帳》といった軽い妨害スペルが多数採用されています。ほかのコンボ対策になることはもちろん、《夏の帳》《王冠泥棒、オーコ》などを《突然の衰微》から守ります

追加のクリーチャーを投入することでよりフェアなミッドレンジとしても振舞いやすくなります。《疫病を仕組むもの》《若き紅蓮術士》《真の名の宿敵》《僧院の導師》対策になり、《漁る軟泥》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を搭載したミッドレンジ全般を牽制するのに役に立ちます。

Legacy Super Qualifier #12117247
死の国から脱出を果たした巨人が支配する環境

2020年4月3日

  • 1位 4C Control
  • 2位 Izzet Delver
  • 3位 4C Control
  • 4位 4C Control
  • 5位 Bant Omni-tell
  • 6位 Sultai Depths
  • 7位 Grixis Delver
  • 8位 Eldrazi

トップ8のデッキリストはこちら

4C ControlやMidrange、Sultai Depthsなどアーキタイプは異なりますが、今大会では《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《王冠泥棒、オーコ》を採用したデッキがプレイオフの半数を占めました

《死の国からの脱出》の退場によりコンボデッキが弱体化し、Delver系やEldraziが上位に多数散見されるようになったため、ミッドレンジやコントロールにとっては勝ちやすい環境となりました。

Legacy Super Qualifier #12117247

「4C Control(Bant + Red)」「4C Control(Sultai + White)」

4C Control(Bant + Red)

《アーカムの天測儀》の恩恵でデュアルランドを最小限に抑えながら無理なく多色化することが可能となり、《王冠泥棒、オーコ》《氷牙のコアトル》でアドバンテージを稼ぎつつ強固な場を築いていくミッドレンジ/コントロールは、現在のレガシーでは最もポピュラーなアーキタイプの一つとなっています。

禁止改定によるメタゲームの変化と『テーロス還魂記』から加入した《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は、このデッキを新たなレベルへと進化させました。

今大会で優勝を果たしたデッキはBant Controlをベースに、相手の《王冠泥棒、オーコ》対策に《紅蓮破》をタッチしたバージョンでした。

☆注目ポイント

覆いを割く者、ナーセット

相手の追加ドローを封じる《覆いを割く者、ナーセット》《渦まく知識》《思案》などの定番のドロースペルに加え、《森の知恵》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《アーカムの天測儀》半無力化できるため、今まで以上に重要なプレインズウォーカーとなります。今大会の優勝デッキのほかにも、準優勝のIzzet Delverもサイドボードに採用していました。

時を解す者、テフェリーセヴィンの再利用王冠泥棒、オーコ

《覆いを割く者、ナーセット》《王冠泥棒、オーコ》《時を解す者、テフェリー》《基本に帰れ》といった強力な3マナのパーマネントを複数搭載しているため《セヴィンの再利用》を最大限活用できるのも特徴です。プレインズウォーカーを2体リアニメイトしようものなら多大なアドバンテージを獲得することができます。

《紅蓮破》《夏の帳》に引っかからないため、有力な《王冠泥棒、オーコ》対策として機能します。Miraclesと異なりリセットスペルが少ないため、横並び戦略を苦手としています。追加のスイーパーとして《至高の評決》がサイドボードに採用されています。

4C Control(Sultai + White)

コントロールのエキスパートで配信やElo Puntersなどのコンテンツ作成にも力を入れているAnziD(Anuraag Das)も《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を採用した多色コントロールで入賞していました。

《アーカムの天測儀》によって、《突然の衰微》《氷牙のコアトル》《時を解す者、テフェリー》などのグッドスタッフを集めた欲張りな構成が可能となっています。多色デッキにもかかわらず基本地形がベースとなっているため、《血染めの月》《不毛の大地》に耐性があります。

Delver系やMiraclesなどフェアデッキ全般に強いデッキですが、クロックが遅いためShow and Tellなどのコンボデッキを苦手とします。

☆注目ポイント

真冬

《真冬》《毒の濁流》と異なりライフを支払う必要がないため、引きつけてからキャストすることも可能であり、《真の名の宿敵》《僧院の導師》、Death and TaxesやElvesなどに効果的です。

このスイーパーの欠点は氷雪パーマネントの数を参照するため、エルドラージなどの高タフネスクリーチャーを多用するデッキに対しては確実性がやや欠けるところです。そのためこのデッキはMiraclesと比べると、Eldraziとの相性が若干悪くなっています。

自然の怒りのタイタン、ウーロ森の知恵耳の痛い静寂

《自然の怒りのタイタン、ウーロ》はライフゲインできるため《森の知恵》と相性が良く、土地も伸ばせるためDelver系とのマッチアップに強く、中盤以降は繰り返し使えるフィニッシャーとして機能します。

コンボデッキを苦手とするため、サイドボードには《狼狽の嵐》3枚に加え、ストーム系のコンボを機能不全にできる《耳の痛い静寂》も見られます。

総括

《死の国からの脱出》禁止後のレガシーはコンボデッキが減少し、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》+《王冠泥棒、オーコ》のセットを搭載した多色系グッドスタッフが増加傾向にあります。しかし、Delver系をはじめEldrazi、DoomsdayやOracle Comboなど様々なアーキタイプが結果を残しています。

自然の怒りのタイタン、ウーロ王冠泥棒、オーコアーカムの天測儀夏の帳

Super Qualifierで上位に残った多くのデッキが2019-2020年にリリースされたカードを多用しており、近年のエキスパンションが環境にどれだけ影響を与えたのかが再確認できます。

USA Legacy Express vol.164は以上です。

それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら