はじめに
みなさんこんにちは。
7月13日に禁止制限告知があり、筆者を含めた大多数は『テーロス還魂記』がリリースされて以来環境を支配し続けているDimir Inverterにテコ入れが入ると予想していました。
しかし、結果は大方の予想と異なり、《ニッサの誓い》の禁止が解除されただけでした。《ニッサの誓い》は多数の強力なカードの巻き添えで禁止になったと噂されていたカードだったので、禁止解除は妥当だといえます。これによってパイオニアの環境初期に活躍したデッキも復権してくることが予想されます。
さて、今回の連載では禁止改定後に開催されたPioneer Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Pioneer Challenge #12186207
禁止解除によって復権したコンボデッキ
2020年7月26日
- 1位 Kethis Combo
- 2位 Boros Burn
- 3位 Dimir Inverter
- 4位 Lotus Breach
- 5位 Boros Burn
- 6位 Sultai Delirium
- 7位 Golgari Midrange
- 8位 Mono White Devotion
トップ8のデッキリストはこちら
パイオニアでは、《ニッサの誓い》は緑を使うならほとんどのデッキに入る基本的なカードです。今大会で優勝を果たしたKethis Comboは今回の禁止改定によって恩恵を受けたデッキの1つといえるでしょう。
プレイオフにはDimir Inverter、Lotus Breach、Boros Burn、Sultai Delirium、Mono White Devotionなどが進み、さまざまなデッキが結果を残しました。
デッキ紹介
Kethis Combo
1 《繁殖池》
4 《マナの合流点》
4 《花盛りの湿地》
4 《植物の聖域》
2 《寺院の庭》
2 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
-土地 (20)- 4 《ギラプールの希望》
4 《精励する発掘者》
4 《万面相、ラザーヴ》
4 《湖に潜む者、エムリー》
4 《隠された手、ケシス》
2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
1 《夢の巣のルールス》
1 《祖神の使徒、テシャール》
-クリーチャー (24)-
4 《モックス・アンバー》
1 《魂標ランタン》
3 《時を解す者、テフェリー》
1 《夢を引き裂く者、アショク》
1 《最後の望み、リリアナ》
1 《神秘を操る者、ジェイス》
1 《伝承の収集者、タミヨウ》
-呪文 (16)-
2 《思考囲い》
2 《突然の衰微》
2 《夢を引き裂く者、アショク》
1 《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》
1 《配分の領事、カンバール》
1 《ウルザの殲滅破》
1 《魂標ランタン》
1 《ゴルガリの女王、ヴラスカ》
1 《悪夢の詩神、アショク》
1 《呪われた狩人、ガラク》
-サイドボード (15)-
Kethis Comboは禁止改定後に復権してきたデッキの1つで、早くもPioneer Challengeを優勝してポテンシャルの高さを見せつけました。
《精励する発掘者》で墓地を肥やしていき、《隠された手、ケシス》とある程度の伝説のカード、《モックス・アンバー》が2枚揃えばコンボがスタートできます。
《隠された手、ケシス》の起動型能力を使い墓地から《モックス・アンバー》をキャストし、《精励する発掘者》の誘発型能力を自分に対して「切削」します。《モックス・アンバー》はレジェンド・ルールによって墓地に落ちるため、《隠された手、ケシス》の起動型能力を再度使用して墓地に必要牌が揃うまで《モックス・アンバー》をキャストし続けます。
最終的に《精励する発掘者》の誘発型能力で相手を「切削」してライブラリーアウトするか、自分のライブラリーを削りきった後に《神秘を操る者、ジェイス》を使い勝利となります。
《最後の望み、リリアナ》、《時を解す者、テフェリー》などプレインズウォーカーを駆使することで、Dimir InverterやTwinのようにミッドレンジとしても振る舞えるのもこのデッキの特徴です。
☆注目ポイント
伝説のクリーチャーとプレインズウォーカーがキーカードのKethis Comboは、パイオニアで《モックス・アンバー》をもっとも有効に使えるデッキです。
《精励する発掘者》は必要な伝説のカードを墓地へ落とし、肥えた墓地から《隠された手、ケシス》の起動型能力によって《モックス・アンバー》を継続的にキャストすることが可能になります。また、《時を解す者、テフェリー》と《ギラプールの希望》を利用することで、安全にコンボを決めることができます。
《ニッサの誓い》によって《隠された手、ケシス》、《精励する発掘者》、《湖に潜む者、エムリー》などキーカードを見つけやすくなり、常在型能力によって色拘束の強いプレインズウォーカーもキャストしやすくなっています。伝説であることもこのデッキでは無視できない要素です。
『エルドレインの王権』のリリースと同時に《モックス・アンバー》がローテーション落ちしたためスタンダードでは共演が実現しませんでしたが、パイオニアでは強力な伝説のクリーチャーである《湖に潜む者、エムリー》が使えます。墓地を肥やしつつ《モックス・アンバー》を再利用できるため、このデッキの新たなキーカードとなります。
