ご挨拶
お久しぶりです。時間が経つのは早いもので、最後に個人で記事を書かせていただいたときから1年半も経ってしまいました。
今回4/25、4/26に行われたMagicfest Online Weekly Championshipでトップ4という成績を残し、再びこうして記事を書く機会をいただけて嬉しく思っています。この記事では、僕が同大会で「ジェスカイサイクリング」という比較的マイナーなデッキを選択するに至った思考の過程と同デッキの解説を書いていきます。
デッキ選択に至るまで
Nice 5-0 with Lurrus Flare. Its somewhat concerning that a deck like this is playable. @ArenaDeckCast pic.twitter.com/GF3WsdJ2Dy
— Samuel Bogue (@IslandGoSAMe) April 23, 2020
僕がサイクリングデッキに興味を持ったのは、Twitter上に現れたひとつのツイートでした。もともとサイクリング軸のデッキには興味があり、週末のデッキを探していた僕はとりあえずこのデッキを回してみることにしました。
このマルドゥ型のリストを回した感想としては以下の2点。
この時点ではちょっと強いおもしろ系デッキぐらいで、正直大きめのトーナメントで使えるかというと微妙な状態でした。しかし、翌日のMagicfest Onlineのデイリー予選を5-1していたジェスカイ型がその評価を変えます。
1 《山》
4 《ラウグリンのトライオーム》
4 《神聖なる泉》
4 《聖なる鋳造所》
4 《蒸気孔》
-土地 (20)- 4 《繁栄の狐》
4 《ドラニスの癒し手》
4 《ドラニスの刺突者》
4 《雄々しい救出者》
-クリーチャー (16)-
こちらのリストは《不吉な海》と《型破りな協力》を採用していて、《天頂の閃光》に繋げる序盤の攻め手が《繁栄の狐》、《雄々しい救出者》だけだった懸念点を解消しているように感じました。
特に《型破りな協力》は素晴らしく、このカードによっていくつかのマッチアップでのプランも見えてきました。新しいデッキで対策されている可能性も低く、相手側の対戦経験も少ないことが予想されたのでジェスカイサイクリングでの出場を決めました。
ジェスカイサイクリング デッキリスト解説
現在のデッキリストはこちらです。ここからはこのリストの説明とマッチアップごとのサイドボーディング、ゲームプランについて書きます。
1 《山》
4 《ラウグリンのトライオーム》
4 《神聖なる泉》
4 《聖なる鋳造所》
4 《蒸気孔》
-土地 (20)- 4 《繁栄の狐》
4 《ドラニスの癒し手》
4 《ドラニスの刺突者》
4 《雄々しい救出者》
-クリーチャー (16)-
核となるカード
点の打点、面での展開、必殺技というこのデッキの3つの勝ち筋となるカードたちです。基本的には、《天頂の閃光》を除く3種のカードのうち1枚をプレイできることがキープ基準になります。
サイクリングカード
《ドラニスの癒し手》と《ドラニスの刺突者》の2種はクリーチャーなので上の分類のように見えますが、これらの能力でゲームに勝つことは少ないです。《夢の巣のルールス》でプレイしなおせるサブプランこそ重要ですが、基本的にはほかのサイクリングカードと変わらずサイクリングします。
ほかには《血の希求》と《驚くべき発育》の2種が4枚採用になっています。これらは通常プレイの確率が比較的高いので4枚です。前者は《繁栄の狐》さえいれば確定除去と大差ありません。後者は《轟音のクラリオン》や《焦熱の竜火》といった除去からクリーチャーを守ったり、最後の一押しにも貢献したりします。
《踏み穴のクレーター》は《夢の巣のルールス》で再利用できるので3枚採用しています。速攻とトランプル付与の両面で活躍してくれますし、特にサイクリングでのドローを封じられる《覆いを割く者、ナーセット》が出てくるマッチアップでは欠かせないカードです。
