先週末の勝ち組は!?
近年、MTGアリーナが導入されたことで、Magic: The Gatheringのオンラインイベントはかつてないほどの隆盛をみせています。自宅にいながらグランプリと同様のハイレベルなプレイと緊張感、達成感を味わえるものです。
今回は2020プレイヤーズツアーファイナルと簡易的にRed Bull Untapped Online Qualifier UKの大会結果を振り返っていきます。
まずは先週末の勝ち組デッキを確認していきましょう!
1 《平地》
1 《山》
1 《森》
4 《寓話の小道》
4 《ケトリアのトライオーム》
4 《ラウグリンのトライオーム》
4 《寺院の庭》
3 《繁殖池》
3 《神聖なる泉》
2 《ヴァントレス城》
1 《爆発域》
-土地 (30)- 2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
1 《厚かましい借り手》
-クリーチャー (3)-
3 《陽光の輝き》
2 《幽体の船乗り》
2 《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル》
2 《帰還した王、ケンリス》
1 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
1 《ドビンの拒否権》
-サイドボード (15)-
2020プレイヤーズツアーファイナルにおいて、Benjamin Weitz選手は11勝3敗でスイスラウンドをトップ通過しました。使用した4色再生は、同大会で《荒野の再生》デッキが多かったこともあり、優れた選択だったといえるでしょう。
メタゲームが《荒野の再生》デッキに偏ったものになることを予測し、メインボードから除去呪文のスロットを排除することで、デッキの軸となる《荒野の再生》《発展/発破》をキッチリと残しながら、メタカードである《時を解す者、テフェリー》4枚に加えて《ドビンの拒否権》までも採用することに成功しています。
実際に9回の《荒野の再生》デッキとマッチアップし、8勝1分けとしています。今のメタゲームにはぴったりのデッキといえますね。
プレイヤーズツアーファイナル
スイス順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
1位 | Benjamin Weitz | 4色再生 |
2位 | Allen Wu | ティムール再生 |
3位 | Patrick Fernandes | ティムール再生 |
4位 | 熊谷 陸 | 黒単アグロ |
5位 | Michael Jacob | マルドゥウィノータ |
6位 | Kristof Prinz | 4色再生 |
7位 | Raphael Levy | アゾリウスヨーリオン |
8位 | Christoffer Larsen | ジャンドサクリファイス |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者145名で開催されたプレイヤーズツアーファイナルはスイスラウンドを終え、来週末の決勝トーナメントに進む8人の選手が出揃いました。大方の予想通り《荒野の再生》デッキが多く残りましたが、新たなデッキたちも入賞しています。
ティムール再生
Allen Wu、Patrick Fernandes両選手が使用したティムール再生は、ミラーマッチを意識した《夜群れの伏兵》や《終局の始まり》といったインスタントタイミングで動ける攻め手をメインボードから組み込んでいます。サイドボードでは《精神迷わせの秘本》《幽体の船乗り》に注目でしょう。
アゾリウスコントロール
Raphael Levy選手が持ち込んだのはGabriel Nassif選手と共同デザインのアゾリウスコントロール(ヨーリオン)。パーマネントと《空を放浪するもの、ヨーリオン》の組み合わせでアドバンテージを稼ぎます。4枚ずつ採用された《ドビンの拒否権》《時を解す者、テフェリー》《覆いを割く者、ナーセット》が《荒野の再生》に対して効果的ですね。
ジャンドサクリファイス
Christoffer Larsen選手のジャンドサクリファイスは《真面目な身代わり》を採用し、6マナへの到達タイミングを早めています。ミラーマッチを意識した4色再生が増えたこともこのデッキを後押ししているのでしょう。4色再生からはティムール再生に比べて打ち消し呪文が減っているため、《フェイに呪われた王、コルヴォルド》《ボーラスの城塞》は以前よりも着地しやすくなっています。
黒単アグロ
熊谷 陸選手は黒単アグロを選択しました。マナカーブ通りに展開するビートダウンデッキですが、メインボードには《帆凧の掠め盗り》が加わり、クリーチャーを減らさずに手札への干渉手段を獲得しています。《荒野の再生》デッキから除去が減っていることもあり、《強迫》と合わせて、ゲームを有利に進められそうです。
パワーの高い《狩り立てられた悪夢》《騒乱の落とし子》が4枚ずつ採用され、手札破壊のバックアップのもと1~2ターン目のクリーチャーと合わせて5ターン目前後でゲームを終わらせることを意識しているようです。クリーチャーデッキの少ないメタゲームでは《狩り立てられた悪夢》はデメリットがなく、優れたカードといえるでしょう。
サイドボードには苦手なサクリファイス系や新鋭白単アグロへのカードが採用されています。《肉儀場の叫び》はいわずもがな、《悪意に満ちた者、ケアヴェク》は《大釜の使い魔》を機能不全にし、《波乱の悪魔》の効果を大きく下げます。
トップ8デッキリストはこちら。
- 2020/7/20
- プレイヤーズツアーファイナルってなんだろう?