ミッドレンジの定番として定着している《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が登場したことによって、フェアデッキとしても戦いやすくなりました。
Sultai Midrange
2 《森》
1 《沼》
3 《寓話の小道》
2 《ゼイゴスのトライオーム》
2 《繁殖池》
2 《草むした墓》
2 《湿った墓》
4 《花盛りの湿地》
1 《水没した地下墓地》
1 《内陸の湾港》
1 《森林の墓地》
1 《イプヌの細流》
-土地 (24)- 1 《歩行バリスタ》
4 《サテュロスの道探し》
2 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
2 《残忍な騎士》
1 《不屈の追跡者》
1 《探索する獣》
-クリーチャー (15)-
4 《ウルヴェンワルド横断》
3 《致命的な一押し》
1 《暗殺者の戦利品》
1 《取り除き》
2 《神秘の論争》
1 《食らいつくし》
3 《ニッサの誓い》
2 《悪夢の詩神、アショク》
-呪文 (21)-
Sultai Deliriumは《自然の怒りのタイタン、ウーロ》、《思考囲い》、《ヴリンの神童、ジェイス》など緑黒青から優秀なカードが集められたグッドスタッフであり、旧環境でもコンスタントに結果を残していたデッキの1つです。
Sultai Delirium自体が環境のクリーチャーデッキに強く、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》はサイズとライフゲインによりアグロデッキにとって非常に厄介な存在となっています。このデッキの弱点はクロックの遅さであり、Lotus Breachなどのコンボデッキは苦手なマッチアップとなります。
☆注目ポイント
《ニッサの誓い》はSultai Deliriumでも有力なカードとなります。アドバンテージが取れる《自然の怒りのタイタン、ウーロ》、《不屈の追跡者》、《ヴリンの神童、ジェイス》や除去としても機能する《残忍な騎士》など選択肢は多岐にわたる優秀なエンチャントであり、2枚目以降を使用することで「昂揚」の条件も満たしやすくなります。
《不屈の追跡者》は《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と相性が良いクリーチャーであり、重要なアドバンテージ源の1枚です。墓地対策の影響を受けないのもこのクリーチャーの強みですね。
《思考囲い》は現環境における最高峰の1枚で、《束縛なきテレパス、ジェイス》の[-3]能力で再利用したいスペルです。失ったライフも《自然の怒りのタイタン、ウーロ》によって回復できます。《湖に潜む者、エムリー》などキーカードが青いKethis Comboを意識していたようで、メインから《神秘の論争》も採用されています。
Pioneer Challenge #12186211
緑単信心が優勝
2020年7月27日
- 1位 Mono Green Devotion
- 2位 Lotus Breach
- 3位 Dimir inverter
- 4位 Esper Control
- 5位 5C Niv
- 6位 Azorius Spirits
- 7位 Kethis Combo
- 8位 Mono Black Aggro
トップ8のデッキリストはこちら
《ニッサの誓い》の禁止が解除されて最初に復権してくると予想されていた緑単信心が順当に勝ち上がってきました。
前日開催されたPioneer Challengeを制したKethis Comboも入賞しており、Dimir Inverter、Lotus Breachなどのコンボデッキ、Esper Controlや5C Nivといったコントロール、アグロデッキではMono Black Aggro、Azorius Spiritsと、多種多様なアーキタイプが残っていました。
デッキ紹介
Mono Green Devotion
2 《ギャレンブリグ城》
4 《ニクスの祭殿、ニクソス》
-土地 (21)- 3 《歩行バリスタ》
4 《エルフの神秘家》
4 《ラノワールのエルフ》
4 《炎樹族の使者》
3 《大食のハイドラ》
1 《旅するサテュロス》
4 《翡翠光のレインジャー》
-クリーチャー (23)-
1 《歩行バリスタ》
1 《漁る軟泥》
1 《大食のハイドラ》
1 《新緑の機械巨人》
1 《隕石ゴーレム》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
1 《約束された終末、エムラクール》
1 《トーモッドの墓所》
1 《墓掘りの檻》
1 《真髄の針》
1 《減衰球》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《王神の立像》
1 《グレートヘンジ》
-サイドボード (15)-
《ニッサの誓い》の加入により安定性が向上し、見事復権を果たしたMono Green Devotion。キーカードである《ニクスの祭殿、ニクソス》を引きやすくなっています。同デッキは初期に《むかしむかし》や《夏の帳》、《豊穣の力線》など多数の強力カードに恵まれていたためトップメタの一角でしたが、瞬く間にその多くが禁止カードとなり、その後はほかのデッキも強化されたことで上位から姿を消していました。
単色の特権を活かして色拘束の強いパーマネントを多用し、《ニクスの祭殿、ニクソス》から大量のマナを捻出することができます。膨大なマナから《世界を揺るがす者、ニッサ》や《歩行バリスタ》を高速展開する爆発力は健在です。
