◆ティムール再生、再び
お疲れ様です。てんさいチンパンジー(@manohito_masuda)です。
先日、「ティムール再生 パーフェクトガイド」を寄稿させていただいてから早一月経ちました。「次に記事を書けるのはいつになるのか……」と思っていましたが、意外にもその機会は早く訪れました。この貴重な機会に感謝しつつ、また最後までお付き合いいただければ幸いです。
本記事は先週末に開催されたプレイヤーズツアー・オンライン3に参加し、その際に使用した「ティムール再生」の解説記事になります。私自身、ティムール再生を使って直前予選を突破し、勢いそのままに本イベントに参加しましたが、結果は8-7と奮わず……が、共に調整し、リストをシェアした「平山 怜(東京)」(@sannbaix3)が見事TOP8進出&準優勝という好成績でフィニッシュ!
【#PTArena3】この後日本語生放送に、オンライン3準優勝者である平山怜さんをお呼びいたします!ぜひ皆で彼の健闘を讃えましょう!
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) June 21, 2020
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彼自身から公式生放送で「デッキについては彼の記事を読んで下さい」と指名を受けたこともあり、折角なので再びティムール再生について書かせていただく運びとなりました。
今回は本イベントで使用したティムール再生のリストを、どういったメタゲーム予想・構築思想から仕上げていったのかを掘り下げていきます。「ティムール再生がどういったデッキなのか?」といった基本的な内容については前回の記事を参照して頂けると幸いです。
- 2020/5/22
- 増田 勝仁のティムール再生 パーフェクトガイド ~土地を起こし続けたその先に~
◆メタゲーム予想
本項ではメタゲーム予想について解説します。前週のプレイヤーズツアー・オンライン1&2の結果を受けてのメタゲーム変化の予想を立てました。
1. ティムール再生の増加
プレイヤーズツアー・オンライン1&2では圧倒的な成績をおさめたティムール再生ですが、事前のメタゲーム予想の段階からある程度はトップシェアになると予想されていました。にもかかわらず、その両方で優勝したという事実からも分かる通り、間違いなく現環境のベストデッキです。そのため、多少の構成の変化はあれど、使用デッキを悩んでいる人は間違いなくティムール再生を選ぶ=使用者が増えると予想しました。
2. バントランプの増加
ティムール再生に対して《時を解す者、テフェリー》《ドビンの拒否権》で強く出られるとされているバントランプは、ティムール再生に合わせて増加すると予想しました。
3. ジャンドサクリファイスの減少
ティムール再生が勝った直後に、わざわざティムール再生に弱いジャンドサクリファイスを選ぶ理由はありません。すでに使い込んでいた人が選ぶ程度で、使うデッキを決めかねているような人が選ぶとは思えず、使用率は下がるだろうと予想しました。
4. そのほかのデッキは増えても強く意識するほどではない
ラクドス騎士や緑単アグロといったティムール再生へのアンチとして話題にはなっていたデッキについては、そこまで脅威と感じていませんでした。やはり単純なデッキの強さはティムール再生、バントランプ、ジャンドサクリファイスの3強であることは明白で、ラウンド数が進めば進むほど淘汰されていくだろうと思い、強く意識するほどではないという判断です。
実際にはティムール再生のシェア率はあまり変わらず、代わりに対抗馬のバントランプが同等のシェア率になりました。ジャンドサクリファイスは予想通り使用者を大きく減らし、実質ティムール再生対バントランプという構図に。
唯一、大穴だったのが「オルゾフヨーリオン」です。MPL/MRL勢がこぞって持ち込んだ代物で、これについては全く意識していませんでした。しかし、1:1交換を繰り返すオルゾフヨーリオンはリソース攻めに耐性のあるティムール再生に不利ということもあり、これもまた不幸中の幸いでした。
結果、(一部の予想は外したものの)構築の思想から大きく外した部分もなく、おおむね予想した通りのメタゲームにアジャストした満足のいくリストに仕上がりました。
2 《森》
1 《山》
