優勝者インタビュー:朴 高志
晴れる屋メディアチーム
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By Tsutomu Date
『第10期リミテッド東海王決定戦』。
今期用いるセットは1週間前に発売された『基本セット2021』だ。基本セットはその名の通りシンプルなセットデザインから、初心者や復帰者へ強くすすめられるセットとなっている。そのためリミテッド環境もシンプルで、巧者が求めるシナジーやアーキタイプに沿ったドラフト構築が成立しにくいのが通例だ。
しかし、いい意味で『基本セット2021』はその想定を覆し、ドラフトしがいのある奥深いセットとなっている。赤白の速攻や青赤での果敢シナジー、テンポとサイズに優れた青緑や墓地シナジーの黒緑、同じ色のカードでも色の組み合わせでカード同士の相性が大きく異なり、多彩な選択肢から充実したリミテッド戦を楽しんでもらおう、というデザイン側の意志を感じさせる。
そのような『基本セット2021』環境下でスイスラウンドを1位通過し、さらには決勝ラウンドを1ゲームも落とすことなく駆け抜け『第10期リミテッド東海王』の座に就いたのは、BIGs……BIG MAGICユニフォーム契約プレイヤーである朴 高志だ。
朴の実績は、プロツアーへの出場はもちろんのこと、グランプリトップ8やBIG MAGIC Open トップ8などの入賞回数は片手で数えきれないほど。特にBIG MAGIC Open Vol.2におけるスタンダードフォーマットでトップ8、レガシーフォーマットで準優勝、というダブル受賞の偉業は、多くのマジックプレイヤーの記憶に刻み付けられている。
MTGアリーナにおける本環境のドラフトについてもnoteにて記事をつづっており、リミテッドプレイヤーからも好評だ。
その朴に優勝者インタビューをお願いした。
――『第10期リミテッド東海王決定戦』優勝おめでとうございます。まずはスイスラウンドで構築したデッキについて教えてください。
朴「スイスラウンドは赤白でしたね。《勇敢な駿馬》が活躍しました。こいつは攻めも守りもこなせる優秀なクリーチャーです。あとレアは《バスリの副官》ですね」
――まずコモンのカードを挙げられるところが流石ですね。『基本セット2021』のドラフト環境をどのように捉えていますか?
朴「先手有利のアグロ環境で、後手で逆転するのは難しいように感じますね。3~4マナのクリーチャーが2マナのクリーチャーと相打ちしてしまうことが多いです。それと、除去が優秀でコモンに集中している環境でもあります。4~5マナでクリーチャーをプレイしてもコモンで除去されますので、数で上回るほうがいい。そういう意味で《高山の犬師》や《勇敢な駿馬》は強いです」
――コモンの優秀な除去とはどのカードを指していますか?
朴「《ショック》《焦熱の竜火》《闇の掌握》あたりですね。これらが環境を定義しています。逆に言うと、それらに耐性のあるクリーチャーが強いですね。先に話した《高山の犬師》や《勇敢な駿馬》はそういう意味で完璧です。数も取れるし、テンポも取れます」
――なるほど、そう考えるとクリーチャーも除去も強い赤白というカラーリングはとても優秀に感じますね。ドラフトでやりたい色も赤白でしたか?
朴「そうですね。一番やりたいのは赤白です。(デッキのパワーとしての)最大値を取るとほかの色の組み合わせもありますが、ピックが乱れてもある程度のパワーがあるのが強みです。第2希望としては青赤か白緑。こちらは最大値が高いです。ただし、アーキタイプ寄りなので、流れも含めてうまくいかないリスクがありますね」
――では決勝ドラフトでのピックについて教えてください。
朴「ファーストピックは特に強いレアやアンコモンがなかったので、《バスリの侍祭》から入りました。2手目は《ショック》と《実験的過負荷》、どちらも強力なカードなので悩みましたが、ピックが無駄になるリスクも考慮し前者を選びました。その後は赤の流れが強く、2色目は白でなくてもよかったかと思っていたのですが、2パック目の初手で《高山の犬師》が取れたので結果的には良かったですね」
――《高山の犬師》は2枚も取れていますね!
朴「2枚目は結構遅めのタイミングでしたね。半端なレアよりもパワーのあるカードを取れたのはラッキーでした。《高山の犬師》は本当に強いですね。決勝ラウンドは6ゲーム中4回マリガンしたのですが、これのおかげで不利から勝利することができました」
――そのうえ、《高山の番犬》《炎血の野犬》の両方が取れているのも見事ですね。
朴「マリガンしても手札が減ってないですからね。むしろ増えちゃう(笑)。あとは、《一斉噴火》も流れてきたんですよね……これもやばい。ドラフトは、3パック目になって初めて自分の主張が通ると思っています。今回も3パック目でレアが2枚流れてきました」
――思惑通りにはまったわけですね。稀に見るほどの強力なデッキですね!
朴「この環境で好きなムーブは、2ターン目に犬(この環境での2/2クリーチャー)、3ターン目に犬、4ターン目に犬2体、5ターン目に《勇敢な駿馬》、というものです。今回のドラフトデッキはこれが実現できる構成で、先手ならほぼ勝ちですね」
――スイスラウンドは1位で通過しましたし、常に先手を取れているのも勝因ですね。ちょっと気になったのは5マナのカードの枚数です。クリーチャーが3体、除去が1枚、合わせて4枚採用されていて、土地16枚の構成にしてはやや重めに感じます。ここにはどういった意図があるのでしょうか?
朴「《高山の犬師》の圧縮効果を期待しています。これをプレイすることで、ライブラリーから2枚のクリーチャーを手に入れることができます。結果として土地を引く確率を上げることができます。これがなければ土地を17枚にするかもしれません」
――なるほど、確かにスペルを2枚も持ってくれば土地を引く確率も上がりますね。ところで、《勇敢な駿馬》の評価が高いのが意外でした。一般的に過小評価されているカードだと思うのですが、ほかにもそのようなカードはありますか?
朴「《勇敢な駿馬》は本当に超強いんですけどね!一周しちゃうのが信じられません!あとはそうですね……《裏切りの強欲》は強い!みんなもっと積極的にピックしましょう!」
――ありがとうございます。では最後に『第10期リミテッド東海王』となられたお気持ちを聞かせてください。
朴「いやあ、嬉しいですね。『東海王決定戦』はいろいろなフォーマットでトップ8に入りましたが、優勝は今まで獲れなかったので本当に嬉しいです。ひとつの目標を達成した気分ですね。まあどんな大会もトップ8はみんな強いですから、そこまで来たら後はその日の運のいいやつが勝つものですが(笑)」
――本日はありがとうございました。
数々の大会で実績を挙げてきた朴であるが、最後の言葉はその強者ぶりに似合わず謙虚であった。MTGアリーナの『基本セット2021』リリース当初は、思ったようにドラフト攻略が進まず、勝利できないジレンマに見舞われたという。
しかし朴は自ら考え、トライ&エラーを繰り返し、決して諦めず不屈の精神で何度でも立ち上がった。そんなプレイヤーである朴こそが今期の『リミテッド東海王』にふさわしい。
おめでとう!『第10期リミテッド東海王』 朴 高志!