『基本セット2021』各色の注目カード

Javier Dominguez

Translated by Nobukazu Kato

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(掲載日 2020/07/02)

セット全体の印象

やぁ、みんな!ハビエルだ。

『基本セット2021』がとうとう発売されるね。今日は、スタンダード目線で注目のカードの評価をしていこうと思う。

エンバレスの宝剣自然の怒りのタイタン、ウーロ王冠泥棒、オーコ

全体的に見て、このセットのデザインはとてもいいと感じている。《活力回復》みたいにデッキを補強するカードであったとしても、構築で見かけるだけの強さを備えたものが多く収録されている。構築の面でいえば相当奥深いセットだね。プレイアブルなカードが多い反面、《エンバレスの宝剣》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》みたいに明らかにオーバーパワーなカードは多くないし、《王冠泥棒、オーコ》に匹敵するようなものはない。

選択肢を多く用意しながらも、特定の強いカードの使用を強制しないのは、セットデザインとしては素晴らしいものじゃないだろうか。《荒野の再生》のようにカードパワーが高いものが多い現状では、新カードのいくつかは使われないかもしれないけど、こういった方向性はとても好印象だね。

各色の注目カード

《活力回復》

活力回復

かつてはさまざまなコントロールデッキで見かけた脇役的カードだ。今回もアゾリウスコントロールなどで使われる可能性があるだろうね。

《ヴリンの翼馬》

ヴリンの翼馬

《ヴリンの翼馬》は『マジック・オリジン』に収録された実績があるが、当時はまったく使われなかった。だけど、《荒野の再生》のようなデッキがある今ならばプレイアブルになるかもしれない。このペガサスに弱点があるとすれば《サメ台風》だろう。この「サイクリング」付きのエンチャントは《ヴリンの翼馬》やそのほかの多くのカードの活躍を妨げるおそれがある。

《無私の救助犬》

無私の救助犬

現環境では勢いがない白系のデッキにとって《無私の救助犬》は1マナ域を大幅に強化するクリーチャーとなるだろう。全体除去や戦闘に対して有効であり、総じて十分なカードパワーがある。白ウィニーが成立するとすれば、《無私の救助犬》はその一翼を担うはずだ。

《歴戦の神聖刃》

歴戦の神聖刃

《歴戦の神聖刃》は見た目以上に強いと思う。《アダントの先兵》の下位互換のようにも見えるけど、別のカードだと考えたほうが良い。《アダントの先兵》はコントロール対策の側面が強かったが、《歴戦の神聖刃》はあらゆるマッチアップで有効だ。このクリーチャーに向かって攻撃はしづらいだろうから、対クリーチャーデッキにおいても素晴らしい活躍が期待できる。

《無私の救助犬》と併用すれば、白系のアグロデッキは全体除去にある程度の耐性がつくだろう。《炎の一掃》のようにマナコストの軽い全体除去だったとしてもね。

《栄光の頌歌》

栄光の頌歌

《栄光の頌歌》は苦しい立場にある。白系のアグロデッキは単体/全体除去に非常に弱い反面、盤面を構築するだけのデッキにはもともと有利に戦える。《栄光の頌歌》はすでに《敬慕されるロクソドン》が強いマッチアップでしか期待できない。『基本セット2021』が発売されれば白系のアグロデッキは立ち位置がよくなると思っているが、《栄光の頌歌》は3ターン目に唱える呪文としてはほかの選択肢に劣る。

《バスリの副官》

バスリの副官

《バスリの副官》《エルズペス、死に打ち勝つ》の対象になってしまうが、多彩な強みを持ちつつも《鍛冶で鍛えられしアナックス》と同じく全体除去への耐性を付けてくれる。《鍛冶で鍛えられしアナックス》には及ばないかもしれないが、アグロデッキならばプレイアブルなカードだろう。「プロテクション(多色)」がいかに強い能力かは《石とぐろの海蛇》で実証済みだね。

《悪斬の天使》

悪斬の天使

あの《悪斬の天使》が帰ってきた!アグロデッキに対して切り札となるのはご存知のとおりで、対アグロ用のサイドボードとしてアゾリウス/バントカラーのデッキで姿を見せるかもしれない。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》から《悪斬の天使》へつなげる動きは、相手が除去を持っていなければ、たいていのクリーチャーデッキに勝てるだろうね