2 《寓話の小道》
4 《ケトリアのトライオーム》
4 《繁殖池》
4 《蒸気孔》
4 《踏み鳴らされる地》
3 《ヴァントレス城》
2 《爆発域》
-土地 (28)- 2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (2)-
◆カード解説
本項では本リストでこだわったポイントに絞って解説します。主要なカードの採用理由については割愛します。
《厚かましい借り手》の不採用
今回のリストではメイン・サイドともに採用を見送りました。
バウンスによってサメ・トークンを対処した上で《厚かましい借り手》本体が残るため、一見すると《サメ台風》への対処として優れているように見えます。しかし、バウンスとサメ・トークンで交換した場合、それぞれ残るのが《厚かましい借り手》側が3/1飛行クリーチャーに対して、《サメ台風》側は1ドローです。
どちらに価値があるかはデッキ次第だとは思いますが、少なくとも私はティムール再生における3/1飛行クリーチャーに価値を感じませんでした。そのため、《厚かましい借り手》での対処は(実際のカードカウントは別として)「アドバンテージ面で損をしている」という印象を受けました。《朽ちゆくレギサウルス》をバウンスした後に残る3/1飛行の価値の低さにガッカリすることも多かったです。
ティムール再生ミラーで《サメ台風》《終局の始まり》の差で負けると、「《厚かましい借り手》があればもしかしたら……」という感想に陥りやすいです。しかし、《サメ台風》《終局の始まり》を巡る戦いは、こちらも《サメ台風》《終局の始まり》を同じだけ引いて初めて五分で、それ以外ではどう対処しても不利というのが私の考えです。なので、《選択》などを駆使して相手よりも《サメ台風》《終局の始まり》を引き込みやすい構築・プレイを意識するべきとして、対策については割り切りました。
《霊気の疾風》のフル投入
ティムール再生とバントランプが増加・ジャンドサクリファイスが減少するという予測を立てたため、メインには《焦熱の竜火》を採用せず、代わりに《霊気の疾風》をフル投入しました。《霊気の疾風》はティムール再生ミラーにおいて強烈な影響力を誇る1枚で、特にメイン戦はこれの有無で試合が決まると言っても過言ではありません。
最近はメインでの採用も珍しくなくなった《夜群れの伏兵》や、ゲームを動かす《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《荒野の再生》に対して、わずか2マナでスタック上・着地後問わず対処可能な最強の除去かつ打ち消しです。《霊気の疾風》を引いている側は相手の脅威に対処できる=構えに強い点はもちろんのこと、仕掛けが失敗した際のリスクも低いため、攻め・守りのタイミングを自分の都合で選ぶことができます。
ほかにもジャンドサクリファイスの《フェイに呪われた王、コルヴォルド》やバントランプの《世界を揺るがす者、ニッサ》といった、ティムール再生以外のマッチアップにおいてもゲームを動かす強力なパーマネントに当たるため、ほとんど腐ることがないというのもポイントです。
《夜群れの伏兵》の削減
《夜群れの伏兵》はティムール再生のサイドの鉄板として、2枚以上されるのが主流となっています。ですが、今回使用したリストでは1枚のみの採用で、ここが今回使用したリストと一般的なリストとの大きな違いです。理由は以下の4つです。
1. 妨害を受けやすい
仕掛けを《サメ台風》《終局の始まり》に絞ることで、《エルズペス、死に打ち勝つ》《霊気の疾風》といった妨害を無視しながらエンドに仕掛けられるのに対し、《夜群れの伏兵》はこれらの妨害に当たってしまいます。特に《霊気の疾風》は採用枚数も増加傾向にあり、いくら瞬速持ちとはいえインスタントタイミングで2マナとトレードされるのは好ましくありません。時には必要以上に打ち消しを使わなければならず、結果として相手の仕掛けが通りやすくなってしまうリスクがあります。
2. 賞味期限が短い
4ターン目に繰り出される《夜群れの伏兵》からの《荒野の再生》という動きは、一瞬でゲームを決めうる力を持っています。しかし、ターンが伸びれば伸びるほど、《夜群れの伏兵》の価値は下がっていきます。
6マナを過ぎると《終局の始まり》《サメ台風》のほうが強力ですし(マナコストが違うので当然といえば当然ですが……)、お互いに土地が伸び始めると相手のエンドに《夜群れの伏兵》→返しに《荒野の再生》といった仕掛けも両方が弾かれるようになるので、後半にはあまり引きたくありません。
《薬術師の眼識》《ヴァントレス城》といった手札を整える手段が4~5マナ域に寄っているのもイマイチで、それらに頼れない=素引きで揃えなければならないにもかかわらず、賞味期限が短いという矛盾は無視できませんでした。
3. 色拘束が厳しい
対アグロはサイド後に《砕骨の巨人》《焦熱の竜火》を追加する関係で、赤マナを優先して並べます。対コントロールはサイド後に《否認》《軽蔑的な一撃》《神秘の論争》を構える関係で、青マナを優先して並べます。上記の色マナを揃えた上で緑マナ×2を用意するというのは、想像以上に厳しい制約なのです。2つ目の理由でも述べた通り、《夜群れの伏兵》は賞味期限の短いカードなので、可能な限り早めに緑マナ×2を用意したいですが、そのせいでほかの動きに影響が出てしまっては本末転倒です。
4. 兼ね合いが悪い
《夜群れの伏兵》を強く使うためにも、《荒野の再生》は必須です。強力なメインのアクションがあるからこそ、相手のエンドから仕掛ける価値があります。《夜群れの伏兵》は《荒野の再生》を通すための囮として捉えるべきですが、《夜群れの伏兵》と《荒野の再生》を大量に残すと4マナ域がタワーになってしまい、片側が重なったときの動きづらさが気になります。
また、《夜群れの伏兵》はアグロに対して強力なことは間違いないですが、メインで動く《自然の怒りのタイタン、ウーロ》との兼ね合いも悪く、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》もまたアグロに強いカードなので、わざわざアグロ用に《夜群れの伏兵》を取る理由も希薄だと感じました。
以上の理由から、早いターンに完璧に揃った手札のときにしか強くなく、総じてオーバーキルなカードという印象です。ハマったときには圧倒的に勝つので強い印象が残りやすいですが、それ以上に弱い(影響のない)ゲームが気になりました。
しかし、《夜群れの伏兵》は《思考のひずみ》対策としては非常に優秀です。特にスゥルタイランプのように、ティムール再生に相性の悪いデッキが《思考のひずみ》にオールインしてくるプランに強いです。また、0枚だとそれはそれでナメられてしまう(《霊気の疾風》を全抜きされるなど)ので、「相手のサイドボーディングを楽にさせない」という意図もあって1枚のみの採用を決めました。
《砕骨の巨人》
元々は《炎の一掃》が採用されていた枠で、その枠が丸々《砕骨の巨人》に差し代わりました。赤単オボシュ、マルドゥ騎士のように小粒クリーチャーを大量に展開するデッキには《炎の一掃》の方が優れていますが、現在のアグロは緑単アグロ、赤単アグロ、ラクドス騎士のようにある程度マナカーブ/クリーチャーの質を意識したタイプが主流です。これらのデッキに対して《炎の一掃》はほぼ2マナ以下のクリーチャーにしか当たらないため、とても有効とは言えません。
《砕骨の巨人》は1枚で2マナ域+3マナ域のカードと1:2交換が可能で、「効く相手にはとことん効く」という理想的なサイドカードです。緑単アグロの《探索する獣》《変容するケラトプス》には《砕骨の巨人》本体のサイズが有効なのはもちろんのこと、ジャンドサクリファイス、ラクドス騎士などで採用率の上がった《朽ちゆくレギサウルス》についても《焦熱の竜火》と合わせて合計で7枚取ることで、どの2枚の組み合わせ(《焦熱の竜火》+《焦熱の竜火》、《焦熱の竜火》+《砕骨の巨人》、《砕骨の巨人》+《砕骨の巨人》)で引いても対処できます。
《軽蔑的な一撃》
リスト公開時に強力な打ち消しで、特に《夜群れの伏兵》に寄った現在のティムール再生のプランにマッチしたカードです。2マナで《夜群れの伏兵》を対処可能なため、同じく2マナで対処の可能な《霊気の疾風》と合わせて合計6枚体制を取ることで、相手の《夜群れの伏兵》プランを逆手に取ります。《中和》《悪意ある妨害》《タッサの介入》といった3マナ以上の打ち消しを一切採用していないため、4ターン目の《夜群れの伏兵》→《荒野の再生》という最強の仕掛けにも対応できます。
