先週末の勝ち組
テーブルトップでも『基本セット2021』がリリースされ、テーブルトップ/オンラインの大会が複数開催された先週末。今回は『基本セット2021』環境初陣戦、SCG Tour Online Championship Qualifier #2、Red Bull Untapped Online Qualifier Russiaの大会結果を振り返っていきます。
まずは先週末の勝ち組デッキを確認していきましょう!
4 《ギャレンブリグ城》
1 《総動員地区》
-土地 (24)- 4 《石とぐろの海蛇》
4 《生皮収集家》
4 《樹皮革のトロール》
4 《漁る軟泥》
4 《恋煩いの野獣》
2 《ギャレンブリグの領主、ヨルヴォ》
4 《探索する獣》
2 《水晶壊し》
-クリーチャー (28)-
先週末の勝ち組は使用者こそ少ないながらトップ8に4名と高い戦果をあげた緑単アグロになります!環境初期特有の有象無象のメタゲームのなか、勝ち抜くにはアグロデッキが適切です。これまでスタンダードにおけるアグロデッキの1番手は赤単アグロかラクドス騎士といった《エンバレスの宝剣》を軸にしたデッキでしたが、クリーチャーサイズの優れたこのデッキこそ環境を定義するデッキとなりました。
『基本セット2021』環境初陣戦
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | 箱田 諒 | ティムール再生 |
準優勝 | 細川 侑也 | ティムール再生 |
トップ4 | 宮田 健太郎 | アゾリウスフライヤー |
トップ4 | 宮國 武蔵 | バントランプ |
トップ8 | ペトル・ソフーレク | 赤単アグロ |
トップ8 | 森 亮 | ラクドス騎士 |
トップ8 | 笠原 卓也 | 緑単 |
トップ8 | 島崎 啓太 | 赤単アグロ |
参加者65名のスイスドロー7回戦で開催され、決勝トーナメントには6種類のデッキが残りました。なかでも宮田 健太郎選手が使用したアゾリウスフライヤーは『基本セット2021』のカードを軸に構築され、ティムール再生とランプ系に強いメタゲームを読んだデッキでした。
また、環境初期こそ赤単アグロの出番です。これまで停滞気味でしたが、今大会では使用者2名ともトップ8入賞を果たしました。環境を定義すべきアグロデッキが不透明なため、構成が不適切なコントロール側の隙をついたかたちです。多くのランプ系がミラーマッチを有利に戦うため、ランプスペルを増やしたことも後押ししました。
決勝戦はティムール再生同士となり、メインボードからミラーマッチに対して強く構築していた箱田 諒選手の優勝となりました。
トップ8デッキリストはこちら。
アゾリウスフライヤー
今大会ではトップ16以内に5つのクロックパーミッションが存在しており、メタゲームを的確に読み解いたプレイヤーは実に多かったようです。デッキテクでもご紹介したアゾリウスフライヤーをみていきましょう。
『基本セット2021』のカードを軸にしたこのデッキは2マナのクロックを中心にダメージを刻み、要所をカウンターで抑えるクロックパーミッション。自分よりも重いデッキに強いため、ティムール再生とランプ系が多かった今大会では最適なデッキとなりました。《天球の見張り》はほかのクリーチャーの召喚を助けるだけではなく、展開することで打点が上がります。
『基本セット2021』で獲得した2種類の呪文にも注目です。《非実体化》は疑似カウンターでありながら、あと引きした際はバウンスとしても機能するこのデッキに適したカードとなります。
《高尚な否定》は飛行クリーチャーをコントロールしているならば、《マナ漏出》を越えるスペック。4マナを払う余裕は中々ないため、ほとんどの場合完全な打ち消し呪文です。
このデッキのオススメ!
環境の上位デッキに有利に立ち回れるクロックパーミッションであり、《成長のらせん》溢れる今のスタンダード環境にはぴったりのデッキかもしれません。ただし、天敵の赤単アグロには要注意です!アグレッシブに立ち回りつつゲームコントロールしたい、相手の重いカードを打ち消してドヤりたいあなたにオススメ!
このデッキを使う場合は下記の記事もオススメ!