《霜帳の奇襲》と《願い与えの加護》が最も使用可能性の低いカードたちです。単純に重いこともありますが、有効な相手も限られています。
サイドカード
4枚 《焦熱の竜火》
ほかの候補としては《雷猛竜の襲撃》がありますが、スペルをサイクリングしないと序盤にプレイできない可能性があります。色を足している分ショックインでライフが削れるので、序盤を確実に捌くために《焦熱の竜火》を採用しています。
2枚 《丸焼き》
ジェスカイファイアーズ、ジェスカイウィノータ、バントヨーリオンといった有効なマッチアップが多いので新しく採用しました。カウンターされないので《覆いを割く者、ナーセット》+カウンターといった状況も覆せます。
2枚 《空の粉砕》
《轟音のクラリオン》や《一斉検挙》は、それぞれ当たる範囲が限られている部分が常に気になっていました。ファイヤーズデッキが事前の想定よりも厳しいマッチアップだったので、確実な全体除去のほうが有効と考え採用しました。
カウンター3種
これらを散らしてあるのは、相手によって有効なカウンターを選択できるようにするためです。このデッキはサイクリングにより狙ったカードを探しやすいので、的確にプレイできる機会が多くあります。また、重いデッキに対してはサイクリングで探す時間も作れるので、引けないリスクよりも上記のリターンを意識しています。
不採用になったサイド候補
《霊気の疾風》
ランプデッキが《空を放浪するもの、ヨーリオン》の構築制限で80枚になったので、カウンターしたいのに対象にできないカードも増えました。そのため、今は《軽蔑的な一撃》のほうが良いと考えています。
唯一《自然の怒りのタイタン、ウーロ》に触りにくくなることが懸念されますが、元々こちらの目指すゲームレンジでは活躍する時間がないはずなので大きな問題ではないでしょう。
《一斉検挙》
ジェスカイファイアーズの《砕骨の巨人》を倒せないことが致命的だと感じました。《砕骨の巨人》はカウンターされにくいので、サイド後結構な頻度で戦場に出てきます。ジェスカイファイアーズと対戦する機会はかなり多いため、より穴の少ない《空の粉砕》のほうが良いでしょう。
《轟音のクラリオン》
詳しくは後述しますが、ラクドスサクリファイス戦ではトークン戦略により戦闘ダメージを受けない展開を目指します。全体除去を入れたくないわけではありませんが、プランに噛み合わず対ラクドス専用カードになっている《轟音のクラリオン》より、ファイアーズデッキに有効な《空の粉砕》に変えることでサイドの枠を確保しました。
ゲームプラン
このデッキで最も大切なのは正しいゲームプランとマリガンです。デッキパワー自体はほかのデッキに劣るものの、正しく扱い最大値を出し続けることで高い勝率へとつながります。
基本となるゲームプラン
このデッキはアグロデッキです。様々な攻撃手段を持ち合わせており、長期戦を戦うことも可能ですが、それらはすべて序盤で相手を疲弊させていなければ機能しません。ですので、常に攻めて相手に対応を迫ることがこのデッキの本質となります。
従ってキープ基準は、上のリスト解説時に書いた3本の軸から《天頂の閃光》を除いた3種のカードでゲームを始められることです。《ドラニスの癒し手》や《ドラニスの刺突者》などでは相手へのプレッシャーが足りません。同様に大量のサイクリングと《天頂の閃光》といった手札も盤面へのプレッシャーが足りません。プレッシャーが足りない展開では相手に攻められたり、必殺技である《天頂の閃光》をケアする余裕を与えることになります。
必殺技である《天頂の閃光》以外に相手に傾いた天秤を戻すカードはありません。押されている展開では盤面に撃たざるを得ませんし、カウンターされてしまっては悲惨です。何度も書きますが常に攻めて相手に余裕を与えない展開を目指しましょう。盤面で押し込んでそれを対処されたところを《天頂の閃光》という展開が理想ですね!
マッチアップごとのサイドボーディング
ジェスカイファイアーズ
vs. ジェスカイファイアーズ
明確な役割がない《願い与えの加護》以外は少しずつ残しましょう。状況次第で手札に残しておきたいサイクリングカードが変わります。《繁栄の狐》には《時を解す者、テフェリー》、横並びには《轟音のクラリオン》とこちらのメインプランへの解答が存在する上に、《帰還した王、ケンリス》により《天頂の閃光》でのワンキルさえも防がれることがあります。
環境的には最も厳しいマッチアップです。しかし、相手の動き次第では噛み合って勝つことも十分にあるので諦めるような相性差ではありません。《繁栄の狐》が《轟音のクラリオン》圏外になれば対処手段は限られるので、それを目指しましょう。
ジェスカイルーカ
vs. ジェスカイルーカ
新たに出てきたアーキタイプなので対戦経験が少なく、プランなどが正しいかはわかりません。《覆いを割く者、ナーセット》や《空の粉砕》といったきついカードが入ってはいますが、相手の主な攻め手段の《裏切りの工作員》や《空を放浪するもの、ヨーリオン》は長いゲームで輝くカードであり、それらを強く使われる前に試合を決めることができるので有利だと感じています。《血の希求》を残すのは《銅纏いののけ者、ルーカ》の種をなくす意図があります。
バントヨーリオン
vs. バントヨーリオン
カウンターの数は4~6枚の間がいいと思います。ここでは最大の場合を書いていますが、このマッチアップでは序盤からしっかり攻めて相手の《空の粉砕》などの大きなアクションをカウンターで弾いてゴールのパターンが多く、カウンターを引きすぎて動きが重くなる展開はなるべく避けたいです。厳しめのマリガンで《繁栄の狐》か《雄々しい救出者》のいずれかでゲームを始めることができれば有利なマッチアップとなります。
ラクドスサクリファイス
vs. ラクドスサクリファイス
《波乱の悪魔》がカギになるマッチアップです。こちらの目指すプランはトークン戦術で盤面で貰うダメージをなくし、飛行トークンの攻撃と《天頂の閃光》で試合を決めます。《波乱の悪魔》がいてしまうとこのプランが成就しなくなるので、《夢の巣のルールス》型ではない限り常に《波乱の悪魔》を処理するためのカードが手札に残せるようにプレイします。
《踏み穴のクレーター》はトランプル付与で貫通できる可能性があるので基本的にはサイドアウトしません。見えてるカード次第では後手時は《空の粉砕》を入れる可能性もあります(その場合は《霜帳の奇襲》と《踏み穴のクレーター》を追加で1枚ずつ抜きましょう)。
ティムール再生
vs. ティムール再生
対戦相手のリストに大きく依存するのでサイドインアウトはその都度変えることになります。例えばメインから《夜群れの伏兵》などが採用されている場合は《軽蔑的な一撃》も採用するべきです。しかし、最近はどの型でもカウンターが多く除去が少ないので、《繁栄の狐》も横並びも有効な戦略です。時間を与えてしまうと、相手のカウンターも《発展/発破》も強く使わせてしまうことになるので序盤の3ターンが重要となります。
終わりに
トップ4で終えた本大会から1週間が経ち、環境は《空を放浪するもの、ヨーリオン》を中心に動き始めました。ヨーリオンデッキには強いはずなので、現在のメタでは前より立ち位置がよくなってる可能性もあります。想像よりも強い……かもしれないジェスカイサイクリングをぜひ一度手に取ってみてください。
今回は上手く環境初期の隙を突き望外の結果を残すことができました。これを機に今後も積極的に記事を書いていきたいと考えています。次の大型大会はMagicfest Online Season Finalです。ここで準優勝以上の成績を上げ、プレイヤーズツアーファイナルの権利を獲得することが目標です。
再び良い結果を出して記事でお会いできるように頑張ります。
宇都宮 巧 (Twitter)