《軽蔑的な一撃》は当たる範囲が限られている代わりに、当たる場合は必ず有利トレードになるという諸刃の剣です。リスト公開制の場合はそもそもサイドインしないなどで対応できますが、非公開制の場合はそうもいきません。その場合は、より当たる範囲の広い《物語の終わり》や追加の《否認》に差し代えて下さい。
◆マッチアップガイド&サイドボーディング
本項では主要なマッチアップごとにサイドボーディングを解説します。本リストがリスト公開制を前提としているため、サイドボーディングも「相手のリストを把握している」前提になります。ラダー向きではないことを最初に断っておきます。ご了承ください。
ティムール再生
vs. 《夜群れの伏兵》あり型の場合
vs. 《夜群れの伏兵》なし型の場合
メイン戦:五分
メイン戦は茶番です。打ち消しも少なく、4ターン目の《荒野の再生》が肯定されやすく、あまり構築やプレイによる差が出ません……というのが元の除去が多めだったころのリストの話です。
最近のティムール再生はメインから《神秘の論争》《霊気の疾風》《否認》といった打ち消しが多く採用されており、《夜群れの伏兵》のような仕掛けが追加されているタイプもあります。つまり、メイン戦からサイド後のような戦い方が想定されます。
それでもサイド後に比べると打ち消しの枚数は少なく、《サメ台風》のサメ・トークンだけで殴りきる展開よりも《荒野の再生》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》のどちらかを通して制圧する展開のほうが多いです。なので、基本的には打ち消しで相手の脅威を弾きつつ、《荒野の再生》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を狙っていきます。
「いつ仕掛けるか」「どう仕掛けるか」はリストや展開次第で一概に言えませんが、仕掛けるときは必ず”仕掛けが成功した後”のことも考えて下さい。《荒野の再生》を通すために《発展/発破》を使ってしまい、戦場に《ヴァントレス城》もないのであれば《荒野の再生》を通した意味がありません。《荒野の再生》を通すことは”目的”ではなく”手段”です。それを見誤らないように注意して下さい。
サイド後:五分
お互いに打ち消しが追加され、相手のターン終了時以外に動けない構え合いが長いターン続きます。《薬術師の眼識》《ヴァントレス城》で土地を集めつつ《サメ台風》《終局の始まり》でプレッシャーを掛けてていき、相手が先に動かざる得ない状況を作ったほうがそのまま勝利する展開が多いです。
プレッシャーを掛けている場合はそのリードを守るために相手に《サメ台風》《終局の始まり》を有効に使わせないように動き(同値の《サメ台風》を切らせないようにメインで少し動くなど)、プレッシャーを掛け続けることを意識します。逆に押されている場合には構え合っても不利なため、相手が打ち消しを持っていないことを祈って《荒野の再生》などで無理やり仕掛けるといった割り切りも必要です。
プレイヤーズツアー・オンライン3にてTOP8に入賞したLogan Nettles(Jaberwocki)のリストもまた、今回解説したリスト同様に《夜群れの伏兵》《厚かましい借り手》に頼らないリストであり、同じ構築思想であったことが伺えます。この型は序盤の《霊気の疾風》を腐らせることで潜在的なアドバンテージを取るため、《軽蔑的な一撃》を入れすぎず《霊気の疾風》も減らします。
ジャンドサクリファイス
vs. 《朽ちゆくレギサウルス》型の場合
vs. 《燃えがら蔦》《強迫》《苦悶の悔恨》型の場合
メイン戦:微有利
メイン戦は基本的に手札破壊がないため、《荒野の再生》+《発展/発破》の通りがよいです。逆に《忘れられた神々の僧侶》《初子さらい》の存在から《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は信頼度が低く、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》による制圧は狙わないほうがよいです。そのため、《荒野の再生》《発展/発破》を求めて積極的にマリガンします。
サイド後:五分
《夜群れの伏兵》を採用しないことによる弊害はこのマッチアップの《朽ちゆくレギサウルス》型の場合のみです。プレイヤーズツアー・オンライン3は最後の最後でこの部分が響いて敗北しましたが、ジャンドサクリファイス側が必ずしもこのプランを取っているとは限らないため、練習段階からもこれについては割り切っていました。
