先週末の勝ち組は!?
近年、MTGアリーナが導入されたことで、Magic: The Gatheringのオンラインイベントはかつてないほどの隆盛をみせています。自宅にいながらグランプリと同様のハイレベルなプレイと緊張感、達成感を味わえるものです。今回はRed Bull Untapped International Qualifier IIの大会結果を振り返っていきます。
まずは先週末の勝ち組デッキを確認していきましょう!
2 《森》
1 《山》
4 《寓話の小道》
4 《ケトリアのトライオーム》
4 《繁殖池》
3 《蒸気孔》
3 《踏み鳴らされる地》
1 《神秘の神殿》
3 《ヴァントレス城》
2 《爆発域》
-土地 (29)- 3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
1 《厚かましい借り手》
2 《夜群れの伏兵》
-クリーチャー (6)-
2 《霊気の疾風》
2 《否認》
2 《終局の始まり》
1 《厚かましい借り手》
1 《長老ガーガロス》
1 《ナーセットの逆転》
1 《焦熱の竜火》
1 《サメ台風》
-サイドボード (15)-
先週末の勝ち組はトップ8へ3名(4色も合わせれば4名)を送り込んだティムール再生です!《荒野の再生》を軸にしてインスタントを組み合わせることで相手の2倍動くことが可能となるため、打ち消し呪文をもたないミッドレンジに非常に有利に戦えます。《成長のらせん》をはじめとしたマナ加速と《荒野の再生》は相性がよく、自身のターンにマナを使っても打ち消し呪文が構えられるため、隙のない構成となっていますね。
打ち消し呪文と除去でコントロールしつつマナ加速していき、《荒野の再生》と《発展/発破》でリソースを回収するコントロールコンボ。ミッドレンジ~コントロールとの対戦が増えつつあるため、マナソースの増加と潤滑油である《選択》を打ち消し呪文などへ変更しデッキの密度を濃くしています。サイドボードを含め、隙のないデッキといえるでしょう。
Red Bull Untapped IQ II:トップ8分析
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | 井川 良彦 | ティムール再生 |
準優勝 | Javier Dominguez | ティムール再生 |
トップ4 | Mani Davoudi | バントランプ |
トップ4 | Andrés Orosa Fernández | シミックランプ |
トップ8 | Victor Cardarelli | ティムール再生 |
トップ8 | Hamilton Santos | 緑単アグロ |
トップ8 | Christian Calcano | 4色再生 |
トップ8 | Eric Ausseil | ラクドスサクリファイス |
(※ デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者1310名による2日制のトーナメントとして開催されたRed Bull Untapped IQ IIですが、ライバルズ・リーグ所属の井川 良彦選手がHareruya Prosのハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguez選手とのミラーマッチを制し、見事優勝を果たしました。メインボードは《夜群れの伏兵》《焦熱の竜火》が同居し、アグロからコントロールまで幅広く戦える構成となっています。
クリスティアン・カルカノ/Christian Calcano選手が使用した4色再生は、ティムール再生に《時を解す者、テフェリー》をタッチしたメタデッキ。《荒野の再生》を使用したデッキに対して有利に戦えます。反面、マナベースにかなり負荷がかかっており、トライオームを8枚使用することで色事故回避に努めています。序盤をタップイン処理に費やすことが多いため、アグロデッキの立ち位置の悪さを逆手に取った構築といえますね。
サイドボードで特徴的なのは2種類のクリーチャー、《幽体の船乗り》と《帰還した王、ケンリス》でしょう。前者は対コントロール戦で隙なくカードアドバンテージをもたらし、後者はサイズと能力を活かしアグロ~ミッドレンジ戦において活躍します。《帰還した王、ケンリス》は《荒野の再生》と組み合わさることで盤面を制圧し、プレイヤーへとライフとカードを届けてくれる置き型の《発展/発破》となります。
トップ8デッキリストはこちら。
注目デッキ:ティムール再生
決勝戦はティムール再生同士のミラーマッチとなりましたが、2人のカード選択には異なる部分があります。ここでは井川 良彦選手とハビエル・ドミンゲス選手が何を意識してこの構成へと至ったのかを探っていきたいと思います。両者のデッキを比較していきましょう。
カード名 | 井川 良彦 | ハビエル・ドミンゲス |
---|---|---|
土地 | 29 | 29 |
《自然の怒りのタイタン、ウーロ》 | 3 | 3 |
《厚かましい借り手》 | 1 | 0 |
《夜群れの伏兵》 | 2 | 0 |
《世界を揺るがす者、ニッサ》 | 0 | 2 |
《成長のらせん》 | 4 | 4 |
《霊気の疾風》 | 2 | 3 |
《否認》 | 2 | 2 |
《焦熱の竜火》 | 2 | 0 |
《嵐の怒り》 | 0 | 2 |
《神秘の論争》 | 4 | 4 |
《発展/発破》 | 4 | 4 |
《荒野の再生》 | 4 | 4 |
《サメ台風》 | 3 | 3 |
メインボードでのポイントは追加の勝ち手段と除去枠の選択です。井川選手はミラーマッチやコントロール戦で特に活躍する《夜群れの伏兵》を採用しています。相手のターンエンドに仕掛けられる(動ける)ためプレッシャーをかけやすく、相手が打ち消し呪文などで動いた場合は続く自分のターンで《荒野の再生》が着地しやすくなるのです。また、クリーチャー・トークンを自動生成してくれるため、アグロマッチでも活躍する1枚です。
ハビエル・ドミンゲス選手が採用したのはプレインズウォーカーの《世界を揺るがす者、ニッサ》。デッキの半数を占める土地を有効活用するだけではなく、常在型能力によりマナが増えるため、5枚目の《荒野の再生》となります。また、《森》3枚を含む土地6枚があれば《世界を揺るがす者、ニッサ》《荒野の再生》を同時にキャストできるため、逆転の起点にもなるカード。プレインズウォーカーの牽制には最適であり、ミッドレンジに効果的な1枚でしょう。デッキに噛み合うカードを増やし、長所をより伸ばした選択といえそうです。
《焦熱の竜火》は定番の除去であり、プレインズウォーカーも対処できる優れものです。さらに環境に蔓延する《自然の怒りのタイタン、ウーロ》をお手軽に対処できる1枚でもあります。手札からキャストされた際に《焦熱の竜火》で対象にとることで、後腐れなくゲームから除外できますね。
《嵐の怒り》もプレインズウォーカーに当たりますが、どちらかといえば相手がクリーチャーを全力で展開した返しにキャストしたいもの。対アグロ戦では強力な逆転カードであり、流行の緑単アグロも一網打尽にできる1枚です。このカードとの相性も考えてサイドボードには《夜群れの伏兵》ではなく《長老ガーガロス》が採用されています。
次はサイドボードを見ていきましょう。
カード名 | 井川 良彦 | ハビエル・ドミンゲス |
---|---|---|
《砕骨の巨人》 | 4 | 2 |
《魂焦がし》 | 0 | 2 |
《焦熱の竜火》 | 1 | 2 |
《嵐の怒り》 | 0 | 1 |
《長老ガーガロス》 | 1 | 3 |
《霊気の疾風》 | 2 | 1 |
《否認》 | 2 | 1 |
《厚かましい借り手》 | 1 | 0 |
《ナーセットの逆転》 | 1 | 0 |
《終局の始まり》 | 2 | 2 |
《サメ台風》 | 1 | 1 |
井川選手はアグロ戦を《砕骨の巨人》に頼り、単体除去でゲームをコントロールしていくようです。流行の緑単アグロに対しても2対1交換が見込める優れたカードです。追加の打ち消し呪文など、どのデッキに対してもバランスよくスロットが割かれています。
対してハビエル・ドミンゲス選手は4種7枚の火力と《長老ガーガロス》を採用し、アグロデッキへの意識が強く伺えますね。《長老ガーガロス》は《嵐の怒り》で落ちず、リセット後の無人の荒野を走り続けます。サイドボード後はコンボよりも除去と《長老ガーガロス》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》によるボードコントロール戦略へ移行します。
このデッキのオススメ!
意識され続けているにもかかわらず、環境トップをゆく不動の王者。デッキ大半をインスタントが占めるため、相手の挙動に合わせ動くことが可能です。そして《荒野の再生》を設置すれば、あなただけの時間が始まります。
緑単アグロを筆頭としたクリーチャーベースのデッキにより勝ちたい方はハビエル・ドミンゲス選手のレシピを、ミラーマッチやコントロール戦を有利に進めたい方には井川選手のレシピを使いましょう。土地詰まりしにくいデッキを使いたい、インスタントの多いパーミッションスタイルのデッキが好き、《長老ガーガロス》が使いたくてたまらないあなたにオススメ!
- 2020/6/25
- ティムール再生デッキガイド ~プレイヤーズツアー・オンライン3 準優勝~
- 増田 勝仁
メタゲームブレイクダウン
同大会のメタゲームブレイクダウンになりますが、初日突破率と2日目にシェアを大きく伸ばしているデッキに焦点を絞り見ていきたいと思います。
4色再生は使用者数こそ少ないものの、3割が2日目へ進出しました。《時を解す者、テフェリー》を採用したティムール再生へのメタデッキではありますが、本質は《荒野の再生》《発展/発破》を軸にしたコントロールコンボ。ミッドレンジに強く、サイドボードを含めればどのデッキに対しても互角に戦うことができます。
万遍なくアーキタイプが散らばった初日には《成長のらせん》《荒野の再生》《発展/発破》と軸がしっかりした、ミラーマッチに強いこのデッキは最適だったようです。打ち消し呪文を絡めたゲームでも《時を解す者、テフェリー》によって有利に立ち回れたことも大きいでしょう。
続いてはラクドスサクリファイスになります。《戦慄衆の解体者》《災いの歌姫、ジュディス》を使い、ジャンドサクリファイスよりも早いミッドレンジデッキの立ち位置にいます。このためバントランプと緑単アグロが多く、ジャンドサクリファイスが少ない今大会では優れた選択肢となりました。
《波乱の悪魔》《忘れられた神々の僧侶》により面・点の両展開に強く、アグロデッキを取りこぼしません。《初子さらい》が効かず高タフネスの《探索する獣》が厄介ですが、サイドボードには《害悪な掌握》も用意されています。
1日を経て、メタゲームのシェアは大幅に変化しました。ティムール再生は最大シェアを誇り、4色再生を合わせれば実に3割を占めます。どのデッキもティムール再生対策を講じているはずですが、極端なサイドボードを取らない限り中々難しいようです。ラクドスサクリファイスも存在感を見せつけましたが、2日のフィールドは相性のよいデッキ以上にティムール再生が数を伸ばしてしまいました。そのため、トップ8には1名という結果に終わっています。
2日間のトーナメントを戦い抜くには、《荒野の再生》を意識したうえで、ほかのデッキも取りこぼさない構築が求められます。特に2日目を勝ち抜くには、コントロールマッチ用のサイドボードで差をつけたいところですね。
今週末の勝ち組を探せ!!
ティムール再生とバントランプを中心にしつつも、緑単アグロも肩を並べる存在となりつつあります。《成長のらせん》を使用したデッキが強力なことに変わりはありませんが、ティムール再生と緑単アグロの2強となってもおかしくありません。『基本セット2021』の加入により、それほどまでに急成長しています。
相反する両デッキに勝つのは困難ですが、サイドボードを的確に活用することで乗り切りましょう。メインボードに《精霊龍、ウギン》という明確なゴールを得たスゥルタイランプはボードコントロール力が大幅にアップしています。サイドボードの《無情な行動》もあるため、緑単アグロに対して速攻クリーチャーをケアしつつゴールへと向かえます。
また、このデッキの魅力は2種類の必殺カード《戦争の犠牲》と《思考のひずみ》の存在です。《耕作》を手に入れたため、これまでよりも容易にキャストできるようになりました。今週末は除去呪文をしっかり採用したスゥルタイランプが勝ち組になるでしょう。
今週末にはRed Bull Untapped International Qualifier IIIが控えていますね。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。