ジェスカイルーカで挑んだRed Bull Untapped IQ1~その時試合は動いた~

大森 健一朗

はじめに

みなさんこんにちは。晴れる屋大阪店スタッフの大森 健一朗と申します。

この度Red Bull Untapped International Qualifier 1へ参加し、準優勝という望外の結果で終えたためこの記事を執筆することになりました。最後までよろしくお願いします。

さて、今回入賞した大会ですが、その名前からわかる通り清涼飲料水「レッドブル」で知られるRed Bull GmbHがスポンサーとなった大会です。この大会を優勝するとRed Bull Untapped Finalsへの参加権利を獲得できるのですが、なんと予選大会から参加費無料なうえに上位入賞者には賞金が用意されています。

さらに開催時刻も注目です。日本時間の午後4時開始と比較的参加しやすくなっています。International Qualifierはまだいくつか開催が予定されていますので、タイミングが合えばまた参加したいと考えています!

使用デッキ

今回使用したデッキはジェスカイルーカです。同日にミシック予選も開催予定となっており、そこへ向けて普段からスタンダードをプレイしていました。ただ、さまざまなデッキをプレイしたのですが、どれも感触が良くありません。

今のスタンダードは使用可能なエキスパンションが7つにまで増えたこともありデッキの種類が多く、また、そのどれもが水準以上のデッキパワーを有しています。メタゲームの動きが早いこともあり、どのデッキを使っても勝ったり負けたりで勝率を伸ばすことができませんでした。

銅纏いののけ者、ルーカ裏切りの工作員空を放浪するもの、ヨーリオン

そんななかでもジェスカイルーカは相手に対応を迫り続ける“押し付け”の力が一番強いと感じていました。ほかに好みのデッキに出会えなかったこと、当日のメタゲームを読み切る自信もなかったことから、単純に地力が高いと感じたジェスカイルーカを選択することとなりました。

デッキリストに関してはいたって普通。呪文がすべて4枚ずつというのは少しテンプレートから外れているかもしれませんが、特に珍しいカードの採用などもありません。 1つこだわりがあった部分は《裏切りの工作員》を4枚採用することです。

裏切りの工作員

4

この当時は(そしておそらく今も)ほとんどのリストで3枚に抑えられる傾向にありました。大会中も何度かミラーマッチが発生したのですが、ほぼ全員が《裏切りの工作員》は3枚のデッキでした。

しかし《銅纏いののけ者、ルーカ》をより長く有効牌として機能させるため、また《裏切りの工作員》自体は手札からプレイしてもそれなりに強力なカードなので、4枚のリストがお気に入りです。実際この大会中、《裏切りの工作員》が3枚の同型と対戦しましたが、相手が弾切れを起こして《銅纏いののけ者、ルーカ》を有効に使えず勝利した場面もありました。

空の粉砕轟音のクラリオン

もう1点。メインボードの《空の粉砕》とサイドボードの《轟音のクラリオン》逆にしたほうが良かったと思います。今のスタンダードで全体除去が必要な相手には《轟音のクラリオン》でほぼ役割を果たすことが可能で、《空の粉砕》の除去範囲の広さよりも軽さのほうが重要であると感じます。

メレティス誕生茨の騎兵

《轟音のクラリオン》であれば自分の《メレティス誕生》が生み出す壁トークンを盤面に残したり、エレメンタルデッキ相手に《茨の騎兵》を巻き込まずに《枝葉族のドルイド》《発現する浅瀬》のみを除去できたりといった利点もあります。

サイドボーディング

僕が実際行っていたサイドボーディングですが、基本的には2パターンしかありません。

対コントロールデッキ

対 コントロールデッキ

Out

空の粉砕 空の粉砕 空の粉砕 空の粉砕
創案の火 創案の火 創案の火 創案の火

In

ドビンの拒否権 ドビンの拒否権 ドビンの拒否権 ドビンの拒否権
神秘の論争 神秘の論争 神秘の論争 神秘の論争
太陽の神のお告げサメ台風

主に同型やバントヨーリオン、ティムール再生、アゾリウスコントロールなどのミッドレンジ/コントロール相手のサイドボーディングです。お互いカウンターを構える重い展開になりがちで、《太陽の神のお告げ》《サメ台風》などインスタントで動けるカードが重要になります。