《大慌ての棚卸し》

大慌ての棚卸し

新しい《蓄積した知識》は、イゼットのように軽い呪文を欲するデッキで無理なく使えるだろう。ゲームスピードが遅く緑を含むデッキであれば《成長のらせん》などのほうが優れているだろうから、《大慌ての棚卸し》はちょっと合わないかもしれない。

《巻き直し》

巻き直し

《巻き直し》を高評価していた時代はこれまでなかったけど、ティムール再生、特に《サメ台風》との相性は凄まじい。今回は期待できるかもしれないね。《神秘の論争》にはめっぽう弱いから、《巻き直し》が強いマッチアップだったとしてもおそらくほぼ毎回サイドアウトしたほうがいい。気をつけておこう。

《嵐翼の精体》

嵐翼の精体

《選択》《突破》と組み合わせれば《嵐翼の精体》は強く使えそうだ。軽いマナで展開できるため、《サメ台風》のトークンに対峙しても競り負けないだろう。このクリーチャーを使うなら《厚かましい借り手》も一緒に使われるだろうね。

《崇高な天啓》《不連続性》

崇高な天啓不連続性

《崇高な天啓》《不連続性》には共通点がある。《サメ台風》を綺麗に対処できるが多くのマナが必要という点だ。あえて比較するなら《崇高な天啓》のほうが優れているだろうね。その効果は本当に強力だから、遅いデッキでピン挿しされる可能性がある。

両者は《神秘の論争》に打ち消されやすいという共通点もある。つまり、解決したときの効力が派手だとしても、そう多くは採用すべきじゃないということだ。6マナのボムカードを1マナで打ち消されたらたまったものじゃないからね。

《時の支配者、テフェリー》

時の支配者、テフェリー

《時の支配者、テフェリー》はとても斬新なプレインズウォーカーだ。忠誠度能力を相手のターンに起動できるため、相手の行動を見守ってからルーティングか[-3]能力かを選べるというちょっとしたメリットがある

ちょっと《伝承の収集者、タミヨウ》に似た部分があるんじゃないかと思う。《時の支配者、テフェリー》は純粋なカードアドバンテージを生むことはできないが、《伝承の収集者、タミヨウ》と違って大量の手札入れ替えをしつつある程度は自分自身の身を守ることができる。他方、《エルズペス、死に打ち勝つ》で除去される場合、《伝承の収集者、タミヨウ》《覆いを割く者、ナーセット》は少なくともすでに1枚分のカードを確保している一方で、《時の支配者、テフェリー》はあまり価値を生み出せないという弱点がある。

《村の儀式》

村の儀式

1マナという軽さならば、ラクドスサクリファイス系でうまく機能しそうだ。死亡する前の《死の飢えのタイタン、クロクサ》を生け贄に捧げれば、3マナで《予言》《荒廃稲妻》を同時に唱えたみたいになるね!

《帆凧の掠め盗り》

帆凧の掠め盗り

クリーチャータイプが人間である点を活かして採用された実績があるけど、今回のスタンダードでの魅力は別のところにある。黒のアグロデッキで除去を追放しつつ3ターン目に《騒乱の落とし子》を展開できるんだ!

《取り除き》

取り除き

《取り除き》は確実に使われるであろう優秀な除去だ。飛びぬけて強いというわけではないだろうけど、《焦熱の竜火》のような使い勝手の良さがある。そこかしこにサメ・トークンがいるから、腐ることはほぼあり得ないだろうしね

《悪意に満ちた者、ケアヴェク》

悪意に満ちた者、ケアヴェク

《悪意に満ちた者、ケアヴェク》はアグロデッキに対して頼りになる……けど今の環境にそういうデッキはあまりいないね。アグロが増えてくれば、サイドボードとして貴重な存在になると思うよ。

《悪魔の抱擁》

悪魔の抱擁

《悪魔の抱擁》は黒のアグロデッキで強そうな効果を持っているね。赤の呪文は黒の大型クリーチャーを簡単には対処できないから、黒アグロはすでにティムール再生に対しても悪くないデッキだった。繰り返すようだけど、《サメ台風》の存在がこのカードをまったくプレイアブルでなくしてしまう可能性はある。なんかパターンが見えてきたね?