- 晴れる屋メディアチーム
マルドゥウィノータ
1 《沼》
1 《山》
2 《寓話の小道》
4 《サヴァイのトライオーム》
4 《血の墓所》
4 《神無き祭殿》
4 《聖なる鋳造所》
1 《静寂の神殿》
1 《凱旋の神殿》
1 《エンバレス城》
-土地 (25)- 4 《無私の救助犬》
1 《漆黒軍の騎士》
3 《ラゾテプの肉裂き》
3 《帆凧の掠め盗り》
1 《将軍の執行官》
3 《災いの歌姫、ジュディス》
3 《悲哀の徘徊者》
1 《軍勢の切先、タージク》
4 《バスリの副官》
4 《軍団のまとめ役、ウィノータ》
4 《敬慕されるロクソドン》
-クリーチャー (31)-
2 《軍勢の戦親分》
2 《敬虔な命令》
1 《巨人落とし》
1 《将軍の執行官》
1 《帆凧の掠め盗り》
1 《ドラニスのクードロ将軍》
1 《帰還した王、ケンリス》
1 《灯の燼滅》
1 《取り除き》
1 《害悪な掌握》
1 《湧き出る源、ジェガンサ》
-サイドボード (15)-
使用者わずか1名ながら、新たなアーキタイプがトップ8へ入賞を果たしました。Michael Jacob選手が使用したのはミッドレンジタイプのクリーチャーデッキ、マルドゥウィノータです。《荒野の再生》に対して8戦7勝1ID(合意の引き分け)と素晴らしい戦績をあげています。
以前の《裏切りの工作員》を踏み倒す型とは大きく異なり、クリーチャーを複数並べ、横展開を強化する《軍団のまとめ役、ウィノータ》か《敬慕されるロクソドン》《災いの歌姫、ジュディス》へと繋げます。前者は頭数をさらに増やす可能性があり、後者2種は攻撃力を高めてくれます。
《軍団のまとめ役、ウィノータ》は単体除去にも弱く、《炎の一掃》《嵐の怒り》《空の粉砕》の溢れるメタゲーム上では、本来の強さを発揮できていませんでした。しかし過剰なまでのティムール再生メタが進んだことで、メインボードはおろか、サイドボードからも全体除去呪文は減りつつあります。先週末に白単アグロが勝ったとはいえ、まだアグロよりも《荒野の再生》への意識が格段に高いといえるでしょう。
マナカーブには注目です。1マナ域を極力減らしたことで、まず《サヴァイのトライオーム》《凱旋の神殿》のタップイン処理でき、その後の展開に支障をきたしません。2ターン目以降は《急報》《ラゾテプの肉裂き》のような1枚で複数並ぶカードを使用し、必要な頭数を揃えていきます。
また、『基本セット2021』が加わり、このデッキは大きく進化を果たしました。《帆凧の掠め盗り》により干渉力を得て、《無私の救助犬》は《軍団のまとめ役、ウィノータ》を守りつつ誘発役にもなります。《バスリの副官》は《軍団のまとめ役、ウィノータ》の当たり牌でありながら、手札から唱えても十分強力なカードであり、除去耐性も持ち合わせています。
このデッキのオススメ!
ミッドレンジベースのクリーチャーデッキでありながら数を並べるため、全体除去呪文の減った今の環境に適しています。以前よりも《軍団のまとめ役、ウィノータ》を守りやすくなっただけではなく、優秀な人間クリーチャーも増えたためアグロデッキのようにビートダウンも敢行可能です。全体除去呪文が少ない環境、シナジーの強い攻撃的なミッドレンジデッキ、《軍団のまとめ役、ウィノータ》好きなあなたにオススメ!
メタゲームブレイクダウン
マジック殿堂顕彰者フランク・カーステン/Frank Karstenによって、素晴らしいメタゲームブレイクダウンが公開されています。今回は2日目を中心に見ていきたいと思います。
初日から2日目への進出率に注目していきましょう。目を引くのは使用者数でも2位につけている4色再生です。実に7割強のプレイヤーが2日目を進出していますね。デッキの根幹はティムール再生と同じく《成長のらせん》のマナ加速から《荒野の再生》《発展/発破》のコンボとなり、サクリファイス系をはじめとしたミッドレンジに有利なデッキです。
タップインランドが多く序盤をもたつきますが、苦手なアグロデッキは緑単/白単/赤単と合わせても使用率1割強。デッキ自体がミッドレンジや有象無象に強く、ミラーマッチが多くアグロが少ない今回のメタゲームは4色再生にとって非常に適したものであり、選択したプレイヤーの多くが2日目へと進出を果たしました。そのため同デッキは2日目に占めるデッキの使用率がほかと比べて7%も増加しています。
次点は少数のアゾリウスコントロールになりますが、ここで興味深いのは《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」としている点です。なぜでしょうか?