《空の粉砕》はクリーチャーを並べて攻められる展開にほぼならないため、《創案の火》は爆発力こそあるものの活躍のタイミングが限られ、終盤のトップデッキで弾丸となり得ないためサイドアウトします。《創案の火》はサイドインしたいカードと致命的に噛み合わないという事情もあります。

対アグロデッキ

対 アグロデッキ

Out 候補

エルズペス、死に打ち勝つ
サメ台風
時を解す者、テフェリー

覆いを割く者、ナーセット
海の神のお告げ
裏切りの工作員

In

ガラスの棺 ガラスの棺 ガラスの棺 ガラスの棺
轟音のクラリオン 轟音のクラリオン

主に赤単やサイクリング、ラクドス/ジャンドサクリファイスなどのアグロデッキ、軽いクリーチャーを多用するデッキ相手に取るサイドボーディングです。とにかく相手の攻撃を凌ぎ、《裏切りの工作員》連打で詰みの場を作ることを目指します。

エルズペス、死に打ち勝つサメ台風時を解す者、テフェリー

各種《夢の巣のルールス》デッキには《エルズペス、死に打ち勝つ》を、赤単オボシュやジャンドサクリファイスなど3マナ以上のパーマネントを使用してくる相手には《サメ台風》をサイドアウトしていました。 また、サクリファイス系のデッキには生贄システムによって[-3]能力が上手く機能しないため《時を解す者、テフェリー》を減らしたほうが良いと思います。

上記だけでは説明しきれていませんが、残った部分は正直どれをサイドアウトするべきか僕のなかでも定まっていません。先手後手や、その日の天気によって変えたりします。折衷案でいろいろ1枚ずつ抜いたりが多いかもしれません。

決勝戦を振り返って

デッキに関しては良く知られたデッキなうえに上使い込んだわけでもないので、僕が特別語れる部分はそれほどありません。なので、ここからは僕が実際に経験した話をしようと思います。

僕は決勝戦でいくつかの分岐点に立ちました。その際選択を誤りミスプレイとなってしまいましたが、そのときの思考をからめてなぜ起こってしまったのかを振り返っていきたいと思います。以下は決勝の相手Gobetti Enrico選手のデッキです。

ケース1

Game2の序盤、《時を解す者、テフェリー》を倒し損ねた場面です。

1/1のクリーチャー・トークン3体すべてで《時を解す者、テフェリー》へ攻撃すれば倒すことができたのですが、2体としてしまったために戦闘中に現れた2/2のサメ・トークンのブロックにより阻まれてしまいました。手札に2枚の《神秘の論争》を抱えていたのでここは確実に《時を解す者、テフェリー》を落とすべきだったのですが、この攻撃をしてしまった原因は1つ前のターンにあります

実は前のターンもほぼ同じ状況でした。対戦相手は《覆いを割く者、ナーセット》《サメ台風》を手札に加えてターンエンド。僕は3体のクリーチャー・トークンを忠誠値2の《時を解す者、テフェリー》に2体忠誠値1の《覆いを割く者、ナーセット》に1体と攻撃を割り振りました。

問題のシーンと同じく、すべてのクリーチャー・トークンを《時を解す者、テフェリー》へ割り振れば確実に倒すことができたうえに、このターンは《サメ台風》が相手の手札にあることは公開情報でした。つまり、相手が《サメ台風》を「サイクリング」すればテフェリーを守れることは明らかだったのです。しかし、ここで僕が考えていたことは 『《サメ台風》を持たれたままだとこの後やり辛いな、ブロックに《サメ台風》使ってくれないかな』でした。