《燃えがら蔦》《強迫》《苦悶の悔恨》のようなリソースの交換を意識したサイドの場合は、トップしたときに嬉しい《薬術師の眼識》も追加します。相手の手札破壊、置き物破壊(《燃えがら蔦》《強迫》《苦悶の悔恨》)に対してこちらは打ち消しと除去(《神秘の論争》《焦熱の竜火》)で付き合い、リソースが枯れたところを《薬術師の眼識》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《発展/発破》で差をつける展開をイメージしています。
バントランプ
vs. バントランプ
メイン戦:有利
《焦熱の竜火》を採用しないことで、メイン戦からバントランプに強く出られます。《ドビンの拒否権》がなければ《荒野の再生》を通すのは容易で、《神秘の論争》《霊気の疾風》《否認》といった大量のバックアップが相手の脅威を弾きます。
基本的にバントランプ側はメインでしか動けないため、こちらの思う展開に持ち込みやすいです。仕掛けも《時を解す者、テフェリー》以外は重い・緑のカードなため(《霊気の疾風》に当たる)、かなり都合よく揃わない限りはメイン戦を落とすことはありません。
サイド後:有利
相手のリストに合わせて微調整が必要ですが、大筋は変わりません。《世界を揺るがす者、ニッサ》《伝承の収集者、タミヨウ》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》のような強力な緑のカードが多く採用されているのであれば《霊気の疾風》は多めに残しますし、《ドビンの拒否権》《萎れ》が多めに採用されているのであれば《夜群れの伏兵》の通りがよいので追加します。
基本はティムール再生ミラーと同じで、脅威を《神秘の論争》《否認》などで弾きつつ、《サメ台風》《終局の始まり》でプレッシャーを掛けていきます。サイド後には《ドビンの拒否権》が追加されるため、積極的に《荒野の再生》を設置はせず、相手の《ハイドロイド混成体》《エルズペス、死に打ち勝つ》のようなタップアウトに合わせて打ち消し→返しに設置のカウンターを狙います。
逆にこちらのタップアウトは《時を解す者、テフェリー》《覆いを割く者、ナーセット》のような致命的なパーマネント通してしまう隙に繋がるため、メインでしか動けない《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《荒野の再生》は減らします。
緑単アグロ
vs. 緑単アグロ
メイン戦:五分
《霊気の疾風》をフル搭載した恩恵で、本来は苦手な部類である緑単アグロに対しても耐性が付いています。先手であれば《水晶壊し》のターンに《神秘の論争》が当たるようになるため、より余裕を持って戦えます。とはいえ、メインには《生皮収集家》→《樹皮革のトロール》/《ヘンジの槌、ファレン卿》のようなロケットスタートに対処しきるほどの除去はないため、早々に《荒野の再生》の設置→《発展/発破》による制圧を狙います。この辺りは対アグロ共通の考え方になります。
サイド後:有利
《砕骨の巨人》《焦熱の竜火》が加わり、雑にクリーチャーを出されるだけでは負けにくくなります。クリーチャーを除去する際には《巨大化》系の呪文で回避されないよう、できるだけタップアウト時か自分のターン中で対処することを意識します。クリーチャーと除去とでトレードを繰り返していれば、最終的に《自然の怒りのタイタン、ウーロ》に繋がる分だけこちらが有利です。
スゥルタイランプ
vs. スゥルタイランプ
メイン戦:有利
重くて《時を解す者、テフェリー》の入っていないデッキは打ち消しにハマりやすく、総じて有利です。
サイド後:有利
《思考のひずみ》のクリーンヒット以外に負けることはないので、そこだけ意識して《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《夜群れの伏兵》のようなクリーチャーを軸に戦います。《成長のらせん》《思考消去》に積極に打ち消しを当てる、《荒野の再生》を通しておくなど、とにかく《思考のひずみ》を強く使われることだけを避けていれば負けることはありません。
《軽蔑的な一撃》は相手のリストに《茨の騎兵》が入っていた場合のみ検討しますが、それ以外は《否認》の劣化になるのでサイドインはしないほうが無難です。この辺りのin/outの採択を柔軟に変更できるのがリスト公開制のメリットです(その恩恵を受けているのは相手も同様ですが……)。
ラクドス騎士
vs. ラクドス騎士
メイン戦:微不利
メイン戦は除去が少なく、《神秘の論争》《否認》といった当たりどころが限られたカードが多いため、意志のないキープをするとあっさり負けてしまいます。手札の枚数よりも質を意識し、《荒野の再生》《発展/発破》を探して積極的にマリガンしたほうがよいです。この組み合わせさえ揃えばダブルマリガンくらいであればすぐに取り戻せます。
サイド後:微有利
すでに解説済みの通り、対アグロには《砕骨の巨人》が非常に強力です。これ1枚で軽いクリーチャーに殴りきられて負ける……という展開が格段に減ります。《朽ちゆくレギサウルス》に対しては《サメ台風》から生まれるサメ・トークンによるチャンプブロックも有効です。相手がトップした《エンバレスの宝剣》以外では勝てないような状況を作った上で、《エンバレスの宝剣》に対しては《霊気の疾風》で蓋をする展開を目指します。
ラクドスサクリファイス
vs. ラクドスサクリファイス
メイン戦:微有利
《焦熱の竜火》を抜くことで確かに対アグロへの耐性は落ちましたが、代わりに採用された《霊気の疾風》は、致命傷になる《波乱の悪魔》に触れる点で全く劣っていません。むしろ序盤に触れず、4/4以上に育った《戦慄衆の解体者》にも触れたり、《初子さらい》を弾いたりと異なる役割も持っているため、一概に劣化というわけではありません。同じカラーリングのアグロであるラクドス騎士に比べてクロックも低く、《朽ちゆくレギサウルス》《騒乱の落とし子》といったインパクトのあるクリーチャーも少ないため、相性に差がある印象です。
サイド後:有利
やはりこのマッチアップでも《砕骨の巨人》が強力で、ほぼ確実に1:2交換が可能です。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《夜群れの伏兵》といった単体でインパクトのあるカードも増え、それに対して相手が除去を追加してくると、今度は序盤にクロックが掛からないのでライフが詰まらない……という裏目もあります。サイド後は総じてティムール再生側に主導権があるので有利という認識です。
アゾリウスコントロール
vs. アゾリウスコントロール
メイン戦:不利
《霊気の疾風》を大量に採用した弊害として、アゾリウスコントロールとのメイン戦は絶望的です。対アグロと異なり、早期の《荒野の再生》+《発展/発破》プランも通用しないため、相手の不運と自分が《神秘の論争》を引けることを祈ります。
サイド後:五分
《霊気の疾風》が抜け、《終局の始まり》《薬術師の眼識》といったインパクトのあるカードに差し代わるので、メイン戦とは比べ物にならないくらい楽に戦えるようになります。対コントロールはサイド後に構え合いになるため、メインでしか動けない《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は弱体化しますが、追加の《成長のらせん》というよりは終盤に再利用可能なリソース源として使うため1枚は残します。
赤単アグロ
vs. 赤単アグロ
メイン戦:不利
《神秘の論争》《否認》《サメ台風》のようなサイドアウト候補が大量に存在するため、まずはこれらをマリガンで戻すところからスタートします。こちらのコンボが決まるターンよりも手前にクリーチャーが並ぶため、《荒野の再生》《発展/発破》のコンボを揃えるだけでは勝てません。《霊気の疾風》《爆発域》のように戦場に触れるカードも必須ということで、非常に厳しい戦いになります。先手でようやく微不利、後手では試合にならないという認識です。
サイド後:有利
《神秘の論争》《否認》といった対コントロール用のカードが《砕骨の巨人》《焦熱の竜火》になり、序盤を捌くだけの時間を稼げるようになります。時間さえ稼げれば自然と墓地が貯まるので、あとは《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の「脱出」を目指すのみです。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は対アグロにおいては《荒野の再生》+《発展/発破》のコンボよりも楽なフィニッシャーですので、《選択》などで積極的に探します。