☆注目ポイント
マナコストにXをもつ《歩行バリスタ》と《大食のハイドラ》は《ニクスの祭殿、ニクソス》から得た大量マナの使い先であり、勝ち手段だけではなく除去としても機能します。
《アーク弓のレインジャー、ビビアン》はクリーチャーだけでなくプレインズウォーカーも対象に取れる[-3]能力、状況に応じて様々なカードをサーチする[-5]能力と全ての能力が使えるプレインズウォーカーです。特に[+1]能力は追加の+1/+1カウンターを与えるため、《歩行バリスタ》と相性が良いカードですね。
スタンダードではBant Rampを中心に活躍している《世界を揺るがす者、ニッサ》は、パイオニアの緑単でも主力プレインズウォーカーの1枚。緑単色であるがゆえに、常在型能力の恩恵をもっとも受けることができるのです。[+1]能力で《ニクスの祭殿、ニクソス》をアンタップすることで大量のマナを生み出し、巨大な《歩行バリスタ》や《大食のハイドラ》をキャストすることも可能となっています。
《大いなる創造者、カーン》によって《減衰球》、《真髄の針》、《トーモッドの墓所》などの対策カードをメイン戦からサーチできるため、単色デッキとは思えないほどフレキシブルに動くことができます。
5C Niv
1 《島》
1 《沼》
1 《山》
1 《森》
4 《寓話の小道》
4 《インダサのトライオーム》
2 《ケトリアのトライオーム》
1 《ラウグリンのトライオーム》
1 《サヴァイのトライオーム》
1 《ゼイゴスのトライオーム》
3 《草むした墓》
2 《繁殖池》
2 《神聖なる泉》
2 《蒸気孔》
2 《踏み鳴らされる地》
1 《寺院の庭》
1 《マナの合流点》
3 《水没した地下墓地》
2 《陽花弁の木立ち》
-土地 (36)- 4 《死儀礼のシャーマン》
4 《森の女人像》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4 《ニヴ=ミゼット再誕》
-クリーチャー (16)-
3 《思考消去》
2 《突然の衰微》
1 《漂流自我》
1 《殺戮遊戯》
1 《完全なる終わり》
1 《陽光の輝き》
4 《白日の下に》
1 《永遠神の投入》
4 《ニッサの誓い》
4 《時を解す者、テフェリー》
2 《先駆ける者、ナヒリ》
-呪文 (28)-
3 《イゼットの静電術師》
2 《ラクドスの復活》
1 《スカラベの神》
1 《思考囲い》
1 《破滅の刻》
1 《戦争の犠牲》
1 《減衰球》
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-サイドボード (15)-
《白日の下に》と《ニヴ=ミゼット再誕》の組み合わせを軸にしたミッドレンジである5C Nivは『テーロス還魂記』リリース前の環境で結果を残していたデッキです。デッキ名通り《ニヴ=ミゼット再誕》がもたらすカードアドバンテージと優秀な多色スペルによって圧倒します。《白日の下に》によって対戦相手に応じて必要なカードをキャストできるため、《殺戮遊戯》のようなカードもメインから1枚挿しされています。
「相棒」の《空を放浪するもの、ヨーリオン》との相性が良いこともあり、《ニッサの誓い》は4枚採用されています。
☆注目ポイント
《ニッサの誓い》は序盤はマナ加速役の《森の女人像》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》、中盤以降は《空を放浪するもの、ヨーリオン》で「明滅」させてカードアドバンテージを獲得することができます。《森の女人像》は強力な多色スペルをより早くキャストするためのマナクリーチャーですが、除去耐性を活かして序盤のブロッカーにもなります。
フェッチランドが禁止されているパイオニアではかつてのモダンやレガシーほど安定してマナ供給はできないものの、《死儀礼のシャーマン》は《寓話の小道》や《サヴァイのトライオーム》と組み合わせて必要な色マナを調達することもできます。メインでは貴重な《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や墓地を使うコンボデッキ対策にもなっています。
Dimir InverterやLotus Breach、そして最近復権してきたKethis Comboなど現環境には多数のコンボデッキが存在するため、《白日の下に》のサーチ先としてメインから対策カードを採用しています。《殺戮遊戯》はカウンターされず、Dimir inverterとのマッチアップで特に有効なスペルとなります。《漂流自我》は《殺戮遊戯》よりもコストが軽く土地も指定できるため、《睡蓮の原野》をキーカードとしたLotus Breachに効きます。
総括
今回の禁止制限告知は予想していたものと大きく異なりましたが、新環境の大会結果をみるに《ニッサの誓い》は環境の多様性に貢献している印象です。
パイオニア好きに朗報もありました。2020年末までにパイオニアで使えるカードを多数収録予定の『パイオニアマスターズ』とともに、MTGアリーナにもパイオニアが登場することが発表されたのです!手軽にプレイできるMTGアリーナでパイオニアが対戦できるようになれば、これまで以上に盛り上がること間違いなしですね。
以上、USA Pioneer Express vol.8でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいパイオニアライフを!