はじめに
みなさんこんにちは。
『イコリア:巨獣の棲処』がリリースされ1週間ほど経ちました。新メカニズムの「相棒」が環境に与えた影響力は大きく、各構築フォーマットの環境を激変させました。スタンダードも例外ではなく、環境のほとんどのデッキがなにかしらの「相棒」を採用しています。
さて、今回の連載ではStandard Super QualifierとMagicFest Online Season 2 Weekly Championship – Week 1の入賞デッキを見ていきたいと思います。
Standard Super Qualifier #12138027
新戦力と「相棒」を得たJeskai Fires
2020年4月21日
- 1位 Jeskai Fires
- 2位 Jeskai Fires
- 3位 Jeskai Fires
- 4位 Azorius Control
- 5位 Rakdos sacrifice
- 6位 Temur Reclamation
- 7位 Jeskai Fires
- 8位 Jeskai Fires
トップ8のデッキリストはこちら
新環境に入って最初の競技イベントを制したのはJeskai Firesでした。
プレイオフの半数以上を占め決勝戦も同型対決となるなど、今大会の上位を支配していました。ほかにはAzorius ControlやRakdos Sacrifice、Temur Reclamationなどが中心でどのデッキも「相棒」クリーチャーを導入し、新環境向けに調整が施されていました。
Standard Super Qualifier #12138027
Jeskai Fires
2 《山》
1 《平地》
4 《ラウグリンのトライオーム》
4 《サヴァイのトライオーム》
4 《神聖なる泉》
4 《蒸気孔》
3 《聖なる鋳造所》
3 《寓話の小道》
2 《ヴァントレス城》
-土地 (29)- 4 《砕骨の巨人》
4 《予見のスフィンクス》
4 《炎の騎兵》
3 《帰還した王、ケンリス》
-クリーチャー (15)-
「相棒」の《巨智、ケルーガ》や『イコリア:巨獣の棲処』からの新カードによってさらに強化されたJeskai Firesは、今大会では優勝も含めて半数以上のプレイオフ入賞者を出すという強さを見せました。
《巨智、ケルーガ》は「相棒」にするための条件が比較的難しめですが、もともと高コストのカードが中心のJeskai Firesでは条件を満たすのは容易です。序盤のアクションは《砕骨の巨人》や《厚かましい借り手》など、「出来事」クリーチャーでカバーすることが可能です。
☆注目ポイント
Jeskai Firesは《創案の火》も含めて、4マナ以上のパーマネントが場に並びやすいデッキです。そのため、《巨智、ケルーガ》で追加のドローがしやすく、ドローしたカードを《創案の火》によってコストを踏み倒せることもあり、デッキの方向性に非常にマッチしている「相棒」となっています。
《古き道のナーセット》はライフを安全圏に保ちつつ、プレインズウォーカーの除去や追加のカードアドバンテージ源となります。コントロール相手には、[-2]能力で手札で腐っている《轟音のクラリオン》などを有効牌に変えられるため重宝します。
「サイクリング」ランドの《ラウグリンのトライオーム》と《サヴァイのトライオーム》によってマナ基盤がより安定すると同時に、「サイクリング」によってキーカードを探すこともできるので土地を多めに採用していてもマナフラッドが起こりにくくなりました。序盤のアクションが少ないので、タップインランドであることもあまり不便に感じることもありません。
MagicFest Online Season 2 – Week 1
「相棒」によって強化されたデッキ
2020年4月25-26日
- 1位 Rakdos Sacrifice
- 2位 Temur Reclamation
- 3位 Bant Yorion
- 4位 Jeskai Cycling
- 5位 Temur Reclamation
- 6位 Jeskai Fires
- 7位 Gruul Aggro
- 8位 Temur Reclamation
トップ8のデッキリストはこちら
