Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/4/21)
環境に影響を与える『イコリア:巨獣の棲処』
やぁ、みんな!
『イコリア:巨獣の棲処』がとうとう発売されたけど、試してみたい新カードが本当にたくさん出てきたね。
今回は、この新セットのなかで環境に大きな影響を与えそうだと思うカードについて書いていく。もちろん「相棒」もそのなかに含まれるけど、そのほかにも「トライオーム」と呼ばれる3色土地などが登場している。こいつらも特定のアーキタイプを強化してくれるはずさ。
「相棒」の多くはデッキ構築に大きな制約を課すものの、なかには既存のアーキタイプに自然とフィットするものもある。だから環境の初期はそういったアーキタイプが最強デッキの一角になると思うよ。
じゃあ『イコリア:巨獣の棲処』の「相棒」たちに会いに行こう!
《巨智、ケルーガ》
《巨智、ケルーガ》は《創案の火》デッキにほとんど手を加えることなく採用できる。一番構築が簡単な「相棒」じゃないかな。特に大きな変更点は除去枠の《霊気の疾風》が採用できなくなることだ(もともとこの呪文はほぼ脇役だったけどね)。それから《敬虔な命令》などのサイドボードカードを使えなくなる。だけど全体的に見れば、《巨智、ケルーガ》によって《創案の火》デッキは強化されたと思うよ。
デッキリスト
2 《山》
1 《平地》
1 《沼》
4 《神聖なる泉》
4 《蒸気孔》
3 《聖なる鋳造所》
4 《ラウグリンのトライオーム》
3 《寓話の小道》
2 《天啓の神殿》
2 《凱旋の神殿》
2 《ヴァントレス城》
-土地 (30)- 4 《砕骨の巨人》
2 《厚かましい借り手》
4 《予見のスフィンクス》
4 《炎の騎兵》
2 《帰還した王、ケンリス》
-クリーチャー (16)-
《巨智、ケルーガ》がデッキに入ったことで《義賊》をサイドボードに採用できなくなったものの、《軍勢の戦親分》が再びその役割を担ってくれるだろう。3マナのパーマネントだから《巨智、ケルーガ》が戦場に出たときにドローもできる。
《創案の火》デッキのメタゲーム上の立ち位置の良さは、環境にどんなデッキが出てくるかによるだろう。このアーキタイプは《創案の火》を対処できるミッドレンジに苦労させられるはずからね。《巨智、ケルーガ》でミッドレンジとの相性が改善されたとしても、苦戦する事実は変わらないだろう。
だけど、ケルーガファイアーズが食い物にするであろうデッキがある……。
《夢の巣のルールス》
《夢の巣のルールス》がモダン・レガシー・ヴィンテージで極めて強いのは明らかだ。近年で印刷されたカードのなかで最強クラスだという人もいるほどさ!《夢の巣のルールス》は1~2マナ域に強力なカードがひしめく下の環境で真価を発揮する。じゃあスタンダードはどうなのかって?スタンダードでもとても強いと思うよ!
デッキリスト
6 《山》
4 《血の墓所》
4 《寓話の小道》
2 《ロークスワイン城》
-土地 (23)- 4 《大釜の使い魔》
4 《鋸刃蠍》
4 《囁く兵団》
4 《戦慄衆の解体者》
4 《死の飢えのタイタン、クロクサ》
4 《忘れられた神々の僧侶》
2 《リックス・マーディの歓楽者》
-クリーチャー (26)-
“crokeyz”ことステファン・クローク/Stephen Crokeは、『イコリア:巨獣の棲処』発売から数日後にこのデッキリストでMTGアリーナのランク1位を獲得した。《夢の巣のルールス》デッキを調整したいなら、まずはこのデッキから始めてみると良いと思う。このような《夢の巣のルールス》デッキは、《夢の巣のルールス》の効果を前提にしたプレイングができるようにデザインされている。これまでは生け贄に捧げられるだけの役割しか持たなかったクリーチャーたちが、いまやマナに余裕があれば墓地から蘇ってくることが保証されるようになったんだ。
《鋸刃蠍》はこのような戦術とって掘り出し物だ。死亡時に2点ドレインできる生け贄に捧げても問題ないクリーチャーであり、墓地に送ればデッキのキーカードである《夢の巣のルールス》で再利用できる。このアーキタイプには大きなポテンシャルを感じるね。比較的早く20点のダメージを与えられるし、《夢の巣のルールス》《死の飢えのタイタン、クロクサ》といったロングゲームを戦うカードも揃っている。
実際の強さが不透明ながらも、《夢の巣のルールス》は情報が公開された日から多くのプレイヤーに期待されていた。しかしその一方で、自分を含む多くのプレイヤーが活躍しないだろうと思っていた「相棒」もいた。そしてその「相棒」が全フォーマットに波を起こしている。
《深海の破滅、ジャイルーダ》
その「相棒」が《深海の破滅、ジャイルーダ》だ。