神秘の論争時を解す者、テフェリー

対戦相手は前のターンに土地を置けず、5マナしかない状況。もしブロック時にこちらのトークンを一方的に討ち取れるサイズでサメ・トークンを呼び出してしまうと構えられるカウンターは《神秘の論争》のみ。そうなればこちらの《時を解す者、テフェリー》は土地を置いただけでカウンターをすり抜けることになります(《些細な盗み》によりバウンスされているため公開情報)。

この展開になると《時を解す者、テフェリー》の[-3]能力でサメを排除、《厚かましい借り手》の攻撃でテフェリーは落とされるでしょうが、相手に《サメ台風》を消費させた上でこちらは1ドローできている。《時を解す者、テフェリー》の定着が難しいこの盤面では良い使い方に思えます。

さて、問題の戦闘シーンに戻りますとここで相手の取れる選択肢は以下の3つ。

相手がどの選択肢を選んでもこちらにとって悪くないと考えた上で攻撃を行いました。相手は2番目を選択し問題の場面がやって来るのですが、1ターンの間に変化した状況がありました。対戦相手が土地を置いていたのです。

島ドビンの拒否権

これにより《ドビンの拒否権》を唱えるために必要な2マナを残しつつ、《サメ台風》をX=2で「サイクリング」できる状況となったのです。しかし前のターンに次のターンも同じ状況と思い込んでしまったため、『サメ・トークンが出てきても《ドビンの拒否権》を構える分には相打ちだから、次のターンの攻撃で《時を解す者、テフェリー》は落とせる』と決めつけてしまいました。

《時を解す者、テフェリー》へすべての攻撃を割り振らなかった結果、トークンが一方的に討ち取られこちらの《時を解す者、テフェリー》を安全にプレイできない最悪の状況ができあがってしまいました。結局ここでのミスが尾を引き、《神秘の論争》はプレイできる機会がないままこのゲームを落としてしまいました。

ケース2

Game3の中盤、お互いが《エルズペス、死に打ち勝つ》を出し合った後の場面です。

ここが一番勝敗に直結したミスです。端的にいいますと、考えることが多すぎて脳がキャパオーバーを起こしてしまいました。8枚の手札からこのターン自分が取るべき行動、対戦相手が次に取るであろう行動など、いろいろ考えた結果このターンは何もプレイしないことを選択したのです。

《銅纏いののけ者、ルーカ》をディスカードし、《サメ台風》を「サイクリング」することで相手のサメ・トークンを迎え撃つことにしました。これには《エルズペス、死に打ち勝つ》のIII章の対象を用意しつつ《覆いを割く者、ナーセット》を守り、相手が《時を解す者、テフェリー》の[-3]能力を使いにくくする意図があったのです。

時を解す者、テフェリー

しかしよくよく考えてみると《時を解す者、テフェリー》をプレイして[-3]能力で相手のサメ・トークンをバウンスすればプレインズウォーカーを戦場に残した上で上記の意図を達成できたのです。さらに相手の戦闘中に《サメ台風》を「サイクリング」する必要がなくなり、ターン終了時に《銅纏いののけ者、ルーカ》の[-2]能力用の種も用意することができます。

《エルズペス、死に打ち勝つ》のIII章を有効に使うためにディスカードをすると考えたところまでは良かったのですが、そのために何もプレイしないという選択は間違いでした。《時を解す者、テフェリー》をプレイしても[-3]能力を使用すれば手札の枚数が変わらずディスカードできるというところまで思考が追いつきませんでした。

《サメ台風》を持っていたため、『何もせずディスカード=このターンノーアクション』となる訳ではなかったことも思考を止めてしまった要因の一つです。また、捨てるカードに《時を解す者、テフェリー》を選択していても対戦相手に不自由なプレイを強いることができたと思います。ここはいくつか選択肢がありましたが、最悪に近いものを選んでしまったと感じています。ここで良いプレイができていれば、ゲームの結果は変わってたと思えるほどに影響があった場面でした。