MagicFest Onlineの第2シーズンがスタートしました。『イコリア:巨獣の棲処』がスタンダードに与えた影響は大きく、今大会で上位に残ったデッキの多くは「相棒」を使用していました。下の環境でも猛威を振るっている強力なメカニズムですが、スタンダードでは多様性を損なうほどではなく、前環境と同様に様々なデッキが結果を残しています。
Piotr Glogowski、Seth Manfield、Ivan Flochといった強豪プレイヤーが勝ち残る中で優勝を果たしたのは、James Ramseyの駆る《獲物貫き、オボシュ》を「相棒」に採用したRakdos Sacrificeでした。
MagicFest Online Season 2 – Week 1
「Rakdos Sacrifice」「Bant Yorion」「Jeskai Cycling」
Rakdos Sacrifice
《夢の巣のルールス》を「相棒」にしたバージョンも見られますが、《波乱の悪魔》を使える従来のバージョンの方が好まれそうです。《波乱の悪魔》は生き残れば小型クリーチャーが中心のデッキを完封できるうえに、高いライフ水準からでも相手のライフを削り切ることができます。
今大会で優勝を収めたJames Ramsey選手のバージョンは、《獲物貫き、オボシュ》を「相棒」に選んでいます。このバージョンの強みは《波乱の悪魔》や《災いの歌姫、ジュディス》といった強力な3マナ域のクリーチャーをデッキに含めることができることで、デッキ構築における制約も《忘れられた神々の僧侶》を諦めることぐらいです。
☆注目ポイント
「相棒」に選別されている《獲物貫き、オボシュ》は、元々デッキ内のカードのマナコストが1マナと3マナに寄せられていたことからも条件の方はそれほど厳しくなく、《鋸刃蠍》や《災いの歌姫、ジュディス》、《波乱の悪魔》などが本体に与える直接ダメージを2倍にしてくれます。
新たな1マナ域として採用されている《囁く兵団》は、能力を起動するのにタップが必要なくマナが余る中盤以降は手軽にサクリファイス要員を補充できます。また、横に並ぶので《紋章旗》と相性が良いクリーチャーです。
《真夜中の死神》は、《獲物貫き、オボシュ》の効果によって自分に入るダメージも2倍になってしまうため採用は見送られています。《大釜の使い魔》+《魔女のかまど》対策が厳しくなることが予想されるサイド後のゲームに備えて、追加の勝ち手段として《朽ちゆくレギサウルス》がサイドに4枚採用されています。手札を捨てるデメリットも、軽いクリーチャーが多く墓地から再利用できるクリーチャーもいるので、このデッキではあまり問題になることはなさそうです。
Bant Yorion
2 《森》
1 《平地》
4 《繁殖池》
4 《神聖なる泉》
4 《寺院の庭》
4 《寓話の小道》
4 《啓蒙の神殿》
4 《神秘の神殿》
4 《豊潤の神殿》
2 《ヴァントレス城》
-土地 (36)- 4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
3 《裏切りの工作員》
-クリーチャー (7)-
3 《霊気の疾風》
4 《中和》
4 《空の粉砕》
4 《海の神のお告げ》
4 《エルズペス、死に打ち勝つ》
4 《サメ台風》
4 《時を解す者、テフェリー》
3 《覆いを割く者、ナーセット》
3 《伝承の収集者、タミヨウ》
-呪文 (37)-
Twitchの配信者としても有名なMPLプレイヤーのPiotr Glogowski選手が選択したのは、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」に採用したBant Controlでした。
《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」にするためには、デッキに20枚余分にカードを入れる必要があります。そのため、キーカードやデッキ内の強いカードを引き当てる確率を上げるためにデッキの枚数は最低枚数の60枚にするというデッキ構築の常識そのものを変える必要があります。
