Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/7/17)
パイオニアの現状
昨今のパイオニア環境でトップを走っているのは、ディミーアインバーター・ロータスブリーチ・白単信心であり、多様性のあるメタゲームとなっています。
先日の禁止告知でディミーアインバーターに何の禁止もなかったのは驚きでした。このデッキはかつての《欠片の双子》コンボを彷彿とさせる、コンボによる勝利を内蔵したコントロールデッキであり、個人的にパイオニアのベストデッキだと考えています。それだけにとどまらず、『基本セット2021』からの新戦力である《取り除き》により、ディミーアインバーターはより一層強固なデッキへと進化しました。かつての悩みの種であった《試練に臨むギデオン》などをたった2マナで対処できるようになったのです。
パイオニアを主に支配しているのはコンボデッキであり、ほとんどのデッキが5ターン目までに勝利できる高速の環境。今日ご紹介するのは、そのパイオニアの基準をクリアできるナヤウィノータです。
既存リストの問題点
以下に掲げたのは、ナヤウィノータの既存のリストです。妨害されない前提ならば優れた構成ですが、《軍団のまとめ役、ウィノータ》への解答がサイドインされた途端に脆くなってしまう側面があります。
1 《平地》
1 《山》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《寺院の庭》
2 《聖なる鋳造所》
3 《マナの合流点》
2 《陽花弁の木立ち》
1 《根縛りの岩山》
1 《感動的な眺望所》
-土地 (21)- 4 《エルフの神秘家》
4 《ラノワールのエルフ》
2 《金のガチョウ》
4 《エルフの幻想家》
4 《復活の声》
4 《ゴブリンの熟練扇動者》
3 《軍勢の戦親分》
4 《軍団のまとめ役、ウィノータ》
2 《帰還した王、ケンリス》
4 《アングラスの匪賊》
-クリーチャー (35)-
《ウィノータ》デッキは不安定なデッキだと言われることが多いですが、それは上記のような構成を使っていることが原因だと思います。既存のリストは《アングラスの匪賊》を大当たりとして採用するだけで、《ウィノータ》の効果でヒットする人間クリーチャーの数があまりにも少ないのです。
既存リストを改善して
先日、私は以下のリストでパイオニア・リーグを5-0しました。すると喜ばしいことに、私のリストを使うプレイヤーたちがリーグを5-0したり、パイオニア・ショーケースチャレンジのトップ4に入賞したりし始めたのです。
4 《踏み鳴らされる地》
4 《寺院の庭》
3 《聖なる鋳造所》
4 《マナの合流点》
2 《感動的な眺望所》
2 《根縛りの岩山》
1 《獲物道》
-土地 (22)- 4 《エルフの神秘家》
4 《ラノワールのエルフ》
4 《徴税人》
4 《復活の声》
4 《ガラクの先触れ》
4 《軍勢の戦親分》
4 《軍団のまとめ役、ウィノータ》
2 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》
4 《アングラスの匪賊》
-クリーチャー (34)-
これまで多くの時間を割いて《軍団のまとめ役、ウィノータ》デッキを調整してきましたが、相手が《ウィノータ》への解答をサイドインしてくる場合は、サイド後にコンボからミッドレンジへと構成を変えるのがベストだと気づきました。《ウィノータ》はただのアドバンテージ源であり、勝利に必須のものではありません。除去が多い遅めのデッキにはコンボで勝つ必要がないため、通常は《アングラスの匪賊》をサイドアウトするようにしています。
《ニッサの誓い》が解禁されましたが、マナベースを安定させながら、コンボパーツも探せるカードです。このデッキに噛み合ったカードかどうかはこれから試していこうと考えています。
メインデッキ
《徴税人》
《ウィノータ》の効果で人間クリーチャーがめくれないことがあまりにも多かったため、その数を増やしたいと常々考えていました。
《ウィノータ》デッキはスタンダードでも使っていた経験がありますが、そのときに常に高いパフォーマンスを示していたのが《徴税人》でした。パイオニアにおいては、《異界の進化》のコストに充てられるだけでなく、《復活の声》と組み合わせればこちらのターンに妨害することが難しくなります。また、戦闘によって死亡すれば《ウィノータ》の効果を誘発できるスピリットトークンが生成されるため、相手に攻撃を躊躇させる魅力もあるのです。
《ピア・ナラーとキラン・ナラー》
このクリーチャーの採用率が低いことに驚きを隠せません。《帰還した王、ケンリス》や《無傷のハクトス》を試したこともありますが、どちらも印象としてはイマイチでした。確かにバーンが多い環境であれば《帰還した王、ケンリス》は有効かもしれませんし、《無傷のハクトス》は「プロテクション」で無敵となって単体で勝利を決められる状況もあるかもしれません。
対して《ピア・ナラーとキラン・ナラー》は《異界の進化》のサーチ先として優れており、《ウィノータ》の効果を誘発するソプタートークンを2体並べられます。特に《異界の進化》のコストに《復活の声》を使えば、死亡時に生成されるエレメンタルトークンは4/4となるのです。また、《ウィノータ》の効果で《アングラスの匪賊》がめくれなくとも、《ピア・ナラーとキラン・ナラー》がヒットすれば、次のターンにソプタートークンで2度効果を誘発するチャンスが生まれます。
《ガラクの先触れ》
《ガラクの先触れ》は2ターン目に展開しても《ゴブリンの熟練扇動者》ほどのロケットスタートにはなりませんが、キーとなるクリーチャーを探しつつ、ディミーアインバーター・吸血鬼・黒単アグロといったこのデッキが苦手とするものに非常に効果的であり、デッキにとても噛み合っているカードです。効果が誘発すればアドバンテージを得つつ、ライブラリーに眠る《ウィノータ》までの距離を縮められるため、相手のクリーチャーをさばきながらカードアドバンテージを獲得するというサイド後のプランに合っています。
《ゴブリンの熟練扇動者》を不採用にした理由は、対クリーチャーデッキ戦で後手になったときにあまりにも弱いからです。《軍勢の戦親分》の「教導」のほうがはるかに優秀だと感じました。
マナベース
みなさんご存知のとおり、パイオニアは友好色のマナベースによる構築に不親切な状況です。《銅線の地溝》や《剃刀境の茂み》といったファストランドやダメージランドがカードプールになく、このデッキも大きな負担を負うことになっています。
このデッキは、1ターン目のマナクリーチャーを唱えるために14の緑マナ源が、同様に各色の2マナ域には13の色マナ源が、ダブルシンボルの呪文には18の色マナ源が必要になります。現状のマナベースは対アグロ戦において大きな負荷になっていますが、《ウィノータ》の効果を誘発できればダメージレースできることが多いため、狙ったターンに唱えられるマナベースにしたほうが賢明でしょう。理想のマナベースを構築するのに長時間かけましたから、別の土地が新規収録されない限りは現在のマナベースがベストだろうと信じています。
サイド後のプラン変更
ディミーアインバーターやミッドレンジ、除去の多いデッキとのマッチでは、通常コンボパッケージ(《アングラスの匪賊》と《異界の進化》)をサイドアウトしています。
《反逆の先導者、チャンドラ》
ギデオンやニッサなどのプレインズウォーカーを試したこともありますが、《反逆の先導者、チャンドラ》が最強であると結論づけました。カードアドバンテージと除去を兼ねるだけでなく、必要であればそのマナ加速能力で《アングラスの匪賊》を唱えることもあります。
《運命の神、クローティス》
《運命の神、クローティス》はアグロに対して極めて強力です。アグロ側はこちらのクリーチャーを退けるためにリソースを使わねばならず、その結果《運命の神、クローティス》が追放する対象が墓地に溜まるため、基本的に毎ターン2ドレインしていきます。破壊不能のエンチャントを綺麗に対処できるカードが環境に少ない点も、このカードの評価を高めているポイントですね。
《集団的抵抗》
ご存知かと思いますが、《集団的抵抗》はディミーアインバーターに対するベストカードです。4ターン目に《真実を覆すもの》を展開してしまうと、《集団的抵抗》の手札入れ替え効果によって敗北する可能性があるため、気軽にコンボに向かえなくなるのです。また、クリーチャーデッキに対しては除去として機能したりと、その汎用性の高さも気に入っています。
《火の予言》
役割がなく手札で余ったマナクリーチャー、土地、《アングラスの匪賊》をライブラリーに戻すことができる優秀な除去。《不可解な終焉》や《溶岩コイル》といった除去も使ってみましたが、ソーサリータイミングの除去はデッキの動きに噛み合っていないという印象でしたし、《火の予言》には手札の質を向上させるメリットがあります。
サイドボードガイド
ディミーアインバーター
私のリストは現時点でパイオニアのトップデッキであるディミーアインバーターに照準を合わせているため、有利なマッチアップです。1ゲーム目は4ターン目の《真実を覆すもの》で負けないように、こちらのクリーチャーを対処せざるを得ない展開にもっていきましょう。
《ガラクの先触れ》はこのマッチアップでのベストカードであり、2ターン目に展開できれば理想的です。大量のライフを削りながら、対処を迫る後続のクリーチャーたちを引き連れてきます。
対 ディミーアインバーター
サイドインする《集団的抵抗》は相手のコンボに歯止めをかけつつ、《ゲトの裏切り者、カリタス》への解答になります。コンボパーツは《思考囲い》や除去を多く搭載するデッキには弱いため、サイドアウトしましょう。
ロータスブリーチ
先にコンボを成立させたほうが勝ちます。4ターン目に《ウィノータ》の効果を誘発できない手札はマリガンしましょう。
いろいろなサイドカードを試してみたものの、《高山の月》や《安らかなる眠り》は有効であるマッチアップが限られているため不要であると感じました。また、相手が《樹上の草食獣》スタートでない限り、こちらのほうが1ターン早くコンボを決められます。よって、このマッチアップでは一切サイドボードとの入れ替えを行いません。
黒単アグロ
《ガラクの先触れ》がブロッカー・アタッカーとして活躍するマッチアップ。《徴税人》や《復活の声》といったクリーチャーたちも死亡時にアドバンテージを生むため、ダメージレースするうえで頼りになります。
対 黒単アグロ
ボロスバーン
このマッチアップを戦った経験は何度かありますが、マナベースからのライフ損失が痛手となります。ショックランドや《マナの合流点》ばかりを引いてしまうと、劣勢に立たされてしまうでしょう。相手の火力呪文の多くは《復活の声》や《徴税人》といったブロッカーを退けるのに使わねばなりませんから、相手が速度勝負するには少なくとも2体以上のクリーチャーが必要になります。
対 ボロスバーン
サイド後は除去を追加し、相手の速度を低下させながら、コンボの下準備を進めていきましょう。
白単信心
当初はサイド後に負け続けたマッチアップでした。相手はこちらのクリーチャーをさばくのに苦心するだろうから何もサイドボーディングせずに最速でコンボを目指そうと考えていたのです。
しかし試合数を重ねてみると、相手にとって《ニクスの祭殿、ニクソス》による膨大なマナがこちらの速度に追いつくひとつの方法になっており、除去をサイドインして「信心」カウントを減らす必要があると考えるようになりました。
対 白単信心
サイド後の《異界の進化》は有効ではありません。というのも、相手は除去を多く投入してきますし、《白蘭の騎士》や《太陽に祝福されしダクソス》にサイズ負けするうえに効果にあまり価値がない2マナ域の枚数を減らすからです。《反逆の先導者、チャンドラ》が《アングラスの匪賊》を唱える助けになることは忘れないようにしましょう。
スピリット
盤面を早く構築したプレイヤーが勝利するマッチアップです。《徴税人》や《復活の声》を展開できれば、《呪文捕らえ》が使いづらくなるだけでなく、相手は自分のターンに動かなくてはならない状況が増えるでしょう。《ウィノータ》が着地すれば、おおむね勝利が確定します。
対 スピリット
除去をサイドインします。相手の速度を遅らせる意味もありますが、テンポで差をつけてくる《呪文捕らえ》を除去することが主な狙いです。
イゼットエンソウル
3~4ターン目に《ウィノータ》が展開できなくとも、《アーティファクトの魂込め》がブロックされないクリーチャーにエンチャントされない限りは、こちらのほうがスピードは上です。《爆片破》が構えられていそうなときは、むやみに《ウィノータ》を出さないようにしましょう。返しのターンで負けそうだったり、手札に《ウィノータ》が重複していたりしない限りは慎重になるべきです。
対 イゼットエンソウル
黒単吸血鬼
地上を固めてしまう《ゲトの裏切り者、カリタス》や《薄暮の勇者》を早々に展開できる《傲慢な血王、ソリン》が3ターン目に着地してしまうと、1ゲーム目はかなり厳しくなります。また、このプレインズウォーカーは繰り返し使える除去であり、特に《銀打ちのグール》と組み合わさると毎ターンそのコストを確保されてしまいます。
《ガラクの先触れ》は相手に除去されないため、速度負けしないようにしてくれるクリーチャーです。複数のモードを選べる《集団的抵抗》は《ゲトの裏切り者、カリタス》や《薄暮の勇者》を除去しつつ、同時に《傲慢な血王、ソリン》を破壊できる素晴らしいサイドカードとなります。
対 黒単吸血鬼
ミッドレンジ/コントロール全般
ここで重要なのは、サイド後はプランを変更し、コンボパーツをサイドアウトして、ミッドレンジパッケージをサイドインすることです。こちらのクリーチャーは除去必須なものがほとんどであり、さばききれなかったクリーチャーがいずれ盤面に残ることになるでしょう。《反逆の先導者、チャンドラ》や《運命の神、クローティス》はわずかに残ったライフを削りきる大役を果たします。
対 ミッドレンジ/コントロール全般
おわりに
今回の内容は以上になります。《ウィノータ》デッキの理解に役立てたでしょうか。
私はアグロコンボを好んできたプレイヤーですが、今回のデッキは私が愛し続けてきている《珊瑚兜への撤退》入りのバントカンパニーを彷彿とさせるものです。このデッキを使用するのであれば、1ゲーム目はマリガンを厳しく行い、遅い手札はキープしないようにしましょう。
デッキに関して質問のある方はTwitterまでどうぞ。喜んでお答えします。今回も読んでいただきありがとうございました!
ケルヴィン・チュウ (Twitter)