答えはGabriel Nassif選手が2020プレイヤーズツアー・オンライン 1で使用したものにありそうです。同デッキはメインボードから打ち消し呪文を減らし、《海の神のお告げ》《エルズペス、死に打ち勝つ》《覆いを割く者、ナーセット》などのパーマネントを増加したことで、《空を放浪するもの、ヨーリオン》の効果を最大限引き出し、大量のアドバンテージを稼ぐデッキです。アグロデッキやミッドレンジデッキに強いのが特徴でした。
その後ティムール再生が増加するとメインボードで不利なこのデッキは、《ドビンの拒否権》《神秘の論争》を中心とした往年のパーミッションスタイルのものへと姿を変えました。しかし、同時にメタゲームの中心からは消えてしまったのです。
ティムール再生が増加したとはいえ、ほかのデッキも存在していることがメタゲームの難しいところ。《空を放浪するもの、ヨーリオン》中心のボードコントロールからパーミッションとなったことで、これまで有利だったジャンドサクリファイスとの相性は逆転してしまいました。《変容するケラトプス》や《石とぐろの海蛇》といった厄介なクリーチャーをもつ緑単アグロが増えたタイミングも悪く、完全に食われる側となってしまったのです。
コントロール戦に強い打ち消し呪文とリソースゲームで効果的な《空を放浪するもの、ヨーリオン》とパーマネントを組みわせるというゴールは見えているものの、スロットはすでにカツカツ。枚数がどちらへ傾いても歪な構造、偏った相性となってしまいます。だからこそ《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」とすることで、パーマネント数を減らさずに打ち消し呪文の量を増やす魔法のスロットが生まれたのです。今のアゾリウスコントロールにとっては、80枚こそ適正化されたデッキといえるでしょう。
大会を有利に進めたデッキがある一方で、思うように勝てなかったデッキもあります。《荒野の再生》が多いフィールドのため、サクリファイス系は苦しい戦いを強いられました。サイドボードから大量のカードを投入したとしても《荒野の再生》設置後のゲームスピードについていくのは難しく、《長老ガーガロス》《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル》といった別軸のゲームプランまで獲得しているため、攻略には至りませんでした。
少し前までアグロデッキの顔となっていた緑単アグロの2日目進出率は3割に、赤単アグロに至っては全員初日落ちとなりました。白単/黒単アグロと違い、《霊気の疾風》という明確な弱点をもつ両デッキはティムール再生を攻略しきれなかったようです。ミラーマッチを考え、《霊気の疾風》がメインボードにあり続ける限り、緑単/赤単アグロの苦難は続きそうです。
Red Bull Untapped Online Qualifier UK
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Luke Hancock | ジャンドサクリファイス |
準優勝 | Chris Arlow | 4色再生 |
トップ4 | Andrew Ward | 緑単アグロ |
トップ4 | Thomas Love | 4色再生 |
トップ8 | Matteo Di Napoli | 白単アグロ |
トップ8 | Joshua Mulligan | 4色プレインズウォーカー |
トップ8 | Joao Martins | バントランプ |
トップ8 | Freddie Barber | ゴルガリアドベンチャー |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者124名で開催されたRed Bull Untapped Online Qualifier UKはトップ8にティムール再生が残らない珍しい結果となりました。4色再生が2名残りましたが、決勝戦でジャンドサクリファイスに敗北し、同デッキが優勝を果たしました。
《龍神、ニコル・ボーラス》を採用した4色プレインズウォーカーや《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル》入りのゴルガリアドベンチャーといった珍しいデッキも入賞していました。
トップ8デッキリストはこちら。
デッキ分布
デッキタイプ | 使用者数 |
---|---|
ティムール再生 | 19 |
緑単アグロ | 17 |
4色再生 | 14 |
バントランプ | 9 |
ラクドスサクリファイス | 7 |
白単アグロ | 6 |
マルドゥウィノータ | 6 |
アゾリウスコントロール | 6 |
赤単アグロ | 6 |
その他 | 24 |
合計 | 124 |
まとめ
先週末の勝ち組となり、プレイヤーズツアーファイナルでは決勝ラウンドへ2名を送り出した4色再生ですが、攻略の糸口はどこにあるのでしょうか?「タップイン土地が多く」「全体除去が少ない」、この2点こそ突破のカギとなりそうです。
《霊気の疾風》が効かず、《不敗の陣形》をもつ白単アグロや手札破壊をもつ黒単アグロは良い選択肢となります。また、プレイヤーズツアーファイナルにおいて《荒野の再生》デッキに対して7勝をあげたマルドゥ《軍団のまとめ役、ウィノータ》デッキもオススメできそうです。
さらにメタゲームを推し進めるならば、《荒野の再生》側が《炎の一掃》などの全体除去を採用することで相性は大きく変化するといえます。サイドボードを含めてアグロデッキを取りこぼさず、ミラーマッチを見据える必要が出てきていますね。
今週末には2020プレイヤーズツアーファイナルの決勝ラウンドが控えていますが、対戦組み合わせは前日に発表されるため、現段階での結果予想は難しくなっています。《荒野の再生》に強いアグロデッキたちですが、彼らの命運はたった1名のジャンドサクリファイスが握っており、トーナメント表のどこに入るかで運命は大きく変わってしまうでしょう。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。