- 2020/7/5
- Deck Tech:宮田 健太郎のアゾリウスフライヤー
- 晴れる屋メディアチーム
SCG Tour Online Championship Qualifier #2
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Erin Diaz | ティムール再生 |
準優勝 | Nicholas Price | バントランプ |
3位 | Fabrizio Anteri | スゥルタイランプ |
4位 | Jonathan Hobbs | バントランプ |
5位 | Themis Gkyzis | バントランプ |
6位 | Corey Baumeister | 緑単アグロ |
7位 | Berk Elçi | ジャンドサクリファイス |
8位 | Robert McKee | 赤単アグロ |
参加者144名のスイスドロー8回戦で開催され、決勝トーナメントには6種類のデッキが残りました。優勝したErin Diaz選手の使用デッキはティムール再生のアップデート版。『基本セット2021』からも多くのカードが使用されています。
3名が使用したバントランプは《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル》を手に入れたことで、盤面で押し負けにくくなっています。《成長のらせん》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と相性がよく、ターンが経過するごとにトークンが群れを成していきます。コントロールを意識するあまりメインボードから除去呪文が減り、その隙を上手くついた構築といえます。
トップ8デッキリストはこちら。
大会放送リンクはこちら
ティムール再生
2 《森》
1 《山》
4 《寓話の小道》
4 《ケトリアのトライオーム》
4 《繁殖池》
4 《踏み鳴らされる地》
2 《蒸気孔》
1 《奔放の神殿》
3 《ヴァントレス城》
2 《爆発域》
-土地 (29)- 2 《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
2 《ラノワールの幻想家》
-クリーチャー (8)-
ティムール再生に《世界を揺るがす者、ニッサ》と《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル》の2つのエンジンを組み込んだ意欲作。もちろんメインとなるのは《荒野の再生》と《発展/発破》のコンボですが、《世界を揺るがす者、ニッサ》は《荒野の再生》の代用となりつつダメージソースとなるため、攻撃手段は多岐にわたります。
2マナ域を埋める《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル》は軽い《夜群れの伏兵》であり、自分のターンで動くことが肯定されるため《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と相性がいいカードです。そのためキャントリップ要素をもつ《ラノワールの幻想家》まで追加されています。
《荒野の再生》に加え《世界を揺るがす者、ニッサ》もあるため《発展/発破》だけに飽き足らず、ビッグスペルが追加されています。《崇高な天啓》は《ハイドロイド混成体》すらも完全に沈黙させる多機能呪文。《神秘の論争》は苦手ですが、試合をひっくり返すパワーを持ち合わせています。
このデッキのオススメ!
ティムール再生は使いたいもののミラーマッチやランプ戦に飽き飽きしているかた、ぜひ手に取ってください。マナエンジンとビッグスペルの両方が多く、これまでのティムール再生よりも爽快感マシマシになっています!ティムール再生とランプが好き、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を6枚使いたい、ビッグスペルを連打しカードパワーを体感したいあなたにオススメ!
このデッキを使う場合は下記の記事もオススメ!
- 2020/6/25
- ティムール再生デッキガイド ~プレイヤーズツアー・オンライン3 準優勝~
- 増田 勝仁
Red Bull Untapped Online Qualifier Russia
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Alexey Sukhikh | バントランプ |
準優勝 | Roman Kopytin | 赤単アグロ |
トップ4 | Eugene Nikiforov | スゥルタイランプ |
トップ4 | Arman Gabbasov | バントランプ |
トップ8 | Maxim Salmin | 緑単アグロ |
トップ8 | Pasha MonoGreen | 緑単アグロ |
トップ8 | Aleksandr Krivtsov | ウィノータドッグ |
トップ8 | Dmitriy Bezruchenko | ラクドス騎士 |
参加者119名のスイスドロー8回戦で開催され、決勝トーナメントには6種類のデッキが残りました。アグロデッキが5つと善戦しましたが、Alexey Sukhikh選手がかるバントランプが優勝をつかみ取りました。メインボードから打ち消し呪文をすべて排除し、高カロリーカードを叩きつけていくランプらしいスタイルです。
《空の粉砕》が2枚と少なのはクリーチャーデッキへのガードを下げたというよりも、《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル》のカードパワーの高さからになります。自分のターンで《自然の怒りのタイタン、ウーロ》などを使用するだけで自然とクリーチャー・トークンでボードが埋め尽くされてしまうため、軽量除去の少ない現環境では最適な防御手段となっています。
新たなプレインズウォーカーとして《時の支配者、テフェリー》も採用されています。ドローの質を高めるだけではなく、《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル》が隣にいれば《成長のらせん》と組み合わせで相手のターンにもクリーチャー・トークンが生成できます。
緑単アグロは使用者こそ少ないものの大きな戦果をあげました。ストンピィ型とモンスター型の2種類が入賞していますが、どちらもコントロールとのマッチを意識して新戦力を採用しています。クロックとダメージ増強を1枚でこなす《解き放たれた者、ガラク》、ほぼすべてのクリーチャーにキャントリップが付与される《ガラクの蜂起》など、単色ながらさまざまなゲームレンジに対応可能となっています。
トップ8デッキリストはこちら。
ウィノータドッグ
8 《山》
4 《聖なる鋳造所》
4 《凱旋の神殿》
-土地 (24)- 4 《無私の救助犬》
2 《ジンジャーブルート》
2 《石とぐろの海蛇》
4 《高山の犬師》
4 《歴戦の神聖刃》
2 《高山の番犬》
2 《炎血の野犬》
4 《砕骨の巨人》
3 《軍勢の戦親分》
3 《軍勢の切先、タージク》
2 《軍団のまとめ役、ウィノータ》
-クリーチャー (32)-
Aleksandr Krivtsov選手のウィノータドッグをみていきます。ボロスアグロをベースに、2つのアドバンテージエンジンを内蔵しています。
新たな《戦隊の鷹》ともいわれる《高山の犬師》は2マナ2/2のサイズに、クリーチャーをサーチする能力を持ち合わせています。カード単体は弱いものの1枚で3枚分となるため、消耗戦に強いカードです。
低いマナカーブに加え、《軍勢の戦親分》もいるため横に並びやすいデッキとなっています。そのため《軍団のまとめ役、ウィノータ》との相性は抜群です。《裏切りの工作員》ほど支配的なカードは採用されていませんが、アタッカーを倍化できる可能性を秘めています。
数が並ぶなら《エンバレスの宝剣》も合わせて使うが吉!特に《高山の犬師》は最高のタッグパートナーであり、その打撃は《朽ちゆくレギサウルス》に匹敵することもありえるのです。その際忘れてはならないのが、《無私の救助犬》の存在。このカードがあれば比較的安全に《エンバレスの宝剣》を装備することが可能となるのです!
このデッキのオススメ!
速攻クリーチャーもあり、リセット後のリカバリーは問題ありません。除去に強く、また、アグロデッキながらミッドレンジのように消耗戦をこなす器用さを持ち合わせています。ゴチャゴチャと書いてきましたが、何よりも犬派のあなたに超オススメ!
メタゲームブレイクダウン
今回は3つの大会のメタゲームを比較してみたいと思います。
新環境ながら、《成長のらせん》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を使用した高コストデッキは全体の3割り以上を占めています。これは単にカードパワーが高いものが増えたというよりも、《真面目な身代わり》《耕作》のようにデッキ構造自体を強めるものと、既存の構造とかみ合いつつも別軸である《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル》の獲得によるところが大きいでしょう。
これまでランプ系デッキは5マナ域前後のカードのやり取りで優位を築いてきましたが、《精霊龍、ウギン》という明確なゴールが加わったため、中途半端なコントロール要素を入れるよりもマナを伸ばすことに全力を費やしたシミックランプもみられるようになりました。
環境初期の主役、アグロデッキはイマイチ元気がありません。コントロール/ミッドレンジの強化に押され気味なようです。特にコントロール戦を見越して除去呪文を減らしているため、《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル》はかなり厄介なカードとなります。赤単アグロはクリーチャーサイズで劣り、《エンバレスの宝剣》でもない限り延々とターンを稼がれてしまうため、除去呪文の増加が1つの焦点となるでしょう。
アグロデッキのなかでは緑単アグロが善戦しています。ストンピィ型の特色としてリセット後の速攻クリーチャーによるダメ押しの強さがありましたが、《解き放たれた者、ガラク》《英雄的介入》を手に入れたことで、一層戦いやすくなっています。《探索する獣》《解き放たれた者、ガラク》《アーク弓のレインジャー、ビビアン》は《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル》にも強いため、増加が見込まれます。
3つの大会を合わせてもトップ8にわずか1名と、サクリファイス系は完全な負け組となりました。『基本セット2021』から《真面目な身代わり》を獲得しましたが、天敵も現れました。高速でキャストされる《精霊龍、ウギン》は完全に盤面を崩壊させ、後続も綺麗に対処されてしまいます。
これまで無敵を誇った《大釜の使い魔》《魔女のかまど》エンジンに対しても《漁る軟泥》が触手を伸ばし、機能不全へと陥りかけています。多数投入されたマナ加速によりスピード勝負でも後れをとるため、既存の構築では苦しい戦いとなりそうです。
緑単アグロがいい立ち位置にいるため、このデッキが増えればサクリファイス系の出番となりそうです。
今週末の勝ち組を探せ!!
先週末から始まった新環境スタンダードですが、ティムール再生とバントランプを中心にメタゲームが形成されています。これまでバントランプ有利となっていましたが、対処の難しい《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル》が加わったことで相性も改善されるかもしれません。ティムール再生側は単体除去をもつため、一方的に残りやすく、《時を解す者、テフェリー》も対処しやすくなりました。サイドボードも含め、メタり合いは続きそうです。
サクリファイス系が沈んでいる今、緑単アグロは優れた選択肢となりそうです。速攻クリーチャー、プレインズウォーカー、リソース補充手段と単色とは思えないほど充実したサイドボードをもち、アグロデッキを取りこぼさずに環境のトップ2とも互角に戦えます。
ですが、忘れてはならないのは《霊気の疾風》の存在です。この極めて強力なサイドボードを使わない手はありません。ティムール再生とランプ系、追従する緑単アグロに的を絞ったアゾリウス/バントフラッシュが勝ち組となるでしょう。
今週末にはRed Bull Untapped International Qualifier IIが控えていますね。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。