先週末の勝ち組は!?
近年、MTGアリーナが導入されたことで、Magic: The Gatheringのオンラインイベントはかつてないほどの隆盛をみせています。自宅にいながらグランプリと同様のハイレベルなプレイと緊張感、達成感を味わえるものです。
ティムール再生をめぐる戦いが激化しているスタンダード環境ですが、先週末は大きな変化が見られました。今回はRed Bull Untapped IQ IIIとSCG Tour Online Season One Championshipの大会結果を振り返っていきます。
まずは先週末の勝ち組デッキを確認していきましょう!
ティムール再生の海を泳ぎ切り、見事Red Bull Untapped IQ IIIを制したのは白単アグロ!使用したHoshi Yuki選手は無敗(12-0-2)でこのトーナメントを終えています。
詰め込まれた16枚の1マナ域を各種アンセム(《栄光の頌歌》など)で強化し、ビートダウンする由緒だたしき白単アグロの形です。メタゲームの焦点がティムール再生へと大きく傾いた結果、サクリファイス系デッキが減り全体除去はおろか除去呪文がメインボードから消えたため、最適解となりました。
ここ最近、アグロデッキの中では緑単アグロが活躍していましたが、1体ごとのサイズで押す緑単に対して白単は小粒な展開力を売りにしたデッキです。クリーチャー戦は不利になるものの、単体除去や打ち消しに強く、現状のティムール再生にはもっとも相性のいいデッキといえるでしょう。
Red Bull Untapped IQ III
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Hoshi Yuki | 白単アグロ |
準優勝 | Quentin Leroy | ティムール再生 |
トップ4 | Thomas Holzinger | ティムール再生 |
トップ4 | Matsuda Yuki | ティムール再生 |
トップ8 | 簗瀬 要 | ティムール再生 |
トップ8 | Chris Botelho | ティムール再生 |
トップ8 | Evgeniy Karpovskiy | バントランプ |
トップ8 | Jerome Bastogne | 4色再生 |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者1091名の2日制で開催されたRed Bull Untapped IQ IIIですが、なんと決勝ラウンドには《荒野の再生》デッキが6名進出しました。単に《荒野の再生》が強いだけではなく、構造的にマナスクリューに陥りにくく、マナ加速に加えてインスタントトリックの多さ、サイドボードによる戦略の多様性が対策の難しさを物語っています。
ですが、今大会で優勝したのは新星のごとく現れた白単アグロであり、変化の乏しかったメタゲームを推し進める結果となりました。『基本セット2021』のカードもふんだんに使用されており、今後も目にするデッキの1つになりそうです。
多くのデッキがティムール再生を意識するあまり、《炎の一掃》《嵐の怒り》といった全体除去の採用率が下がり単体除去も減っていたためアグロデッキへのガードはこれ以上ないほどに下がっていました。しかし、これまでも赤単アグロや緑単アグロといった面や点で押すビートダウンデッキは存在しており、チャンスはあったはずです。何が違ったのでしょうか?
最大の違いは色にあります。ティムール再生をはじめとしたコントロール側がメインボードから極力除去呪文を排除できた理由は、万能カード《霊気の疾風》にあります。再生デッキはメタゲームの2~4割を占め、ミッドレンジ、アグロと見渡しても緑も赤も使用しないデッキは皆無といっていいでしょう。本来は対象の少ない色対策カードがメインボードから汎用性の高くクリティカルなカードへと変化したため、赤単アグロと緑単アグロそのあおりをモロにくらってしまったのです。
《霊気の疾風》の当たらないデッキであること、さらに攻撃的なアグロデッキであること。白単アグロはこの2点を満たした素晴らしいデッキ選択だったのです。
トップ8デッキリストはこちら。
白単アグロ
最近はめっきり姿を見なくなっていた白単アグロですが、『基本セット2021』が導入されたことで大幅に強化され、メタゲームへと食い込む形となりました。詳細に見ていきましょう。
このデッキの構成は大きく分けて2つにわかれます。まずは極限まで低く切り詰めたマナカーブに沿ってクリーチャーを展開していきます。除去耐性のある《追われる証人》《駐屯地の猫》の2種類が最優先であり、ついで《無私の救助犬》、除去としても使える《巨人落とし》は最後となります。
3ターン目までに戦線を拡大したところで、次のステップへ移ります。今度は全体強化呪文を使いダメージアップを図るのです。特に《敬慕されるロクソドン》は「召集」で唱える都合上、一度攻撃の手を休めることになります。3ターン目に唱えられるような展開を心掛けたいですね。また、召喚したクリーチャーもすぐさま「召集」コストにあてられることも覚えておきましょう!
