Hareruya Pros/Hopesに聞く『イコリア:巨獣の棲処』セットレビュー

晴れる屋メディアチーム

大怪獣来たる!

公式で発表されていたゴジラとのコラボエキスパンション、『イコリア:巨獣の棲処』がついに今週末発売となる。また、MTGアリーナでは明日16日0時より、ストリーマーによるアーリーアクセスイベントが開催予定となっている。強力かつ強大なクリーチャー溢れる世界は、もうすぐそこまで迫っているのだ!

宇宙の帝王、キングギドラ逃れ得ぬ災厄、ゴジラ翼竜怪獣、ラドン

単色・多色問わずパワー溢れるカード、マジック史上初となる基本地形タイプをもつトライランド(3色土地)、そしてゴジラ・シリーズ。どのカードも魅力的で選択はプレイヤー次第ではあるが、地図もなしにこの広大な巨獣の棲処を旅するのはいささか心許ない。

ペトル・ソフーレク/Petr Sochurek宇都宮 巧

そこで今回は、『イコリア:巨獣の棲処』について晴れる屋スポンサードプレイヤーたちに特徴やリリース後のスタンダードについて語ってもらった。

今回新天地へと足を踏み入れたのはHareruya Prosにして今や晴れる屋トーナメントセンターの顔であるペトル・ソフーレク/Petr Sochurek、押しも押されぬHareruyaHopesのエースとなった宇都宮 巧、そして昨年新たにHareruya Hopesへと加入した新鋭、鎌田 和大の3名だ。

鎌田 和大

今回初めてインタビューに協力してくれた鎌田選手について簡単にご紹介しよう。テーブルトップとデジタル世界の2軸で活動する関西のプレイヤーで、Magic Online(以下MO)を嗜むプレイヤーならば鎌田の名に聞き覚えがなくとも、“Gosaku”の名を知らぬものはいないだろう。変形サイド仕様のマルドゥ機体をいち早く使用しプロツアー予選を突破するなど、先見の明の持ち主だ。

前置きが長くなってしまったが、それではこれよりイコリアの世界へと上陸しよう。

Q1. 『イコリア:巨獣の棲処』全体の印象は?

ペトル・ソフーレク

とても気に入っています。「サイクリング」はゲームごとの”引きのムラ”をなくしてくれるので、腕に覚えがあるプレイヤーにとって素晴らしいものなのです。また、このセットには「相棒」のような今までに見たこともない、まったく新たなメカニズムも含まれています。実際にどのようなゲーム体験をもたらしてくれるのか、今から楽しみですね。

インダサのトライオームケトリアのトライオームラウグリンのトライオーム
サヴァイのトライオームゼイゴスのトライオーム

デッキとしては、新しい「サイクリング」付きの多色土地が収録されましたので3色ミッドレンジやコントロールが多く登場すると思います。「サイクリング」は昔からあり使い慣れたメカニズムですね。

「相棒」は基本的に競技性の高い環境では使われないと思いますし、「変容」は主にリミテッドで重要な位置づけとなるでしょう。もちろん、スタンダードで通用するほどの強力な「変容」カードはいくつか出てくると思いますが、「変容」に特化させたデッキは出てこないと予想しています。

宇都宮 巧

ゼイゴスのトライオーム雷の頂点、ヴァドロック

「サイクリング」、「変容」の2つキーワード能力が目を引きます。特に「サイクリング」はトライランドにも付与されているため、大多数のデッキで使われると思います。「変容」は未知数ですが、神話レアのサイクルはどれも能力が強く思わず使ってみたくなるテキストですね。

鎌田 和大

ケトリアのトライオーム巨智、ケルーガ出現の根本原理

セット全体のパワーレベルは程々な印象です。単色よりは多色デッキを強化するカードが特に多く見られ、ゲーム展開として相手のライフを詰め切るよりはアドバンテージやボードで差をつけてゲームを決めるデッキが増えると思います。まさしく”Timmy”※向けのセットだと思います。

スタンダード環境への影響も色濃く、「相棒」を軸とした新しいアーキタイプの出現と既存デッキも大幅に強化されることを予想しています。ジェスカイやティムールベースのデッキはトライランドによってマナベースが改善されますし、シミックを基調としたランプ系デッキはゴールとして2種類の根本原理を得たことになります。「相棒」はほかの既存デッキの強化にも一役買ってくれるでしょう。

※ Timmyとは「何を求めてゲームをプレイするか?」「どんなカードを好むか?」といった傾向からプレイヤーを分類する“Timmy, Johnny, and Spike”の一種である。マジックに楽しい体験を求めるプレイヤーであり、何かを達成することではなく、プレイそのものから得られる興奮や快感を求めている。カードとしては分かりやすく派手な能力・効果を持ったものを好む。

Q2. スタンダードで最初に試したいカードは?

ペトル・ソフーレク

古き道のナーセット

僕はプレインズウォーカーを中心に据えたコントロールが大好きなので、常々そういったデッキをプレイしたいなと思っています。ただ、現在のジェスカイプレインズウォーカーには強力な4マナ域が不足していました。今回登場した《古き道のナーセット》は、空いていた4マナ域を埋めてくれるまさにこのデッキが求めていたカードだと感じています。

宇都宮 巧

さまよう怪物、イダーロ予測不能な竜巻

ロマンに全振りしたカードを選んでみました。クリーチャーを《さまよう怪物、イダーロ》、エンチャントを《予測不能な竜巻》《サメ台風》に絞り、残りを除去とアドバンテージスペルに寄せたコントロールは組んでみたいと思います。

鎌田 和大

発生の根本原理

現環境で最強クラスのアーキタイプであるシミック+αのランプデッキに、1枚でゲームを決めてしまう可能性のあるカードが加わることになります。すでにある程度強さが保証されているデッキなため、未知の環境へ持ち込むには適していると思います。

Q3. 今、1000枚買うべきカードは?

ペトル・ソフーレク

ネスロイの神話

あらゆるものを対処できる3マナのインスタントは極めて強力です。アブザンカラー(白・黒・緑)の3色にアクセスできるデッキならば、おそらく4枚採用することでしょう。このカードをどのデッキで使うかはまだ決まっていませんが、たとえば以下のような4色のデッキで採用されるのは間違いないでしょう。

アンドレア・メングッチ「現環境のスゥルタイとバントを融合させた」

宇都宮 巧

怪物の代言者、ビビアン眷者の神童、キナン

[+1]でクリーチャー・トークンを生み出し、[-2]は条件付きながらほぼ任意のクリーチャーを呼び出すことが可能です。スタンダードで強力なのはもちろんのこと、パイオニア以下の環境ではクリーチャー特化型コンボのお供として活躍できる可能性を秘めています。常在型能力でアドバンテージが取れるため、予想以上に使われるカードではないかと思っています。

《眷者の神童、キナン》はスタンダードよりも、明らかにパイオニア以下の環境で強いデザインです。下環境で強い神話レアは1000枚買えと相場が決まってます。

鎌田 和大

インダサのトライオームサメ台風

『エルドレインの王権』の《王冠泥棒、オーコ》、『テーロス還魂記』の《自然の怒りのタイタン、ウーロ》ような、どう使っても明確に強いと思えるカードは見当たりませんでした。各種トライランドは当然として、強いて言えば《サメ台風》は複数のアーキタイプで使われるユーティリティカードとなり得るので、4枚揃えておいても良いかもしれません。

Q4. 新デッキの可能性

ペトル・ソフーレク

「サイクリング」や「相棒」といった新しいメカニズムを中心としたデッキは、失敗する可能性が高いデッキでもあります。デッキを調整するのは難しいですし、最初は何が良いのかを判断しなければならないためです。

雷の頂点、ヴァドロック

《雷の頂点、ヴァドロック》を軸にした構築はまだ明確にわかりませんが、マナコストが軽く、「変容」を使わずとも単体で優秀なサイズでありますから、とてもカードパワーが高いように思います。