《チャンドラの紅蓮獣》

チャンドラの紅蓮獣

《チャンドラの紅蓮獣》《災厄の行進》デッキを強化しそうだ《砕骨の巨人》《肉儀場の叫び》への耐性がある程度付くのも嬉しいね。ほかの赤の2マナ域と違ってタフネスが3あるのが魅力だ。

《峰の恐怖》

峰の恐怖

グルールのようなスタイルのデッキでは《峰の恐怖》が最高の5マナ域になっていくんじゃないかな。この膨大かつ有用なテキストよりも速攻のほうが構築では重要だとなれば《スカルガンのヘルカイト》のほうがいいのかもしれないけどね。

ただ、グルール系のデッキでさえどちらのドラゴンも微妙なんじゃないかと思っている。《峰の恐怖》《エルズペス、死に打ち勝つ》に脆い。3点ライフを払わせる能力は呪文にしか反応せず、パーマネントの効果には無力だからね。それに青を含む相手が6マナ以上を構えていたら攻撃したくないよね……。

《炎の心、チャンドラ》

炎の心、チャンドラ

このチャンドラはとてもいいね。赤やグルール系のデッキでサイドボードから投入できる脅威になりそうだ。マナコストの重いカードが多くて《実験の狂乱》がうまく使えないデッキを筆頭に、ここしばらくなかったアドバンテージを稼ぐ赤のプレインズウォーカーはありがたいものだろう。《炎の心、チャンドラ》を最後の1枚としてプレイできれば、手札を捨てることなく毎ターン3枚掘り進められる。こういう使い方ができれば、採用に値するプレインズウォーカーになるだろう。

《巻き添え》

巻き添え

こういう効率的な呪文が構築で採用されることはよくある。本来なら対処できない《夢さらい》をたった1マナで除去できるんだから破格だよね。インスタントタイミングで《サメ台風》のトークンを1マナで対応できるのも魅力だ。《巻き添え》はさまざまなデッキで使われてもおかしくないと思うよ。

《耕作》

耕作

この類の効果はランプしたいデッキでは常に歓迎できるものだ。《成長のらせん》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》のほうがカードとしては強いが、高マナ域の呪文を重要視するデッキであれば、《耕作》を何枚か採用することで4ターン目に確実に5マナまで届くようにすることができる

《漁る軟泥》

漁る軟泥

《漁る軟泥》も帰ってきた!この小さなウーズの主な役割は、墓地の《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を追放することだろう。ただ、そのほかの点ではウーロデッキに対して期待できない。クリーチャーの枚数が少ないデッキであり、ウーズのサイズがせいぜい3/3だからね。歴史上そうだったように、赤系のデッキには相変わらず強いはずだよ。

《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル》

ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル

このカードは高く評価している。スタンダード目線で言えば、セット内のベストカードかもしれない。なぜこのクリーチャーを評価しているのかというと、《成長のらせん》《時を解す者、テフェリー》《サメ台風》といったすでに実力が証明されたカードとの相性が抜群だからだ。

トークンを出せばプレインズウォーカーにプレッシャーをかけられるようになるし、手札がふんだんにあって(スタンダードのシミックカラーのデッキではよくあること)2体以上猫トークンがいれば容易に致死量のダメージを与えられるだろう。

《長老ガーガロス》

長老ガーガロス

《長老ガーガロス》は緑の《悪斬の天使》という感じだね。バントランプのように両者を唱えられるデッキであれば、枠争いに勝てるだろうと思う。能力に柔軟性があるから、アグロデッキが再び増えてくることがあればメインデッキに入ることも考えられる。ミッドレンジに対しても6/6のクリーチャーから1ドローできるのは魅力的だ。

《解き放たれた者、ガラク》

解き放たれた者、ガラク

スタンダードのパワーカードと比べると、《解き放たれた者、ガラク》は少し見劣りする気もする。ただ、緑単の《探索する獣》《ギャレンブリグの領主、ヨルヴォ》などを強化できるのはかなりいいね。多少は使われると思う。

多色

《ケルドの心胆、ラーダ》

ケルドの心胆、ラーダ

《ケルドの心胆、ラーダ》はとてもパワフルなカードだね。グルールカラーは今のスタンダードでそこまで強くないけど、《ケルドの心胆、ラーダ》はカードアドバンテージ源でありながら優れたマナレシオを持ち、マナフラッド受けにもなる強さがある。グルールの立ち位置がよくなったとすれば、そこに居場所を見つけるだろうね。ライブラリーから土地をセットできるため、《エルズペス、死に打ち勝つ》で対処されたとしても大きく損はしない。起動型能力は、《エンバレスの宝剣》が装備された状態で使用できればゲームを終わらせる力がある。