《深海の破滅、ジャイルーダ》は競技レベルではあまり見かけないカジュアル寄りのカードだろうと踏んでいた。しかしこれは全くの間違いだった。レガシーなどで1ターンキルができることを世に知らしめただけでなく、スタンダードのベストデッキ争いで上位集団に食い込んでいる。
ここではマジック・プロリーグ(MPL)所属のオンドレイ・ストラスキー/Ondrej Straskyが使っているデッキリストを紹介しよう。
デッキリスト
スタンダードの《深海の破滅、ジャイルーダ》デッキが狙いとしているのは、まず《深海の破滅、ジャイルーダ》を戦場に送り込み、《深海住まいのタッサ》《魅力的な王子》《灯の分身》などでその誘発型能力を何度も使うことだ。特に伝説でないコピーとして戦場に出る《灯の分身》とのシナジーが《深海の破滅、ジャイルーダ》のカードパワーを一気に引き上げている。たとえ土地しかない状態でターンを迎えたとしても、そのターンの終わりには強固な盤面が作られている可能性がそれなりにある。
環境はある程度早い段階で順応していくだろうけど、《深海の破滅、ジャイルーダ》の素のカードパワーはとても高いから、干渉するプランを持ち合わせていないデッキは片っ端から咎められるだろう。干渉するのも簡単じゃないけどね。《深海の破滅、ジャイルーダ》の強さはメタゲームを二分にするほどかもしれない。《深海の破滅、ジャイルーダ》が着地する前に倒そうとするデッキと、《深海の破滅、ジャイルーダ》に対抗することを強く意識したデッキの2つに分かれたメタゲームだ。一体どうなっていくのだろうね!
ただ、今のところ確認できる環境の変化は、《深海の破滅、ジャイルーダ》の対抗策である《アショクの消去》の採用だ。このカードなら1枚で根こそぎ対応できる。
このデッキリストには『イコリア:巨獣の棲処』のもうひとつの新カードである《悪魔の職工》が入っている。《深海の破滅、ジャイルーダ》や《発現する浅瀬》のように、クリーチャーによるコンボを狙うデッキで幅広く使われていくと思う。
《空を放浪するもの、ヨーリオン》
構築であまり見かけないだろうと思った「相棒」には《空を放浪するもの、ヨーリオン》もいた。60枚から80枚に増やせば、デッキの安定性に深刻な問題を引き起こすと思ったからね。だけど、それと引き換えにデッキとシナジーがあるカードが1枚無料で手に入ることを十分に理解しきれていなかった。これは特定のカードを引く確率が下がることに見合う価値があったんだ。
《空を放浪するもの、ヨーリオン》を使ったデッキの組み方はいくらでもあると思うし、その探求がこのカードの楽しみ方のひとつだろう。個人的にはエスパーかバントが相性が良いと思っている。《海の神のお告げ》《ケイヤの誓い》《半真実の神託者、アトリス》《エルズペス、死に打ち勝つ》……。本来なら採用しないカードを無理して使わなくても《空を放浪するもの、ヨーリオン》は活躍できる!これはポテンシャルが高い「相棒」の兆候だと思うよ。
それから《空を放浪するもの、ヨーリオン》は《創案の火》と面白いシナジーがある。まずそのターンの2つ目の呪文として《空を放浪するもの、ヨーリオン》を唱え、《創案の火》を追放。すると《創案の火》が戦場からなくなったことで、土地のマナを使ってさらなる呪文を唱えることができるんだ。もし1つ目の呪文が《エルズペス、死に打ち勝つ》だったら、それを追放することで莫大なアドバンテージを得ることができるね!
デッキリスト
1 《島》
1 《山》
1 《平地》
4 《繁殖池》
4 《神聖なる泉》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《寺院の庭》
3 《蒸気孔》
1 《聖なる鋳造所》
4 《ケトリアのトライオーム》
4 《ラウグリンのトライオーム》
2 《神秘の神殿》
1 《豊潤の神殿》
-土地 (35)- 3 《樹上の草食獣》
4 《願いのフェイ》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (11)-
4 《海の神のお告げ》
3 《鍛冶の神のお告げ》
1 《狩猟の神のお告げ》
4 《創案の火》
4 《エルズペス、死に打ち勝つ》
2 《サメ台風》
4 《時を解す者、テフェリー》
3 《覆いを割く者、ナーセット》
3 《古き道のナーセット》
2 《伝承の収集者、タミヨウ》
-呪文 (34)-
3 《神秘の論争》
1 《火の予言》
1 《空の粉砕》
1 《戦争の犠牲》
1 《見事な根本原理》
1 《破滅の根本原理》
1 《夢を引き裂く者、アショク》
1 《古き道のナーセット》
1 《目覚めた猛火、チャンドラ》
-サイドボード (14)- 1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》 -相棒 (1)-
《空を放浪するもの、ヨーリオン》は可能性の塊だ。みんなもどんどん挑戦してみよう!