ここで興味深いのは、このカードをさらに優秀なものにするためには、その能力で再利用する呪文と「変容」させるための軽量クリーチャーのいい塩梅を見つけなければならないという点です。プレイヤーたちがどんな《雷の頂点、ヴァドロック》を使ったデッキを作り上げるのか楽しみですね。

宇都宮 巧

願いの頂点、イルーナ

「変容」により、《樹上の草食獣》の価値が上がったと思います。既存のランプデッキはバント/スゥルタイが中心ですが、「変容」時の能力も派手でマナレシオの優れた《願いの頂点、イルーナ》を軸に据えた、高コストパーマネントを重視したティムールカラーもこれからは選択肢に入りそうです。

鎌田 和大

滑りかすれ

ディミーアフラッシュが新たに出現すると思います。現在フラッシュ系デッキはシミックが主流ですが、《滑りかすれ》はデッキのカラーバリエーションを変えるに足る強さがありそうです。

他には《海駆けダコ》《狡賢い夜眷者》などがデッキ強化に一役買ってくれそうです。また、インスタントタイミングでのプレイを推奨するカードはエキスパンション毎に少しずつ収録されているため、これからもフラッシュ系デッキは徐々に選択肢が増えていきそうです

Q5. 強化される既存デッキ

ペトル・ソフーレク

古き道のナーセット恰好の餌食中和

《古き道のナーセット》のくだりで述べた通り、ジェスカイプレインズウォーカーは間違いなく強化されるデッキでしょう。カード単体であげるなら《ネスロイの神話》《ラウグリンのトライオーム》に代表されるトライランド、《恰好の餌食》《中和》などは既存デッキを強化してくれるはずです。

宇都宮 巧

古き道のナーセット見事な根本原理ラウグリンのトライオーム

ジェスカイファイアーズは今回様々なカードを手に入れることになります。現在は《帰還した王、ケンリス》と2種類の騎兵をフィニッシャーにしたタイプが主流になっていますが、4マナ域の《古き道のナーセット》を手に入れたことで、プレインズウォーカー中心のデッキも選択肢に入ると思います。

《見事な根本原理》はクリーチャー型/非クリーチャー型問わずどちらでも採用されるわかりやすいパワーカードです。マナコストの重さはネックになりますが、現在のスタンダードでは《時を解す者、テフェリー》の存在が大きく、セットで使うことで大振りなアクションも肯定されます。

鎌田 和大

巨智、ケルーガ

《創案の火》デッキは理想的な動きをした場合にどのデッキも太刀打ちできない強さを発揮しますが、必要なカードが多く、《創案の火》をキャストできたとしてもその後クリーチャーが出せないケースが度々あります《巨智、ケルーガ》を「相棒」にすることで必要なカードのうち1枚をすでに持っている状態となり、ファイヤーズコンボの安定性が高まるはずです

おわりに

Hareruya Pros/Hopesたちの鋭くも柔軟な着眼点から『イコリア:巨獣の棲処』を案内してきたが、いかがだっただろうか。『イコリア:巨獣の棲処』の骨格や次期スタンダードの姿が、おぼろげながら浮かび上がってきたなら幸いである。

冒頭でも述べたが『イコリア:巨獣の棲処』のアーリーアクセスイベント(MTGアリーナ)は16日0時からとなっている。Hareruya Hopesからは今回レビューを担当した鎌田選手が自身のTwitchにて同イベントへ参加するため、是非ご覧いただきたい。


プレイヤーだけではなく、コレクター、そしてゴジラファンにも嬉しい『イコリア:巨獣の棲処』は2020年4月17日(金)発売予定!さらに現在晴れる屋では、『イコリア:巨獣の棲処』のシングルカードも予約受付中!

イコリア:巨獣の棲処

さあ、次は皆さん自身がイコリアの世界へと足を踏み入れる番だ。巨獣の棲処は、もう、目の前だ!!

この記事内で掲載されたカード

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