《高山の犬師》

高山の犬師

攻撃向きな2マナ域でありながら、カードアドバンテージも得られるのだから、スタンダードで使えるレベルにあるんじゃないかな。サーチできるカードがそこまで強くないとしてもね。《高山の犬師》《歴戦の神聖刃》《正義の模範、オレリア》などのボロスカラーのカードと合わせれば、強力なボロスデッキができそうだ。

《議事会の導師》

議事会の導師

白のデッキは《議事会の導師》をエンジンとしたセレズニアカラーという方向性も考えられる。今のカードプールなら破壊不能を持った大型サイズのクリーチャーを育て上げられるだろう。《時を解す者、テフェリー》は破壊不能を無視してくる厄介な存在だが、そこは《石とぐろの海蛇》などのカードが役立つはずだ。

無色

《灯狩人のマスティコア》

灯狩人のマスティコア

デザインとして狙っていることはわかるが、《灯狩人のマスティコア》は使いづらいと思う。確かにプレインズウォーカーには効果てきめんだが、手札1枚を捨てるのはコストとして重すぎる。手札を捨てることに意味を見出せない限りは使われないだろう。

《真面目な身代わり》

真面目な身代わり

前回収録されたときはそこまで強くなかったが、《ハイドロイド混成体》などのマナを欲するカードがある現在では状況が違う。《時を解す者、テフェリー》などのプレインズウォーカーにプレッシャーを与えるという点で2/2というサイズには価値があるから、3色のランプデッキで使われる可能性があると考えている。

《彩色の宇宙儀》

彩色の宇宙儀

《彩色の宇宙儀》のようなカードはプレイアブルでないことが通例だが、メタゲームに合っていればこのカードにはチャンスがあると思う。このカードの利点は、すぐに5マナを出せるため実質2マナで出すことができ、そうなればありとあらゆる色マナを供給できるようになることだ。《彩色の宇宙儀》から5マナ域を展開し、このアーティファクトが《エルズペス、死に打ち勝つ》で追放されたとしても、2マナと5マナの交換になるのは魅力的だ。試してみる価値はあると思うよ。まぁ、《戦争の犠牲》には弱いんだけどね。

《精霊龍、ウギン》

精霊龍、ウギン

さぁ、真打の登場だ。新セットの一番人気が《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル》でないとすれば、それは《精霊龍、ウギン》に違いないだろう。シミックカラーのデッキは現状で8枚のランプ呪文を搭載しているため、8マナまで到達するのはそう難しくないはずだ。バントランプと戦う際、《精霊龍、ウギン》が突如としてゲームを決定づけることは何度もあるだろう。

ただ、《サメ台風》のトークンの対処は得意ではない。相手がマナを構えている状態で《精霊龍、ウギン》を展開して盤面を一掃したとしても、相手はトークンをターン終了時に展開して《精霊龍、ウギン》を破壊しにくる。こうなればテンポアドバンテージは相手に分があるままだ。しかし逆に言うと、こちらのデッキに《精霊龍、ウギン》がいれば、相手はマナの使い方に神経をとがらせないといけない。そう考えると、《成長のらせん》/《自然の怒りのタイタン、ウーロ》デッキでこのプレインズウォーカーを1~2枚採用する価値はあると思う。

ティムール再生の現状の構成に対してもあまり効果的ではなく、さらにもともとアグロにも弱いカードであるため、メタゲームによっては優秀なサイドボードの枠に降格する可能性はあるだろう。


今回の内容はここまで!新環境がどうなっていくのか楽しみだね!

読んでくれてありがとう!またね!

ハビエル・ドミンゲス (Twitter / Twitch )

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Javier Dominguez スペインを代表するプレイヤー。 グランプリトップ8入賞は6回。【グランプリ・パリ2014】と【グランプリ・ロッテルダム2016】で優勝も経験している。 プロツアーでもその力を発揮し、【プロツアー『戦乱のゼンディカー』】と【プロツアー『破滅の刻』】では9位に入賞を果たすなど、輝かしい戦績を誇る。【ワールド・マジック・カップ2016】では母国スペイン代表のキャプテンを務めた。 Javier Dominguezの記事はこちら