今後のメタゲームの展望として、全体除去が増えることが予想されますが、このデッキはそれらの対策もされています。《無私の救助犬》《歴戦の神聖刃》《不敗の陣形》は除去を無効化し、攻撃を継続します。
《追われる証人》《駐屯地の猫》は除去されてもクリーチャー・トークンを生み出し、《急報》は《空の粉砕》後の再展開を約束してくれます。サイドの《一心同体》はテンポ面で優れ、全体除去に対する最高の解答といえるでしょう。
このデッキのオススメ!
展開力と多数の全体強化に目を奪われがちですが、このデッキは除去に強く攻め手が途切れることのない持続性の高いデッキであります。大ぶりな全体除去はいわずもがな、単体除去では群れを成したクリーチャーには無力です。
スピードだけではなく除去されてもダメージソースを残し続ける粘り強いクリーチャーたちは魅力的であり、単色であるためマナベースに負荷もかかりません。赤単アグロのような展開力に長けたデッキを好む方、《敬慕されるロクソドン》が好きな方、《霊気の疾風》が流行の今のメタゲームで有利なデッキを使いたいあなたにオススメ!
また、晴れる屋ではRed Bull Untapped IQ IIIを優勝した白単アグロを販売中!買ってすぐに遊べる仕様となっていますので、ぜひ手に取ってみてください!
SCG Tour Online Season One Championship
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | 市川 ユウキ | ティムール再生 |
準優勝 | Robert McKee | 赤単アグロ |
トップ4 | Nam Dang | 4色再生 |
トップ4 | Noam Zimet | バントランプ |
トップ8 | Michael Bonde | ラクドスサクリファイス |
トップ8 | Corey Baumeister | ティムール再生 |
トップ8 | Ryosuke Nishiura | ティムール再生 |
トップ8 | piroki | ティムール再生 |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
敷居が高く、参加者わずか80名となったSCG Tour Online Season One Championshipですが、アップグレードしたティムール再生を手に、市川 ユウキ選手が優勝を勝ち取りました。上位でみかけることの少なかった赤単アグロも《雷光の猟犬》を採用し健闘しましたが、ティムール再生の壁は厚かったようです。
トップ8デッキリストはこちら。
ティムール再生
2 《森》
1 《山》
4 《寓話の小道》
4 《ケトリアのトライオーム》
4 《繁殖池》
3 《蒸気孔》
3 《踏み鳴らされる地》
3 《ヴァントレス城》
2 《爆発域》
-土地 (28)- 2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
1 《厚かましい借り手》
-クリーチャー (3)-
2 《夜群れの伏兵》
2 《焦熱の竜火》
1 《厚かましい借り手》
1 《長老ガーガロス》
1 《霊気の疾風》
1 《ナーセットの逆転》
1 《否認》
1 《薬術師の眼識》
1 《終局の始まり》
-サイドボード (15)-
Red Bull Untapped IQ IIIの結果とは対照的に、今大会はよりミラーマッチに特化したティムール再生が結果を残しました。《選択》《厚かましい借り手》の採用と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の減少、《霊気の疾風》《否認》の枚数など細かな調整がみられます。これまでよく見た《夜群れの伏兵》が《終局の始まり》へ変更され、《サメ台風》と合わせて打ち消されないクロックとして、ミラーマッチを推し進めたデザインとなっています。
《終局の始まり》は妨害手段の限られたインスタントタイミングでキャスト可能なクロックであると同時に、貴重なドローカードでもあります。《サメ台風》と合わせることで相手も対処しきれない枚数となっており、《荒野の再生》を着地させるための隙も作ってくれそうです。
ここにきて《選択》が採用されているのも興味深いところです。最近では土地29枚と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の3枚目となっていた部分を、《選択》に置き換えています。対ミラーマッチ、対《時を解す者、テフェリー》戦を意識して、必要牌を揃えやすくし自分のターンでマナを使い隙を作る可能性減らしたようです。
以前ご紹介したとおり、ティムール再生におけるフリースロットは4~8枚であり、《選択》、追加のフィニッシャー(クリーチャー)、除去、打ち消しが競合します。最近では、打ち消しとクリーチャー、除去と打ち消しとクリーチャーなど実を増やした構築が多く見受けられました。
《厚かましい借り手》《終局の始まり》を選択したことで、リスクを最小限に抑えてダメージソースを確保できるようになっています。《厚かましい借り手》はパーマネントもさることながら相手がブロッカーとして用意したサメ・トークンを対処し、攻撃を継続させてくれるのです。
このデッキのオススメ!