オルゾフヨーリオン
vs. オルゾフヨーリオン
メイン戦:微有利
オルゾフヨーリオンは《泥棒ネズミ》《ヤロクの沼潜み》といった手札を攻めるクリーチャーを初動に、《魅力的な王子》《予言された壊滅》《空を放浪するもの、ヨーリオン》といった相性のよいカードと組み合わせてリソースを稼ぐコントロールデッキです。
性質上、大量の土地と強力なパーマネントの両方がバランスよく必要なバントランプにはこの戦略がハマりやすいですが、ティムール再生にとってはそこまで厳しいものではありません。ティムール再生は《荒野の再生》さえ設置できれば土地は4枚でも十分で、手札破壊によって土地を捨てることにバントランプほどのデメリットがありません。
《霊気の疾風》《神秘の論争》といった一見当たりどころのない色対策カードも、前者は手札破壊で捨てやすく、後者は《空を放浪するもの、ヨーリオン》に当たるということで、多少引く分にはそこまで苦しさはありません。
サイド後:有利
メインの相性をそのままに、《霊気の疾風》が《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《薬術師の眼識》といったリソース源に代わるので、より手札破壊に耐性が付きます。《砕骨の巨人》をサイドインしないため、《朽ちゆくレギサウルス》による完走が唯一懸念になりますが、《エンバレスの宝剣》のようなバックアップがあるわけではないので、《サメ台風》《夜群れの伏兵》で十分対処可能です。時間を稼いだ後であれば、《荒野の再生》を狙ってきた《屈辱》を《発展/発破》でコピーすることで除去できます。
◆おまけ:『基本セット2021』によるアップデート
最後に『基本セット2021』からティムール再生でも使えそうなカードをピックアップしてみました。
《非実体化》
《サメ台風》のサメ・トークンの対処として使えます。それだけであれば《厚かましい借り手》のほうが優れていますが、《非実体化》は呪文をスタック上から戻すこともできます。これは打ち消しではないため、《思考のひずみ》を対象に取ることができるのがポイントです。一時しのぎにしかなりませんが、稼いだ時間で手札の呪文を消化できれば《思考のひずみ》の威力も落ちます。
《魂焦がし》
ティムール再生は除去を《焦熱の竜火》《霊気の疾風》に頼っているため、赤/緑でないタフネス4以上のクリーチャーの対処には手を焼いていました。 《魂焦がし》であれば、これまで対処の難しかった《恋煩いの野獣》《狩り立てられた悪夢》《石とぐろの海蛇》(X=5以下)クラスのタフネス5までのクリーチャーを対処できるようになりました。
加えて、《溶岩コイル》と異なり、《探索する獣》《変容するケラトプス》に一発殴られてしまうデメリットもありません。また、オマケのようにプレインズウォーカーにも当たるため、《時を解す者、テフェリー》に対して強く出られるのも好印象です。当たる範囲が広く、メインから採用しうるスペックだと思います。
《漁る軟泥》
サイド後のクリーチャープランとしての活躍が期待できます。緑マナの確保が難点なのと、《霊気の疾風》に当たってしまう色なのがマイナスではありますが……。
サンプルリスト:ティムール再生
2 《森》
1 《山》
3 《寓話の小道》
4 《ケトリアのトライオーム》
4 《繁殖池》
4 《蒸気孔》
3 《踏み鳴らされる地》
3 《ヴァントレス城》
2 《爆発域》
-土地 (28)- 2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (2)-
◆おわりに
ティムール再生ガイドの続編は以上になります。
ティムール再生は次のローテーションでデッキの根幹である《荒野の再生》を失うため、必然的にスタンダードを去ることになります。非常に残念で涙が止まりませんが、ローテーションまでの残る3か月、デッキとしての強度も最大まで高まった現在のティムール再生は環境トップに君臨し続けると確信しています。そして、私自身の挑戦はギネス記録として登録されるまで終わりません。また次の記事(今度こそいつになるのか……)でお会いしましょう!
最後に改めて。平山、プレイヤーズツアー・オンライン3準優勝おめでとう!!
増田 勝仁 (Twitter)