Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/5/13)
はじめに
『イコリア:巨獣の棲処』のリミテッドの評価は目まぐるしく変わる!
始めたばかりのころは「サイクリング」がすべてだと思っていた(ライブラリーを掘り起こして見つけ出した《天頂の閃光》で大ダメージを与えて勝つ。斬新でイカした勝ち方だ)。
土地が12枚のデッキで戦えることに気づくまでにそう時間はかからなかった。1マナで「サイクリング」できるカードを10枚以上採用し、キーとなるアンコモンを何枚か搭載した形だ。ドラフトとは違うフォーマットをやっているんじゃないかと思うデッキができることもあった。
しかしそれが上手くいったのも数週間だけだった。多くのプレイヤーが最強の「サイクリング」デッキと対戦しないためにはヘイトドラフトが重要であると気づいたんだ。
最近はやや抑制されるようになり、「変容」の存在が大きくなってきている。全体としてバランスが取れてきている印象だ。
どんな色の組み合わせにも有効な指針がある。そのヒントを得たいなら、多色のアンコモンを見ればいい。そして、それらを意識したデッキを組むようにするんだ。だから、もし特定の色の組み合わせが空いていると思ったら、進むべきはその時点でわかることになる。あらゆる色の組み合わせで勝てるデッキを組み上げるのは難しくない(そう、白緑警戒でもね!)。
これに加えて、状況を選ぶカードには「サイクリング」がついているため、『イコリア:巨獣の棲処』は実に面白く、腕が試されるドラフト環境になっている。ここ最近のセットのなかでは間違いなく最高のセットだね。
完成度の高い「サイクリング」デッキがいまだにどの色の組み合わせよりも強いと思っているけど、その差は当初思っていたほどではなくなっている。これを踏まえたうえで、俺がとても評価している2つのアーキタイプを紹介しよう!
おすすめのアーキタイプの核となるカード
『イコリア:巨獣の棲処』ドラフトでもっと勝ちたい?だったら黒を使おう!
この記事では、黒のコモンを使った2つの戦略を解説する。どちらもこのドラフト環境でとても有効なものだ。
2つの戦略に共通する3枚のキーカード
《野生肉の密猟者》《頑丈なダンゴムシ》
まずは”レジスタンス“について話そう(俺の配信でつけられたニックネームだ)。《野生肉の密猟者》と《頑丈なダンゴムシ》のコンビは、デッキに長期戦の強さを与えてくれる。8マナ揃えば、毎ターンチャンプブロッカーを1体用意し、2点のライフを回復し、1ドローできるんだ。
マジックをプレイするときは、ゲームが長引いたときにどうなるかを考えなければならない。(アグロデッキやテンポデッキのように)いくつかの戦術はゲーム短期決着を目指す必要があり、ゲームを長引かせるわけにはいかない。
しかし今回のように”レジスタンス“が採用されていれば、ロングゲームになったときに勝てる見込みがある。傷を癒しながら、手札を増やす手段となるからだ。ゲームを長期戦にもつれ込ませ、ドラフトでピックした勝ち手段となるキーカード(ボムレアや強力なアンコモン)を掘り当て、勝負にけりをつける。これが理想の展開だ。
この戦術の魅力は、核となるカードがコモンであること。だからドラフトでとても揃えやすい。
《囁く兵団》
もうひとつのキーカードが《囁く兵団》だ。この小型クリーチャーは、ドラフトをするたびにどんどん評価が上がっている。4枚以上も《囁く兵団》が入っていれば、ゲームの最中にいずれそれらにたどり着くであろうことを前提にプレイすることができる。そのため、複数体の1/1を正しく活用できるようにデッキを組むことが大切だ。
《囁く兵団》は1体から複数体に分裂する強みがあるだけでなく、初手にあるときに理想的なマナカーブを描けるという魅力もある。2マナ域がなくとも、最序盤のターンのマナを無駄なく使えるんだ。そうすれば疑似的にマナカーブ通りに動いて相手の一歩先を行ける。
今回紹介する2つの戦略では、《囁く兵団》が4枚以上、《頑丈なダンゴムシ》が2~3枚、《野生肉の密猟者》が2~3枚あると理想的だ。
黒赤トークン
では、最近のお気に入りの戦略から解説していこう。黒赤トークンだ。
キーカード
この2枚は、攻撃せずとも勝てる可能性を与えてくれる。2枚が揃えば、クリーチャー1体が3点ダメージと1点回復になるんだ。こうなったら手が付けられないだろう。
クリーチャーを戦場に複数並べる手段は、《囁く兵団》以外にもコモンに2種用意されている。
この2枚は2体分のクリーチャーを展開できるだけなく、じわじわと相手の立場を悪くしていくだけの時間を稼ぎ出す。もちろん、この戦略を機能させるカード以外にも優秀な除去や呪文が必要だけど、それはドラフトデッキ全般に言えることだ。いいレアがパックから出たら採用すべきだし、《血液凝固》や《火の予言》はピックできただけデッキに入れてしまっていい。
参考として、黒赤トークンの構成をひとつ示しておこう。
サンプルデッキ
これまで解説してきたように、このデッキは1枚で複数体のクリーチャーを出すことを意識しながら(単体除去に強い戦略だ)、質のいい除去呪文や重要なエンチャントである《想起の拠点》を搭載してある。
そのほかのおすすめカード
黒赤トークン戦略にはもうひとつ魅力的なシナジーがある。そのカギを握るのが(ドラフトの終盤まで流れてきやすい)一見地味なこのクリーチャーだ。
何かしらのインスタント/ソーサリーを1ターン目に「サイクリング」し、2ターン目に《禁じられた友情》か《火の予言》を唱える。そして3ターン目に《呪文喰いクズリ》を展開し、4ターン目まで生き残っていれば二段攻撃を持つ3/2で攻撃できる可能性が生まれるんだ。二段攻撃が一度通れば、すでにライフ総量の約30%を削ることになる。かなり強い動きだね!