《孤児護り、カヒーラ》
《孤児護り、カヒーラ》という「相棒」も使われているが、こいつは全く毛色の異なるカードだ。
最初にこのカードを見たとき、使われるとすればエレメンタルデッキ、あるいは手厚くサポートした猫デッキだろうと思っていた。しかし今になってみれば、その最大のメリットはクリーチャーを採用していないプレインズウォーカーデッキで無料のクリーチャーとして使うことだった。
デッキリスト
1 《平地》
4 《神聖なる泉》
4 《聖なる鋳造所》
4 《蒸気孔》
4 《ラウグリンのトライオーム》
4 《啓蒙の神殿》
2 《天啓の神殿》
2 《ヴァントレス城》
-土地 (26)- -クリーチャー (0)-
4 《吸収》
2 《神秘の論争》
3 《空の粉砕》
3 《願い与えの加護》
3 《海の神のお告げ》
3 《エルズペス、死に打ち勝つ》
3 《サメ台風》
4 《時を解す者、テフェリー》
3 《覆いを割く者、ナーセット》
3 《古き道のナーセット》
-呪文 (34)-
3 《敬虔な命令》
3 《軽蔑的な一撃》
2 《轟音のクラリオン》
1 《焦熱の竜火》
1 《神秘の論争》
1 《エルズペス、死に打ち勝つ》
-サイドボード (14)- 1 《孤児護り、カヒーラ》 -相棒 (1)-
75枚のなかにクリーチャーを一切入れないデッキを使うなら、《孤児護り、カヒーラ》による構築の制約は実質的にない。それがプレインズウォーカーデッキなら、ブロッカーとして使えるだろう。ましてや、タダでカードアドバンテージが得られるんだからね。
《孤児護り、カヒーラ》がさらに強くなるのはサイドボード後だ。こちらのデッキにはクリーチャーがないものの、1体のクリーチャーが手札にあることが確約されているため、クリーチャー除去の扱いが難しい状況に相手を追い込むことができる。このようなコントロールデッキにおいて、《孤児護り、カヒーラ》が《夢さらい》よりも優れた存在になる可能性はあると思う。
さて、ここまで「相棒」を紹介してきたわけだけど……『イコリア:巨獣の棲処』は「相棒」だけのセットじゃない!
個人的に特に研究しがいがあると思っているのは《軍団のまとめ役、ウィノータ》だ。
《軍団のまとめ役、ウィノータ》
《軍団のまとめ役、ウィノータ》を活用するには、攻撃要員となる人間でないクリーチャーを一定数採用するとともに、その効果で戦場に展開する優秀な人間クリーチャーが必要となる。この伝説の戦士にとってはありがたいことに、《裏切りの工作員》と《帰還した王、ケンリス》はどちらも人間クリーチャーだ!
マーティン・ジュザ/Martin Juzaの《軍団のまとめ役、ウィノータ》の使い方を見てみよう。
デッキリスト
2 《平地》
1 《山》
1 《沼》
4 《神聖なる泉》
4 《聖なる鋳造所》
4 《蒸気孔》
4 《ラウグリンのトライオーム》
4 《寓話の小道》
-土地 (26)- 3 《魅力的な王子》
3 《迷い子、フブルスプ》
4 《絞首された処刑人》
4 《軍勢の戦親分》
1 《砕骨の巨人》
1 《厚かましい借り手》
4 《軍団のまとめ役、ウィノータ》
2 《精鋭護衛魔道士》
2 《帰還した王、ケンリス》
4 《裏切りの工作員》
-クリーチャー (28)-
このデッキは人間でないクリーチャーを詰め合わせることで《軍団のまとめ役、ウィノータ》の効果を誘発させるようになっているだけでなく、《孵化/不和》によってキーカードを4ターン目までに手札に加えやすくなっている。
また、《急報》やゲームを速やかに終わらせられる《軍勢の戦親分》などのトークン生成呪文を駆使することで、それなりのクロックが用意できる。だから《エンバレス城》を1~2枚仕込んでおくのも良いのではないかと思う。トークンで戦場を埋め尽くした後に全体を強化することがプランBになるからね。
《深海の破滅、ジャイルーダ》や《巨智、ケルーガ》を使ったデッキと戦ううえで打ち消し呪文が今後は重要になってくるだろうから、このデッキのようなサイドボード構成はとても好印象だ。本来の狙いである強力なコンボで勝つこともできれば、ある程度のプレッシャーを打ち消し呪文でバックアップして勝つこともできる。
おわりに
今回の記事も楽しんでくれたかな?『イコリア:巨獣の棲処』が入ったスタンダードはこれからどうなっていくのだろう。今から本当に楽しみだね!