ティムール再生ミラーを意識して、一歩踏み込み有利に戦いたい方にはもってこいのレシピといえるでしょう。ただし、流行の兆しをみせる白単アグロには要注意です。ティムール再生とコントロールに有利に戦いたい、リソースを増やすカードを多めに確保したいあなたにオススメ!
このデッキを使う場合は下記の記事もオススメ!
- 2020/6/25
- ティムール再生デッキガイド ~プレイヤーズツアー・オンライン3 準優勝~
- 増田 勝仁
メタゲームブレイクダウン
2つの大会のメタゲームを並べてみましょう。Red Bull Untapped IQ IIIでは初日はティムール再生が最大勢力となり、バントランプ、緑単アグロが続く最近よく見られる構造となっていますね。ティムール再生の割合は全体の2割とほかの大会に比べてずいぶん少なく思えますが、2日目に入ると大幅に変化します。
なんとティムール再生が占める割合が4割へと伸びる一方で、バントランプと緑単アグロは減少しているのです。これまでも語られてきた通り、ティムール再生のデッキパワーは並みはずれて高く、中途半端な対策では攻略できません。それと同時に、ティムール再生以外へのガードを下げるわけにもいきません。2日目進出、さらにはトップ8を目指すうえで、デッキパワーが高くティムール再生に有利である必要があります。理想論だけなら4色再生がもっとも近いデッキといえるでしょう。
その4色再生こそ、2日目への進出率がもっとも高かったデッキです。タップインランドの多さから遅れを取り勝ちですが、サイドボードから《陽光の輝き》《帰還した王、ケンリス》を採用することでアグロデッキにも対抗しています。特に《帰還した王、ケンリス》は《荒野の再生》で疑似的に増えるマナを余すことなく活用できる1枚です。
続く黒単アグロはどうでしょうか。注目デッキの白単アグロでも紹介したとおり、このデッキも《霊気の疾風》が当たらないアグロデッキであります。白単ほどの展開力はないものの、緑単アグロにも負けない打撃力の高さが魅力的となっています。《朽ちゆくレギサウルス》は対処の難しい1枚であり、『基本セット2021』から採用している《悪魔の抱擁》によって追加の打撃力も手に入れています。
SCG Tour Online Season One Championshipは参加するための敷居が高いため必然的にプレイヤーレベルが上がった大会ですが、腕に自信のあるプレイヤーたちは《荒野の再生》を使うことを選んだようです。ティムール再生の3割もさることながら、バントランプに続く3番手に4色再生がつけています。両再生デッキを合わせれば全体の4割となり、《荒野の再生》を巡る戦いに終わりは見えません。
今週末の勝ち組を探せ!!
突如として現れた白単アグロは、「アグロ」と「《霊気の疾風》が効かない」という2点の強さからティムール再生を倒しました。黒単アグロもいい位置につけ、このままティムール再生キラーとして一定の立場を保つのでしょうか?
ティムール再生側も全体除去を組み込むことで、対抗し得るでしょう。デッキの骨格がしっかりとしているからこそ、細部を変更してもメイン戦略に支障をきたしません。《焦熱の竜火》《砕骨の巨人》など対クリーチャー対策のスロットを、メタゲームに合わせて再選択することになりそうです。
メタゲームを再思考する必要がある今こそ、ティムール再生が勝ち組になるでしょう。
今週末には2020プレイヤーズツアーファイナルが控えていますね。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。