ケース3

Game3の中盤、《エルズペス、死に打ち勝つ》のII章を失念してしまいました。

ケース2の次のターンです。自身の《エルズペス、死に打ち勝つ》のII章は考慮に入れて相手の行動を考えていたのですが、なぜか相手のII章はまったく頭にありませんでした。《時を解す者、テフェリー》を持った瞬間に、本来のマナコスト以上の枚数の土地が光り、思わず笑ってしまいました。

ケース4

Game3の終盤、 《裏切りの工作員》がサメ・トークンに討ち取られた場面です。

壁・トークンを《時を解す者、テフェリー》の[-3]能力でバウンスし、《裏切りの工作員》で対戦相手のプレインズウォーカーへ攻撃したところ、しっかりと《サメ台風》を合わせられてしまいました。これによりせっかく《空を放浪するもの、ヨーリオン》を安全にプレイできるタイミングであったにも関わらず、《裏切りの工作員》を失ってしまいます

このミスが起こった一番の要因は時間です。まずこのターンの開始時点では自分は劣勢に立たされているという認識でした。対戦相手は《時を解す者、テフェリー》をコントロールしている上に《厚かましい借り手》で一方的にクロックを刻んでおり、手札も6枚と潤沢(+“進行中の出来事”ゾーンにも《厚かましい借り手》)。そのため『少し無茶な攻めをして、こちらの都合の良い展開にならないと勝てなそうだな』と感じていました。

そうした意識下で考えた結果、《海の神のお告げ》《時を解す者、テフェリー》を引き入れこれが通ったところまでは良かったのですが、この時点で持ち時間のストックは使い切ってしまいターンの残り時間が少ないことを示す導火線エフェクトが出ている状態

もし時間内にプレイできなければその時点でターン終了となってしまうため最優先で思いつくままプレイを選択してしまい、攻撃せず《空を放浪するもの、ヨーリオン》《裏切りの工作員》を「明滅」した場合どのような展開になるかを考え切れませんでした。

空を放浪するもの、ヨーリオン時を解す者、テフェリー

もし攻撃せずに《空を放浪するもの、ヨーリオン》をキャストしていた場合、《裏切りの工作員》で奪う対象は《時を解す者、テフェリー》になるでしょう。対戦相手が取れる最大限のアクションは《サメ台風》をX=3で「サイクリング」しかありません。《時を解す者、テフェリー》は[+1]能力を使用しておけば、相手が干渉手段をもっていない限り《空を放浪するもの、ヨーリオン》がブロッカーとして機能するため1ターンでは落としきれません。

改めて書き出してみればそれ程悪くない展開に思えます。“こちらが劣勢”という前提は、実は《時を解す者、テフェリー》が通った時点で崩れていたのですが、状況を見直す余裕は失われていたため少し無茶なプレイを選択してしまいました。結果として《裏切りの工作員》を失ったばかりでなく、《時を解す者、テフェリー》も使い捨てせざるを得ないプレイとなってしまいました。時間がなかったとはいえ、もう少し冷静に考えるべきだったと思います。

おわりに

詳しい説明は以上になりますが、決勝戦の動画を見返したところほかにもいくつか怪しい場面が見つかりました。逆に対戦相手のGobetti Enrico選手は少なくともこちらからわかるような明らかなミスはなく、上手くプレイしていたように思います。負けてしまったことは悔しいですが、自分の力不足だと理解して次は勝てるよう、同じミスをしないように精進していきたいと思います。

長々と書いてしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

また機会があればお会いしましょう。それでは!

大森 健一朗

この記事内で掲載されたカード

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大森 健一朗 関西を中心に活動し、これまでいくどとなくプロツアー/グランプリへと参加を果たしてきたプレイヤー。普段は晴れる屋大阪店においてスタッフとして勤務する傍ら、カバレージライターもこなすなどマルチなタレントを見せる。グランプリ・神戸2011で自身初のトップ8入賞を果たし、コツコツと研鑽を積んだ結果2020年に入り大ブレイク。プレイヤーズツアー・名古屋2020では9位入賞、そしてRed Bull Untapped International Qualifier 1では準優勝を果たしている。 大森 健一朗の記事はこちら