白黒人間
さて、次は白黒人間だ!
キーカード
白黒人間を組み上げるなら、《想起の拠点》と《聖域封鎖》は貴重な存在になる。この戦略においても《囁く兵団》は何枚あっても困らないし、《野生肉の密猟者》は数枚入れたい。《野生肉の密猟者》が複数あるときは《頑丈なダンゴムシ》も数枚採用しよう。
《将軍の執行官》に関しては語るまでもないだろう。優秀なマナレシオを持ち、終盤戦で頼りになり、《天頂の閃光》などに介入できる(《骨塚潜み》や《不断の絆》などを用いる相手には、墓地を追放する能力が刺さることもある)。
ではこのデッキはどうやって動くのだろう?黒赤トークンといくつか類似したプランを持っているが、このデッキは少々違う動きをする。常に攻撃するのが理想的なんだ。
このデッキのエンジンとなる優良コモンのなかには、卓に流れてきやすいものもある。
人間クリーチャーを横に並べられるデッキであれば、《防衛線の兵長》はとても強い。ときには《囁く兵団》で攻撃してリソース交換に差し出すのをこらえ、《防衛線の兵長》で+1/+0修正を与えてから攻撃した方がいい。
《日勤隊の指揮官》は《夜勤隊の猛士》と似た役割を担う。1マナ軽い《夜勤隊の猛士》の方が好ましいが、それや《囁く兵団》の数が不足しているときは《日勤隊の指揮官》に頼ってもいいだろう。懸念点は、4マナ域の数を増やしたくないということだ。4マナ域は《野生肉の密猟者》や《隠れ潜む名射手》などの競合相手がいる。《隠れ潜む名射手》は、邪魔なブロッカーが出てきても有効な攻撃を可能にしてくれる素晴らしいカードだ。
《揃った突撃》は状況が噛み合えば本当に強いカードで、必要がないときには2マナとちょっと重いが「サイクリング」してゲームを円滑に進められる。
そのほかのおすすめカード
《隠れ潜む名射手》がピックできなかったときは、このコンバットトリックが代替になりえる。特に《防衛線の兵長》で攻撃するときに効果的なカードで、《防衛線の兵長》を守ったうえで再び攻撃して効果を誘発させられる。
サンプルデッキ
白黒人間のサンプルデッキを2つほど紹介しよう。
「サイクリング」カードがデッキ内にあるときは、恐れずに土地の枚数を削ろう。この手のデッキは土地が3枚だけでも回る。仮に土地を17枚にしてしまうと、マナフラッドする機会が増えるし、ましてや《野生肉の密猟者》と《頑丈なダンゴムシ》のタッグや《将軍の執行官》が採用されていなければ、余ったマナの有効な使い道がない。
ここで注目したいのは《息詰まる噴煙》だ。このカードは《揃った突撃》と似た働きをする。強いときはとても強く、そうでないときは「サイクリング」してしまえばいい。このデッキは大量の小型クリーチャーを突撃させるため、《息詰まる噴煙》は一見誤った攻撃をとても効果的な攻撃へと変化させる力がある。
おわりに
今回紹介したデッキで俺は成功を収めることができた。カイル・ローズ/Kyle Roseには感謝したい。彼の配信を見て『イコリア:巨獣の棲処』リミテッドについて深く学ぶことができた。
この記事で開設した記事は気に入ってもらえたかな?試してもらえると嬉しい!
ボーナストラックとして、2つの戦略を掛け合わせた面白いデッキを書き残しておこう!