当初はデッキを80枚にすることはリスクが高いと考えられていましたが、《海の神のお告げ》や《成長のらせん》など軽いキャントリップスペルを多用しており、《空を放浪するもの、ヨーリオン》の能力と《海の神のお告げ》や各種プレインズウォーカーのシナジーはデッキ構築制限に合ったアドバンテージを稼ぎ出します。
☆注目ポイント
「相棒」の《空を放浪するもの、ヨーリオン》は、《エルズペス、死に打ち勝つ》《海の神のお告げ》《裏切りの工作員》といった場に出たときの能力を持つパーマネントや、《覆いを割く者、ナーセット》などプレインズウォーカーの忠誠度をリセットすることで多大なアドバンテージを提供してくれます。
メインから4枚採用されている《中和》は、「サイクリング」によって打ち消す対象がないときに手札で腐るというカウンターの弱点がカバーされており、多くのセットに収録されている《取り消し》系のバリエーション中でもかなり性能が良い方に入ります。
《サメ台風》は6マナと重いエンチャントですが、このカードの強みは「サイクリング」で自分のターンに隙を作らずにクリーチャーを生成することが可能なことで、アグロ相手にドローを進めながらブロッカーを用意したり、ミッドレンジやコントロール相手のエンド時にサイクリングしてゲームを決めたりと柔軟性があります。
また、カウンターされず相手の《時を解す者、テフェリー》影響を受けないのもこのカードの強みです。これにより、コントロールとのマッチアップで相手に複数のプレインズウォーカーが並んでも対策がしやすくなりました。
Jeskai Cycling
1 《山》
4 《ラウグリンのトライオーム》
4 《神聖なる泉》
4 《聖なる鋳造所》
4 《蒸気孔》
-土地 (20)- 4 《繁栄の狐》
4 《ドラニスの癒し手》
4 《ドラニスの刺突者》
4 《雄々しい救出者》
-クリーチャー (16)-
今大会で上位入賞を果たしたデッキの中で、最も印象に残ったデッキがJeskai Cyclingでした。『イコリア:巨獣の棲処』で再登場した「サイクリング」をフィーチャーしたデッキで、《ドラニスの刺突者》を場に出して「サイクリング」し続けることでドローを進めながら本体にダメージを飛ばしつつ、最終的に《天頂の閃光》でゲームを決めます。
「相棒」として選択されている《夢の巣のルールス》とショックランド、「サイクリング」ランドを除けば、デッキ内のカードのほとんどがコモン、アンコモンなのでスタンダードの中でも比較的安価で組むことが可能です。アリーナでもレアワイルドカードをそれほど必要としないため、あまり課金せずにスタンダードを楽しみたいという方にもお勧めです。
☆注目ポイント
「相棒」に選択されている《夢の巣のルールス》によって、キーカードである《ドラニスの刺突者》を含めた「サイクリング」したパーマネントを墓地から再利用することが可能で、「サイクリング」スペルで高マナコストのカードもパーマネントでないスペルが多いのでデッキにフィットしています。
「サイクリング」カードが中心なので、《繁栄の狐》は《ドラニスの刺突者》と同様に早い段階から展開することができればフィニッシャーになります。
2枚目のカードを引くことでフェアリートークンを生み出す《型破りな協力》は、「サイクリング」カードが中心のこのデッキと相性がよく、ルーター能力もあるので余ったマナを有効活用する手段にもなります。
このデッキの弱点としては「サイクリング」スペルに除去やスイーパーが少ないため、クリーチャーデッキとのマッチアップに不安が残ることです。そのためサイドボードには《一斉検挙》や《轟音のクラリオン》、《焦熱の竜火》など除去やスイーパーが多めに採用されています。
総括
『イコリア:巨獣の棲処』がスタンダードに与えた影響は予想以上に大きく、「相棒」は環境だけでなくデッキ構築の常識も変えてしまうほどでした。
カードプールが広い下の環境では「相棒」は強すぎる印象ですが、多様性を阻害するほどではなく様々なアーキタイプが上位で見られる面白い環境です。
MagicFest Online Season 2はまだ続くのでスタンダード好きの方はお見逃しなく。
以上、USA Standard Express vol.170でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいスタンダードライフを!